行き詰まる地方銀行 若手行員の退職理由「保険や投信のノルマきつすぎ」「会社の将来性ない」

行き詰まる地方銀行 若手行員の退職理由「保険や投信のノルマきつすぎ」「会社の将来性ない」

大問題に発展した、かんぽ生命保険と日本郵便による不適切販売。その背景には過剰なノルマと理不尽な圧力があったとされますが、さらにその裏には日本郵政グループの業績不振があります。同じような構図は地方銀行にも見られます。企業口コミサイト「キャリコネ」で退職者の書き込みを集めました。


かんぽ生命保険の場合、会社トップが不足する数字を提示し、それを本社が支社に割り振り、支社がブロックごとに振り分け、それが各郵便局や各社員に割り当てられる――。そこには市場性も顧客の視点もなく、あるのは会社の勝手な都合だけです。

まったく同じ構図は、ゼロ金利にあえぐ地方銀行にも言えます。企業口コミサイト「キャリコネ」を見ると、あまりに多くの若手社員が「ノルマがきつすぎる」という理由で退職していることに驚きます。

高齢者に投資信託を販売「嫌になった」

仙台に本社を置く七十七銀行の男性社員は、30代後半になって長年勤めてきた職場を去る決心をしました。退職理由は、やはり無理なノルマでした。

お客様のためになっていない仕事が大半を占め、自分の仕事が恥ずかしくなってきた。給与や福利厚生は大手企業のため充実していたと思うが、今後いつまで続くかは、かなり不透明である。(2019.1.8)

お客様のためにならない仕事とは、具体的にどんな内容でしょうか。メガバンクではありますが、三井住友銀行を20代で退職した女性社員は、退職理由として次のような仕事への疑問をあげています。この構図は地銀でも同じでしょう。

個人営業では主に「投資信託」「外貨建て商品」「生命保険」を取り扱う。営業目標を達成するためには、収益性の高いリスクのある商品を顧客に販売する必要がある。顧客が損をすることもある不確実な商品を販売することへの違和感がぬぐえなかった。(2017-3-26)

広島銀行に勤務していた20代女性は、自行が「貸金では利益が確保できず、保険販売など金融商品販売に力を入れ始めたこと」が退職の引き金となりました。

将来性が低いと思い退職しました。銀行業全体がその傾向ですが、もはや銀行の意味がわからなくなりました。貸金しつつ、保険も売れという姿勢は、どちらにしても中途半端でモチベーションがあがりませんでした。(2018-08-22)

大分銀行の30代男性社員は、かんぽ生命保険やゆうちょ銀行と同様に、高齢者に対して投資信託を販売する仕事に、良心の呵責に苛まれて退職を決意しています。

半年毎の目標を与えられ、それを達成することの繰り返し。投資信託もお金を持っている60代、70代にアタックし、分からないまま商品を売りつける。嫌になる。(2018-08-12)

「パワハラのような詰めについていけない」

このような「顧客無視のノルマ強要に嫌気が差した」という声は、枚挙に暇がありません。福岡銀行の20代男性社員も「ノルマ至上主義で顧客を食い物にした営業が多く、やりがいを感じなくなった」と退職しています。

(顧客企業の)経営が悪化したときに融資するということを餌に、社長に資産運用商品や保険を売りつけている。実際は困ったときには、まず助けない。(2017-05-05)

関西アーバン銀行の20代社員も「とにかくノルマがしんどいです」と書き残して退職。

月曜日の朝に会議があり、そこで支店長や上司にかなり詰められます。また、残業の申請も自己申請なので、私のいた支店ではほとんど申請できない状態でした。その結果、精神的に疲れ、退職しました。(2017-09-07)

かんぽ生命保険の場合、郵便局の窓口担当にもノルマがあり、自爆営業を余儀なくされたといった声があります。同様の構造は、やはり地銀にもあるようです。千葉銀行を退職した20代女性社員の声です。

営業だったら数字だけを追っていればいいものを、窓口は事務処理と数字を追うことを並行して行わなければならない。事務処理をいくらやろうと、数字をとっていなければ、いる意味がないとの評価をされてしまう。(2018-09-29)

 

この他にも、企業口コミサイト「キャリコネ」には次のような口コミが見られます。

退職理由は、ノルマの数が膨大であるため。(西日本シティ銀行《福岡》・2018-07-28)

ノルマは厳しくなる一方で、達成できないときに上席が詰めてくる。小規模店に在籍しているときは感じなかったが、大規模店に来て、自分にはこのパワハラのような詰めについていくことは無理だと感じた。(大垣共立銀行《岐阜》・2018-10-07)

膨大なノルマが課せられる。給与は役席者の方が多いのに責任回避。相談にも乗ってくれない人がいた。支店内の雰囲気は悪く、ピリピリしている。働く環境が悪いと感じたため、転職を決意。(東日本銀行《東京》・2018-05-17)

ノルマに追われ、接客にもかなり神経も使います。やりがいはあまりなく、資格ばかり取らなければならず、休日も何となく休まらなかったです。(京都銀行・2018-09-24)

とにかくノルマが大変だった。達成できないとかなり詰められる。支店にもよるが、上司次第で詰められる。(百十四銀行《香川》・2017-09-19)

ビジネスモデルに不安「明るい未来が想像できなかった」

理不尽なノルマが課せられる理由は、これまでのビジネスモデルが破綻しているからでしょう。退職者の中には「もう地方銀行には将来性はない」という理由をあげる人もいます。

常に中途を採り続けており、新たなビジネスはメガバンクや外資の人間の経験に頼っている。社内にい続けると、外の世界の人に比べ劣ってしまうように思えた。新たな領域の仕事ができる環境を求めて転職することにした。(東京スター銀行・2017-07-30)

将来性がないと思った。財務、法務に関する知識はある程度身に着くが、世間一般で言われるように専門性は身に付かない。一定の収入は確保出来るものの、顧客のためにならないことをし続けていくのも、やる気を失う一因。(広島銀行・2017-08-01)

給与に関しては地域の中ではトップクラスであり、何不自由ない生活を送ることができる。しかし、これから低金利が持続し、かつ手数料収入の低下を考えた場合、収益を上げ続けることができるのかという点を危惧し、地方銀行の将来性に疑問を感じた。(福岡銀行・2017-08-21)

旧態依然とした経営方針であり、マイナス金利の現状ではジリ貧になると判断した。役務収益で稼ごうにも、目立った金融商品がない。今後は横浜銀行に飲み込まれて行くのを見届けるしかないと思った。(東日本銀行《東京》・2017-08-08)

マイナス金利の導入後は、法人融資ではなく預かり金融資産の販売ばかりに注力し、銀行に勤めている意味を見失った。何も実績を上げていなくても年功序列のため、上は高い給料をもらっており、できる行員の負担が大きすぎる。(群馬銀行・2018-11-20)

銀行業界を取り巻く環境は厳しく、すでに悪い労働環境と勤務条件が更に低下すると考えられた。残ったとしても、明るい未来が想像できなかったため転職した。(親和銀行《長崎》・2019-02-06)

業界的に人員削減が著しいと思い、退職を決断しました。福利厚生の面では特に問題はないと思いますが、将来性を考えた時に転職するなら早い方がいいと思いましたので。(足利銀行《栃木》・2019-03-12)

銀行の中でしか生きていけないスキルだけしか身につかないと感じたため。何かを成し遂げた達成感ややりがいも薄く、斜陽産業でこれ以上のやりがいを得ることは難しいと思う。(八十二銀行《長野》・2019-03-17)

これ以外にも、地方銀行の社員の退職理由は多数存在します。どんな理由で辞めているのでしょうか。以下のリンクから「キャリコネ」の口コミを参照してみてください。

 

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