ネットのQ&Aサイトに、こんな質問が載っていました。質問者さんは今年の春に学校を卒業し、正社員の事務職に就職しました。しかし実際に働いてみると、こんなはずではなかったと思うことが多すぎると嘆いています。
基本給は求人内容よりも低く、昇給は半年で1万2000円だったはずが、入ってみたら6000円でした。週休2日と書かれていたのに、実際には月に8日。その休日も3日前にならないと分からず、会社に勝手に決められてしまうので不自由です。
フリーターの方が稼げるし休みも自由で気楽
勤務時間は8時から18時。休憩は30分から40分で、忙しいときには休みなしで働くこともあるとか。そんな風に毎日9.5時間労働をしていますが、時間外手当は1円も出ません。ここまで働いているのに、給与は手取りで15万円です。
質問者さんは「正直、正社員でいるメリットが全く感じられません」と嘆いています。同じ時間働くならフリーターの方がよほど稼げるし、休みも自由で気楽だからです。
しかし「辞めようかな」というと、親や周囲に反対されてしまいます。質問者さんは「どうしてそこまで正社員にこだわる必要があるのですか? こんな労働環境でも? 私が自分に甘すぎるのでしょうか?」と疑問を投げかけています。
好条件に見せかけた「ブラック求人」や「おとり求人」については、厚生労働省が法律の改正で対応する方針を示しています。実際に働いてみたら基本給が求人より安かったら、腹が立つでしょう。
しかし回答者さんは、相談内容だけでは違法かどうかは分からないと言います。
「求人内容は入社を誘っている書類であって、契約書ではありません。雇用契約書がはっきりしないと、給与に違法性があるかどうかわかりません」
転職コンサルタント「現職のまま正社員に」
会社は採用決定後、その人に労働条件を明示した書面を明示しなければなりません。
これを怠った場合や、雇用契約書と異なる条件で働かせた場合には違法ですが、求人広告だけでは判断できないというのです。相談者さんは、まずは雇用契約書が手許にあるかどうか、確認してみた方がいいでしょう。
ただし、雇用契約書の内容に関係なく、休憩時間をきちんと確保しなかったり、残業代を支払わずに1日8時間を超えて働かせたりすることは、労働基準法に違反します。
相談内容から見て、勤務先の会社は違法行為を当然のように行う「ブラック企業」のようです。しかし別の回答者さんは、退職には慎重になるべきと助言します。
「求人内容と実際が異なる場合は世の中結構多く、辞めて転職したからといって今よりも良いところに再就職できるとは限りません。よくよく考えてから辞めないと、かえって後悔することもあるので、反対されるのだと思いますよ」
地方の中小零細企業では、法律を守らないところも多いとはよく聞きますが、まったくウンザリしてしまいます。回答者の転職コンサルタントさんは、職場がブラック企業なので転職を勧めつつ、「フリーターには反対」と言っています。
「一度フリーターになると、次の正社員への転職が著しく不利になります。ですので現職のまま正社員への転職活動を行い、フリーターは挟まない方がいいです」
「名ばかり正社員」に引っかからないように
親や周囲が退職を反対したように、世の中には正社員を過剰にありがたがる雰囲気にあります。しかしブラック企業の中には、この風潮を逆手に取って「名ばかり正社員」として、悪条件で人を雇うところもあるのです。
そういう会社に引っかかってしまったのに、「せっかく正社員になったんだから」と言って辞めないのは、ブラック企業の思う壺です。退職を考えるのが当然でしょう。
しかし世の中には、正社員でも、きちんと契約や法律を守る会社もあるのです。やけになって自分の選択肢を狭めるような行動は避けるべきでしょう。いまの会社を辞める前に、まずはもっとよい条件での求人を探してみた方がよさそうです。
ネットのお悩み相談をウォッチするコラムニスト。