ネットのQ&Aサイトに、こんな相談が載っていました。質問者さんは、現在転職活動中の男性。とある会社から内定が出たものの、提示された条件に戸惑っています。
転職先候補は現職と同業界ですが、職種は未経験。それを理由に、会社からは現在の給与水準から160万円ほど下げると言われたのだそうです。
本人は「入社後の頑張りで上げていけばいい」と思っていますが、家族からはやはり反対の声が出ました。
「こんな売り手市場のタイミングで、年収がそんなに下がって大丈夫か? もっと時間をかけて探したほうがいいのではないか?」
反対続出「私だったら絶対に行かない」
転職先候補は業界でもトップクラスの会社で、個人の頑張りがかなり反映される職場とは聞いているのですが、本人にも迷いがあるよう。家族が言うように「この下がり幅は大きすぎるのでしょうか?」と尋ねています。
元の給与水準が分かりませんが、160万円といえば単純計算で月に13万円もの減額。給与がそれだけ下がれば生活水準も下げなければならなくなるでしょう。この相談には、回答者から反対する意見が続出しました。
「私ならば絶対に行きません」
「自分だったらパスします」
「年収160万減は大きいです。他は当たりましたか?」
「もし迷っているのであれば、再考されたほうがいいのではないでしょうか」
ある回答者さんは、未経験職種に挑戦する相談者さんを「30歳前後、年収500万円程度」と独自に予想。そこから160万円の減額は30%以上のダウンと計算して、「これはかなり大きい」と驚いています。
多くの回答者が疑問視しているのが、相談者さんが「転職先で頑張ったら給料が上がる」と言っていること。しかし一般的な日本企業では長年昇給ナシが続くところも多く、160万円の昇給を果たすにはかなりの業績アップが必要と思われます。
別の回答者さんは「頑張れば給料が上がると楽観視されていますが、口約束ほどあてにならないものはありません」と釘を刺し、「はたして今後のがんばりが評価されるのか? 疑わしいところです」と首を傾げる人もいます。
「長い目で見て損はしない」と励ます人も
別の回答者さんも、給料が見込み通りに上がらなければ、それを理由に転職を考えることの繰り返しになるので、「家族の方が言われるよう、時間を掛け(他の転職先候補を)慎重に捜されたほうが良い」と意見を述べています。
そんな中、未経験職種に転職するのであれば「年収ダウンは仕方がない」という意見の人がいました。転職先候補がどうしてもチャレンジしたい職種で、今後実績を出していくやる気と自信があれば「長い目で見たときに決して損はしないと思います」と励ましています。
「いくら売り手市場でも、スキルもポテンシャルもない人は転職できないのが現状です。評価制度がしっかりしている会社であれば、徐々にスキルに応じた年収にあがっていくのではないでしょうか?」
大きな仕事をした人からたびたび聞かれるのは、「リターンを得るためには、リスクを取る必要がある」ということ。リスクなくして棚ぼたのリターンを得られるほど、世の中は甘くありません。多くの反対意見にもかかわらず、質問者さんは転職に踏み切ることにしたようです。
「年収ダウンを覚悟の上でチャレンジすることにしました。タイミングや年齢を考えて最後の機会ではないかという想いや、辞退することによる後悔はしたくないので、自分の中で決着をつけました」
調査では「転職で年収アップ」が過去最高に
人材獲得競争が激化する中、転職志望者に提示される条件は押し上げ傾向にあります。
転職支援のリクルートエージェントの調査によると、同社経由の転職決定者のうち「前職と比べ賃金が1割以上増加した」人の割合は、30.3%にのぼっています。これは2002年の調査以来、最高の水準です。
出典:2019年1-3月期 転職時の賃金変動状況(株式会社リクルートキャリア)
ひたすらリスクを避けるとともに、大きなリターンを諦める生き方もありますが、リスクを取って好機にしようとする生き方もあるでしょう。質問者さんが転職後に景気は回復したはずですが、いまごろ思うような活躍ができているでしょうか。
ネットのお悩み相談をウォッチするコラムニスト。