ネットのQ&Aサイトに、こんな質問が載っていました。質問者さんは、妻と子どもの5人家族で暮らす男性。取引先の運送会社から、転職の誘いを受けています。
普段の仕事ぶりを見た社長から、「君を引き抜きたい」と申し出を受けたのだとか。家族の面倒を見てくれるとか、今より給与を上乗せするとも言われています。
「身内優先、理不尽に怒る」社長にストレス
一方、いまの会社の社長は人間的に尊敬できず、ストレスが溜まりまくり。質問者さんは、こんな不満を並べています。
・身内優先、理不尽な事で怒ってくる
・何事も自分で命令しないと気が済まない
・よかれと思ってした行動も批判される
・自分もミスをするのに、他人がミスをしたらボロクソに怒る
・社員に対して思いやりがない
・給料もなかなか上がらない
典型的なワンマン社長の中小ブラック企業ですね。うまく儲けることができていないので、給与も上がらないのでしょう。
最近では金融機関などの支援によりかろうじて倒産を免れているけれど、「借金の利払いを利益で賄えていない」会社を「ゾンビ企業」と呼んだりしています。
しかし現場は人手不足で、定年退職者が2人も控えています。責任感の強い質問者さんは、そのような状況の中では「退職を切り出しにくい」として、「どう言えばよいでしょうか?」と尋ねています。
これに回答者さんは、会社への気遣いをせず辞めればいいだけと助言します。
「今の会社に、社内環境の改善(提案)や、給料アップの交渉をするわけではなく、どうせ辞めるつもりなら、変に気を使う必要もないんじゃないですか?」
いまの会社の社長に対し、労働環境や待遇の改善を申し出たときに、それが実現する可能性があるのであれば、残る選択肢もあるでしょう。しかし改善の可能性が見込めないのであれば、退職する権利は誰にでもあるはずです。自分の身は、自分で守らなければなりません。
「退職引き止めのパターン」をイメージしよう
退職をなかなか切り出しにくいと漠然と悩んでいても、対策は出てきません。相手がどう引き止めにかかってくるのか、具体的に考えてみましょう。ブラック企業でよくある「退職引き止めのパターン」を挙げてみます。
1.後任者の不在を持ち出す。
2.法的措置をちらつかせて脅す。
3.退職者の情に訴える。
4.給与改善・待遇改善の意思を示してくる。
5.退職者の人格を否定する。
1.の引き止めは、要するに「後任者が見つかるまで待ってくれ」というものです。責任感のある人は、つい耳を貸してしまいますが、就業規則の記載にかかわらず、法的には退職日の2週間前までに退職したい旨を会社に伝えるだけでよいとされています。
後任者への引き継ぎは退職者の仕事ですが、かりに後任者が不在であっても、業務内容と手順、取引先リスト、関係資料などを「引き継ぎマニュアル」としてまとめて残しておけば、責任は十分果たせたといえます。
この引き止めが効かないと、ブラック企業は「お前が辞めれば会社に大きな損害が生じる。賠償金を請求するぞ」と脅してくることが想定できます。しかし、言うまでもなく後任が準備できなかったのは会社側の仕事であり、辞める人に責任はありません。
「人格否定」が始まったら居残る理由はない
脅しの次は、泣き落としです。「一緒に働いてきた仲間たちを見捨てるのか!」「今まで育ててやったのに?」という言葉にほだされて退職を思いとどまっても、ストレスのかかる状況は変わりません。
それでも退職を撤回しないと、会社は急に「給料を上乗せするから辞めないでくれ」「もっと良いポジションに昇格させるよ」と甘い言葉で説得してきます。これをどう解するかはケース・バイ・ケースですが、会社に改善する気が本当にあるのであれば、もっと早く実現しているはず。口先だけの可能性が高いでしょう。
その会社がホンモノのブラック企業であれば、そのうち「逃げ出るのか?最低だぞ!」「お前のような奴は転職先でも成功するわけがない!」「業界にいられなくしてやる!」などと脅し、罵倒してきます。もうこうなったら、居残る理由はなくなりますね。
ネットのお悩み相談をウォッチするコラムニスト。