面接官は「人を見るプロ」なのか? 数十分で「人物の本質を見抜ける」なんて信じられない

面接官は「人を見るプロ」なのか? 数十分で「人物の本質を見抜ける」なんて信じられない

面接慣れをしてくると「人間なんて5分で分かるよ」と言いたくなる気持ちも分かります。しかし、それはやっぱり思い上がりなのではないのでしょうか。実際、その会社に入社後に成果を上げる「良い人材」の定義もままならないようでは、合否の基準も決められるわけがありません。


ネットのQ&Aサイトに、こんな質問が載っていました。質問者さんは、就職や転職の際に採用の可否を判断する「面接官」と言われる人の能力に、ある疑問を持っているようです。

人は彼らを「人を見るプロだ」と一目置き、「いくつかの質問からその人物の本質を見抜くことができる」と豪語する面接官もいます。しかし実際にはかなり個人的な感覚で決めているのでは? というのです。

「面接官は的確に人物の本質を見抜いていると思いますか?」

第一印象と入社後を比較し「見る目」を養う

質問者さんによれば、面接官の中には、たとえば「遅刻は絶対だめ」「まずは服装から」というマナーや印象重視の人もいれば、少しくらい無礼でも「成果こそ大事」といった考えの人もいるといいます。

そういう、まちまちの価値観に基づいて採用の可否を決めているのに、今後その会社で数十年働ける人を見抜ける、などと言っているのが、納得いかないようです。

『長年の付き合いには第一印象なんて当てにならない』というのが私の考えなのですが、面接で今後の数十年を占うことなんて、普通の面接官が出来るのでしょうか」

採用の可否を決める面接官は、就職・転職志望者から見れば、生殺与奪を握る神のような存在。その「神」が実際には大したスキルを有しておらず、好き嫌いで判断していたとすれば、不採用になった人は納得がいかないでしょう。

この質問には、回答者さんが、なぜ面接官が「人を見るプロ」と言われるのかを説明してくれています。

「大企業の人事担当者なら一年で千人以上の人を面接で見てます。入社後も毎年数百人を見て第一印象の面接とその後を比較できます。10年面接官をすれば『人を見るプロ』にある程度なっている人が面接官になってるかと思います」

「タダのサラリーマン」という冷めた見方も

なるほど。第一印象と入社後の活躍を見比べることができれば、一種の法則のようなものができるというわけですね。質問者さんも「これをある程度、統計的に解析していれば、多少納得です」と答えています。

しかし、多くの会社では、1人で数百人のサンプルを見ることはできません。やはり質問者さんと同様、冷ややかに見ている人は多いようです。

こんなことを完璧にできるわけないじゃないですか。採用なんて平均を取った時にどれだけ優秀なのが含まれているかの勝負です」

「面接官は人を見るプロ? タダのサラリーマンです。人事課にいる、採用担当だ、多少経験があるというだけです。とてもじゃないが、プロなんて呼べたものではありません

人物の本質など見抜けないから「学歴が重視される」と指摘する人も。短時間の面接だけで今後の数十年を占うことなど「絶対にできない」のであり、「そもそも人間の能力など、実際にやらせてみなければ判断できない」と言います。

別の回答者さんも、ある店の店長から、良い人材かどうかは「実際、雇わないと分からない」と言われたそうです。どの部署に配属されてどんな上司や同僚に囲まれて仕事をするか、どんな仕事やクライアントと出会って能力を発揮するかによって、成果は大きく変わります。それを面接だけで決めるのは無理な話ですね。

そもそも「優秀な人材」の定義は難しい

それでは人事のプロと言われている人は、実際に採用をどう考えているのでしょうか。新潟の米菓メーカー・三幸製菓で人事責任者を務めた杉浦二郎氏は、かつて「優秀な人材」を定義づけようとした経験があるそうです。

しかし、入社後に高い業績を挙げている社員を分析しても「適性や性格がバラバラで結局定義できなかった」のだとか。そこで「定着率」を重視した採用に切り替えたところ、性格診断の結果「外向性、開放性」が高すぎると、短期間で会社を辞めてしまうことが分かりました。

「リファラル(社員紹介)採用」は日本で定着するのか――「日本一短いES」「おせんべい採用」の開発者・杉浦二郎氏が考えるIcon outbound

https://corp-research.jp/articles/2345

リファラル(社員紹介)採用は、自社に合った有能な人材が低コストで採用できる方法として、大手企業や人気ベンチャーなど新卒採用に組み入れる企業が増えている。新たな採用手法として今後一層広がっていくとも言われているが、現場の「肌感覚」はどうなのだろうか。

世間一般で言われている「社会的望ましさ」にまどわされないユニークな手法です。性格診断をあわせて使っているところも、面接の主観だけでなく、手法を客観的なものにしようとする意思が感じられます。それでも採用段階でできることといえば、これが精一杯なのですね。

逆に定着率を重視せず、外向性や開放性を歓迎する会社だってありえます。採用は会社の業績を左右すると言われますが、実際に各社でどんな方法が採られているのか、興味深いところです。

この記事の執筆者

ネットのお悩み相談をウォッチするコラムニスト。


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