少し以前、ネットのQ&Aサイトに、こんな質問が載っていました。質問者さんは企業の経営者と管理職に向けて、こんな呼びかけをしています。
「東京では大雪が降り、4年ぶりの大雪警報が出ました。それでも私が勤める会社では、帰宅許可が出たのは15時ぐらいでした。
給与を支払ってるんだから従業員をなるべく長く働かせたいのは分かりますが、気象警報が出たら従業員の早期帰宅を即決できませんか?」
「15時退社」ならまだマシだったはず
この質問が投げかけられた背景を振り返ってみましょう。2018年1月22日、東京都内は朝から小雪がちらつく天気でした。
前日、交通機関の混乱を予想した国土交通省は、国民に対し「不要不急の外出は控えるように」と呼びかけていました。しかし休業にする会社まではほぼなかったようです。
ところがお昼過ぎになると風と雪が強くなり、気象庁は14時半になって東京23区と多摩地方に大雪警報を発令。これを受けてLINE株式会社などが「原則午後3時退社」を打ち出して社員を帰宅させています。
しかしそれは予測能力が高く、危機意識が高い会社の話。その他多くの会社では交通機関に問題が起き始めた16時になって、ようやく一斉退社を指示したため、鉄道の各駅では予想通りの大混雑が発生しました。
TVのニュースで紹介された「タクシーを待って3時間並んだ」という女性は、「明日も(職場に)絶対に遅れることができない」と言い残して車に乗り込んで行きました。
警報が出た14時半と同時が理想的だったのかもしれませんが、臨機応変の対応ができない古い企業と比べると、質問者さんの会社が「15時ぐらい」に帰宅許可を出したのは、だいぶマシな方だったのではないでしょうか。
「大雪警報ぐらいで早期退社は不要」なのか
しかし、質問者さんの「早期帰宅を即決できませんか?」という呼びかけに、回答者からは反発するコメントが出ています。ある回答者さんは「大雪警報ぐらいで、早期退社はしませんね」といい、こう批判しています。
「暴風警報とか交通機関が完全ストップするような事態があれば別ですが。学生さんと勘違いしてませんか?」
LINEが午後3時に退社を呼びかけた時点では、確かに交通機関には余裕があり、問題が起きるかどうかも分かりませんでした。でも、余裕があるうちに人を動かすのが、先を見通せる会社の判断というものではないでしょうか。
質問者さんも、このコメントに「交通機関がストップしてから帰すのでは遅いんですよ…。判断が遅すぎます」と反論。しかし回答者さんは、
「完全ストップすると予想されるとき、って意味ですよ。大雪警報が出たからって、交通機関がすべて止まるわけではない」
と主張。あくまでも「完全ストップしない程度の天候なら、会社が早期退社を促すことを期待するのは社会人としてありえない。学生じゃないんだから」というスタンスを譲りません。
ちきりんさんは「思考停止の会社」を批判
質問者さんは、それでも食いつきます。
「全ての交通機関が止まるわけではありませんが、実際に交通は大混乱しましたよね。テレビに何百人も映ってました。上がもっと早めに早期退社させてれば、こんな混乱に巻き込まれずに済んだのに、と思います」
どうも双方には見解の相違があり、この溝を埋めることは難しそうです。まあ、そういうこともあるでしょう。回答者さんは「じゃ~早退しなさいよ。それだけです」「後は返信しません」と書き残して去っていきました。
企業の大雪への対応について、社会派人気ブロガーの「ちきりん」さんはこの日のツイートでこう指摘しています。
「#思考停止の会社で起こってること 昼間、予報より早く雪が降り出してもなんも判断せず→警報がでてから慌てて帰宅を指示→通勤客がターミナル駅に押し寄せ大混乱+入場制限→混雑が収まるのをオフィスで待ったほうがいいと戻ったら警備員に「帰宅命令が出てるから入れません」と追い返される 今ココ」
「今の段階でも「明朝は交通機関の乱れが予想されるからいつもより早く家を出るように」と指示してる会社と「明日は午後以降、安全が確保できた人から出勤してください」と言ってる会社がある。当然前者の方が圧倒的に多い。」
「遅れず、休まず、働かず」は鉄の掟
インフラ業界で働く一部の人が、どうしても休めないのは理解できます。それに対する国民の感謝がもっとあってもいいくらいです。しかしその場合でも、会社は個人任せにするのではなく、宿泊場所を準備するなどの対応が欠かせません。
一方、残りの人たちが大雪を理由に、自宅作業に切り替えたり、休みを取ったりすることで、何かが大事に至るとは思えません。
実際、不意のインフルエンザで出勤停止になることだってあるでしょうし、未消化の有給休暇だって山ほど残っているはずです。
結局、「遅れず、休まず、働かず」という鉄の掟を守るためなら、どんな努力も惜しまないということでしょう。定時に出社できる可能性がわずかでもあるかぎり、前に進む姿勢を見せる。それが日本のサラリーマン道なのでしょうか。
ネットのお悩み相談をウォッチするコラムニスト。