ネットのQ&Aサイトに、こんな質問が載っていました。質問者さんは新卒入社1年目ですが、早くも転職を考えています。
理由は、勤務先では毎月100時間以上の残業があるから。そのうえ、残業代は30時間分まで、休日出勤も月に1日分までしか給与が支払われない「サービス残業」が強要されているのだそうです。
気になるのは「転職先への説明」
採用担当者は、入社時に甘いことばかり言って実態を明かさなかったのでしょうね。「ブラック企業を見抜けなかったのが悪い」と若者を責めるのは酷な話です。
質問者さんの疑問は、こういう場合にはエントリーシートの「志望動機」にどう書けばいいのかということ。どうやら、1年未満で辞めることを転職先に否定的に思われるのではないかと気にしているようです。
「企業にすぐ辞める奴だとなるべく思われたくないので、そういったうまい書き方を教えていただけないでしょうか?」
言うまでもなく、残業代の未払いなどの「悪質な違法行為」を平気でするブラック企業は、直ちに退職することが賢明です。回答者からも、早期転職を気にする必要はまったくないというアドバイスが寄せられています。
「今の仕事がまったく自分に合っていなかったと言えばいいだけです」
「志望する会社でやりたいことがあることを、できるだけ前向きに書くことです」
以前、東洋経済オンラインが、若手流出に悩む大企業の意を汲んだような「入社3年未満の『早期転職』はやっぱり危険だ」という記事を出していました。しかし、ネットには反発の声が上がっており、何が何でも「石の上にも3年」といった考え方は、もうあまり支持されていないようです。
「志望動機」には自分の選社基準を述べてよい
回答者のコメントだけでは、質問者さんが求める「志望動機のうまい書き方」は分からないので、具体的な書き方について考えてみましょう。
昨今の人手不足も相まって、志望動機は「会社にゴマをすり、自分を過大に見せる欄」ではなく、「自分の“選社基準”を率直に明かす欄」にシフトしつつあります。
採用担当者も、面接の段階で「学生は自社にどうしても入りたがっている」と勘違いするな、ということですね。本音を聞けば、お互いにミスマッチが減らせます。
その考え方に沿えば、質問者さんは、その会社の事業のどこに魅力があり、どういう仕事に関わりたいかを述べたうえで、次のように付け加えてもいいのではないでしょうか。
「仕事は意欲をもって一生懸命やるつもりです。しかし、働いた分の給与を支払わずにサービス残業をさせる会社や、従業員の健康に配慮せずに長時間労働をさせるような会社では、働きたくありません」
「そのため、新卒で入社した会社を辞めることになりました。企業サイトによると、御社は働いた分の給与をしっかり支払い、社員のワークライフバランスにも配慮されているようですので、ぜひこちらで働かせていただきたいです」
昭和の時代であれば「甘い」「生意気」と言われたかもしれませんが、平成の世では当たり前のこと。仮に自分から率先してハードワークをすることがあったとしても、「生活の安定」と引き換えに会社が従業員を平気で搾取するのとは話が違います。
サビ残の証拠があれば「会社都合退職」になる
最も避けるべきなのは、転職を焦り、誤って同じようなブラック企業に入ってしまうこと。もしも入ってしまったら、「この人は嫌なことから逃げる人だ」と変なレッテルを貼られることを恐れて、会社を辞めることができなくなってしまいます。
したがって転職先の面接では、サービス残業の有無の確認は欠かせません。「そんなことを尋ねるヤツは採りたくない!」とのたまうような会社は、こちらから願い下げです。
また、転職先が決まってから現職を辞めるのが鉄則ですが、「このままでは体を壊す」と思った場合には、先に退職することもあるでしょう。その際にはハローワークに離職票を提出し、「残業時間が月45時間以上あり、サービス残業もありました」と申告しましょう。
都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)の所在地について紹介しています。
回答次第では、自己都合退職が「会社都合」扱いとなり、失業手当がすぐに支給されることもあります。なお、サービス残業などの証拠がない場合には、会社に事実確認の連絡が行くことになりますので、労働時間が分かるメモを取ったり、メールの履歴を残したりして、ハローワークに持参することをおすすめします。
ネットのお悩み相談をウォッチするコラムニスト。