中途採用に「SPI試験」は必要?「仕事に無関係な知識」で採否を決めるのか

中途採用に「SPI試験」は必要?「仕事に無関係な知識」で採否を決めるのか

経験と実績を活かして新しい職場で働いてみたいと臨んだ人が、職務とは関係のない学力試験を受けさせられたら……。バカにされたと感じてもおかしくないのではないでしょうか。「SPIはとんでもないのを排除するだけで、半数以上の人は通過する」と言う人がいる一方で、9割はできないと合格しないという口コミもあります。


ネットのQ&Aサイトに、こんな質問が載っていました。転職活動中の質問者さんは、ある会社の採用試験を受けることになりました。

しかしSPIや筆記試験がとても苦手で、うまくいった試しがありません。募集要項に「筆記試験あり」と書かれていると、「あーだめだな」と思ってしまうほどです。

回答者は「問題集の繰り返し」を勧めるけれど

就職活動をしていた学生時代は、参考書を一冊やったり、先生に指導を仰いだりしていたそうです。しかし暗記が苦手で、数学の公式をひとつ覚えたら、ひとつ忘れるような状態だと明かしています。

この質問には、回答者から励ましの声が寄せられています。

「SPIであれば、問題集の繰り返しでなんとかなると思います。私もボロボロだったのですが、問題集の繰り返しで解けるようになっていきました」

「もう連立方程式分からないし、英語のbとdを書き間違えてドン引きされたフリーターの俺でも、SPIは1ヶ月も繰り返しやれば出来ました

SPIとは「総合適性検査」のことで、「性格検査」と「基礎能力検査」で構成されています。基礎能力検査には国語力を問う「言語分野」と、数学力を問う「非言語分野」、それに加えて「英語」の問題が出る場合もあります。

しかし、全くのポテンシャル採用である新卒ならともかく、職務経験のある人を対象とした中途採用で、なぜSPIのような試験が必要なのでしょうか。仕事で連立方程式を使う職務ならともかく、そうでない人たちに答えさせて何になるのか疑問です。

試験を嫌う人の「ふるい落とし」が目的?

他のQ&Aを見ると、二度の面接を終えた後、最終試験でSPIを求められた人もいました。急に決まった1週間後の試験のために、参考書と問題集を必死でこなしたそうです。

しかし、なぜ会社は職務内容と関係なさそうな問題で応募者を試そうとし、受験者は付け焼き刃で慌てて対策をしようとするのか腑に落ちません。採用担当経験のある回答者さんは、会社の意図をこう説明します。

「こういうテストはふるい落としなので、結局は面接でしょうが、面接にたどり着くための挑戦すら面倒なら、まあ自分から戦線離脱と私なら見ます」

「そういう筆記試験とか面接とかでメンタルやられて、ちゃんとやらない人をふるいにかけてるんですよ」と、同じ意見を述べる回答者さんもいました。

もしこれが正しいとすれば、まさに質問者さんのような「あーだめだな」と思ってしまうような人を排除するための一種のハードルということになります。

いまさらバカにされたような気分にならないか

別の回答者さんは、適性検査について「対策しようがないので、率直に回答するだけ。似た設問に不整合な回答がないよう、そこそこ気をつけたらよい」と言います。

確かにそうするしかないので、この対策に時間をかけているのはおかしいということになるでしょう。問題形式に慣れるために問題集を斜め読みするのはいいとしても、別の人格を作って回答したりすれば、面接とのギャップが大きくなって不審がられてしまい、採用から遠のくだけです。

適性検査は、職務や組織文化にも関わることなので、実施の必要性は理解できます。

しかし、残る言語・非言語分野の試験で一種の「学力」を見られることは、前職でそれなりの実績を上げてきた人であれば、職務に関係のない知識を問われても戸惑うでしょう。

なぜこれまで前職での実績を認めようとしないのか。いまさら学生のような扱いでバカにされたような気分にならないでしょうか?

なんだか日本の大手メーカーが作る、利用者の目的を無視したどうでもいいハイスペックな機能がゴテゴテとついていて使いにくい家電を思い出してしまいます。

職務に関係するアウトプットの方が有効では

ある回答者さんは「SPIは、とんでもないのを排除するだけで、半数以上の人は通過します」と言っています。一定未満を排除するだけなら、半数どころか、ほとんどの人が通過する場合もあるのでしょうか。

その程度の使い方であれば「成績順で採用や給与が決まるから一生懸命対策すべき」という噂も疑わしいことになります。だいたい、職務と関係ない要素で給与が変わるなんておかしなことです。

企業口コミサイト「キャリコネ」には、転職面接でSPIを課せられた人の書き込みが残されています。

選考プロセスは、書類選考→一次選考(現場面接:部長、次長、人事)→最終選考(役員)。最終選考時にSPIと英語(センター試験のような感じ)と適正検査あり。ここで基準点を満たす必要があります。

選考は説明会とSPI、1次面接がワンセットだったが、1次面接で会ったGMに気に入られその日のうちにエリア部長と2次面接を行った。SPIは9割解けないと厳しいようだが、新卒の問題集で対策しておけばOK。

規模の小さい管理会社に勤務していたので、大手に勤務し大型のオフィスビル等を管理したいとの思いから志望。SPIの試験が思ったより難しくもっと勉強しておけば良かったなと思いました。

書類選考があり、その後、会社から信頼されているエージェントが志望理由等の意思確認のため、予備審査として電話面談がありました。その後SPIを受けに行きました。合格後、一次面接です。

採用後の職務がある程度明確になっていて、応募者がそれに合ったスキルや人物像であるかが大事なはず。SPIのような汎用試験よりも、実際に作業をさせるとかアウトプットを提出させたりする方が有効だし、採用ハードルを無駄な領域で引き上げ過ぎているような気もしますが……。

この記事の執筆者

ネットのお悩み相談をウォッチするコラムニスト。


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