ネットのQ&Aサイトに、こんな質問が載っていました。質問者さんは、未経験分野の部署に管理職として赴任した男性です。新しい職場の部下たちは自分よりも年上で、在職年数が長い人が大半とのこと。
就任して数週間、仕事を教えてもらいながら進めていますが、一部の部下たちから「えっ、これ分かんないですか?」「まだ終わってないんですか?」などと馬鹿にしたような言い方をされ、周囲の人たちもクスクス笑っているのだそうです。
明るく笑い飛ばすことも難しく
こんなことが何度も続く中で、仕事に疲れてしまったのだとか。「分からなくてごめんね」と明るく笑い飛ばせればよいのですが、性格的にそれができない。こんな管理職ではダメだと思う一方、管理職にならなければよかったと後悔しています。
「今後どのように過ごしていけばいいのかと悩んでいます」
日本企業は現場が強く、叩き上げのベテラン社員が管理職になる場合が多いものです。「管理職は誰よりも現場の仕事を知っていて、自分でも手を動かせなければならない」という信仰のようなものすらあります。
しかし本来、管理職という存在は「マネジメント」という言葉があるように、部下に仕事をやらせる役目です。自分がやらない、できない仕事であっても、他人にやらせなくてはならないのです。
組織の目標や課題に合わせて、ときにはこれまでの現場のやり方を変えさせたり、やめさせたりすることも必要で、「現場のリーダー」とは頭の使い方が異なるものです。
「名選手、名監督にあらず」という言葉もあるほど。新任管理職は、まずは組織の人と仕事の現状をヒアリングし、広い視野で問題点や課題を把握することが先決です。
回答者は叱咤「下らないプライドは捨てましょう」
そんな役目を担うことになったのに、弱気になっている質問者さんを、ある回答者さんはこう叱咤激励しています。
「アホ。毅然とした態度で『未経験の分野で知らない事があるのは当然で、だから質問しています』ぐらいのことを言え」
管理職とは孤独な立場であり「部下をねぎらう事はあっても、舐められては仕事にならない」といいます。そもそも管理職に向いていると評価されたのだから、レベルの低いことで悩んでいることの「アホさ加減」に気づけと励ましています。
ちょっと言葉は乱暴で、厳しすぎるような気もしますが、ここで慰めても何の解決にもならないのは確かです。別の回答者さんも、そんな弱気は組織の士気にかかわると戒めます。
「教えてもらっているのだから、下らないプライドは捨てましょう。歯を食いしばってでも頑張って"管理職"として"その先"を見せなきゃいけない義務があなたにはあるんじゃないでしょうか?」
マネジメント育成に定評があるのが、リクルートグループです。企業口コミサイト「キャリコネ」には、リクルートホールディングスで働いていた20代女性社員が「頑張れば入社7年ぐらいで部長クラスになれると思う」と書いています。年齢にすれば30歳前後。マネジメントに必要なのは、経験や年齢だけではないのですね。
若く昇進がしやすい会社。年功序列ではなく、いかに成果を上げたかで、昇進が決まる。20代で役職につけるのが大半。そういった意味では、若い段階でマネジメント能力を身に付けることができる。
未経験で「マネージャー候補」に転職できた人も
キャリコネ「転職ガイド」に、参考になりそうなエピソードがありました。プロジェクトマネージャー(PM)の経験がなかった31歳の男性が、年収アップを狙ってこれまでより高いポジションへの転職を果たしたのだそうです。
この男性は、予想どおり「PMの経験がないなら採用は難しい」という理由で不採用になることが多かったため、「PM候補」や「プロジェクトリーダー」の求人に切り替えました。
そして、これまで携わった業務の中から「後輩の指導や業務の割り振り」「顧客との打ち合わせへの同席」など、PMの仕事に関連しそうな経験をすべて洗い出して職務経歴書に記載しました。プロジェクト管理の本を読み込んだり、PM経験者からアドバイスともらったりもしたそうです。
このような工夫によって、この男性は未経験分野への転職による年収アップを手に入れました。質問者さんの参考にもなるでしょう。
システム開発におけるプロマネと同様、プロジェクトの目的や目標、成果を定義して、管理職や部下たちの役割分担を行い、スケジュール管理をして進める点は、どの組織の管理職にも共通しています。
謙虚かつ意欲的にヒアリングし、悩みに耳を傾ければ、その組織にいままでいなかったタイプの管理職になれるかもしれません。その組織の管理職の役割は何か、ということを自問しながら、頑張ってもらいたいものです。
ネットのお悩み相談をウォッチするコラムニスト。