元祖「過労死」を生んだ会社の調査報告書が話題に 「コンプラより生産優先」「パワハラを指導と思い込んでいる」

元祖「過労死」を生んだ会社の調査報告書が話題に 「コンプラより生産優先」「パワハラを指導と思い込んでいる」

不正行為を何度起こしても、また別の形で起こしてしまう――。そんな会社は「組織風土」の問題を疑った方がいいかもしれません。米国において「karoushi(カローシ)」という言葉が紹介される発端となった労働事件を1988年に引き起こしていたツバキ・ナカシマは、その後も繰り返し不正を繰り返していたことが分かりました。


奈良県に本社を置くベアリング会社、ツバキ・ナカシマ(東証一部)が発表した「外部調査委員会報告書」の内容が、SNSで密かな話題となっている。

ことの発端は、2016年11月に発生した葛城工場の火災。この影響で生産効率が低下し、欠品のおそれが生じた現場は、中国メーカーから輸入したベアリング用の鋼球2億3000個あまりを「同社工場製」と偽り、取引先に出荷する不正行為を行った。

「これはおかしい」と言えない組織風土が蔓延

社員の指摘で問題を把握した会社は、2018年2月に不正があったことを発表。3月に弁護士を委員長とした「外部調査委員会」を設置し、5月に問題の調査と要因分析、再発防止に関する「報告書」〔PDF〕を開示した。

96ページからなる報告書で異色なのは、「調査を終えての結語」と題された末尾の4ページだ。実は同社は、米国において「karoushi(カローシ)」という言葉が紹介される発端となった労働事件を1988年に引き起こしていたという(当時の社名は椿本精工)。

そんな過去があるにもかかわらず、社内では依然として不適切な行為が横行しており、従業員が「これはおかしい」と思っても声を上げることができない組織風土が蔓延している――。報告書はこう指摘している。

「バレなければOK」「部下に責任なすりつけ」

また報告書は、不正納品を契機に実施した社内アンケートの結果を一部掲載しているが、これを読むと「東証一部上場企業にもかかわらず、日本にまだこんなブラック職場があるのか」と暗澹たる気持ちになる。

・サービス残業が当たり前のようにおこなわれている。

・労働時間管理の意識が低く、生産管理課や品質管理課では、故意に残業時間を過少申告する人がいた。

・社内にコンプライアンス教育ができるような人材がいない。旧態依然でいいかげんな考え方をひきずっている社員が多い気がする。

・バレなければOKみたいな感じなので。上の人たちに責任感がなく、上の人はいつも下に責任をなすりつけている。

なお同社は近年、自動車用ベアリング鋼球のカルテル事件も起こしており、2014年9月に公正取引委員会より独禁法違反に基づく排除措置命令および13億円もの課徴金納付命令を受けている。

しかし当時の社長は「運が悪かった。組んだ相手が悪かった」として、組織体制の立て直しに前向きにならなかったという(同報告書より)。火災の有無とは別に、不正が行われる風土は長年にわたって醸成されてきたしか思えない。

「アホ、ボケ、死ね」と部下を罵倒

社内アンケートには、上司による部下に対する暴言が日常的にあったという告発もあった。日本企業の製造現場はどこも人手不足といわれるが、職場がこんな状況では、若者が定着する可能性は限りなく低いだろう。

・生産が最優先のため、上司によるパワハラもモラハラも日常的に行われている。そのため従業員の間でも、コンプライアンス、法令、安全第一より生産を優先するため不正等を行うのは普通のことで、それが日常化している。

・役員をはじめ、工場の一定役職員以上全般にいえるが、部下に対する暴言といったパワハラを指導と思い込んでいる節がある(日常的な事案のため、特定できない)。

・立場の優位な人間から下の人間に対し、必要以上に怒鳴ったり、業務をさせたりしている。精神疾患に陥った社員がいても、役員は「あいつは弱い人間だから」という一言で済まされてしまう。

・管理層の部下への威圧的な言動、また部下を罵倒(アホ、ボケ、死ねなど)が目立ち、ボトムアップが難しい風潮がある。

・社内に教育システムがなく、部下は叱って育てると思い込んでいる人もおり、パワハラの様にみんなの前で部下を叱ったりすることも多々見られた。

・各工場では特に「過去からこうしてきた」「ウチはこういうやり方だから」と自分達が行っている行為がコンプライアンスに反しているかどうかも確認せずに部下へ押し付ける習慣が過去から根強くある。

かなりストレスフルな職場環境であったことが伺えるが、報告書は(これ)以上に生々しい事案が寄せられたが、回答者が特定されてしまうことを避けるため、ここでは引用しないこととする」とのことだ。

会社は「管理職の退任、降職」を断行

「上司が、仲の良い人だけでコミュニケーションがある」という声も見られるが、企業口コミサイト「キャリコネ」にも2009年時点で同様の書き込みがあった。

経営幹部のお気に入りといわれる一部の者だけを優遇し、本人の実力とは関係なしに役職等につけて・・・

なお同社は2018年6月4日、この報告書で「過去からの問題点」が指摘されているのを受けて、CEO直轄の「再発防止委員会」を設置するなどの再発防止措置を図るとともに、「関わりと責任を特に問うべき役員および管理職」の退任、降職や減給処分を行ったと発表した。

ネットには「同じベアリング系ですけどほぼ同じですわ」という書き込みも見られる。作れば売れる高度成長期には現場の力が強くなったが、低成長でコンプライアンスが必須の時代になっても意識が変わらない会社は少なくない。

単に同社を批判するだけでなく、他山の石として自社の問題を改めるきっかけにすべき職場は多いのではないだろうか。アンケート部分以外の本論部分にも、外部調査委員からの鋭い指摘が光っている。製造現場を持つ会社の経営幹部は、いちど目を通すことをお勧めしたい。

この記事の執筆者