トランス・コスモス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トランス・コスモス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トランス・コスモスは東京証券取引所プライム市場に上場しており、国内外で付加価値の高いBPOサービスやCXサービスをワンストップで提供しています。直近の業績トレンドとしては、CXサービスおよびBPOサービスの収益性が改善したことなどにより、売上高および各段階利益ともに増収増益を達成しています。


※本記事は、トランス・コスモス株式会社の有価証券報告書(第41期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トランス・コスモスってどんな会社?


付加価値の高いBPO・CXサービスをはじめとする総合的な情報処理アウトソーシングサービスを展開しています。

(1) 会社概要


1966年に前身となるデータエントリー専門会社が設立され、1985年に総合的かつ複合的サービスの提供を目的としてトランス・コスモスが設立されました。その後、1989年に店頭売買銘柄として登録され、1992年に東京証券取引所市場第二部へ上場、1997年には同市場第一部銘柄に指定されました。

同社グループは連結で43,571名、単体で18,141名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者である奥田耕己氏が設立したトランスコスモス財団で、第2位は代表取締役会長の奥田昌孝氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
公益財団法人トランスコスモス財団 18.02%
奥田昌孝 17.09%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性2名の計18名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長は奥田昌孝氏、代表取締役共同社長は牟田正明氏および神谷健志氏が務めています。社外取締役は9名選任されており、取締役全体の半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
奥田昌孝 代表取締役会長 1988年同社入社。1996年取締役、2002年代表取締役副社長兼COOを経て、2003年代表取締役社長兼COOに就任。2020年事業開発総括責任者を兼任し、2023年4月より現職。
牟田正明 代表取締役共同社長マーケティング本部担当 1989年リクルート入社。2003年同社入社し取締役に就任。2018年取締役専務執行役員DEC統括共同統括責任者兼営業統括共同統括責任者などを経て、2022年6月より現職。
神谷健志 代表取締役共同社長事業開発総括共同総括責任者 1998年日本電信電話入社。2005年ベイン・アンド・カンパニーを経て、2015年同社入社。2019年取締役専務執行役員経営戦略本部長などを歴任し、2023年11月より現職。
髙野雅年 代表取締役副社長執行役員BPOサービス統括責任者兼品質管理本部担当兼CX事業統括付DCC連携担当 1986年同社入社。2013年上席常務取締役BPOサービス総括責任者、2019年取締役専務執行役員BPOサービス統括責任者等を経て、2026年4月より現職。
松原健志 取締役副社長執行役員CX事業統括責任者 1987年リクルート入社。2002年同社入社。2016年上席常務執行役員DEC統括責任者、2019年取締役専務執行役員DEC統括共同統括責任者等を経て、2023年4月より現職。
貝塚洋 取締役副社長執行役員グループ営業統括責任者兼グループ営業統括営業統括責任者 1988年同社入社。1996年取締役マーケティング本部副本部長。2016年上席常務執行役員営業統括副責任者、2021年取締役専務執行役員等を経て、2024年4月より現職。
山下栄二郎 取締役専務執行役員グローバル事業統括共同統括責任者 1993年リクルート入社。2000年同社入社。2018年上海特思尓大宇宙商務咨詢有限公司董事長、2021年専務執行役員等を経て、2024年7月より現職。
門松美枝 取締役常務執行役員BPOサービス統括UES総括責任者兼BPOサービス統括副責任者 1978年丸栄計算センター入社。1996年同社取締役人事本部副本部長。2021年常務執行役員BPOサービス統括ビルディングインフラサービス本部長等を経て、2024年6月より現職。
船津康次 取締役相談役 1981年リクルート入社。1998年同社入社。2002年代表取締役社長兼CEO、2019年代表取締役会長兼CEO兼コンプライアンス推進統括部担当等を経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、夏野剛(KADOKAWA取締役代表執行役社長CEO)、吉田望(playful代表取締役)、宇陀栄次(ユニファイド・サービス代表取締役社長)、鳩山玲人(鳩山総合研究所代表取締役)、玉塚元一(ロッテホールディングス代表取締役社長CEO)、鈴木則義(SUZUKI NORIYOSHI OFFICE代表取締役社長)、松谷美和(虎ノ門一丁目法律事務所パートナー)、榑谷典洋(ソルフェ代表取締役)、山本正已(九州大学運営方針会議委員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「単体サービス」「国内関係会社」「海外関係会社」の事業を展開しています。

(1) 単体サービス


国内外で付加価値の高いBPOサービスやCX(カスタマーエクスペリエンス)サービスなどの総合的な情報処理アウトソーシングサービスを提供しており、幅広い業界の企業を顧客としています。

収益源は、顧客企業からの業務受託に伴うサービス利用料などです。運営はトランス・コスモスが主に行い、AIを活用したデジタルコンタクトセンターの運用やバックオフィス業務の効率化支援などを担っています。

(2) 国内関係会社


国内のグループ会社が、単体サービスとのシナジー効果を追求し、専門的かつ先進的な製品・サービスや情報通信アウトソーシング事業を展開しています。

収益源は、BPO合弁会社における受託範囲の拡大や、新規顧客へのサービス提供に伴う収益などです。運営はJストリームや応用技術などの国内子会社が担い、動画配信プラットフォームの提供やソフトウェア開発などを行っています。

(3) 海外関係会社


中華圏、韓国、ASEANを中心とした海外拠点で、コンタクトセンター、デジタルマーケティング、ECワンストップサービスなどの各種アウトソーシング事業を展開しています。

収益源は、グローバルに事業展開する企業や現地の顧客からの業務受託料です。運営は大宇宙信息創造(中国)有限公司やtranscosmos Korea Inc.などの海外子会社が行い、各地域の市場ニーズに合わせたローカライズ支援などを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、堅調に推移しています。経常利益は2022年3月期をピークに一時的に減少したものの、直近では回復基調にあります。一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は減少傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3541億円 3738億円 3622億円 3758億円 3939億円
経常利益 289億円 231億円 138億円 157億円 190億円
利益率(%) 8.2% 6.2% 3.8% 4.2% 4.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 92億円 128億円 95億円 70億円 62億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で堅調に増加しており、それに伴い売上総利益も拡大しています。また、原価低減策やサービスの高付加価値化が寄与し、売上総利益率および営業利益率ともに改善傾向にあり、本業の収益性が向上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3758億円 3939億円
売上総利益 722億円 766億円
売上総利益率(%) 19.2% 19.5%
営業利益 145億円 166億円
営業利益率(%) 3.9% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与賞与が253億円(構成比42.1%)、地代家賃が22億円(同3.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントにおいて前期比で売上高が増加しています。特に単体サービスでは、CXプラットフォームの導入拡大やAIの活用が進み、事業成長を牽引しています。国内および海外関係会社も順調に事業を拡大しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
単体サービス 2430億円 2543億円
国内関係会社 362億円 400億円
海外関係会社 967億円 996億円
調整額 -137億円 -142億円
連結(合計) 3758億円 3939億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.3%で、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 173億円 208億円
投資CF -37億円 -90億円
財務CF -60億円 -69億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様の満足の大きさが我々の存在価値の大きさであり、ひとりひとりの成長がその大きさと未来を創る。」という経営の基本理念を事業運営の根幹に据え、「共に挑み、実現する。かなえる力を、もっと世界に。」というパーパスを掲げています。

(2) 企業文化


優れた人と技術を「仕組み」で融合することを事業の原点としています。「people & technology」というロゴのもと、専門性の高いプロフェッショナルな「人」と、課題解決に最適なグローバルの最先端「技術」を結び付け、高品質なサービスを提供していく文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「2035年度時価総額1兆円」を長期目標に掲げ、2026年度から2028年度までの新たな中期事業計画を推進しています。最終年度である2028年度には以下の数値目標の達成を目指しています。

・売上高4,700億円
・営業利益225億円

(4) 成長戦略と重点施策


中期事業計画において「ビジネスモデルを進化、総合力を利益に換える」、そして「顧客基盤・サービスポートフォリオを拡充、次の成長へ」をテーマに掲げています。これまでのプラットフォーム化やグローバル展開を、より高い収益性と成長性につなげるための構造転換を進める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「従業員は無限の可能性を秘めた最大の資産」であると位置付け、人的資本を企業価値向上の源泉としています。DX人材を中心とした専門性強化、次世代リーダーやマネジメント人材の育成、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)および健康経営の推進を重点施策として取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.6歳 9.7年 4,993,509円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 27.2%
男性育児休業取得率 75.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 67.3%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 79.8%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 76.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(87.4%)、正社員一人当たりの月平均残業時間(16.7h)、障がい者雇用率(2.72%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新の遅れとカントリーリスク

同社は最新の技術を常に開発・導入する必要がありますが、技術革新に適切な対応ができなかった場合や、市場ニーズに合わなくなった場合、現状のビジネスが縮小する可能性があります。また、グローバル展開における政治・経済・社会情勢の変動や法規制の変更なども業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) アウトソーシング需要の変動リスク

労働人口の減少やAI技術の進展を背景にアウトソーシングサービスの需要は拡大を見込んでいますが、景気の変動による受託業務量の減少や、顧客企業の業績悪化、あるいはインソーシングへの回帰が進んだ場合には、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 大手顧客企業との契約終了リスク

同社の顧客は大手上場企業が多く、受託業務の継続性が高いのが特徴です。しかし、顧客企業の事情による他社への業務移行や、長期間の取引関係が構築できずに契約が終了した場合には、同社グループの事業運営および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) サイバー攻撃と情報セキュリティリスク

個人情報や機密情報を大量に取り扱うため、厳格な情報セキュリティ管理体制を敷いています。しかし、想定を超えるサイバー攻撃やウイルス感染によりシステム障害が発生したり、重要データが破壊・改ざん・漏洩したりした場合、多額の損害賠償や行政処分、信用の失墜を招くリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。