【財務分析】マネーフォワードの赤字が過去最大! それでも株価が上がりそうな理由

【財務分析】マネーフォワードの赤字が過去最大! それでも株価が上がりそうな理由

マネーフォワードの2019年11月期決算では最終赤字が25億円に拡大。経営悪化かと思いきや期首時点で予想した範囲であり、株価も右肩上がりを続けているようだ。なぜこのような赤字経営が問題にならないのか。同社の財務状況とビジネスモデルを検証する。


株価の動き:ピーク時に迫る勢いで上昇中

マネーフォワードは2017年9月に東証マザーズに上場。株価は2018年3月に6050円をつけたものの、12月には上場来最安値の2946円まで下落。その後、上下はあったものの2019年8月からは一貫して上昇し、ピーク時に迫る勢いです。

損益計算書(PL):売上高も赤字も過去最高

マネーフォワードの2019年11月期決算は、売上高が72億円で前期比55.8%増。その一方で、営業利益は24億円の赤字となり、赤字額は前期の3倍超となっています。

売上総利益は前期比55.4%増の43億円、粗利率は同0.1pt減の60.4%を確保しています。

しかし、販売費及び一般管理費が前期比89.2%増の68億円と大きく増加し、営業利益率は前期比16.9pt減のマイナス34.2%に悪化しています。

親会社株主に帰属する当期純利益も26億円の赤字。赤字額は前期の約3.2倍です。

これらの理由について、決算短信では「将来を見据え、商品開発力、販売力ならびに顧客サポートの強化を筆頭とした組織体制の更なる強化のための人材採用や、プロモーション実施による広告宣伝等の先行投資を実行」したこと、および「仮想通貨関連事業への参入延期による特別損失」6100万円を計上したことによるとしています。

赤字決算ではありますが、いずれの数値も期首時点の計画である「売上高71.11~75.81億円」「営業赤字26~21億円」「親会社株主に帰属する当期純赤字27.90億円~22.90億円」の範囲内です。

セグメント分析:Businessドメインが好調

マネーフォワードは「プラットフォームサービス事業」の単一セグメントですが、決算説明資料は次の4つのドメインで事業を説明しています。

  • Businessドメイン:士業/法人/個人事業主を対象に、バックオフィス業務の効率化・生産性向上の価値提供
  • Homeドメイン:個人を対象に、お金の見える化、金融リテラシー向上、資産形成の価値提供
  • Xドメイン:金融機関を対象に、個人/法人顧客のお金の見える化の価値提供
  • Financeドメイン:法人を対象に、キャッシュフロー最適化、財務戦略/経営支援の価値提供

マネーフォワードが提供するサービスは、いずれもクラウドで提供されるSaaS(Software as a Service。サービスとしてのソフトウェア)。

料金をサブスクリプション(継続従量課金)型で得るため、利用者が増えれば増えるほど収益性が高まる。目先の利益を追うよりも、赤字を続けても利用者数を増やすことが重要になります。

出典:2019年11月期 決算説明資料

2019年11月期の売上高構成比は、Businessドメインが58.2%と最大で、次いでHomeドメインの23.3%。この2つで売上高全体の81.5%を占めています。

Businessドメインでは、新サービス『マネーフォワード クラウド勤怠』のリリースや「10億円軍資金キャンペーン」、新プランの導入。Homeドメインでは、『マネーフォワード ME』の利用者数900万人突破、新サービスの複数ローンチなどの展開があったようです。

Businessドメインの売上高は前期比55.4%と大きく成長しており、業績を牽引しています。通期予想(下限)の達成率は102.2%です。

出典:2019年11月期 決算説明資料

貸借対照表(BS):財務安全性に問題なし

2019年11月期末の資産合計は163億円で、前期比88.4%増と大幅に増えています。流動資産は109億円で同74.9%増、固定資産は54億円で同122.5%増でした。

流動負債は前期比89.4%増の54億円で、固定負債は同241.1%増の83億円でした。純資産合計は80億円で同137.4%増、このうち株主資本等合計は78億円で同135.9%増でした。有利子負債残高は54億円で、前期比55.6%増です。

短期の支払能力を測る流動比率は201.4%で、前期より16.7pt悪化していますが、一般に120%以上であれば安全とされていますので問題ありません。

長期の支払能力を測る固定比率は前期比4.2pt減の70.2%。固定比率は低いほどよく、100%を超えると借入によって固定資産を購入していることになります。2017年11月期の30.0%から悪化しているように見えますが、安全性には問題ありません。

長期的視点での財務安全性を測る株主資本比率は前期比9.6pt増の47.6%。業種によっても異なりますが一般に30%で安全とされ、優良企業とされる50%以上の水準に近づいているといえます。

キャッシュフロー計算書(CF):先行投資で営業CFがマイナス

2019年11月期の営業CFはマイナス36億円。マイナス額は前期の約4.5倍となっています。決算短信によると、主な減少要因は「先行投資を積極的に実施したことによる税金等調整前当期純損失の計上26億3900万円、買取債権の増加17億600万円」などです。

投資CFはマイナス28億円で、こちらも2倍以上に増えています。主な減少要因は「連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出18億3600万円、投資有価証券の取得による支出7億7800万円、有形固定資産の取得による支出1億1700万円」などです。

なお、マネーフォワードは2019年11月29日に、SaaS向けリード獲得メディア「BOXIL」の開発・運営を行うスマートキャンプを株式取得により企業結合しています。

自由に使える手元の現金であるフリーCF(=営業CF+投資CF)はマイナス64億円で、前期よりマイナス額が3倍以上に増えました。借入金の返済や預金の増加などに回す余裕はない状態ですが、資金をしっかり投資に使っているので問題ないでしょう。

財務CFはプラス86億円で、前期の約6.6倍。主な増加要因は「株式の発行による収入67億9600万円、短期借入金の増加14億4500万円、長期借入れによる収入12億円」などです。

売上を通じてCFを稼ぐ効率を示す営業CFマージンはマイナス50.4%で前期比で33.1pt悪化。営業CFがマイナスであったことが影響しています。

投資分析:当期純損失の拡大で指標悪化

2019年11月期の親会社株主に帰属する当期純利益は26億円の赤字で、マイナス額は前期の3倍以上に増えています。これに伴い、ROE(自己資本利益率)はマイナス46.6%で前期比24.2pt減。ROA(総資産利益率)はマイナス20.6%で同10.4pt減っています。

EPS(1株当たり利益)もマイナス117.9円で、マイナス額は前期の約2.8倍に。BPS(1株当たり純資産)は355円で、純資産の増加に伴い前期比で112.6%増えています。

まとめ:赤字も計画の範囲内で株価は上昇?

マネーフォワードの2019年11月期は、親会社株主に帰属する当期純赤字が25億7200万円と過去最大となり、経営状態がよくないように見えるかもしれません。

しかし売上高は急増しており、各ドメインで大きく伸びています。赤字が出ているのは「仮想通貨関連事業」の特別損失があったものの、「人材採用」や「広告宣伝」に先行投資をしたため。事業自体は成長しており、赤字額も計画の範囲内です。

マネーフォワードが提供するサービスはサブスクリプション(継続従量課金)型SaaSであり、利用者が増えれば増えるほど収益性が高まるため、目先の利益確保よりも中長期的にユーザーを増やすことが重要となります。

財務安全性にも問題はなく、営業CFのマイナスも先行投資を積極的に行ったために当期純利益がマイナスになったなどの理由によるものであり、戦略の一貫性が感じられます。

これを受けて株価は右肩上がりを続けており、今後もしばらくは上昇を続けて上場来高値を更新する可能性も高まっているといえるのではないでしょうか。

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