【財務分析】粗利率が80%を超えるキーエンス 高付加価値ビジネスの原動力は?

【財務分析】粗利率が80%を超えるキーエンス 高付加価値ビジネスの原動力は?

2019年3月期決算を発表したキーエンス。粗利率82.3%、営業利益率54.1%と驚異の業績が続いています。平均年間給与2000万円を超える高給は、なぜ実現できるのか? 財務諸表と有価証券報告書の分析から、その謎に迫ります。


財務諸表分析

キーエンスは2019年4月24日、2019年3月期決算を発表しました。以下は決算短信の内容に基づく分析となります。

なおキーエンスは、税制改正による法人減税のメリットを活かすために、2015年度と2016年度は3か月と6か月の変則決算を採用しており、今回の分析はそれらを合算したデータを基にしています。

損益計算書(PL):驚異的な付加価値の高さ

売上高は前期比11.4%の5871億円、営業利益は同8.5%の3179億円でした。営業利益率は54.1%で、前期比で1.5ポイント下がりましたが、驚異の高さを維持しています。

売上原価率は10%台(17.7%)、粗利率は8割(82.3%)、販管費は20%台(28.2%)を維持。付加価値の高いビジネスが実現できているようです。

貸借対照表(BS):安定性はトップクラス

株主資本、流動資産、総資産ともに安定的に増加しています。株主資本比率94.4%は、おそらく全上場企業トップクラスです。

「株主資本比率が高い」ということは、返さなくていいお金の比率が高いということ。業種平均としては58~60%程度なので、異常な高さです。「無借金経営」に対して賛否あるかもしれませんが、これはこの会社のポリシーと言っていいでしょう。

キャッシュフロー計算書(CF):現金を稼ぐ力が強い

営業キャッシュフローが安定的に増えています。売上を通じて現金を獲得する効率を測る営業キャッシュフローマージンも、前期比2.8ポイント下がったものの35.7%と高い水準を維持しており、上場企業でトップクラスです。

2017年3月期は投資キャッシュフローがプラスでしたが、翌期には2800億円ものマイナス。2019年3月期も2000億円を超えるマイナスで、積極投資を続けています。

資本効率分析:ROE・ROAは安定

当期純利益は右肩上がり。2019年3月期の当期純利益は2261億円で、上場企業でも上位です。

ROE(自己資本利益率)は15.2%で、ROA(純資産利益率)は14.3%。いずれも高い率を維持していますが、飛び抜けた数字にはなっていません。これは自己資本、純資産が充実していることによるもので、経営上の不安はなく、経営ポリシーによるものと考えられます。

詳細分析

Q1.なぜ粗利率が80%を上回っているのか?

キーエンスの売上原価率は2019年3月期で17.7%。同売上高総利益率(粗利率)は82.3%と非常に高くなっています。キーエンスと同じようにFA分野で業績をあげている三菱電機と比較すると、ビジネスモデルの違いはあるものの、その差は歴然としています。

(1) 三菱電機と比較してみる

三菱電機の売上高はキーエンスの7.7倍の規模ですが、親会社株主に帰属する当期純利益はほぼ同額です。最も差が大きいのは売上原価で、キーエンスは三菱電機の30分の1。売上原価率は52.8ポイントも上回っています。

法人税等合計はキーエンスの方が多く支払っています。減税のメリットを受けるために変則決算をすることもある会社ですが、儲けをたくさん出して税金をたっぷり支払っているようです。


(2) 強みは「業界初」「ファブレス」「直販」

キーエンスの付加価値の高いビジネスは、どのように生み出されているのでしょうか。有価証券報告書(2018年3月期)から、会社の特徴と思われそうな言葉をピックアップしてみます。

  1. 開発・営業両部門が一体となった新商品開発・市場開拓
  2. 工場を持たないファブレス
  3. 特定の商品や顧客に依存しないリスク分散
  4. ユーザーへの直接販売方式

新商品開発について、企業サイトには “キーエンスが世に送り出す新商品のじつに7割が「世界初」「業界初」” と書かれています。顧客のニーズを満たす独自性の高い製品は、汎用性の高い製品よりも高い価格で販売できるのは当然でしょう。

ファブレスとは、製品の企画設計や開発のみを自社で行い、製造を他社(EMS:電子機器の受託生産サービス)に委託し、製品をOEM供給の形で調達する業態です。自社工場を持たないため大きな設備投資が必要なく、ファブレス企業は利益率が高い場合が多いです。

また、ユーザーへの直接販売は、代理店や販売会社を通さないことで販路拡大が進まない、などのリスクがある一方で、利益率が高まります。これらが、キーエンスの付加価値の高いビジネスにつながっていると見られます。

ビジネスモデル|キーエンスグループについて|キーエンスエンジニアリング株式会社Icon outbound

https://www.keyence-engineering.co.jp/group/businessmodel/

ファクトリー・オートメーション総合メーカーとして業界をリードする「キーエンス」には、独自のビジネスモデルが存在しています。お客様にとって高付加価値の商品をつくり続けることができる秘密がここにあります。

Q2.なぜ販管費率がやや高めなのか?

キーエンスの販管費率は28.2%で、他社と比べて突出しているわけではありません。しかし、三菱電機の23.1%と比べるとやや高いといえます。これはなぜなのでしょうか。

・従業員の平均年間給与は2000万円超

2018年3月期の有価証券報告書によると、キーエンスの販管費は1397億8100万円。このうち主要な費目と金額は以下のようになっています(カッコ内の構成比は編集部算出)。

  • 役員報酬及び従業員給料手当賞与 642億5000万円(46.0%)
  • 賞与引当金繰入額 88億円(6.3%)
  • 研究開発費 132億800万円(9.5%)

販管費の過半数を報酬関係が占めています。キーエンスは上場企業の1、2位を争う高給企業としても知られ、多額の利益を従業員に還元しています。以下は三菱電機との比較です。

Q3.投資キャッシュフローの使いみちは?

2017年3月期には1252億円のプラスだった投資キャッシュフローは、2018年3月期には2802億円のマイナス、翌期には2053億円のマイナスとなっています。

この理由について会社は、有価証券が1555億円(2018年3月期)、1500億円(2019年3月期)増加したことなどによるものと説明しています。

有価証券報告書には「有価証券及び投資有価証券は、主として信用度の高い公社債等を対象としているため、信用リスクは僅少です」とあります。しかし、どの会社の有価証券を取得しているかは分かりません。

まとめ:「海外事業の展開」に注目

キーエンスの企業サイトには、社長メッセージとして “さらなる「付加価値の創造」を目指して” という言葉が掲げられています。 まさに、企業活動のすべてが高い付加価値を創造することに向けられており、優良企業として非の打ち所がないように見えます。

社長メッセージ | 会社情報 | キーエンスIcon outbound

https://www.keyence.co.jp/company/message/

株式会社キーエンスの社長メッセージをご紹介します。

優秀な人材を集め、独自のビジネスモデルで効率的に利益を上げ、従業員に報酬を還元する――。この好循環が回っていく限り、キーエンスはこれからも安定的に成長していくでしょう。

今後について、社長メッセージには “海外事業の展開を加速したい” とあります。2019年3月期の決算短信によると、海外での売上高は3119億7800万円で、国内売上高の2751億1700万円を上回っており、今後のさらなる成長に注目が集まります。

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