【財務分析】ニチイ学館、業績下方修正で株価下落 赤字事業のリストラいつ終わる?

【財務分析】ニチイ学館、業績下方修正で株価下落 赤字事業のリストラいつ終わる?

2019年3月期に11期連続増収を達成したニチイ学館。2020年3月期の上期決算でも「5年連続 過去最高上期売上高を更新」など好調ですが、特別損失の計上などで利益が低い水準のままです。これは赤字事業のリストラ費用がかさんでいるため。財務諸表などを基に会社の現状と課題を整理します。


損益計算書(PL):11期連続増収も純利益は低水準

ニチイ学館の2019年3月期の売上高は2879億円で、前期比1.5%増。営業利益は100億3300万円で同31.5%増の増収増益でした。営業利益率は3.5%で前期比0.8pt増えています。

2019年3月期通期決算説明会資料によると、売上高は11期連続で過去最高を更新。営業利益は7期ぶりに100億円台を突破したとのことです。

売上原価は前期比0.6%増の2303億円となりましたが、増収分がこれを上回ったため、売上総利益は同5.1%増の576億円を確保。粗利率は同0.7pt増の20.0%となりました。販売費及び一般管理費は前期比0.8%増の476億円に抑えています。

親会社株主に帰属する当期純利益は61億800万円。前期の8.5億円から7倍超に急増してはいますが、前期の7億8864万円に続き、2019年3月期も総額16億6260万円の特別損失を計上し、収益の足を引っ張っています。

セグメント分析:赤字の教育とグローバルでリストラ

ニチイ学館は、次の7つのセグメントで事業を展開しています。

  • 医療関連部門:医療機関、調剤薬局における医療業務受託や医療器材の消毒、滅菌業務
  • 介護部門:在宅系の介護サービス、居宅系の介護サービスの提供や福祉用品の販売・レンタル
  • 保育部門:保育施設の運営や保育系講座の提供
  • ヘルスケア部門:家事代行サービスの提供
  • 教育部門:COCO塾ジュニア等での英会話グループレッスンの提供や留学支援態勢の整備
  • セラピー部門:国内外における犬専用グルーミング施設や観光施設の運営・管理
  • グローバル部門:中国での介護人材の養成、介護サービスの提供や家政サービスの提供


セグメント別決算で目につくのが、赤字セグメントの多さです。2019年3月期には、7事業中5つが赤字に。ヘルスケアは2期連続、教育、セラピー、グローバルセグメントは3期以上連続となっています。

赤字額が最も大きいのは教育セグメントで40億3200万円(前期は44億100万円)。次いでグローバルセグメントが13億4200万円(同16億9400万円)もの赤字を生み出しています。

出典:2019年3月期通期決算説明会資料

2011年に参入し「GABAマンツーマンサービス」「COCO塾ジュニア」のブランドで運営する教育セグメントは、近年は一部教室の閉鎖、ブランド移行とレッスン単価の値上げ等の赤字改善策を行ったものの成果が上がらず、2019年3月期にはCOCO塾事業からの撤退を決めました。

また、グローバルセグメントは中国と香港の3法人の合弁会社を清算しています。

出典:2019年3月期通期決算説明会資料

貸借対照表(BS):財務安全性にやや不安あり

2019年3月期末の資産合計は前期比1.8%増の1936億円。流動資産は同3.3%減の657億円でしたが、固定資産が同4.6%増の1280億円となりました。

流動負債は前期比0.3%増の607億円。短期の支払能力を測る流動比率は同4.0pt減の108.3%。一般に120%以上であれば安全とされ、100%を下回ると財務安全性に不安があるとされますのでギリギリといえるでしょう。

固定負債は前期比0.2%減の919億円。長期の支払能力を測る固定比率は同16.1pt減の315.2%。固定比率が低いほど安全で、100%を超えると借入によって固定資産を購入していることになります。

施設サービスに力を入れる介護会社は土地や建物に係る費用が大きく、固定比率が高くなります。とはいえ、ツクイの227.3%、ユニマット リタイアメント・コミュニティの212.2%、セントケア・ホールディングスの110.8%と比べても、ニチイ学館は高めです。

有利子負債残高は前期比4.4%減の846億円でした。

純資産合計は前期比9.1%増の411億円。長期的視点での財務安全性を測る株主資本比率は前期比1.6pt増の21.0%。業種によっても異なりますが一般に30%で安全とされますが、この水準を下回っています。

流動比率、固定比率、株主資本比率ともに目安となる水準を下回っており、財務安全性にやや不安があると言わざるを得ません。

キャッシュフロー計算書(CF):長期借入金の返済などで財務CFがマイナス

営業CFは前期比15.2%減の134億円。法人税等の支払額が前期比で13億9999万円増えた影響が大きいです。これを受けて、売上を通じて現金を稼ぐ力を測る営業CFマージンは、前期比0.9pt減の4.7%まで低下しています。

投資CFはマイナス29億円で、マイナス額は前期比54.3%増。主に、有形固定資産の取得による支出や無形固定資産の取得による支出などによるものです。

これにより、フリーCFは前期比24.7%減の105億円となっています。

財務CFはマイナス106億円で、マイナス額は前期比10.4%減。主に、長期借入金の返済による支出などによるものです。

投資分析:前期から改善したが収益性は低い

2019年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益は前期比615.2%増の61億円

これを受けて、ROE(自己資本利益率)は前期比13.5pt増の15.8%、ROA(総資産利益率)は同2.7pt増の3.2%といずれも改善しています。EPS(1株当たり利益)は同613.8%増の95.01円です。

しかし、前期に特別損失を計上した反動で指標は改善しているものの、収益性は高いとはいえません。特にニチイ学館は負債額が大きく、ROAがユニマット リタイアメント・コミュニティの5.1%、セントケア・ホールディングスの4.2%に比べてやや低い水準です。

純資産の積み上げ効果もあり、BPS(1株当たり純資産)は前期比9.7%増の621.42円。配当性向は前期比128.4pt減の36.9%でしたが、上場企業平均の30%を超えています。

まとめ:上期決算で売上利益の好調アピール

ニチイ学館の株価は、2019年1月31日の956円から徐々に上昇し、11月12日に1960円をつけた後に急落。これは同日、2020年3月期上期決算とともに発表された通期業績予想の下方修正を嫌ったもので、その後も株価は下降線をたどっています。

なお、この下方修正で、会社は売上高は3030億円から2986億円へ(44億円減)。営業利益は152億円から133億円へ(19億円減)。親会社株主に帰属する当期純利益は67億円から47億円へ(20億円減)と予想を下げています。

会社は売上高の減少について「介護部門、ヘルスケア部門のサービス利用者獲得等に遅れが生じ」ているためとし、営業利益の減少については「構造改革後の成長戦略の一つとして、介護サービス提供基盤構築の整備を進めるほか、IT投資による費用増、租税公課の増加等を見込」んでいるとのことです。

当期純利益については「デイケアサービスセンターの大規模修繕」「教育事業の構造改革等に伴う特別損失7億4100万円を計上」といった理由をあげています。

その一方で、主力の医療関連事業や介護事業は好調で、第2四半期決算説明会資料には「5年連続 過去最高上期売上高を更新」「過去最高益に次ぐ上期63.6億円の営業利益」「営業利益率16期ぶりの4.0%超」といった言葉が並んでいます。

それだけ不採算事業や事業構造改革コストの負担が大きかったということであり、「選択と集中」による事業の絞り込みによって、今後はニチイ学館の収益性の高さが徐々に現れてくる可能性があります。7つ中5つで赤字を抱える事業のリストラがいつ終わるのか、注目が集まります。

出典:2020年3月期第2四半期決算説明会資料

この記事の執筆者

東京都内の大学の商学部で企業評価論、コーポレートファイナンスを学んでいます。証券アナリスト資格試験合格のために勉強中です


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