【本決算】ゲームデバッグのポールトゥウィン・ピットクルーHD ノンゲーム市場の不正検出で事業拡大目指す

【本決算】ゲームデバッグのポールトゥウィン・ピットクルーHD ノンゲーム市場の不正検出で事業拡大目指す

国内外でゲームなどのデバッグ(不具合検出)・検証やネット監視を行うポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス(PPHD)。売上を伸ばし、純資産を順調に積み上げ財務安定性は十分。国内外での営業強化に加え、5GやAI、QRコード決済等に関する事業拡大を目指します。財務諸表などを基に会社の現状と将来性を整理します。


損益計算書(PL):売上高は順調に右肩上がり

ポールトゥウィン・ピットクルーHDの2020年1月期の決算は、売上高が前期比9.9%増の261億円、営業利益は同11.6%増の35億円と伸長し、営業利益率は同0.2pt増の13.5%と微増しました。

売上原価は前期比11.3%増の181億円と増加したものの、増収効果で売上総利益は同7.0%増の80億円。ただし粗利率は同0.8pt減の30.6%となりました。

販売費及び一般管理費は前期比3.6%増の45億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比2.8%減の18億円となっています。

当期純利益が減少した主な要因の一つとして、特別損失に含まれる役員退職慰労金5億円があげられますが、業績には直接関係のない一時的な支出と考えてよいでしょう。

2021年1月期の業績予想は、売上高が前期比10.0%増で287億円、営業利益が同1.6%増で36億円とする一方、営業利益率は同1.0pt減で12.5%と微減の予想です。

決算短信には「類似サービスや類似子会社の統合を進め、経営効率化に取り組み、事業シナジー創出が見込まれるM&Aや資本業務提携にも取り組んでまいります」とあるので、そのためのコストがかかるものを見られます。

また、2020年1月期は前期比で減少となった当期純利益は、前期比30.9%増で23億円と大幅に伸長すると見込まれています。

セグメント分析:デバッグ・検証事業が利益の9割上げる

ポールトゥウィン・ピットクルーHDは事業を以下の3つのセグメントに区分し、各事業ではいくつかのサービスを提供しています。

  • デバッグ・検証事業:ソフトウェア・ハードウェアの品質向上のサポートをするため、不具合の検出を行う事業
    • デバッグサービス:家庭用ゲーム、ソーシャルゲーム、モバイルコンテンツ、スマートフォンやタブレットPC用コンテンツ等における不具合検出や、難易度バランスの調整などのチューニングを行う。
    • 検証サービス:開発中のIT家電や携帯電話等の不具合検出や動作チェックを行う。
    • 翻訳サービス:海外向けゲームソフトのゲーム内テキストや取扱説明書、Webサイトなどを、欧米主要5言語に翻訳するサービスを提供している。
  • ネットサポート事業:インターネットサービスの健全運営をサポートするために、違法有害情報や不正の検出を行う事業
    • ネットモニタリングサービス:インターネット上の掲示板、ブログ、SNS等に投稿されるテキストや画像、動画等を、顧客企業の依頼に応じて、システムと有人を組み合わせたチェックなどを行う。
    • カスタマーサポートサービス:ゲームソフトやショッピングサイト、ソーシャルアプリ等のインターネットコンテンツ利用者が行う、電話やメールによる問い合わせへの対応を行う。
  • その他:医療関連人材紹介、出版・メディアに関する事業等


なお、上記サービスは「ゲーム市場向け」がコアビジネスですが、既存事業のノウハウを活用し、FintechやAI、EC/Webサービス市場を含む「ノンゲーム市場向け」にも提供されています。

出典:2020年1月期決算説明会資料

2020年1月期の売上高構成比は、デバッグ・検証事業が199億円で76.1%を占めており、ネットサポート事業は60億円で23.1%です。営業利益は、デバッグ・検証事業が32億円で91.1%を占め、利益の大半を生み出しています。ネットサポート事業は3億円で8.3%です。

売上高の成長率は、デバッグ・検証事業が前期比8.5%増、ネットサポート事業が同16.8%増。営業利益の成長率は、それぞれ同4.7%増、同10.0%増となっており、ネットサポート事業の成長率がより大きくなっています。

デバッグ・検証事業では、アミューズメント機器向けのデバッグ、国内顧客の海外進出向けのローカライズ(翻訳)やカスタマーサポートに関する需要が増加しました。

ネットサポート事業では、QRコード決済不正対策やAIデータ認識評価などに関連する需要が増加しています。

国内の12都市だけでなく、海外10か国18拠点でも事業展開をしていることは、ポールトゥウィン・ピットクルーHDの特徴です。地域ごとの売上高構成比は、日本が195億円で74.7%を占め、米国が34億円、欧州が26億円、アジアが46億円となっています。

出典:2020年1月期決算説明会資料

キャッシュフロー計算書(CF):営業CFが安定

2020年1月期の営業CFは前期比2.3%増の24億円。主な要因は、税金等調整前当期純利益が28億円のプラスだったことです。

ただし売上高の増加率を下回ったため、売上を通じて現金を稼ぐ力を測る営業CFマージンは同0.7pt減で9.2%と微減。それでも情報通信業の平均8.0%を上回る高水準です。

投資CFはマイナス8億5000万円で、マイナス額は前期の3.5倍に増えました。主な要因は、固定資産の取得による支出3億1300万円や、投資有価証券の取得による支出3億400万円があったことです。

投資CFのマイナス額が増えたことで、フリーCFは前期比26.3%減の15億5200万円に減っていますが、大幅プラスを維持しています。

財務CFはマイナス4億1600万円で、前期のプラスからマイナスへ転じました。これは主に、配当金の支払い4億1600万円があったことによります。

貸借対照表(BS):純資産を積み上げ財務安全性も確保

2020年1月期の資産合計は前期比14.3%増の178億円。流動資産は同13.2%増で147億円、固定資産は同19.8%増で31億円と伸長しました。流動資産増加の主な要因は、現金及び預金が12億円増加したことで、固定資産増加の主な要因は、投資有価証券が4億円増加したことです。

負債も増加しています。流動負債は前期比17.9%増で31億円、固定負債は同70.1%増で2億9600万円でした。流動負債増加の主な要因は、未払金が3億2100万円、その他(預り金等)が2億4200万円増加したことです。また、固定負債が急増した主な要因は、長期借入金が4200万円、繰延税金負債が7700万円増加したことです。

ただし、純資産合計は同12.8%増で143億円と順調に積み上げています。前期までなかった有利子負債残高は5900万円計上されています。

短期の支払能力を測る流動比率は前期比19.1pt減で467.3%。減少はしたものの、流動比率は一般に120%以上であれば安全とされるため、非常に高い水準といえます。

長期の支払能力を測る固定比率は前期比1.4pt増で21.5%。固定比率は低いほどよく、全く問題はないでしょう。

長期的視点での財務安全性を測る株主資本比率は前期比1.6pt減で80.1%。株主資本比率は、業種によっても異なりますが一般に50%以上で優良企業とされるため、財務安定性は十分といえます。

投資分析:ROE・ROAはともに高水準

2020年1月期の親会社株主に帰属する当期純利益は前期比2.8%減で18億円と減少したため、ROE(自己資本利益率)は同3.6pt減で13.3%、ROA(総資産利益率)は同2.5pt減で10.7%となりました。しかし、どちらも情報・通信業の平均6.9%、8.6%を大きく上回る高水準を保っています。

EPS(1株当たり利益)は前期比5.5%減で47.24円。BPS(1株当たり純資産)は純資産の積み上げがあったことで前期比12.1%増の376.01円でした。

配当性向は前期比2.8pt増の25.4%で、上場企業の平均の目安とされる30%には届いていません。2020年1月期の配当金は前期比1.00円増の12.00円で、2021年1月期の配当金は13.00円に増加する見込みです。

まとめ:5GやAI、QRコード決済の追い風に期待

ポールトゥウィン・ピットクルーHDの株価は、2019年6月12日に1320円の高値を記録しました。これは2019年6月7日金曜日に発表された、2020年1月期第1四半期決算短信が好感されたことによるものです。この決算短信は、売上高が順調で四半期純利益は前年同四半期比で91.1%増などという内容でした。

ただし、その後の株価は横ばい状態から下落傾向に移っています。主要事業がゲーム、ネットビジネス向けBPO(外部委託の一種)のため、新型コロナウイルス感染症影響は限定的であるとはいえ、世界同時株安の影響で株価は600円台にまで落ち込んでいる状況です。

ポールトゥウィン・ピットクルーHDは、デバッグ・検証事業とネットサポート事業を、それぞれ「ゲーム市場」と「ノンゲーム市場」に分けた4象限で事業戦略を考えています。

特に注目したいのが、ノンゲーム市場における展開です。ノンゲーム市場のデバッグ・検証事業は、主に5GやAI、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス:交通分野のクラウドサービス)やxTech(クロステック:既存事業に先端技術を組み合わせた新ビジネス創出)等に関する第三者検証の受注に取り組むとのことです。

また、ノンゲーム市場のネットサポート事業は、キャッシュレス化の推進を受けて、スマホ決済に関する不正対策の需要が増加しており、Eコマース、フィンテック市場における新たなニーズへの対応を拡大していくとしています。

ゲーム市場においては、グループ合同営業会議などを行い、デバッグ・検証事業とネットサポート事業とのクロスセル(関連サービスの提案)を推進していくとしています。

以上に加えて、経営効率化のために、事業シナジーの創出が見込まれるM&Aや資本業務提携には今後も積極的に取り込む方針です。

出典:2020年1月期決算説明会資料

この記事の執筆者

興味深い財務分析ができるよう、日々勉強しています。