【財務分析】業績好調のオリエンタルランド 大規模投資を回収する成長は可能か

【財務分析】業績好調のオリエンタルランド 大規模投資を回収する成長は可能か

訪日外国人客の増加、「コト消費」のニーズ拡大などを背景に堅調に伸長するレジャー産業。その中でも圧倒的な強さを見せているオリエンタルランドは、高い業績を上げて大規模な投資とさらなる成長を目指しています。財務諸表や決算説明資料などから、その強さと課題を分析しました。


損益計算書(PL):売上高は過去最高更新

オリエンタルランドの2019年3月期決算は、売上高が5,256億円で前期比9.7%増。3期連続で増加し、過去最高売上を記録しました。

営業利益は1,297億円で前期比17.2%増、営業利益率は24.6%で同1.6pt増でした。売上高の伸びに比例し、営業利益も続伸し過去最高でした。東京ディズニーランド35周年イベントの成功が大きな要因になっています。

なお、オリエンタルランドは2020年3月期の業績を、東京ディズニーランド35周年イベントの反動により前期比減と低く見積もっていましたが、業績好調につき第2四半期決算とともに通期予想を以下のように上方修正しています。

  • 売上高:4792億4000万円→5038億7000万円
  • 営業利益:929億4000万円→1088億8000万円
  • 親会社株主に帰属する当期純利益:653億円→762億4000万円

セグメント分析:テーマパークとホテルで構成

オリエンタルランドの事業は、以下の2つとその他で構成されています。

  • テーマパーク:東京ディズニーランド、東京ディズニーシーの経営・運営
  • ホテル:東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ、ディズニーアンバサダーホテル、東京ディズニーランドホテル、東京ディズニーセレブレーションホテル/京都ブライトンホテル/浦安ブライトンホテルの経営・運営
  • その他:イクスピアリの経営・運営、モノレールの経営・運営ほか

業態別売上高は、テーマパーク事業が4,374億円(前期比10.5%増)、ホテル事業が724億円(同9.0%増)、その他事業が156億円(同6.9%減)。営業利益では、テーマパーク事業が1,072億円(前期比17.1%増)、ホテル事業が192億円(同17.9%増)、その他事業が25億円(同22.0%増)となり、いずれも大きく伸びました

売上・利益におけるテーマパーク事業の割合は圧倒的で、売上高の83.2%。営業利益でも83.0%を占めています。

出典:2019年3月期決算説明資料

貸借対照表(BS):総資産は1兆円を突破

2019年3月期の資産合計は1兆515億円で前期比14.8%増。初めて1兆円の大台に乗せました。

流動資産は4418億円で前期比20.9%増、固定資産は6096億円で同10.8%増でした。

流動負債は1547億円で前期比25.1%増、固定負債は936億円で同33.8%増やしています。純資産合計は8032億円で同11.3%増、このうち株主資本等合計は8032億円で同11.3%増でした。なお、これほど大きく流動負債が増加した理由については後述します。

有利子負債残高は1084億円で、前期比81.9%増と大きく増やしています。

短期の支払能力を測る流動比率は285.7%で、前期比10.0pt減。流動比率は一般に120%以上であれば安全とされているので問題はありません。

長期の支払能力を測る固定比率は75.9%で、前期比0.3pt減。固定比率は低ければ低いほどよく、100%を超えると借入によって固定資産を購入していることになりますが、現時点では安全といえるでしょう。

長期的視点での財務安全性を測る株主資本比率は76.4%で、前期比2.5pt減。一般に30%で安全とされ、50%以上で優良企業とされますが、これを大きく上回る水準です。

キャッシュフロー計算書(CF):約500億円分の社債発行

2019年3月期の営業CFは1350億円で、前期比9.9%増えました。ここ数期、営業CFは安定的に推移しています。売上を通じてキャッシュを稼ぐ効率を測る営業CFマージンは25.7%で、上場企業トップ20以内に入る高い水準です。

投資CFはマイナス1354億円で、マイナス額が前期の3倍に増えています。主因は「定期預金の預入による支出が増加したこと」のようです。

財務CFは366億円で、前期までのマイナスからプラスに転じています。主因は「社債の発行による収入が増加したこと」で、約500億円の資金調達を行っています。

営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラス、というパターンは、本業で資金を生み出しつつ積極的な資金調達で投資をする「積極投資型」といえます。

現在の事業の維持以外に自由に使えるフリーCFはマイナス4億円。フリーCFは営業CFと投資CFを足して求めますが、投資CFがマイナス1354億円と大きく膨らんだこともあり、前々期、前期のプラス800億円前後から大きく減らしています。

フリーCFがマイナスということは手元に現金がなく、何らかの手段で資金調達を考えなければならない状態ですが、前述の通り約500億円の資金調達を行っています。

投資分析:1株当たり純資産が右肩上がり

2019年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益は903億円で、前期比11.2%増と伸長。EPS(1株当たり利益)は274.7円で、同11.3%増と増加しています。

近年、純資産を順調に積み上げていることから、BPS(1株当たり純資産)は2443円で前期比11.2%増と右肩上がりになっています。

ROE(自己資本利益率)は11.8%で前期比0.2pt増。サービス業の平均10.7%を上回っています。ROA(総資産利益率)は9.2%で前期と同じで、サービス業の平均9.5%をやや下回りましたが、総資産が1兆円に膨らんでいる影響もあるでしょう。いずれも不安はありません。

配当性向は15.3%で同0.9pt減。国内上場企業の平均が約30%と言われるなかで低い水準です。

なお、オリエンタルランドは「営業キャッシュ・フローを成長投資に充当し、企業価値の向上を目指す」という財務方針を掲げています。

1株当たり年間配当額を年々増やしてはいますが、テーマパークの質を維持するためには多額の投資が必要になります。このため「安定的な配当」を確保しつつ大型の設備投資に向けることを優先し、結果的に配当性向が低くなる傾向にあります。

出典:2020年3月期 上期決算説明資料

なお、オリエンタルランドの投資計画は、2014年からの10年間で約5000億円規模で実施されています。2020年以降も1000~1500億円規模のエリア拡大を含む大規模開発が残っています。

出典:2019年3月期決算説明資料

Q1. 過去最高売上の要因となったのは?

2019年3月期が過去最高の売上高となった要因は、「入園者数の増加」「一人あたり売上高の増加」です。

「東京ディズニーリゾート35周年イベント」が好調だったこともあり、入園者数が過去最高の3256万人に達し、ゲスト一人あたり売上高も過去最高の1万1815円にのぼりました。

(1) 一人あたり売上高が最も増加したのは「チケット収入」

ゲスト一人あたり売上高に含まれるのは、「チケット収入」「商品販売収入」「飲食販売収入」です。この中で一人あたり売上高の上昇にもっとも影響しているのは、チケット収入の増加です。

2014年~2019年の収入増加率を見ると、「商品販売収入」の2%増、「飲食販売収入」の4%増に対し、「チケット収入」は15%増となっています。

チケット(1日券)価格は、この5年間で17.2%値上がりしていますが、チケット価格改定後は「2年間にわたって単価(ゲスト1人当たり売上高)」が増えているとのことです。

  • 2014年:6,400円(前回比+200円)
  • 2015年:6,900円(同+500円)
  • 2016年:7,400円(同+500円)
  • 2019年:7,500円(同+100円)

出典:2019年10月IRプレゼンテーション資料

(2) チケット価格を値上げしても入園者数は減らないのか?

2015年にチケット価格を6400円から6900円に値上げしたとき、入園者数は3138万人から3019万人に減少しました。

値上げの影響で入園者数が減ったのでは?と思われた方もいるかもしれませんが、長期的なスパンで見るとチケット価格を値上げしても入園者数は減少していません。

出典:2019年10月IRプレゼンテーション資料

上記のグラフで見ると、特にこの数年間でチケット価格が値上げされていますが、業界の相場から考えると決して高いとは言えないかもしれません。

例えば、カリフォルニアディズニーランドのチケット価格は、1日券の最低価格(シーズンによる価格変動制)が97ドル。1ドル110円換算で1万670円からということになります。

これより安い香港ディズニーランドでも、1日券が619香港ドル、8666円で日本よりも高く設定されています。

同じ国内のライバルであるUSJの1日券の価格も7,800円で、ディズニーランド(ディズニーシー)よりも高い値段です。そして、USJもディズニーランド同様、チケット価格を値上げし続けながら入場者数を増やし続けています。

なぜUSJは値上げを毎年続けられるのかIcon outbound

https://toyokeizai.net/articles/-/218725

年明け早々、大阪のテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを運営するユー・エス・ジェイ(以下、USJ)が、チケットの値上げを発表した。パークで1日遊べる1デイ・スタジオ・パスを、1月30日から220円値上げし7200円(12歳以上65歳未満の税込み料金)にするなど、3券種の価格を改定する。

Q2.流動負債が大きく増加した理由は?

流動負債は前期比25.1%増で、約300億円増加しました。これは2019年1月に発行された500億円の社債の影響が大きいです。

(1) 500億円社債発行も大規模投資計画の一環

オリエンタルランドは2014年にまとめた経営計画で、10年間で5000億円レベルの設備投資を行うと発表しています。2015年と2019年の500億円の社債発行は、いずれもこの計画通りに進めており、順調な資金調達だといえるでしょう。

出典:オリエンタルランド 株主・投資家の皆様へ

(2) 大規模投資計画に不安はないか?

これだけの大規模投資に踏み切っていても、財務の安全性に心配はなさそうです。

貸借対照表(BS)分析で見たように、流動比率は285.7%(一般に200%以上で安定水準)になっていますし、より短期的な安全性基準となる当座比率(一般に90%以上で安定水準)も272%という高水準を維持しています。

また、大規模投資を収益として回収できるかというと、新しいアトラクションの当たり外れもあるかもしれませんが、投資回収力の指標であるROE(株主資本利益率)11.8%、ROA(総資産利益率)9.2%ともに高水準を維持し続けているのは安心できます。

特に、借入などの他人資本が大きくなるテーマパーク経営においては、ROAは非常に低くなる傾向があり、業界平均はマイナス1.02%ともいわれています。

上記で引用した東洋経済の記事によると、国内でディズニーランドに次ぐテーマパークを運営するユー・エス・ジェイでもROAは0.9%に過ぎません。オリエンタルランドのROA9.2%は相当高い水準だと言えるでしょう。

まとめ:外国人ゲストの集客がカギに

オリエンタルランドの株価は、この5年で約7000円から1万5000円超へと大きく上昇しました。今後もさらに伸びる可能性はあるのでしょうか。

先日、「出生数が86万人に急減」「初の90万人割れ」という2019年の人口動態統計の年間推計が発表されました。若年層の人口減少はテーマパークの入場者数に直接影響を与える要素となります。

前述した財務安定性も売上・利益の伸長があっての話であり、設備投資が重みとなって利益が生み出せなくなれば投資効率も悪化します。

このような中で巨額の設備投資を行うことが得策なのか、投資の回収が可能なのか疑問もわきますが、会社が期待を寄せているのは「海外ゲストの増加」です。

オリエンタルランドの「2020中期経営計画の進捗」には、訪日外国人の増加に対応し、外国人ゲストに対する「集客活動」と「受入体制の整備」をバランスよく強化していくとしていますが、この施策の可否が今後の業績伸長のカギを握るのではないでしょうか。

出典:2020年3月期 上期決算説明資料

この記事の執筆者

企業戦略の策定や分析をしています。分かりやすい財務分析を目指します。


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