【財務分析】Sansanが20年5月期に黒字化の見通し 新たな投資に期待も

【財務分析】Sansanが20年5月期に黒字化の見通し 新たな投資に期待も

2019年6月19日に東証マザーズに上場したSansan。法人向け名刺管理サービスで約8割と圧倒的なシェアを誇ります。広告宣伝費などの先行投資を経て、2020年5月期には最終黒字の見通しが立ちました。同時に資本業務提携のために50億円の銀行借入を敢行。財務諸表と決算報告書資料などを基に、会社の現状と課題を整理します。


損益計算書(PL):赤字縮小から黒字化へ

2019年5月期決算は増収増益。大幅な赤字額の縮小で、黒字化の目処が見えてきました。

売上高は102億0600万円で、前期比39.4%増。営業損失は8億5000万円(赤字)で、赤字額は前期比72.2%減でした。営業利益率はマイナス8.3%で前期比33.5pt改善しています。

売上増に伴い、売上原価は15億9800万円と前期比で11.4%増えましたが、売上総利益も86億800万円で46.2%増。粗利率は84.3%で前期比3.9pt増えています。

しかし販売費及び一般管理費は94億5800万円と同5.7%増えました。

親会社株主に帰属する当期純損失は9億4600万円(最終赤字)で、赤字額は前期比69.3減でした。

すでに営業損失の大幅な改善に伴い、当期純損失も圧縮され黒字化を見込める水準になっていますが、2020年5月期の通期業績は、売上高が138億円、営業利益が7億円、営業利益率が5.2%、当期純利益も黒字化する予想です。

セグメント分析:Sansanが売上の9割。Eightは赤字

Sansanの事業は、法人向け名刺管理サービス「Sansan」と、個人向け名刺管理アプリ「Eight」の2つのセグメントで構成されています。

  • Sansan事業:法人向け名刺管理サービスを展開。5,800以上の契約数を誇る国内シェアナンバーワンサービス。
  • Eight事業:個人向け名刺管理アプリサービスを展開。240万人を超えるユーザー数を誇る国内ナンバーワン名刺管理アプリ。

主力事業Sansanで売上高の94%を占め、Eight事業の赤字を埋めています。

出典:2019年7月期 決算説明資料

Sansan事業は国内名刺管理サービスの旗手として市場を開拓してきたサービスで、2017年売上金額シェアでは、国内市場の81.9%を占めています。2019年5月期の解約率は0.66%と非常に低く、スイッチングコストの高さも競争優位を生み出しており、盤石の体制を構築していると言えます。

Eight事業はこれまでユーザー数を獲得に注力してきており、今後マネタイズ施策に転じていくタイミングを迎えています。

なお、2020年5月期第2四半期決算では、Sansan事業は売上高が前年同期比27.5%増、営業利益は同65.3%増となりました。Eight事業は売上高が同139.8%増、営業赤字は1億4200万円に縮小しています。ただし、Eight事業における名刺入力費用は現状では売上原価ではなく、販売費及び一般管理費に計上されています。

貸借対照表(BS):上場で財務状況は改善。資本業務提携で50億円の借入

Sansanは2019年6月19日に東証マザーズに上場し、財務状況は大きく改善しています。

2020年5月期の上期末時点での資産合計は、2019年5月期末比で133.6%の212億900万円と大幅に増えています。流動資産は131億7700万円で同109.2%増えています。

固定資産は80億3200万円で同188.8%増です。主な要因は、2019年11月のウイングアーク1st株式会社(セルフサービスBIを提供)との資本業務提携に伴い、投資有価証券が増加したためです。

負債も増えており、流動負債は2019年5月期末比で27.3%増の69億900億円。固定負債は同15倍の41億7200万円。主な要因は、ウイングアーク1stの株式取得費用として50億円の銀行借入を実施したためです。有利子負債残高は53億2300万円となりました。

純資産合計は同3倍の101億2800億円です。長期的視点での財務安全性を測る株主資本比率は同10.6pt増の47.8%。業種によっても異なりますが一般に30%で安全とされていますので問題なく、改善されています。

短期の支払能力を測る流動比率は2019年5月期末から74.7pt増の190.7%。一般に120%以上であれば安全といわれており、安全性は増しています。

長期の支払能力を測る固定比率は同101.6pt増の184.0%。この指標は低いほどよく100%を超えると借入によって固定資産を購入していることになりますが、ウイングアーク1stとの資本業務提携により安全性は悪化しているといえます。

キャッシュフロー計算書(CF):上場と長期借入で財務CFが大幅プラス

2020年5月期の第2四半期までの営業CFは13億6400万円で、2019年5月期比で27.1%増でした。主な要因は、減価償却費の計上2億9142万円で、未払金や前受金の増加もありました。売上を通じて現金を稼ぐ力を測る営業CFマージンは11.6%で、同1.1pt増えました。

投資CFはマイナス72億8600万円で、マイナス額は同219.1%増。ウイングアーク1st社の株式取得等による投資有価証券の取得で50億円の支出があったためです

これにより、フリーCFはマイナス59億2200万円となりました。

財務CFは146億1500万円で、同366.6%増。マザーズ上場に伴う株式発行による収入が68億円あまりあったのに加え、ウイングアーク1st社株式取得のため49億8055万円を長期借入したためです。

投資分析:最終赤字で収益性指標もマイナス

2020年5月期の第2四半期の親会社株主に帰属する四半期純利益は6億600億円の赤字です。したがって収益性分析の各指標はマイナス。ROE(自己資本利益率)はマイナス10.8%で、ROA(総資産利益率)はマイナス4.5%です。

これらの数値も黒字化すれば改善することになるでしょう。純資産の積み上げも進んでおり、BPS(1株当たり純資産)も増えるとみられます。

まとめ:黒字化間近だが新たな投資にも期待

2020年1月14日発表の2020年5月期第2四半期決算は、売上、利益ともに好調を維持し、ついに営業利益で黒字に転換しました。期初の予想通りの推移を見せており、期末には親会社株主に帰属する当期純利益の黒字化も大いに期待できる状況です。

これを受けてSansanの株価は上昇、2019年10月18日には3540円だった株価は、2020年1月22日に6540円を付けましたが、現在は落ち着いています。

Sansanはこれまで両事業に多額の広告宣伝費などを先行投資し、業界内で圧倒的なプラットフォームを構築してきました。営業CF、営業利益が黒字化し、今後ますますプラットフォームを活かしたマネタイズを期待できます。

注目のEight事業は大きなシェアを獲得したものの、売上拡大と成長のためには広告宣伝投資を継続し、引き続きセグメント赤字拡大が見込まれています。このコストをカバーするためにも、Sansan事業での黒字拡大が期待されます。

Sansan事業はBtoB系の様々なサービスと連携できる可能性があります。2020年5月期第2四半期決算説明資料には、アップセル機会として「他社との連携やM&Aを活用」という方策が掲げられており、黒字化とともに新分野への継続的な投資も期待されるところです。

出典:2019年5月期決算資料

この記事の執筆者

企業戦略の策定や分析をしています。分かりやすい財務分析を目指します。