【本決算】経営統合のカルタホールディングス 「電通との協業」「M&A」に注目

【本決算】経営統合のカルタホールディングス 「電通との協業」「M&A」に注目

2019年1月にVOYAGE GROUPとCCIとの経営統合で誕生したカルタホールディングス。多様化するネット広告へのニーズに対応したメディアレップ事業やアドテク事業で成長し、2019年12月期は期中に業績予想を上方修正。2022年12月期に売上高320億円を目指します。財務諸表などを基に会社の現状と課題を整理します。


損益計算書(PL):第3四半期の上方修正を超える増収増益

カルタホールディングスの2019年12月期決算は、VOYAGE GROUPとサイバー・コミュニケーションズ(CCI)の経営統合後、初の決算です。

9月だった旧VOYAGE GROUPの決算期を社名変更後に12月へ変更する移行措置として、CCIの2018年10月1日~12月31日の3ヵ月分の業績に、経営統合後のカルタホールディングスの2019年1月1日~12月31日の連結業績を合算する変則決算を行っており、以前の財務諸表との間に連続性がなくなっています。

2019年12月期の売上高は262億円、営業利益は38億円。2019年10月に営業利益予想を10億円増加の35億円に引き上げる上方修正を行いましたが、決算ではそれをさらに上回る結果となりました。

なお、12ヵ月換算の金額で比較すると、売上高は前期比10.8%増の229億円、営業利益は同3.8%増の31億円で増収増益でした。経営統合によるのれんなどを除いたのれん償却前営業利益は、前期比17.8%増の37億円となっています。

売上原価は前期比3.5%増の30億円で、粗利率は同0.9pt改善の87.1%。販管費はのれん償却費の加算で同13.5%増の169億円に増えており、営業利益率は同0.9pt減の13.4%に下がっています。

親会社株主に帰属する当期純利益は前期比26.6%減の16億2200万円。これは、本社移転費用や投資有価証券売却損、固定資産除去損などの特別損失が増えたためです。

出典:2019年12月期 通期決算説明資料

2020年12月期の業績は、売上高が前期比0.3%増の230億円営業利益が同18.9%減の25億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同1.4%減の16億円と予想されています。

この予想は、オリンピックなどのアップサイドや、メディアとの取引条件悪化などのダウンサイドといった不確定要素を除いたものになっています。

セグメント分析:CCIの「メディアレップ」が利益の6割生む

カルタホールディングスは、東証一部に上場していたVOYAGE GROUPと、電通100%子会社のサイバー・コミュニケーションズ(CCI)を子会社に擁する持株会社です。

VOYAGE GROUPはアドプラットフォーム事業と自社メディアを中心に展開し、高い技術力や事業開発力が強み。CCIはデジタル広告のメディアレップ事業(メディアと広告代理店や広告主とを仲介する事業)を中心に展開し、ヤフーなどの予約型広告の販売で成長。マスメディアやクライアントに対するリーチ力が強みです。

ネット広告市場において、VOYAGE GROUPはパフォーマンス広告(運用型広告:入札額やクリエイティブ、ターゲットなどをリアルタイムに変更しながら運用する広告)、CCIはブランド広告に競争優位性を持っており、経営統合により両市場をカバーする事業体の確立を目指しています。

事業セグメントは以下の3つ。なお、パートナーセールス事業はCCIの事業領域、コンシューマー事業はVOYAGE GROUPの事業領域。アドプラットフォーム事業は、両社がそれぞれプラットフォームを持っています。

  • パートナーセールス事業:「メディアレップ」を中心とした広告枠の販売及びソリューションの提供
  • アドプラットフォーム事業:アドプラットフォームの開発及び提供
    • VOYAGE GROUP:DSP(デマンドサイドプラットフォーム)の「Zucks」や、SSP(サプライサイドプラットフォーム)の「fluct」など
    • CCI:プライベートマーケットプレイスの「Beyond X PMP」など

    2019年4月にブランド広告向けアドプラットフォーム「PORTO」がリリースされ、「Beyond X PMP」は2019年11月にPORTOに統合された

  • コンシューマー事業:「ECナビ」や「PeX」を中心としたポイントを活用した自社メディアの運営、HR領域、EC領域、Fintech領域を強化領域とした新規事業

出典:2019年12月期 通期決算説明資料

12ヵ月換算のセグメント売上高の構成比は、パートナーセールス事業が44.8%の103億800万円(前期比8.7%増)、アドプラットフォーム事業が26.7%の61億2900万円(同13.5%増)、コンシューマー事業が28.5%の65億5300万円(同9.3%増)となりました。

セグメント営業利益の構成比は、パートナーセールス事業が60.4%の22億6200万円(前期比21.0%増)、アドプラットフォーム事業が33.7%の12億6100万円(同14.9%増)、コンシューマー事業が5.9%の2億2200万円(同5.3%増)。CCIの事業領域であるパートナーセールス事業で約6割の利益を生み出しています。

セグメント利益率は、パートナーセールス事業が21.9%、アドプラットフォーム事業が20.6%とほぼ並んでいます。VOYAGE GROUPの事業領域であるコンシューマー事業のセグメント利益率は3.4%と低めですが、ペットメディア「rakanu」の連結子会社化や新規事業の開始、既存事業の撤退など事業ポートフォリオの見直しなどを行っています。

貸借対照表(BS):経営統合で純資産が2.7倍

経営統合により2社の貸借対照表が合算されたため、各金額が大幅に増えています。なお、2018年9月期以前の数値はVOYAGE GROUPのものです。

2019年12月期末の資産合計は2018年9月期から201.4%増の506億円。流動資産は同238.3%増の363億円、固定資産は同136.2%増の143億円でした。

流動負債は2018年9月期から249.5%増の250億円。短期の支払能力を測る流動比率は同4.8pt減の145.0%と悪化していますが、一般に120%以上であれば安全とされていますので問題ありません。

固定負債は2018年9月期から119.0%増の19億円。長期の支払能力を測る固定比率は同10.1pt減の61.1%。固定比率は低いほどよく、安全性に問題はありません。

純資産合計は2018年9月期から2.7倍の237億円。長期的視点での財務安全性を測る株主資本比率は同4.5pt減の46.3%となり、優良企業とされる50%をやや下回る水準です。

キャッシュフロー計算書(CF):現金を稼ぐ力を強化

2019年12月期の営業CFは59億200万円で、VOYAGE GROUPの2018年9月期と比べて(以下同じ)9.8倍に増えています。これに伴い、現金を稼ぐ力を示す営業CFマージンは2018年9月期から20.5pt増の22.6%と高水準になっています。

投資CFはプラス39億8700万円で、これもプラスが大幅に増えています。主な要因は「貸付金の回収による収入が増加したこと」などです。

自由に使える手元の現金であるフリーCFは98億8900万円。営業CFと投資CFのプラスがともに増えたことでキャッシュリッチになっています。

財務CFはマイナス5億4900万円で、マイナス額は2018年9月期から3.5%減。2018年9月期には長期借入れによる収入と自己株式の取得による支出がありましたが、2019年12月期はこれがなくなっています。

投資分析:ROE・ROAは変化なし

2019年12月期の親会社株主に帰属する当期純利益は21億3900万円で2018年9月期からの増加率は91.5%です。

当期純利益は増えましたが経営統合により資産も増えたため、ROE、ROAともにあまり変化していません。ROE(自己資本利益率)は2018年9月期から0.3pt減の13.4%とわずかに下がりましたが、サービス業の業界平均10.7%を上回っています。ROA(総資産利益率)は同0.5pt減の6.4%で、こちらは業界平均の9.5%を下回っています。

EPS(1株当たり利益)は2018年9月期から0.8%増の94.29円。BPS(1株当たり純資産)は921.43円で、純資産の増加に伴い同28.5%増えています。

配当性向は17.0%で、上場企業平均の約30%を下回っています。中期経営計画では、2022年度に配当性向25%を目安として安定的に増配することを目指すとしています。今期の配当金は、年16円(中間配当8円、期末配当8円)で、2020年12月期も変わらない予定となっています。

まとめ:「電通との協業」と「M&A」が成長の鍵か

カルタホールディングスの株価は、2019年8月6日発表の第3四半期決算を受けて下落しましたが、10月16日の業績予想の上方修正を受けて株価が上昇。11月後半をピークに再び下がり始めましたが、2020年2月12日の通期決算発表後に上昇しています。

中期経営計画「CARTA2022」では、EBITDA(税引前利益に特別損益、支払利息および減価償却費を加算した値)を重要指標として設定し、2022年度にEBITDA60億円、売上高を320億円を目指す方針を掲げています。

2019年は、EBITDA31億円という初年度目標に対し40.3億円と大きく上回り順調なスタートとなっています。2020年12月期は当初の計画を据え置く形で、売上高230億円(前期比0.3%増)、営業利益25億円(同18.9%減)、当期純利益16億円(同1.4%減)、EBITDA37億円と予想しています。

出典:2019年12月期 通期決算説明資料

インターネット広告市場は年々拡大しており、2020年度には2兆円を超え、2023年度には約2.8兆円まで拡大すると予測されています。現時点ではCCIのメディアレップが大きな利益を生んでいますが、今後はVOYAGE GROUPが得意とする検索連動型広告や動画広告などの運用型広告が一層拡大することが予想され、経営統合のシナジーの活用が期待されます。

このほか、業績飛躍のための重点的な取り組みのひとつとして「電通グループとの協業推進」、成長戦略のひとつとして「M&Aや投資による成長」を掲げており、このあたりの取り組みがいつどのような形であらわれるのか注目されます。

この記事の執筆者

自動車・IT系が得意。分かりやすい記事を発信できるよう努めます。