【本決算】山崎製パン、株価急反発 不二家やデイリーヤマザキ不調でリストラ中

【本決算】山崎製パン、株価急反発 不二家やデイリーヤマザキ不調でリストラ中

売上高が1兆円を超え、国内製パン業界で圧倒的首位の山崎製パン。食品メーカー売上8位を誇り、不二家や東ハト、ヴィ・ド・フランス、ヤマザキビスケット、31アイスクリーム、サンデリカなどをグループ子会社に擁していますが、19年12月期は子会社群が4億円の赤字となりました。財務諸表などに基づき会社の現状と課題を整理します。


損益計算書(PL):売上利益がともに微増

山崎製パンの2019年12月期決算は、売上高が前期比0.2%増の1兆612億円、営業利益は同2.0%増の248億円で増収増益でした。

売上原価は前期比0.7%増の6864億円で、粗利率は同0.3pt減の35.3%とわずかに悪化。販管費は前期比0.9%減の3500億円に抑えましたが、営業利益率は前期と変わらず2.3%となっています。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比2.4%増の139億円でした。

なお、本体の山崎製パンの営業利益は9億円の黒字でしたが、子会社群は4億円の赤字でした。

2020年12月期の業績は、売上高が1兆760億円(前期比1.4%増)、営業利益が275億円(同10.8%増)、当期純利益が150億円(同8.2%増)と予想されています。

出典:2019年12月期決算説明会

セグメント分析:主力は菓子パン、デイリーヤマザキは赤字

山崎製パンは、食パン・菓子パン・調理パンをはじめとしたパン類から、ショートケーキ・和菓子に至るまで幅広い製品を製造、販売しており、ベーカリーの経営やコンビニエンスストア事業の展開もしています。報告セグメントは、以下の3つに分かれています。

  • 食品事業:パン、和・洋菓子、調理パン・米飯類、製菓・米菓等の製造販売
    • 食パン部門:「ロイヤルブレッド」「ふんわり食パン」「特撰超芳醇」など
    • 菓子パン部門:「ランチパック」シリーズ、「薄皮」シリーズ、「まるごとソーセージ」、「カレーパン」、「塩バターフランス」など
    • 和菓子部門:蒸しパン、串団子、大福、まんじゅう、どら焼きなど
    • 洋菓子部門:ケーキ、シュークリームなど
    • 調理パン・米飯類部門:サンドイッチ、弁当、おにぎりなど
    • 製菓・米菓その他商品類部門:「チップスター」などのスナック、ビスケット、あられ、煎餅など
  • 流通事業:コンビニエンスストア事業(デイリーヤマザキ)
  • その他事業:物流事業、食品製造設備の設計、監理及び工事の請負、事務受託業務及びアウトソーシング受託、損害保険代理業、食品製造機械器具の洗浄剤の製造販売等

主要な子会社には、洋菓子で有名な「不二家」や、調理パン・米飯類の「サンデリカ」、製菓の「ヤマザキビスケット」や「東ハト」、ベーカリーカフェの「ヴィ・ド・フランス」などがあります。

出典:2019年12月期決算説明会

2019年12月期の売上高の内訳は、食品事業が93.8%の9957億円、流通事業(デイリーヤマザキのコンビニ事業)が5.1%の537億円、その他事業が1.1%の118億円です。

食品事業の売上高構成比(対全体)は、食パン部門が9.1%の966億円、菓子パン部門が34.1%の3615億円、和菓子部門が6.7%の710億円、洋菓子部門が12.9%の1374億円、調理パン・米飯類部門が15.2%の1609億円、製菓・米菓・その他商品類部門が15.8%の1683億円となっています。

同セグメント利益は、食品事業が242億円、流通事業が16億円の赤字、その他事業が19億円で、食品事業が利益の大半を生んでいます。食品事業の成長率は前期比4.1%増ですが、2015年12月期からは9.8%減っており、流通事業は赤字が続いています。 

近年は消費者の節約志向により、どの部門も伸び悩んでおり、主力の菓子パン部門でも前期比0.5%増にとどまっています。ここ数年で見ても、調理パン・米飯類が2015年12月期から13.8%増と伸びている他は微増どまりです。

出典:2019年12月期決算説明会

子会社では、サンデリカや東ハトは堅調に売上を伸ばしていますが、不二家はコンビニの急増による競争激化で洋菓子事業の収益性が大きく悪化しており、不採算店舗の閉店を進めています。

なお、2008年より山崎製パンの子会社となった不二家は東証一部に上場しています。2019年12月期の決算短信によると、不二家洋菓子チェーン店の営業店舗が前期差33店減の829店となったことなどにより、売上高が前期比1.8%減、営業利益が同23.9%減となっています。

同チェーン店の営業店舗数は、2015年末の986店から2019年末の829店まで、4年間で15.9%に当たる157店が減っていることになります。

出典:不二家 2019年12月決算短信

キャッシュフロー計算書(CF):営業CF増加で資金に余裕

2019年12月期の営業CFは前期比15.9%増の579億円でした。主に、未払消費税等の増加や法人税等の支払額の減少によるものです。

これに伴い、売上を通じて現金を稼ぐ力を測る営業CFマージンも同0.8pt増の5.5%に改善したものの、食料品業の平均5.7%をわずかに下回っています。

投資CFはマイナス422億円で、マイナス額は前期比13.9%減です。主に、有形固定資産の取得による支出が減少したことによるものです。

これらにより、フリーCFは前期比16.7倍の157億円と大幅に増えており、資金に余裕が出てきています。

財務CFはマイナス185億円で、マイナス額は前期比22.1%減。主に、自己株式の取得による支出が減少したことによるものです。

貸借対照表(BS):固定比率が高いが財務安定性に問題なし

2019年12月期末の資産合計は前期比0.2%減の7281億円。流動資産は同0.5%増の2618億円、固定資産は同0.6%減の4663億円です。

固定資産の減少は、主に、米国子会社ベイクワイズ ブランズ,Inc.およびトム キャット ベーカリー,Inc.の2社を新規連結したこと等に伴い、投資有価証券が減少したことによるものです。

流動負債は前期比0.3%減の2241億円固定負債は同10.3%減の1457億円です。主に、社債を含めた借入金の減少や、退職給付に係る負債の減少によるものです。純資産合計は前期比4.6%増の3584億円でした。有利子負債残高は前期比14.0%減の767億円となっています。

短期の支払能力を測る流動比率は前期比0.9pt増の116.9%。流動比率は一般に120%以上であれば安全とされ、100%を下回ると財務安全性に不安があるとされます。山崎製パンは安全ラインをやや下回っていますが、負債は減少傾向にあり、財務安全性に問題はありません。

長期の支払能力を測る固定比率は前期比7.4pt減の142.5%。固定比率は低いほどよく、100%を超えると借入によって固定資産を購入していることになります。

なお、食品製造メーカーは工場などの固定資産が多く、同じ製パン業界の井村屋グループは125.5%、中村屋は140.7%、第一屋製パンは150.4%、日糧製パン217.2%といずれも100%を超えており、必ずしも高すぎるので財務安定性が低いとはいえないでしょう。

長期的視点での財務安全性を測る株主資本比率は前期比2.1pt増の44.9%。株主資本比率は、業種によっても異なりますが一般に30%で安全とされ、安全ラインは超えているものの優良企業とされる50%には届いていません。

投資分析:ROE・ROAは競合より低い

2019年12月期の親会社株主に帰属する当期純利益は前期比2.4%増の139億円と増えていますが、資産が大きいため収益性の指標は前期とほぼ変わらず、ROE(自己資本利益率)は前期と同じ4.3%、ROA(総資産利益率)は同0.1pt増の1.9%でした。

同じ製パン業界の中村屋(ROE3.0%、ROA1.7%)や日糧製パン(ROE1.1%、ROA0.1%)よりは上回っているものの、井村屋グループ(ROE9.6%、ROA3.7%)と比べるとだいぶ下回っており、収益力の強化が求められます。

EPS(1株当たり利益)は前期比2.5%増の63.75円。BPS(1株当たり純資産)は純資産の増加により同4.6%増の1505.37円となっています。

配当性向は前期比0.7pt減の31.4%で、下がっているものの上場企業平均の約30%は上回っています。今期の配当金は、前期と同じ20.0円で、2020年12月期は2円増配の22.0円の予定となっています。

まとめ:20年12月期は子会社の業績が回復

山崎製パンの株価は、2020年2月から3月前半にかけて、世界同時株安の影響で下落しました。しかし、トランプ政権が最大1兆2000億ドル(約129兆円)規模の景気刺激策を検討していると報道され、3月17日に主要銘柄の株価が大きく反発。山崎製パンの株価も急上昇しています。

製パン業界の各社は、小麦粉をはじめとした原材料価格の高騰、人件費増加、物流コスト増加などにより厳しい経営環境にあります。しかし、山崎製パンは微増ですが売上を伸ばしています。

2020年12月期は、主力のランチパックについて、ラインアップの充実、ランチパック用食パンの品質向上に取り組み、売上拡大につなげていく計画です。

また、2019年12月期は単体業績が子会社の業績不振をカバーしましたが、2020年12月期計画では主要子会社が全て増収増益となる予想です。

サンデリカは、近年の調理パンのニーズの高まりや最先端の炊飯設備を活用した米飯の品質向上と新製品開発、量販店やコンビニエンスストアチェーンとの取引強化などにより大きく伸びる予想となっています。また、2019年12月期に不調だった不二家やヤマザキビスケットも売上、利益ともに回復する見込みです。

出典:2019年12月期決算説明会

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