【本決算】大塚製薬を擁する大塚HDが好調 グローバル4製品で4期連続増収増益

【本決算】大塚製薬を擁する大塚HDが好調 グローバル4製品で4期連続増収増益

大手医薬品メーカーの大塚製薬を傘下に擁する大塚ホールディングス。「ポカリスエット」「カロリーメイト」「オロナミンC」で知られますが、抗精神病薬や抗がん剤などのグローバル製品が利益の大半を生み、成長率も大きくなっています。2020年12月期も増収増益予想。財務諸表などを基に会社の現状と将来性を整理します。


損益計算書(PL):4期連続の増収増益

大塚HDの2019年12月期決算は、売上高が前期比8.1%増の1兆3962億円、営業利益は同63.0%増1766億円。増収増益は4期連続です。

2015年4月に抗精神病薬「エビリファイ」が米国で特許切れを迎え、業績が一時落ち込みましたが、現在は後述する「グローバル4製品」の売上が伸びて業績が回復しています。

売上原価は前期比2.1%増の4513億円に抑え、粗利率は同1.9pt増の67.7%。販管費も前期比3.6%増の7684億円に収め、営業利益率は同4.2pt増の12.6%に改善しています。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比54.1%増の1272億円と大きく伸びています。

また、今期より営業利益から減損損失とその他の収益・費用を除いた経常的な収益力を示す指標として「事業利益」を採用しています。事業利益は前期比54.8%増の1872億円でした。

なお、2020年12月期の業績は、売上高が1兆4450億円(前期比3.5%増)営業利益が197億円(同11.6%増)、当期純利益1450億円(同14.0%増)と予想されています。

セグメント分析:主力は医薬品の「グローバル4製品」

大塚ホールディングスは、大塚製薬が株式移転により親会社として設立した持株会社です。大塚グループは、大塚製薬をはじめとする子会社167社、関連会社27社で構成され、事業の核をヘルスケアに置いて、国内・海外で医薬品や栄養補助食品などの製造、販売を行っています。事業セグメントは以下の4つに分かれています。

  • 医療関連事業:治療薬及び輸液等の製造販売
  • ニュートラシューティカルズ関連事業:機能性飲料(ポカリスエット、オロナミンC、チオビタ・ドリンクなど)、栄養補助食品(カロリーメイト、SOYJOYなど)、医薬部外品の製造販売
  • 消費者関連事業:ミネラルウォーター、嗜好性飲料及び食品等の製造販売
  • その他の事業:商品の保管、保管場所の提供、化学薬品及び液晶評価機器・分光分析機器他の製造販売

出典:2019年度決算説明資料

2019年12月期の売上高の構成は、医療関連事業が66.2%の9243億円(前期比13.1%増)、ニュートラシューティカルズ関連事業が23.9%の3338億円(同1.4%減)、消費者関連事業が2.4%の336億円(同0.3%減)、その他の事業が7.5%の1047億円(同2.0%増)でした。

医療関連事業の増収は、グローバル4製品(抗精神病薬「エビリファイメンテナ」「レキサルティ」、利尿薬「サムスカ/ジンアーク」、抗がん剤「ロンサーフ」)の伸びによるものです。その他の医薬品が前期比1.9%増なのに対して、グローバル4製品は同34.9%増で、医療関連事業全体の40.1%を占める3751億円となっています。特に、2018年5月に米国で発売したジンアークが大きく売上を伸ばし、サムスカ/ジンアークの売上は前期比65.1%増の1491億円となりました。

セグメント利益は、医療関連事業が73.3%の1613億円、ニュートラシューティカルズ関連事業が17.8%の392億円、消費者関連事業が4.0%の89億円、その他事業が4.9%の109億円となっており、グローバル4製品が自社製品で利益率が高いことから、医療関連事業が前期比90.2%増と大きく伸びています。

出典:2019年度決算説明資料

キャッシュフロー計算書(CF):営業CFは増加傾向

2019年12月期の営業CFは前期比41.8%増の1926億円でした。主に、税引前当期利益の増加や、IFRS第16号の適用に伴う従来のオペレーティング・リース契約に係る使用権資産の減価償却費及び償却費の増加によるものです。

これに伴い、売上を通じて現金を稼ぐ力を測る営業CFマージンも同3.3pt増の13.8%に改善しています。

投資CFはマイナス523億円で、マイナス額は前期比44.0%減です。主に、前期に発生したリコーメディカル Inc.及びビステラ Inc.の買収による支出がなくなったことによるものです。

フリーCFは前期比230.4%増の1404億円。営業CFの増加に伴い増えており、資金が潤沢になっています。

財務CFはマイナス893億円で、マイナス額は前期比0.1%増。2019年3月の国内無担保普通社債の発行による収入が800億円ありましたが、IFRS第16号の適用に伴いリース負債の返済による支出が増加したことや、アバニア買収資金の返済等に伴う長期借入金の返済による支出が増加したことで、全体では微増となりました。

貸借対照表(BS):財務安全性に問題なし

2019年12月期末の資産合計は前期比4.2%増の2兆5813億円。流動資産は同5.9%増の9884億円、固定資産は同3.2%増の1兆5930億円です。

流動資産の増加は、主に、現金及び現金同等物の増加によるものです。業績が堅調に推移したことに加え、2019年3月に国内無担保普通社債800億円を発行し借入金返済をしたことで増えています。

固定資産の増加は、主に、有形固定資産の増加によるものです。IFRS第16号の適用による影響や、医療関連事業の徳島美馬工場、松茂工場の生産設備への投資等により増えています。

流動負債は前期比3.1%増の4409億円。社債及び借入金は減少したものの、リース負債や未払法人所得税が増えています。固定負債は同8.9%増の3450億円です。こちらも、社債及び借入金は減少していますが、リース負債が増えています。純資産合計は同3.6%増の1兆7954億円でした。有利子負債残高は同18.4%増の2533億円となっています。

短期の支払能力を測る流動比率は前期比5.9pt増の224.2%。流動比率は一般に120%以上であれば安全とされ、安全性に問題はありません。

長期の支払能力を測る固定比率は前期比0.4pt減の90.2%。固定比率は低いほどよく、100%を超えると借入によって固定資産を購入していることになります。大塚ホールディングスは有形固定資産や無形資産の他に、のれんやその他の金融資産も多いため固定比率が高くなっていますが、安全性に問題はありません。

長期的視点での財務安全性を測る株主資本比率は前期比0.4pt減の68.4%。株主資本比率は、業種によっても異なりますが一般に50%以上で優良企業とされ、良好な水準です。

投資分析:ROE・ROAは競合他社と比べてやや低い

2019年12月期の親会社株主に帰属する当期純利益は前期比54.1%増の1272億円でした。これに伴い、ROE(自己資本利益率)は同2.6pt増の7.3%で、ROA(総資産利益率)は同1.7pt増の5.0%と改善しています。

しかし、競合となる製薬会社をみてみると、武田薬品工業(ROE3.1%、ROA1.2%)、第一三共(ROE7.8%、ROA4.7%)、エーザイ(10.4%、ROA6.0%)、アマテラス製薬(ROE17.6%、ROA11.8%)、中外製薬(ROE19.6%、ROA15.9%)となっており、大塚ホールディングスは競合と比べるとやや低めの水準です。

EPS(1株当たり利益)は前期比54.1%増の234.55円。BPS(1株当たり純資産)は純資産の増加により同3.5%増の3257.17円となっています。

配当性向は前期比23.1pt減の42.6%で、下がっているものの上場企業平均の約30%は上回っています。今期の配当金は、前期と同じ年100.0円(中間配当50.0円、期末配当50.0円)で、2020年12月期も変わらない予定となっています。

まとめ:利益成長率の目標を上方修正

大塚ホールディンスの株価は、アルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション)を対象とした「AVP-786」の2本目のフェーズ3試験結果速報で、統計学的に有意な改善は見られなかったと発表されたことを受けて、2019年9月30日に株価が急落しました。

しかしその後は、中国での抗がん剤の発売や、「ポカリスエット」など主要3ブランドのグローバル展開加速が報じられ、株価は上昇、2020年2月7日には5158円まで上がりました。

2月後半以降は、新型コロナウイルス肺炎による世界同時株安の影響で株価は下がり、3月18日には3224円の安値をつけましたが、現在は3800円台に戻っています。

第3次中期経営計画策定時は、2018年~2023年の事業利益の年平均成長率を10.6%としていましたが、グローバル4製品の好調な業績を受けて目標を見直し、13%以上に上方修正しました。

また、2023年の売上高目標は、2018年から4080億円増の1兆7000億円で、グローバル4製品は2000億円増を目標としており、2020年12月期で1400億円の売上増を達成する見込みです。さらに、2019年以降に発売される新製品群によって900億円の増加を見込んでいるとのことです。

今後は、グローバル4製品の価値最大化に取り組むとともに、持続的な成長に向けて積極的に研究開発投資を行う計画で、2020年は片頭痛治療薬フレマネズマブなど5新薬を申請する予定となっています。

この記事の執筆者

自動車・IT系が得意。分かりやすい記事を発信できるよう努めます。