2021年06月21日
建築用総合塗材において国内シェアトップに位置するエスケー化研への転職。採用面接は新卒の場合と違い、これまでの仕事への取り組み方や成果を具体的に問われるほか、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、一緒に仕事をする仲間として、多角的に評価されるので事前にしっかり対策しておきましょう。
エスケー化研は塗料市場の中で国内売上3位、建築用塗材では国内最大手の位置にいます。創業は1955年。2017年までの62年間、創業者の藤井實氏が社長を務めました。現在は長男である藤井実広氏が社長職を引き継いでいます。
長きにわたってトップが変わらなかったこと、同族経営であること、これらについて多くの口コミが寄せられています。目立つのは「古風」「古い体質」という表現。昔からの慣習が今も一部残っているようです。そのひとつが早朝業務で、エスケー化研の朝は午前8時15分開始のラジオ体操から始まります。その後は講話、上長からの話、経営理念の唱和と続き、内容が独特と評されています。他に掃除当番などが交代で割り当てられれば出社時間が7時台の日も。中途入社者は一連の早朝業務に慣れるまでに一定の時間を要するといいます。
エスケー化研は就業時間を8:30~17:00に定めていますが、同業他社と比較して特別早すぎるということはありません。一般的に建築業界を顧客とするメーカーはどの企業も早めの出勤時間となっていて、それは建築現場の作業開始時刻(朝8時)にあわせた動きをとるためと言われています。しかしエスケー化研には繁忙期と閑散期が明確に存在し、朝8時から夜22時ごろまでの勤務が連続する時期には、さすがに疲労を感じる社員が増え、慢性的な長時間労働を指摘する口コミが散見されます。社内では一部業務がいまだアナログ処理になっていて、勤務時間短縮のためにも業務システムのIT化を期待する声があがっています。
社風を一言で表すと「トップダウン」で、方針は上層部からおりてくるものという風土です。評価基準が曖昧であるため、社長からどう評価されるかが社内の行動基準になっているとの見方もあります。しかしながら平均勤続年数は15年以上で定着率は決して悪くはありません。というのも優秀な社員が在籍していて刺激的であるという声や、待遇面(賞与年3回、転勤が少なめ、住宅補助や家族手当が充実)に満足する社員が一定数おり、エスケー化研で定年を迎える古参の社員が全国各地に在籍しているからです。
毎年開催される社員旅行(費用はほぼ会社負担)の他に、全ての従業員を対象とする誕生日会、自由参加型のスポーツ系クラブ(ゴルフや野球)があり、社員同士が交流する機会が程よく設けられています。役員クラスと社員の間に序列があっても、社員間では軋轢を生むほどの厳しい上下関係があるという口コミはほとんど見当たりません。
自社商材に自信を持っている社員は多く、高機能・多機能かつ豊富なラインナップが業界から高い支持を得ていることで仕事が進めやすいようです。六本木ヒルズやスカイツリーをはじめ、国内建築物の3分の1に自社商材が使用されていること、また自己資本比率が80%以上で無借金経営ということも、働く社員にとって大きな安心感・安定感となっています。
時期によって募集職種が異なります。常時募集されているのは営業職(国内・海外)です。その他には事務職・生産管理・品質管理、工事管理職などの募集を行っています。
基本的な面接フローは以下の通りです。
●書類選考→ 一次面接と筆記試験→ 作文提出→ 二次面接→ 内定
一般事務職では面接が1回というケースもありますが、その他は2回です。筆記試験は会社独自の問題で簡単な計算問題が中心とのことです。1次面接は現場責任者、2次面接官は役員クラスが面接官となります。2次では社長が登場することもあるようです。2次面接の面接会場は大阪本社となり、飛行機や新幹線の交通費については会社から補助が出ます。
一次面接後に実施される作文のお題としては「私と仕事」といった、そこまで難易度の高いものではありません。どのようなテーマが出題されても、自己PRと絡めて書くとよいでしょう。
口コミによると、面接は穏やかな雰囲気で進むことが多く、特に一次面接は面接というよりも雑談に近い形式で行われるとのことです。質問内容もオーソドックスで、これまでの経歴や転職理由、志望理由をしっかりまとめておけば、対処できそうです。理路整然と自分の考えを淡々と伝えるタイプよりも、多少話の内容が前後しても熱意を込めて話すタイプを好むようなので、特に志望動機では、エスケー化研の魅力や自分がどのように貢献できるかについて、想いを込めて語るとよいでしょう。会社の魅力については経営の安定性や福利厚生面をあげるのではなく、絶え間ない技術革新によって生み出されるオリジナル商材の魅力について言及しましょう。
エスケー化研の中途採用では、未経験者を積極採用していません。人材不足により応募条件の緩和が始まっている印象ですが、異業種からの転職はやや難しいでしょう。営業職であれば、建築商材の取り扱い経験はともかく「有形商材の営業経験がある方」と応募条件と記されています。もし塗料以外・建築以外の業界出身者の人が応募する場合は、商材について主体的に勉強していく姿勢を面接内で繰り返しPRした方が良さそうです。
なお、口コミの中に「家族について聞かれる」というものが複数ありました。両親について年齢や勤務先などを尋ねられたようです。質問の意図は不明ですが、この種の質問には無理に答える必要はなく、できる範囲の回答で問題ありません。実際、詳細に答えずとも内定は出ています。
創業以来エスケー化研が右肩上がりに成長している背景には、トップレベルの技術開発力があります。高い開発力は同社の生命線であり、経営基盤の核。特に最近の開発キーワードとして掲げているのは下記です。
出典:エスケー化研 コーポレートサイトより
時代のニーズにあった商品をどこよりも早く提供する、それがエスケー化研の開発ポリシーです。樹脂や顔料など複数の素材の配合を工夫することで、毎年「国内初」「世界発」の新商品を販売。ここ数年のニーズとしては相次ぐ自然災害の影響から減災・リフォームの需要が多く、建物を強く長持ちさせるための商材開発を積極的に行っています。また自然環境への配慮から安全・安心・省エネを意識した商品作りにも定評があります。
塗料は液体のまま容器に収まっているだけでは価値を持たず、建築物に塗布されてはじめて価値を発揮します。顧客がどのような目的で、どんな効果を期待してその塗料を必要としているのか、かなり細かいヒアリングと専門的な提案力が必要になってきます。そして長ければ数年にわたって建設される物件もあることから、顧客と長期的に信頼関係を築けるスキルが必要と言えます。
エスケー化研に応募する際の自己分析としては、「顧客とよい関係を構築するために心掛けていること」や「顧客からの難易度の高いリクエストにどう応えてきたか」がないか過去経験振り返ってみることが大切です。こういったエピソードは、話のボリュームが膨らみがちになるので、結論を一旦最初に話し、そのあとに起承転結をつけてコンパクトに伝えるとよいでしょう。
エスケー化研の面接で聞かれる質問のひとつに「なぜエスケー化研か」があります。面接官がこの質問を通して知りたいのは、「この人は何をやりたいのか」「それが当社で可能なのか」「この人の経歴が当社でどう活かされるか」といった視点ももちろんですが、「本当に当社のことを理解しているか」という側面も合わせて見ています。
エスケー化研という企業についてしっかり理解する。そのためには、競合となりやすい企業の他社研究も忘れないようにしましょう。ただしエスケー化研は建築用塗材で約50%以上のシェアを持っているため、同じ市場内で比較研究してもあまり意味はありません。そのため塗料市場全体での競合先を対象としましょう。具体的には以下の企業です。
●ロックペイント株式会社
●関西ペイント株式会社
上記2社は、塗料業界を代表する2大メーカーで、建築用、工業用、船舶用と対象を限定せずに、幅広い用途向けの塗料を展開している企業です。どういった戦略で新商品を開発しているかなどの点で研究をすすめると有益でしょう。
このようにエスケー化研の採用面接を受ける前には、経営方針に紐づけた自己分析や他社研究を踏まえた志望動機の整理が大切です。面接の場では、比較的古風な職場でありながらも定着性のある職場環境であることを理解し、専門性や信頼構築力が求められる環境であることを意識して、それに沿った自己PRを行っていきましょう。
面接経験者が実際に聞かれた質問をご紹介します。これらの質問をされたらどのように答えるか、十分に考えながら面接対策しておきましょう。
エスケー化研の採用面接を受けるにあたって、ぜひ押さえておきたい重要なことをご紹介してきました。面接対策として準備しておきたいのは、以下の3つです。
●昔ながらの慣習が続く風土でありながらも、一方で次々と新商品を市場に送り出す開発力を有する、2つの側面を合わせもつ企業であることを認識する。商材や顧客の特性をよく理解し、そこから求める人物像を把握する。
●経営方針を理解した上で、顧客とどのように信頼関係を築いてきたか、専門性を高めるために取り組んだことを自己分析しながら言語化しておく。面接では相手に伝わりやすいように、結論から話すなど内容の構成に注意していく。
●競合他社についても研究をすすめ、「なぜエスケー化研か」に対する答えを明確にしておく。
これらについて入念に準備して、面接当日は自分の言葉でアピールするよう心がけましょう。
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