2021年06月21日
農林水産業者の系統中央機関として1923年に設立された農林中央金庫(以下、農林中金)。採用面接は新卒の場合と違い、仕事への取り組み方やこれまでの成果を具体的に問われるほか、「個性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので、事前にしっかり対策をおこない転職を成功させましょう。
農林水産業者の協同組織を基盤とした金融機関である農林中金。農林水産業の発展に寄与するため、JA(農協)、JF(漁協)、JForest(森組)などに対して金融の円滑化を図っています。一方で、国際金融の世界では日本最大級の機関投資家として認知される存在です。現在、「食農ビジネス」「リテールビジネス」「投資ビジネス」という3つのビジネス領域に主軸を置いています。
そんな農林中金の口コミで印象的なのが、「第一次産業に貢献することにやりがいを感じる」というものです。これは、他の金融機関にはない、同庫ならではコメントだと言えるでしょう。また、「少数精鋭ということもあり、若いうちに大きな仕事を任せてもらえる」「優秀な職員が多いので勉強になる」といったコメントも多く見られます。報酬や出世は年功序列制ではあるものの、「成長しようという職員に応えてくれる制度が整っている」とのこと。また、「社内のイベントが多く、職場のみんなとオンオフともに楽しくやりたいという人には向いている組織」「アットホームな会社」というように、チームワークや風通しの良さがうかがえるコメントが目立ちました。
総じて、風通しが良く、社会貢献や成長への意欲が重視される社風の農林中金。面接では、こうした社風に合致する人材であるかどうかが見極められます。
農林中金では現在、「総合職」「特定職」「地域職」「DI(デジタルイノベーション)」で中途採用をおこなっています。総合職は、国内外の転勤をともなう職種です。それぞれの職種の特徴や人材要件については、公式サイトに設けられたキャリア採用サイトで確認してください。サイトには、職員のインタビュー記事なども掲載されていますので、必ず目を通してイメージを掴んでおきましょう。
応募は専用フォームよりエントリーし、書類選考を通過した場合に、適性検査および面接(複数回)がおこなわれます。総合職・特定職は東京本店、地域職は応募した支店での面接となります。なお、DI以外は、原則として3年以上の金融業務経験を有することが応募条件となっていますので注意してください。
同庫の案件を扱うエージェントもありますので、相談してみるのも一案でしょう。キャリコネにも情報が掲載されていますので、参考にしてみてください。
「志望動機」や「なぜ銀行ではなく農林中央金庫なのか」といったオーソドックスな質問が中心となります。同庫の特色を理解した上で、キャリアの棚卸しをおこない、印象に残る回答につなげたいところです。面接官に対して「前向きな転職」と印象づけられるよう、前職での不満を並べるのではなく、転職によって何を成し遂げたいのか、自分がどう成長したいのかといった点に焦点を当ててみるとよいでしょう。
それぞれの回答にはしっかりとしたロジックが求められます。ある面接経験者は、在職中に主体的に取り組んだ経験を話したところ、「それは上位下達で取り組まされただけでは?」と面接官に投げかけられたとのこと。こうした深堀りに対する備えが必要なのはもちろん、面接官を納得させるためには具体的かつ理路整然と話すことが大切です。
採用面接を受ける前に、同庫の中期的な方向性を理解しておきましょう。
農林中金では、2019年度から2023年度を対象とした中期経営計画「変化を追い風に、新たな価値創造へ挑戦」を策定しています。この計画の背景にあるのは、これからの10年に予想される非連続な環境変化です。この変化を追い⾵に、新たな価値創造へ挑戦するためには、「お客様起点のビジネス」と「農林水産業の成長牽引」が重要であり、それを可能とするために、「デジタルイノベーション」「業務の革新」「持続可能な財務基盤」が必要であるとして、この5つを基本方針に定めています。
農林中金 中期経営計画資料より
「⾷農ビジネス」「リテールビジネス」「投資ビジネス」という3つのビジネス領域にくわえ、各ビジネスを⽀えるコーポレート体制のもと、以下の重点戦略に取り組む方針です。
農林中金 中期経営計画資料より
「⾷農ビジネス」では、地域の家族経営を⽀えつつ、⽣産者・産業界・消費者をつなぐ⾷農バリューチェーンの架け橋となるべく、さらなる機能強化を通じて⾦融サービスを越えた総合的なソリューションを提供するとしています。
「リテールビジネス」では、貸出の強化により、⾦融仲介機能を⼀層発揮し、地域の資⾦循環を通じた農漁業の振興や地域おこしにつなげる考えです。
「投資ビジネス」では、これまで培ってきた投資スキルを活かし、投資家へ新たな運⽤機会を提供して、基礎収益⼒の向上を目指す考えです。
さらに、顧客の利便性向上に向け、多様なテクノロジーを積極的に活⽤すると同時に、イノベーションラボを開設してオープンイノベーションを促進していきます。5年間で総額600億円を投資し、デジタルイノベーションを推進していく方針です。
こうした戦略は採用や人材育成戦略にも直結するものです。同庫がおかれた環境や課題を把握し、中期的な方向性を見据えたうえで、今後の成長に寄与できる人材であることをアピールしましょう。
面接では「なぜ農林中金か」という質問に対する回答が重要視されます。面接官は回答を通じて、「応募者はどのような仕事をしたいのか」「それは農林中金で実現可能なのか」ということに加え、「農林中金についてどれくらい理解しているのか」を確認しようとしています。一般的な金融機関との違いについてはもちろん、業界での位置づけも把握しておきましょう。
そのためには、他社研究が不可欠です。競合となりうる企業と比較しながら各社の事業規模や特徴をつかめば、同庫の独自性やポジショニングがより鮮明に見えてくることでしょう。同庫は、農林水産業を金融面から支える役割のほかに、食農バリューチェーンの架け橋としての顔、日本を代表する機関投資家としての顔などをあわせ持ちます。そのため、どの領域に携わりたいのかよって、研究対象となる企業も変わってくるでしょう。以下を参考に、自分なりの軸を定めて他社研究を進めてみてください。
●株式会社日本政策投資銀行
●株式会社商工組合中央金庫
●株式会社ゆうちょ銀行
●株式会社三菱UFJ銀行
農林中金の組織風土や目指す方向性、必要とされる人材像などが具体化してきたことと思います。
さまざまな顔をあわせ持つ金融機関である農林中金では、本人のやる気次第で多くの成長機会が用意されています。少数精鋭の組織の中で、どんな挑戦をしたいのか、仕事を通じて社会にどう貢献したいのかといったビジョンが大切です。非連続な変化を追い風に新たな価値創造に舵を切った農林中金。持続的成⻑と社会への価値提供の実現に向けて、意欲的に挑戦できる人材と印象づけられるよう、さまざまなエピソードを準備しておくとよいでしょう。
面接経験者が実際に聞かれた質問をご紹介します。これらの質問をされたらどのように答えるか、自分なりにシミュレーションしながら面接対策をおこなってください。
農林中金の採用面接を受けるにあたって、ぜひ押さえておきたい重要なことをご紹介してきました。面接対策として準備しておきたいのは、以下の3つです。
●協調性と積極性を重んじる社風の中で、仕事を通じて第一次産業と社会の発展に貢献する気概を伝える。
●中期経営計画を理解し、これに沿った自己分析をおこない、自己PRにつなげる。
●競合他社について研究し、「なぜ農林中金か」に対する答えを明確にしておく。
これらについてしっかりと準備して、面接当日は自分の言葉でアピールするよう心がけましょう。
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