2021年06月21日
世界一のシェアを誇るファスナーメーカーとしてその名を馳せるYKKへの転職。中途採用面接は新卒の場合と違い、これまでの仕事への取り組み方や成果を具体的に問われるほか、「人間性」も評価されます。即戦力として、一緒に仕事をする仲間として、多角的に評価されるので、事前にしっかり対策して転職を成功させましょう。
ファスナー業界において世界で45%ものシェアを誇り、70カ国以上に拠点を持つYKK。創業以来、変わらずその経営の根本にあるのが「善の循環」という考え方です。公正な活動による企業繁栄が社会の繁栄に貢献する。それにより企業のさらなる繁栄が可能となるのであり、社会と企業はこの善の循環によってともに繁栄の道を目指すものである。善という価値観と利他の精神とを根底に置いた創業者のその考えは今も「YKK精神」として重視され、社員に浸透しています。社会に与える影響を常に考える姿勢には、トップ企業ならではの気概が感じられます。
口コミによると、社風は真面目で保守的。製品のシェアが圧倒的で危機意識が低いせいか、アグレッシブに成果を追い求めるタイプの社員は少なく、全体的におっとりした社員の多い穏やかな雰囲気であることが浮かび上がります。あっと驚くような新製品の開発よりは、既存製品の改良や生産効率向上に力を注ぐ傾向があるようです。既にある技術に満足せず、より価値ある商品へとグレードアップに挑み続けるのがYKKの生産姿勢と言えます。しかし、「その点では面白いとは言えない」「やりがいを感じない」という口コミもあり、時代の最先端を行く製品をつくりたい…という人には向かない社風かもしれません。一方、のんびりとした企業風土の中でマイペースにキャリアアップしたい人にはうってつけの社風でしょう。
またYKKはどの市場にも上場しておらず、今後も上場の予定はありません。筆頭株主は社員持株会であり、経営戦略(中期経営計画)は発表されているものの、その施策の仔細までは公表されていません。トップ企業の座を守るために閉鎖的な体制となっており、この点が社風に及ぼす影響は少なくないでしょう。
まとめると、YKKには「保守的で閉鎖的ではあるが、トップ企業としての気概と穏やかさのある社風」があると言えます。採用面接では、こうした社風にフィットする人材かどうかを見極められます。
書類選考通過後、適性検査を経て、通常2回の面接があります。最終面接通過後、必要書類をすべて提出すると正式な内定が出るというプロセスとなっています。最終面接は役員クラスが面接官となることが多いようです。
面接では突飛な質問をされることは少ない代わりに、業界展望や自社(YKK)の将来像についてなど、思考力を問われる質問が多いようです。「(面接で)場当たり的に回答した結果、不合格を確信した」という口コミもありました。面接に挑む前には入念な準備が必要です。詳しくは次項をご覧ください。
YKKでは、技術者や開発者から管理部門担当者まで、幅広く中途採用の募集を行っています。自分の希望する職種ではどのような知識や技術が活かせるのか、またそれを面接の場でどのようにアピールできるのか熟考とシミュレーションの上、面接に臨みましょう。
極端な質問や、意表をつく内容の質問はあまりないものの、口コミによると「なぜ」「どのように」という切り口で応募者の考え方や人柄を探る質問が多いようです。「日本の製造業が衰退している一番の理由は何か」と聞かれた人もおり、イエスかノーかでは終わらない質問が多々見受けられます。
YKK精神「善の循環」の考え方を反映してか、自社のみならず業界全体や社会を良くする策・方向性を考えることが良しとされるようです。日頃から自分のいる業界や仕事について深く追求する姿勢が求められています。面接前に一度、「志望動機」「自分なりの業界展望」「自分の志向・性格」などについてじっくり考えをまとめておきましょう。小手先の回答は無意味なことが多いようですが、念のため多少アレンジの利く回答も用意しておくと役立つ可能性は高いでしょう。
また、海外拠点が多いYKK。海外勤務についてどう考えているか問われることもあるようです。いい加減な回答をしてしまうと、入社してから会社の指示と自分の意志とのミスマッチを招きます。面接前に海外勤務についての自分の考え方や状況的な可否を再確認しておく必要があります。
YKKの面接を受ける上では、中期経営計画を理解しておくことが不可欠です。現在YKKは、グループ全体で掲げる第5次中期経営計画(2017~2020年度)に取り組んでいます。
『YKK第5次中期経営計画』
この計画においては「Technology Oriented Value Creation『技術に裏付けられた価値創造』」がグループビジョンとなっており、YKKは「ものづくりの進化と革新」をテーマとして「さらなる量的成長」を掲げ、営業利益・ファスナー販売本数ともに増加を目指します。特にファストファッションや欧米量販店向け商品(リーズナブルなStandard商品)を最重要カテゴリーとし、その拠点であるアジア・中国への投資をさらに増やすことによって生産体制をより堅固なものにしていく方針です。近年のファストファッション台頭により、YKKの競争の舞台はローコストファスナー製造へと移行しつつあると言えます。
YKKの強みはファスナー製造の専用機械を内製できる力があることです。この一貫生産体制により、需要をダイレクトに反映した品質向上が叶うとともに、企業秘密の保持も可能となります。YKKの競争優位性を保つこの仕組みを理解しておくことも重要です。
さらに、中期経営計画の根幹には、社風の項で触れたように「善の循環」(YKK精神)という考え方が存在し、この考えにおいては社会への貢献や利他の精神あってこそ企業の繁栄があります。中期経営計画に沿った利益追求だけではなく、社会で価値を発揮する製品を作ろうとする意気込みがある人材が求められていると言えるでしょう。
また、YKKの経営理念は下図のようになっています。
YKKコーポレートサイトより
「価値」は中期経営計画のビジョンにも含まれている、YKKを語る上で重要なキーワードであり、「公正」もまたYKK精神を実践するために欠かせない要素です。社会と企業活動をめぐるこれら7つの要素が揃って初めて、YKKらしい製品生産と戦略展開が可能になるのです。
YKKの経営においては、中期経営計画・YKK精神・経営理念の3つは密接な関係にあると言えます。中途採用面接にあたっては、この3つをしっかり理解しておくことが必要です。
YKKの面接でよく聞かれる質問のひとつに「なぜYKKか」というものがあります。面接官がこの質問を通して知りたいのは、「この人物は何をやりたいのか」「それが当社で可能なのか」「この人の経歴が当社でどう活かされるか」といった視点ももちろんですが、「本当に当社のことを理解しているか」という側面も合わせて見ています。
業界理解や職種理解の枠を超えて、YKKという企業についてしっかりと理解する。そのためには通常、競合となりやすい企業の他社研究を行うのが近道ですが、約90%もの国内シェアを占めるYKKには競合と呼ぶべき企業が見当たりません。
「なぜ他社ではないのか」と聞かれる可能性は低い代わりに、「なぜYKKなのか」という問いへの理路整然とした回答が求められるでしょう。「シェアNo.1だから」という回答では、志望動機としては弱いと言えます。YKK精神・経営理念・中期経営計画のすべてを自己分析に落とし込み、業界の特性も交えて「自分なりのブレない志望動機」を作り上げましょう。
このようにYKKの採用面接を受ける上では、経営戦略に基づいた自己分析や他社研究を踏まえた志望動機の整理が大切です。そして面接の場では「保守的・閉鎖的だがトップ企業ならではの気概と穏やかさのある社風」を意識して、「YKK精神を理解して、社会で価値を発揮する製品づくりに貢献できる人材」であると印象づけられるよう、さまざまなエピソードを準備しておくといいでしょう。
面接経験者が実際に聞かれた質問をご紹介します。これらの質問をされたらどのように答えるか、しっかりと考えながら面接対策しておきましょう。
YKKの採用面接を受けるにあたって、ぜひ押さえておきたい重要なことをご紹介してきました。面接対策として準備しておきたいのは、以下の3つです。
YKKの「保守的・閉鎖的ではあるが、トップ企業ならではの気概と穏やかさのある社風」を理解し、それに合致した行動がとれる人材であることをアピールする。 YKKの中期経営計画と「YKK精神」、経営理念をすべて理解した上で、これに沿った自己分析を行い、自己PRへとつなげる。 自己分析はもちろん、YKKおよび業界についての理解を深め、「なぜYKKなのか」に対する答えを明確にしておく。この記事の執筆者