2021年06月21日
ホンダ系列会社として自動車やオートバイのダンパーなどを主力に製造してきたショーワへの転職。採用面接は新卒の場合と違い、これまでの仕事への取り組み方や成果を具体的に問われる他、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策しましょう。
同社は1938年(昭和13年)に設立、戦後は一貫して二輪・四輪用装置を開発・製造してきており、二輪分野ではトップシェアを誇る、本田技研工業(ホンダ)の系列会社です。また、各種オートバイレースに参加しており、バイク好きの間では名の知れた会社です。さらに、アジア諸国、米国、南米、欧州と世界中に拠点を持つグローバル企業でもあります。
一方で「町工場のよう」という口コミが見られることから、同社は世界水準の技術を誇りつつ、日本のものづくり風土が残っていることが社風の一つとして考えられます。
仕事の進め方としては、トップダウンをあげる声が多く見られます。これは大手傘下企業にはよくあるケースで、親会社の意向が系列会社にも影響するという点が関係しているかもしれません。
なお、福利厚生について不満の声は見られないことから、同社は日本型ものづくりの精神がいまも続く中、自分に課せられた仕事にいそしむことで安定した収入を得られる、日本的経営企業であると言えるでしょう。
しかしこのような社風は近い将来、変わるかもしれません。2019年10月30日に、日立製作所、ホンダ、日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業の6社が経営統合すると発表されました。最終統合会社は日立オートモティブシステムズとなり、また持株率の66.6%が日立となることから、今後は日立色が濃くなっていくことが予想されます。
口コミを見ていくと、日立オートモティブシステムズの社風もいわゆる日本的企業のようですが、2020年3月現在の代表取締役 社長執行役員&CEO(2018年着任)は海外企業でキャリアを積んだスイス人であることから、合併を機に、今後は社風が外資系化していくことも考えられます。
同社への応募方法は二通りあります。
1. 履歴書と職務経歴書を本社の「総務部 人事・労政課 キャリア採用担当」に郵送する
2. 転職サイト、または転職エージェントに登録して応募
いずれも書類選考後、適性(筆記)試験を行い、面接2回を経て内定となります。事業所ごとに募集職種が異なりますが、選考プロセスは同様のようです。1回目は配属予定部署の管理者、2回目は役員面接となります。
選考期間は1~2週間と比較的早く、転職エージェントを通して応募した人の中には面接当日に合否を聞いたという人もいるため、同社と応募者とのマッチ度が高ければ即決となることが期待されます。
現在の募集職種は「開発(設計・研究・試作)」「電装開発(制御システム)」「経理」の3種です。開発の仕事は事業所ごとに異なります。また開発職はもとより、経理職であっても国内外への転勤の可能性があるとなっていますので、応募時にしっかり確認をしましょう。
志望動機や転職理由といったオーソドックスな質問のほか、開発職の場合は、これまで設計や検証業務で培ったスキルや経験が同社でどのように役立てていけるか、という点を聞かれるようです。
中には技術的な質問よりも、コミュニケーション力について多く質問された、という人も見られます。このことから、同社が求める技術スキルが応募者に備わっていることがわかれば、あとはヒューマンスキルを重要視しているものと思われます。
さらに、採用となった人の中には、「応募理由として、自動車やオートバイ好きであることをあげた」という口コミが多く見受けられます。好きなことに関係する仕事に就く、それが転じて「自社製品愛」を持てる人であるかどうかも面接では見られていると思われますので、この点も踏まえて面接準備をしていきましょう。
「社風への理解」でも述べた通り、同社はM&Aにより日立オートモティブシステムズに完全吸収された後に、社名が消滅します。よって、同社の中長期計画について、最新の有価証券報告書では触れられていません。しかし、ショーワの既存製品ブランドは当面の間、存続していくことから、製品作りに対する姿勢や思いは受け継がれていくと思われます。
そこで、同社の開発哲学とも言える「ショーワフィロソフィー」を理解しておくことが重要になってきます。これらは大きく「基本理念」「社是」「行動指針」の3つで構成されています。
ショーワ会社案内 ショーワフィロソフィーより
社是と行動指針にはそれぞれ詳細がありますので、詳しくは同社の公式サイトを熟読しておくとよいでしょう。
なお、M&Aというと、「経営状態が悪いから仕方なく吸収される」というイメージを持つ人がいるかもしれませんが、同社は業績、株価ともに良好です。ではなぜ、合併をするのでしょうか。それは、自動車業界におけるパラダイムシフト、およびそれに伴う競争激化の中、シナジー効果を狙うための「経営基盤の強化」が目的である点を理解しておくことが重要です。
上記を理解した上で、世界的な自動車・オートバイ業界の動向を研究しつつ、自己分析をしていきましょう。トヨタとスズキが資本提携をしたのは記憶に新しいかと思います。それに続き、ホンダ系列会社である同社が日立グループ会社と統合するという、これまでライバル関係にあった会社同士の提携や統合が異例ではなくなっているいま、世界市場を見据えた仕事への姿勢が求められます。さらに、合併後の変化に対応でき、ものづくりに対する情熱が萎えることなく、自分にとってのチャンスと捉える前向きさをアピールできるとよいでしょう。
面接では「なぜ当社に応募したのか」という質問をされることがあります。このような質問は、自社に対する理解度や本気度、さらには入社後にどれだけ活躍するかといった期待値の考察を目的としているのが一般的です。
しかし同社の場合は、「すでに他社との吸収合併が決まっている中でなぜ応募してきたか?」という理由を求められることが想定されます。これに備え、同社の競合となりやすい企業を調べておくだけでなく、合併企業(3社)についても研究しておくことが重要と言えるでしょう。
競合となりやすい企業については、下記にあげた企業のほか、トヨタ系、日産系、ヤマハ系など国内外自動車・二輪車メーカーの同業他社をチェックすることがポイントで、合併企業の場合は、ショーワの優位性はどんな点か、競合する製品があるか、同社にない製品は何か、といった「強み・弱み」の比較をするとよいでしょう。ぜひ企業研究にお役立てください。
●KYB株式会社
●株式会社ケーヒン
●日信工業株式会社
●日立オートモティブシステムズ
ショーワが目指している方向性や、どういった人材を欲しがっているのかが企業研究を通じて分かってきたのではないでしょうか。ショーワの場合、面接の場では、80年以上にもおよぶ同社の「社歴」と「ものづくりに対するプライド」に敬意を表するとともに、ものづくりに対する自身の思いを素直に伝え、「合併後も活躍する人材」と印象づけられるよう、さまざまなエピソードを準備しておくとよいでしょう。
面接経験者が実際に聞かれた質問をご紹介します。これらの質問をされたらどのように答えるか、しっかりと考えながら面接対策しておきましょう。
ショーワの採用面接を受けるにあたって、ぜひ押さえておきたい重要なことをご紹介してきました。面接対策として準備しておきたいのは、以下の3つです。
●自動車やオートバイに興味があり、かつ、前職での経験が同社で生かしていける人材であることをアピールする。
●「ショーワフィロソフィー」を理解しつつ、吸収合併後も仕事に対する情熱を失うことなく、むしろチャンスと捉えるポジティブマインドで、自己PRにつなげる。
●ライバル企業だけでなく、合併企業についても研究をして、会社の立ち位置を理解しておく。
これらについてしっかりと準備して、面接当日は自分の言葉でアピールするよう心がけましょう。
この記事の執筆者
編集ライター業の傍ら、大学や企業でインターシップ支援・キャリア支援を行う(企業研究方法・マーケティング・面接対策・マナー講座等)。インディーズの音楽シーンで活動していたという異色の経歴を持つ。