
各務正人(かかむ・まさと):株式会社グローバルウェイ 代表取締役社長。UBS銀行やドイツ銀行などでアルゴリズムトレーニングやリスク管理システムの開発・運営に従事した後、米国の大手企業向けエンタープライズソフトウェア企業ウェブメソッド(現ソフトウェアAG社)で営業マネージャとして勤務し、世界一の営業成績を残す。2005年に株式会社グローバルウェイを設立、2016年に同社を東証マザーズへの上場に導く。株式会社タイムチケットおよびスイス子会社となるTimeTicket GmbHを設立。個人が主役になる評価経済をつくるためのシェアリングエコノミーサービスを展開。
野口英世にあこがれてアメリカへ
子どものころは野球少年でした。中学では3番・キャプテンとして県大会で優勝。高校は進学校ではなく、あえて野球に打ち込める全寮制の私立高校に野球特待生として入り甲子園を目指していました。ところがその夢が果たせず大きな挫折を味わい、「実業家を目指そう」と頭を切り替えたのです。
父も祖父も会社を経営していたので、自分も大人になったら会社をやるんだという思いは胸にありました。でも具体的に何をしたらいいのかと悶々としていたとき、子どものころ読んだ野口英世の伝記を思い出し「自分もアメリカで自分の道を切り拓こう」と決断しました。ちょうどマイクロソフトやデルといった会社が世に出てきたころでした。
起業するならITがいいと、財務とコンピュータが学べるワシントン大学のビジネス学部に入りました。渡米してからは寝る時間以外はひたすら勉強の日々でしたが、生活のペースがつかめてからは起業資金を貯めるために古着を日本に輸出するサイドビジネスもやりました。当時、裏原宿に並んだNIKEやLEVI'Sのビンテージ品には私が買い付けたものが結構あったはずです。
外資系企業で仕事を叩き込まれた20代
卒業後、1997年に帰国してスイスに本社があるUBS証券にエンジニアとして入社。将来ITの会社を起業するにはエンジニアの仕事を経験しておくべきだと考えました。高度な数理分析の実務経験も役に立つだろうという思いもありました。そこで株式の分析用のアプリ開発に携わっていました。
その後、ドイツ銀行に転職し、ITの分かるトレーダーとしてアルゴリズム取引を担当しました。トレーダー時代の年収は1400万円ほどでしたが、そろそろ起業しようかと考えた26歳のとき、資金は300万円しかありませんでした。さらにビジネスプランを友人に見てもらったところ、「これじゃ無理」とあっさりダメ出しされてしまった。
そこであらためて専門性を身につけ、ビジネスを学び直さなければと考え、人脈と資金を得るために30歳でウェブメソッドという会社に転職。当時アメリカで注目されていたソフトウェアのベンチャー企業でセールス担当として営業やマーケティングを学びました。年収は600万円でトレーダーの半分以下でしたが迷いはなかったですね。
外資系金融機関は非常に厳しい世界でとことん鍛えられましたが、激務という点ではウェブメソッド時代も同じでしたね。リージョナルマネージャーとして数千万円から億という額のソフトウェアを売り、海外本支店も含めた社内トップセールスにのぼりつめると年収は7500万円になりました。
「人生の逆算ロードマップ」で上場
曲がり角になったのは入院でした。睡眠不足と体調不良を押して海外出張を強行し、悪性の細菌に感染して40度以上の熱が続きました。もう少しで足を切断しなければならなかったと医師に言われたときにはゾッとしましたね。からだを壊したらどんなに高い能力も活かすことができない。経営者になってからも社員に対してそのことはよく考えます。
企業口コミサイト「キャリコネ」の構想が生まれたのもこのころでした。外資系企業で働きながら、日本と欧米における企業社会の違いを実感していました。アメリカ留学時代に人種やバックグラウンド、年齢に関係なく努力して実績を残した人間が成功する様子に感動しましたが、日本は安定している反面、個が埋没しがちでストレスのたまるシステムになっている。そんな問題意識が基となっています。
資金が用意でき、自分の中に「ついに機は熟した」という実感ができた2004年に独立しました。ただ、周囲の人からは「そんなに稼げているのになぜ辞めるの?」とものすごく呆れられましたね。実際、起業して1年間はまったくの無給で働かざるを得なかったですし、手元の資金が減っていくのはびっくりするくらい速かった。
起業したことへの後悔はまったくなかったですね。30歳で起業、40歳で社会にインパクトある貢献をしたいという「人生の逆算ロードマップ」があったから、43歳でマザーズへの上場を果たすまで走り続けることができました。もちろんこれは自分だけでできたことではなく、取引先や社員たちには心から感謝しています。
収益性の高い事業に集中投資し、妥協なく事業の改善をし続ければ必ず成長できる
社名のグローバルウェイは、いつか世界レベルの社会貢献を成し遂げたいという思いで付けたものです。社員の働き方や報酬について、私が経験してきた外資系企業のよいところを採用してきたし、ビジネスアプリケーション事業部では社員の4割を外国人が占めるなど社内のグローバル化は進んでいます。
しかし会社の規模が大きくなるにつれて、思い通りにならないことも増えてきました。売上高は伸びていますが、あわせて収益を伸ばすためのビジネスモデルや組織体制、必要な人材のあり方も変わってくる。掲げる目標も、自分ひとりが頑張って達成できるレベルを超えています。
上場後は海外投資や法人向けサービスについて方針の変更を余儀なくされたこともありました。既存事業の成長が想定を下回った部分もあります。ITの技術環境も起業したころとはまったく変わりました。AIやブロックチェーンといった新しいテクノロジーを使ったサービスが次々と現れています。
私たちはそのような新しい事業環境に適応しながら、成長していかなければなりません。理想とともにきちんと現実を見据え、収益性の高い事業に注力することにより、必ず「世界に向けた新しい道」を切り拓いていきます。
《関連リンク》
株式会社グローバルウェイのホームページ
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https://news.careerconnection.jp/
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