ENEOSへの転職を考える前に知っておくべきこと

ENEOSへの転職を考える前に知っておくべきこと

ENEOSは、ENEOSホールディングス(東証プライム上場)を持株会社とする日本最大級のエネルギー・素材関連企業グループの中心を占める事業会社として、石油製品を中心とする中核事業を担っています。なお、ENEOSグループのいずれの会社の求人に応募する際にも、グループ全体の戦略方針を理解しておく必要があります。


ENEOSへの転職をおすすめできる人の特徴

ENEOS株式会社(以下ENEOS)への転職を検討している方に向けて、どのような経験や志向を持つ方が適しているか、3つの観点から整理します。

1.社会インフラを支える仕事にやりがいを感じる人

ENEOS株式会社は、日本の一次エネルギー供給の15%を担うENEOSグループの中核事業会社です。石油精製・販売という確立された事業領域で、エネルギーの安定供給という社会的使命を果たし、社会に不可欠な役割を担う仕事にやりがいを感じる方に適しています。

国内燃料油販売シェア約50%で首位を誇り、全国約12,000カ所の系列給油所と国内最大の原油処理能力を持つ製油所・製造所を通じて、日本のエネルギー供給の根幹を支える責任ある仕事に携わることができます。

「一次エネルギー」とは?

ENEOSグループの公式資料や中期経営計画には「日本の一次エネルギーにおける当社寄与率:約15%(原油・ガスの取扱量換算)」と明記されています。この「一次エネルギー」とは、石油・天然ガスなど自然界から得られる加工前のエネルギーを指します。

2.事業環境の変化を成長機会として捉えられる人

化石燃料を主とするエネルギーシステムから再生可能エネルギーや低炭素エネルギーへ移行するエネルギートランジションの流れの中、ENEOSは石油事業から新エネルギー事業への転換期にあります。石油精製・販売の既存事業の安定運営を主軸としつつ、新しい技術や事業領域に挑戦したい人が活躍できる舞台があります。

「エネルギートランジション」とは?

ENEOSホールディングスのコーポレートサイトでは、エネルギートランジションを「化石由来燃料を主体とした既存のエネルギーシステムから、持続可能で地球環境にやさしい次世代エネルギーシステムに変えていくこと」と定義しています。
ENEOSグループが注力する主な選択肢として「再生可能エネルギー」「バイオマス」「CCS(CO₂回収・貯留)」の3つが挙げられており、2040年度を目途にエネルギー供給あたりのCO₂排出量の半減を目指すとしています。

3.専門性を活かしてキャリアアップを目指したい人

ENEOSでは石油精製・販売を中核とした専門性の深化を通じて、エネルギー業界での確固たるキャリアを築くことができます。キャリア採用においては実務経験4年以上の即戦力が求められますが、業界トップクラスの年収水準と継続的な給与向上が期待できます。

また、ワークライフバランスの実現度が高く、男性育児休業取得率有給休暇取得率は業界トップクラスの水準を誇ります。フレックスタイム制(コアタイムなし)やテレワーク制度など、柔軟な働き方で安心して仕事に集中したい人に向いています。

ワークライフバランスについて

ENEOSはワークライフバランスの実現度が高く、男性育児休業取得率や有給休暇取得率は業界トップクラスの水準を誇ると言われています。フレックスタイム制(コアタイムなし)やテレワーク制度など、柔軟な働き方で安心して仕事に集中したい人に向いています。
ただし、製油所では二交代勤務があるなど、職場によって働き方の違いがあることは理解しておくべきです。

ENEOSってどんな会社?

ENEOSが属する「ENEOSグループ」の事業構造や最新の財務データなど、転職前に把握しておくべき企業の基本情報をお伝えします。

ENEOSグループにおける位置づけ

ENEOSは、ENEOSグループの中核事業会社であり、日本最大の石油元売会社です。

グループ経営の司令塔となる純粋持株会社のENEOSホールディングスは、東証プライム市場に上場し、グループ全体の経営戦略立案と経営資源の最適配分を担っています。

ENEOSグループ全体では、以下の事業を展開しています。

このようなグループ構造の中、ENEOSエネルギー事業(旧:石油製品ほか事業)を担うグループ最大の中核企業として、石油製品の精製・販売を主力事業とし、全国約13,000ヶ所のサービスステーション(SS)ネットワークを擁しています。

JX金属の上場でグループにも変化

2025年3月19日、グループ会社のJX金属が東証プライム市場に新規上場しました。これにより、JX金属はENEOSホールディングスの持分法適用会社として独自の発展を目指し、ENEOSグループはエネルギー事業に特化した企業グループとなっています。

ENEOSの事業領域

ENEOSは、石油精製・販売事業を中心に展開している企業です。主な製品には、燃料油や潤滑油などの石油製品、ベンゼンやパラキシレンといった石油化学製品が含まれます。

また、石油・石油化学以外のエネルギー事業として、液化天然ガス(LNG)の輸入販売や、自社製油所・製造所に併設した発電所を活用した電力小売事業も行っています。

さらに、燃料油の需要減少を見据え、製油所の省エネ化や再生可能エネルギーの導入、カーボンニュートラル燃料の開発、CCS等の導入といった脱炭素(カーボンニュートラル)化にも積極的に取り組んでいます。

その情報はENEOSのものか?

ENEOSENEOSホールディングスは異なる会社です。ENEOSの待遇や仕事内容を検討する際には、ENEOSホールディングスのIRなどを踏まえてENEOSグループ全体の動きを確認しつつ、事業会社としてのENEOSの役割や位置づけを意識して判断する必要があります。

競合比較で見るENEOSグループの立ち位置

ENEOSグループの業績推移

ENEOSホールディングスの連結決算

ENEOSグループの過去5年間の業績は、原油価格の変動事業構造改革の影響を大きく受けています。売上高は2023年3月期に15兆円を超えるピークに達した後、安定化しています。

営業利益は2022年3月期に過去最高を記録しましたが、その後は原油価格の安定化や石油製品マージンの縮小により減少傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 7兆6,580億円 12兆3,224億円 15兆165億円 12兆3,456億円 12兆3,225億円
営業利益 3,733億円 7,859億円 3,811億円 3,820億円 1,061億円
親会社株主に帰属する
当期純利益
1,138億円 5,149億円 2,879億円 2,880億円 2,261億円
自己資本比率 28.9% 31.2% 32.8% 34.1% 35.3%

ENEOSホールディングス 連結業績推移(5期間)

財務体質は着実に改善しており、自己資本比率は5年間で28.9%から35.3%へと向上しています(企業の総資本のうち自己資本〔返済不要な純資産〕が占める割合)。これは主にJX金属及び同社子会社等を連結除外したことによる影響ですが、あわせて基本的な財務基盤の強化が進んでいることを示しています。

株主還元も強化されており、2025年3月期には年間配当金26円を実施し、2026年3月期は30円への増配を予定しています。

事業セグメント別の売上高・利益率推移

ENEOSグループのエネルギー事業は、国内需要の構造的な減少と国際市況の変動という二重の課題に直面しています。これを受けて2024年度から事業セグメントの再編が行われ、従来「石油製品ほか」に含まれていた石油・天然ガス開発事業が、独立したセグメントとして分離されました。

これにより、従来一体で管理されていた上流・下流事業が分けられ、それぞれの収益構造や事業特性がより明確に把握できるようになっています。

事業セグメント 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
エネルギー事業(石油製品ほか)
売上高 12兆7,000億円 11兆1,000億円 10兆9,000億円
営業利益 510億円 2,530億円 504億円
営業利益率 0.4% 2.2% 10.6%
石油・天然ガス開発事業
売上高 (記載なし) 2,049億円 2,428億円
営業利益 (記載なし) 915億円 874億円
営業利益率 44.7% 36.0%
電気事業
売上高 1兆6,400億円 1兆5,100億円 1兆900億円
営業利益 687億円 811億円 210億円
営業利益率 4.2% 5.4% 1.9%
再生可能エネルギー事業(参考)
売上高 (記載なし) 440億円 (記載なし)
営業利益 (記載なし) -118億円 -169億円
営業利益率

※数値は在庫影響を含む会計上の営業利益に基づき、ENEOSホールディングスのIR資料およびIR BANKの公表値より再構成(出典:[IR BANK](https://irbank.net/E24050/segment))。

再編後のエネルギー事業は、国内の精製・供給を中心とした下流部門に特化した構成となり、2025年3月期の営業利益は504億円、営業利益率は10.6%を記録しました。ただし、これは在庫評価益による一時的な押し上げ効果が大きく、実態としては利益水準が低迷していることに変わりはありません。

一方で、石油・天然ガス開発事業は、資源価格の高止まりを背景に安定した高収益を確保しており、2024年以降は900億円前後の営業利益を維持しています。

こうしたセグメント構成の見直しは、将来的な資本配分や事業ポートフォリオの再構築を見据えた戦略的な取り組みといえます。特に、国内石油需要が今後も年平均2%程度のペースで減少すると見込まれる中で、グループ全体として安定収益源を維持しつつ、脱炭素・再生可能エネルギーへの移行に向けた準備を進める必要があります。

ENEOSに将来性はある?成長戦略と転職者へのチャンス

エネルギートランジション時代におけるENEOSの戦略的方向性と、転職者にとってのキャリア機会について解説します。

エネルギートランジション戦略

2040年のカーボンニュートラル実現を目指し、ENEOSグループはエネルギートランジション戦略を推進しています。

  • 従来の石油事業から、再生可能エネルギー、水素、CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)などの次世代エネルギー事業への転換を図っています。2025年3月期には再生可能エネルギー事業が初の黒字化を達成し、今後の成長が期待されます。
  • ENEOSグループ2023年度から2027年度の5年間で、成長投資として約1兆円を計画しています。このうち約6,000億円をエネルギートランジション関連事業に投資し、再生可能エネルギー発電容量を2030年度までに1,000万kWまで拡大する計画です。
  • 水素事業では、製造から供給まで一貫したバリューチェーンの構築を目指しており、2030年度には年間30万トンの水素供給体制を整備する予定です。

デジタル変革・国際展開の取り組み

  • デジタル技術を活用した事業変革も重要な戦略の一つです。製油所の運転最適化、サービスステーションの効率化、顧客サービスの向上などにAIやIoTを活用しています。また、カーボンニュートラル実現に向けたデジタルソリューションの開発も進めており、エネルギーマネジメントシステムの高度化を図っています。
  • アジア太平洋地域を中心とした国際展開も継続しており、特に再生可能エネルギー分野での海外投資を拡大しています。オーストラリアでの大規模太陽光発電事業や、東南アジアでの地熱発電事業など、グローバルな成長機会を追求しています。

ENEOSの年収は高い?給与水準と働きやすさの実態

転職検討において最も関心の高い年収水準、福利厚生、働き方について、最新のデータを基に詳しく解説します。

ENEOSホールディングスの平均年収の推移

ENEOSホールディングス株式会社(単体)の有価証券報告書には、同社の従業員数、平均年齢、勤続年数、平均年間給与などが記載されています。これらは、あくまで提出会社であるホールディングス単体の水準であるとはいえ、グループ各社の給与動向をある程度反映している側面も否定できません。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
従業員数
(連結)
40,753人 41,852人 44,617人 43,683人 42,968人
従業員数
(単体)
818人 905人 873人 888人 1,339人
平均年齢
(単体)
44歳8ヵ月 45歳1ヵ月 44歳4ヵ月 44歳1ヵ月 44歳0ヵ月
平均勤続年数
(単体)
19年5ヵ月 19年7ヵ月 19年3ヵ月 18年7ヵ月 17年5ヵ月
平均年間給与
(単体・税込)
10,354,450円 10,069,517円 9,929,229円 9,478,427円 10,686,238円

※「単体」はENEOSホールディングス株式会社(提出会社)を指します。
連結従業員数はグループ全体の就業人数(臨時含む)。2025年3月期の単体従業員数増は、事業再編に伴うグループ内人員再配置の影響とみられます。

2024年から2025年にかけて単体従業員数が急増していますが、この要因はENEOSからENEOSホールディングスへの経営機能や人材の集約と考えられます。

ENEOSグループは2010年に持株会社体制へ移行しましたが、長らく中核事業会社のENEOSが「実質的事業持株会社」としての機能を担ってきました。しかし2024年4月には、ENEOSホールディングスが本来の「純粋持株会社」としての役割を再定義・強化しています。

平均年収は、2021年3月期の1,035万円から2025年3月期の1,069万円へと上昇しており、5年間で約3.1%の増加となりました。これは人員構成の変化に加え、業績や賞与水準の回復などが影響している可能性があります。

ENEOSの平均年収(推定)と口コミ

ENEOSの平均年収は公式には開示されていませんが、業界調査や口コミ情報を総合すると、約900万円(税込み)程度と推定されます。この推定値は、ENEOSホールディングス(単体)の平均年収よりもやや低めですが、これは持株会社と事業会社の役割の違いを反映しています。

年齢層 事務系総合職 技術系総合職 備考
20代前半
(22–25歳)
450〜500万円 450〜500万円 初任給:大卒約23万円/月、修士了約25万円/月。賞与は年4.5~5ヵ月分程度。
20代後半
(26–29歳)
550〜600万円 550〜650万円 入社5〜7年目前後。技術系は専門性で上振れ。資格手当あり。
30代前半
(30–34歳)
650〜750万円 700〜800万円 係長~課長代理クラス。役職手当20〜30万円/年程度。
30代後半
(35–39歳)
750〜900万円 800〜950万円 課長級の登用期。海外・事業所ローテも本格化。
40代前半
(40–44歳)
900〜1,100万円 950〜1,200万円 課長~部長代理層が多く、評価差が年収に反映。
40代後半
(45–49歳)
1,000〜1,300万円 1,050〜1,400万円 部長代理〜部長クラスが増加。企画系で高レンジ。
50代
(50–60歳)
1,100〜1,500万円 1,200〜1,600万円 部長〜執行役員クラスも。最大1,800万円超。

※ENEOSグループ社員の年齢別・職種別想定年収レンジ(推定値)。実際の年収は役職・勤務地・評価・残業・手当等により変動します。

上記の推定給与水準は、口コミサイト「キャリコネ」の投稿内容にもほぼ一致しています。

ENEOS社員の給与明細(キャリコネ)

自分の年収に満足。特に問題を感じていない。

25歳男性・技術職・大学院卒(年収660万円)の 給与明細

36歳男性・技術職・大学院卒(年収960万円)の 給与明細

福利厚生は充実。しかし将来的には不安も。

40歳男性・営業職・非管理職(年収1,152万円)の 給与明細

39歳男性・技術職・非管理職(年収830万円)の 給与明細

32歳男性・広告宣伝・大学院卒(年収740万円)の 給与明細

部門ごとの評価基準と待遇制度

ENEOSでは、部門ごとに異なる評価基準と待遇制度が運用されており、それぞれの専門性や成果がきちんと評価される企業風土が特徴的です。

  • 技術系の職種:専門性や保有資格が給与に反映されやすく、例えば自動車整備士のような資格には手当が支給されるケースが確認されています。
  • 製油所などの生産部門:安全管理が最優先されており、現場での厳格なルール遵守や高い安全意識が求められるため、技術力や現場経験が特に重視される傾向にあります。交替勤務や危険作業をともなう場合には、通常の基本給とは別に手当が上乗せされることが一般的で、これらの額は月に5万円から10万円程度で推移しています。
  • 研究開発部門:博士号を持つ人材が優遇されやすく、特許の取得などに対しては報奨金制度が設けられています。この報奨金は年間で数十万円から数百万円と比較的高額になることもあり、個人の成果や職務内容によって左右されます。
  • 営業部門:年功序列型の給与体系を維持しながらも、業績や目標達成度に応じた追加報酬が支給されるインセンティブ制度が導入されています。高い成果には報酬で応える一方、安定した賃金体系も確保しており、成果主義と安定志向を両立したバランス型の仕組みとなっています。

実際どう?ENEOSで働く社員のリアルな声

実際に働く社員の生の声から見えてくる、ENEOSの職場環境、企業文化、働きがいについて分析します。

安定性・福利厚生

  • 評価:大企業ならではの安定感、福利厚生が充実(住宅手当、家族手当等)、健康経営への取り組みが進んでいる
  • 課題:事業環境の変化による将来的な不安感も

ワークライフバランス

  • 評価:有給休暇が取りやすい、男性の育児休業取得が当たり前の文化、フレックス制度やテレワークの活用で柔軟な働き方が可能
  • 課題:部署によって業務負荷に差がある、繁忙期は残業が増える傾向

教育・研修制度

  • 評価:新入社員研修が充実、自己啓発支援制度が整っている、専門性を高めるための研修機会が多い
  • 課題:研修の質にばらつきがある、自己啓発は自主性に委ねられる面も

変化のスピード

  • 評価:エネルギートランジションへの取り組みが加速、デジタル化推進の動き
  • 課題:大企業のため意思決定や変化のスピードが遅い、旧来の企業文化が残る部署もある

キャリアパス

  • 評価:多様な事業領域でのキャリア形成が可能、専門職制度による専門性の評価
  • 課題:事業構造の変化に伴い将来のキャリアパスが見えにくい、新規事業部門と既存事業部門でのキャリア展望の差

ENEOSの求人

現在ENEOSが積極的に募集している職種を分析すると、企業の戦略的方向性が明確に見えてきます。最も需要が高い分野として、が挙げられます。

  • VPP事業における大型蓄電池設置プロジェクト推進
  • 海外からのCO₂フリー水素サプライチェーン構築
  • 次世代燃料(バイオエタノール、合成燃料)の製造技術開発
  • カーボンニュートラル関連(森林吸収系カーボンクレジット創出)
  • AI・IoT活用やデータサイエンスなどのデジタル技術分野

これらの分野では「実務経験4年以上」を求める即戦力採用が中心となっており、専門性を活かしたキャリア形成が期待できます。

この記事の執筆者

外資系IT企業、コンサルティングファーム、システムインテグレーターの各業界の現場の最前線で活躍してきたヘッドハンター集団。サーチ型エージェントとして活動しています。
直接キャリア面談の実施から入社、その後一生涯のキャリア形成までを丁寧にサポートします。

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