ENEOSグループとは
ENEOSグループは、ENEOSホールディングス株式会社を持株会社とする、日本最大級のエネルギー・素材関連企業グループです。
グループの主な事業は、石油や天然ガスの開発・精製・販売、金属事業、機能材事業、電気・都市ガス事業、再生可能エネルギー事業など、多岐にわたります。
採用は各事業会社ごとに行われていますが、戦略や制度などグループ共通のものも多いため、どの会社に応募する場合でも、まずはENEOSホールディングス株式会社についての情報を把握しておくことが重要です。
ENEOSホールディングスとは
ENEOSホールディングス株式会社は、日本を代表する大手企業です。東京証券取引所プライム市場に上場し、日経平均株価およびTOPIX Large70、JPX日経インデックス400の構成銘柄のひとつです。
同社の主な役割は、ENEOSグループ全体の経営管理です。傘下の子会社の数は581社、持分法適用会社等は166社にのぼります(2024年3月31日現在)。
代表的な子会社は、以下の5社です。
番号 | 企業名 | 担当事業 |
---|---|---|
1 | ENEOS株式会社 | 石油製品ほか |
2 | ENEOS Xplora株式会社 | 石油・天然ガス開発 |
3 | ENEOSマテリアル株式会社 | 機能材 |
4 | ENEOS Power株式会社 | 電気 |
5 | ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社 | 再生可能エネルギー |
※2025年3月に東証プライム市場に上場したJX金属株式会社(非鉄金属事業)は、上場に伴い子会社から持分法適用会社に変更。
ENEOSホールディングスは、旧三菱石油の流れを汲んでいるため三菱グループに属し、三菱広報委員会の会員企業です。
平均年収等のデータについて
2024年3月期 有価証券報告書(2024年6月26日提出)によると、ENEOSホールディングスの従業員数は888名で、平均年齢は44歳、平均年収は約947万円です。
ただしこの数字は、ENEOSホールディングス(持株会社単体)の従業員に関するデータであり、子会社を含むグループ全体の平均ではないことに注意が必要です。
ENEOSグループの沿革
ENEOSグループは、国内初の石油事業会社を源流とし、国内最大の石油元売り会社としての地位を築いています。あわせて、エネルギー転換時代への対応と、競争力強化を目指した持続的な事業構造の最適化を背景に、さまざまな形で再編を続けています。
年 | 主な出来事 |
---|---|
1888年 | 新潟県で有限責任日本石油会社が設立され、国内初の石油事業を開始。 |
1894年 | 日本石油株式会社に商号変更。 |
1951年 | 日本石油精製を設立し、精製能力を強化。 |
1999年 | 日本石油が三菱石油を吸収合併し、日石三菱に商号変更。この合併により、国内最大級の石油精製・販売会社が誕生。 |
2002年 | 日石三菱が新日本石油に商号変更。ブランド名として「ENEOS」が導入される。 |
2010年 | JXグループに再編。新日本石油と新日鉱ホールディングスが経営統合し、JXホールディングス(後のENEOSホールディングス)が設立される。 |
2017年 | JXTGグループに再編。JXエネルギーが東燃ゼネラル石油を吸収合併し、JXTGエネルギーに商号変更。JXホールディングスがJXTGホールディングスに商号変更。 |
2020年 | ENEOSグループへ移行。サービスステーションや製品で広く使用されていた「ENEOS」ブランドを企業名に採用してブランド力を最大化。JXTGエネルギーがENEOSに、JXTGホールディングスがENEOSホールディングスにそれぞれ商号変更。低炭素社会への移行や包括的なエネルギー企業への転換を目指す戦略を打ち出す。 |
ENEOSグループの体制について
ENEOS株式会社は2020年の商号変更後も、グループ内で「実質的事業持株会社」の役割を担っていました。これが2024年に、ENEOSの機能材事業(ENEOSマテリアル)と電気・都市ガス事業(ENEOS Power)、再生可能エネルギー事業(ENEOSリニューアブル・エナジー)を分社化し、ENEOSホールディングスの直下に主要事業会社が置かれる形に再編。現在のグループ体制が完成しています。
企業理念とビジョン
ENEOSホールディングスは2023年5月、新たな長期ビジョンと第3次中期経営計画(2023~2025年度)を公表し、ENEOSグループ理念を発表しました。
《使命》
地球の力を、社会の力に、そして人々の暮らしの力に。
エネルギー・資源・素材における創造と革新を通じて、社会の発展と活力ある未来づくりに貢献します。
2040年に向けたグループ長期ビジョンでは「エネルギー・素材の安定供給」と「カーボンニュートラル社会の実現」の両立を掲げ、2040年にENEOSグループにおける「温室効果ガス排出量実質ゼロ」を目指すだけでなく、社会全体が大きく変わる支えとなる取り組みを進めるとしています。
理念やビジョンはグループ共通
これらの理念やビジョン・中期経営計画は、ENEOSグループ(ENEOSホールディングス傘下)のすべての会社に適用されます。キーワードは既存事業と新規事業の「両立」です。エントリーの際にはこの内容を十分理解しておく必要があります。
ENEOSグループの中期経営計画
ENEOSグループの第3次中期経営計画(2023~2025年度)は、2040年のカーボンニュートラル社会の実現に向けた長期ビジョンを踏まえ、2030年頃に予想される脱炭素社会への本格的な分岐点に備える重要な3年間と位置づけられています。
この計画は上図のとおり、3つの基本方針に基づいて策定されています。
■1. 確かな収益の礎の確立
当面の収益源を強化し、そこから得るキャッシュをエネルギートランジション実現への取り組みへ再配分します。既存の石油・天然ガス事業の収益性強化により、将来のエネルギートランジションへの投資原資を確保することを目的としています。具体的な施策には以下が含まれます。
- 製油所のトラブル対策:計画外のトラブルによる稼働率悪化を「UCL」と定義し、これを2022年度の9%から2025年度には3%に改善することで、数百億円規模の収益改善を図ります。
- ビジネスプロセス改革(BPR)による収益性・資産効率の向上
- インドネシア・マレーシア等の既存LNGプロジェクト鉱区内の追加開発や、パプアニューギニアにおけるLNGの権益取得契約の推進
これらの取り組みにより、累計1,000億円の収益改善を目指しています。
■2. エネルギートランジション実現への取り組み加速
カーボンニュートラルに向けた複数のシナリオを睨んだ仕組みづくりや体制固めに先行して取り組み、2030年以降の開花フェーズに備えます。再生可能エネルギーや次世代燃料への移行を加速させるため、以下の分野に注力しています。
- 太陽光や風力、バイオマスなど、再生可能エネルギーによる発電を強化し、カーボンニュートラル社会においてもメジャープレイヤーとして、国内のエネルギー供給を支え続けます。
- SAF(持続可能な航空燃料)や合成燃料の開発
- 水素、CCS(CO₂回収・貯留)、リサイクル技術の推進
これらの取り組みにより、複数の将来シナリオに対応可能なレジリエンス(対応力)を備え、戦略的優位性の確立を目指しています。
■3. 経営基盤の強化
他の2つの基本方針を実践するためのすべての活動を下支えするもので、グループ運営体制の変更に加え、各事業領域においてダイナミックな転換をリードできる人材・インフラを強化すべく、人材戦略とデジタル戦略を推進し、「明日のあたり前」を創る強力な体制を構築します。具体的な施策には以下が含まれます。
- ROIC(投下資本利益率)を指標としたポートフォリオ経営の実践
- グループ運営体制の見直し:各事業会社が成果を見える化し、各業界における競争力を上げ、成長戦略と資本効率を追求する自律型経営への移行を図ります。
- デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進:デジタル人材の育成を重点要素と設定し、育成の目標人数を定めて取り組むことで、継続的な事業変革、収益貢献へとつなげていきます。
■財務目標と株主還元
第3次中期経営計画では、以下の財務目標を掲げています。
- ROIC(インキュベーション事業除く):2025年度に7%以上(2023年3月期実績3%)
- ROE:2025年度に10%以上(2023年3月期実績5%)
- 当期利益(在庫影響除く):2023〜2025年度累計で7,000億円(前中計3か年累計実績7,948億円)
- フリーキャッシュフロー:同期間で5,000億円(前中計で▲2,317億円)
- ネットD/Eレシオ:0.8倍以下(2023年3月期実績0.76倍)
株主還元については、3か年平均で当期利益の50%以上を「配当と自己株式取得」で還元し、1株あたり22円の配当を下限とする方針です。
ENEOSグループの業績推移
ENEOSグループは、連結売上高10兆円を超える巨大企業グループです。
連結業績指標の推移は、2021年度から2022年度にかけて大幅な改善を見せました。しかし近年は、世界的なエネルギー市場の変動と脱炭素化への取り組みの影響を受け、売上高・利益ともに緩やかな減少傾向にあります。
一方で、再生可能エネルギー事業への投資や水素ビジネスの拡大など、次世代エネルギー事業への戦略的シフトを積極的に進めています。
出典:ENEOSホールディングス 有価証券報告書(2020年度~2024年度)
ENEOSグループの7つのセグメント
ENEOSホールディングスでは、2024年度よりエネルギー事業の分社化に伴い、従来の4区分から7つのセグメントに再編が行われました。これにより、それぞれの事業が独立した収益単位としてより明確に把握できるようになっています。
セグメントごとの主要事業会社と事業概要は以下のとおりです。
セグメント | 主要事業会社・事業概要 |
---|---|
石油製品ほか | ENEOS株式会社:石油精製製品(ガソリン、灯油、軽油など)、基礎化学品、潤滑油、ガス、水素供給チェーンの構築 |
機能材 | ENEOSマテリアル株式会社:合成ゴム、特殊合成ゴム、二次電池材料、エマルジョン、テラストマー、高機能モノマー・ポリマー |
電気 | ENEOS Power株式会社:発電事業、電力の調達・販売、都市ガス事業、海外再生可能エネルギー事業、VPP(仮想発電所)事業 |
再生可能エネルギー | ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社:風力発電、太陽光発電、バイオマス発電 |
石油・天然ガス開発 | ENEOS Xplora株式会社:原油・天然ガスの探鉱・開発・生産 |
金属 | JX金属株式会社 / JX Advanced Metals株式会社:銅精錬、精密圧延品、電子材料、金属加工、資源・リサイクル(タンタル・ニオブ含む) |
その他 | NIPPO株式会社、ENEOS Real Estate株式会社など:アスファルト舗装、土木工事、不動産賃貸、資金調達など |
セグメントごとの売上利益
2024年度上半期の各セグメント別売上高・営業利益(いずれも在庫影響除く。2024年11月13日公表)を円グラフにまとめました。
全体として、エネルギー関連の主力事業が引き続き収益の中心となる一方で、再生可能エネルギーなど新たな事業分野の成長も見られます。各セグメントの特徴は以下の通り。
- 石油製品ほか:売上高で最大のセグメントであり、ENEOS株式会社が担う基幹事業です。全国規模の供給体制を背景に、日本のエネルギーの安定供給を支える社会インフラ的な役割を果たしています。一方、市況変動の影響を受けやすく、営業利益率は他セグメントと比較して低水準にとどまっています。
- 金属:主に銅事業などを通じて収益を上げており、営業利益の主要な源泉となっています。ただし、資源価格の変動や市況の影響を受けやすく、当期は前年同期比で減益傾向にあります。
- 石油・天然ガス開発:海外権益や探鉱・生産を通じてエネルギー資源の確保に貢献しており、営業利益率は約37.9%と高水準を維持しています。市況に左右される面はあるものの、高い収益性が特長です。
- 電気、再生可能エネルギー:売上高こそ小さいものの、再エネの導入拡大や電力需給調整などの影響もあり、前年同期比で増益となるなど成長が見込まれる分野です。
- その他:事業規模は小さいものの、前年同期比で増益となっており、安定した収益基盤としての役割も期待されます。
収益性の改善について
ENEOSグループの長期ビジョンには、社会課題の解決への貢献を通じた「資本コストを上回るリターンの創出」が掲げられています。具体的には、現状の当期利益3,100億円・ROIC(投下資本利益率)6%を、2040年度には同6,000億円・7%に拡大するとしています。
ENEOSグループの人事戦略
ENEOSグループは、中期経営計画で「人材戦略の強化」を掲げ、以下の2本柱を示しています。
- 基盤事業の確固たる収益の礎を築くための「技術・経験の伝承、能力開発による基盤事業の強化」
- 新たな発想、能力で事業ポートフォリオ転換を可能にする「人材ポートフォリオの転換による事業ポートフォリオ転換支援」
前者の「基盤事業の強化」に向けた取り組みについては、既存社員を中心に「基盤事業を支える人材の活躍支援」を進めるとともに「従業員が持てる能力を最大限発揮できる環境整備」を行うとしています。
後者の「事業ポートフォリオ転換」に向けた取り組みについては、既存人材に対して「事業ポートフォリオ転換に向けた能力開発」「リスキリング推進」を進めるとともに、社外から新たに「経営ニーズに即した多様な人材の獲得」を行うとしています。
新規採用に特に関連するのは「経営ニーズに即した多様な人材の獲得」ですが、ENEOSではすでに大卒採用者の4割を経験者採用が占めているとのことです。
また「新人事制度」として、以下の2つが示されています。
- 役割等級制度:経営戦略に基づいて設定されたポストに、年齢問わず抜擢することでダイナミックな人材シフトと登用を目指す
- コース別人事制度:コース毎に求められる役割やキャリアを明示し、各人材像に適した評価や育成を丁寧かつスピーディーに実行
なお、この中には中核事業会社のENEOS株式会社における具体的な取り組みにも言及されています。
前者について、ENEOSでは全管理職および管理職候補の社員が就きたいポストを申告する「ポストチャレンジ制度」を導入するとのこと。
後者について、ENEOSにおいては「高度専門コース」を新設し、市場価値と連動した報酬の提供を可能にするとしています。
詳しくは「ENEOS(エネオス)への転職・就職を考える人のための総合ガイド」を参照してください。
ENEOSグループの人材育成プログラム
ENEOSグループでは「ENEOSグループ人材育成基本方針」を策定し、グループとして重点課題と目標を設定して人材育成を行っていますが、詳細の人材育成については、各事業会社で事業の特性に合わせたプログラムを策定し推進しています。
共通部分については、ENEOSホールディングスの「ENEOS REPORT ESGデータブック」に掲載されています。詳しくは各事業会社の採用サイトなどを確認してください。
人材育成|社会性|ENEOS REPORT ESGデータブック
ENEOSグループは、急速に変化する事業環境の中で成長戦略を実現するためには、創造と革新の精神を持ち、グローバルに挑戦し続ける人材の育成が重要な課題であると捉えています。
各事業会社の求人
各事業会社の採用サイトは以下の通りです。なお、ENEOS Power株式会社の採用はENEOS株式会社で行っており、エントリー方法など詳しい情報はENEOSの採用サイトを参照とのことです。
ENEOSグループの採用面接で聞かれる質問
各事業会社の求人に応募する際には、ENEOSグループ全体の沿革や戦略について理解していくことが重要になります。
ENEOSホールディングスの中期経営計画では、既存の石油・天然ガス事業の収益性を強化して投資原資を確保しつつ、再生可能エネルギーや次世代燃料への移行を加速するための取り組みを掲げています。
このようなグループ共通の基本方針は、各事業部の求人要件にも影響を与えていることは確実です。面接時の応答を的確に行うためにも、これまでの情報は理解しておく必要があります。
面接官のQ
入社後に取り組みたい業務は?(プラント施工管理)
採用者のA
エネルギーの安全・安定供給に向けて、設備信頼度の維持・向上とコストダウンの両立を図るため、設備重要度や影響度に応じた設備投資計画および保全戦略を策定したい。
化石燃料を取り扱う石油・石油化学産業は、脱炭素化に向けて急速に事業環境が変化している。そのような中で、自身のスキルをどのように活かしていけるかを整理して望む…(回答の続きとアドバイスを見る)
なお、各事業会社の面接に際して、志望動機をまとめるためには「Can」「Will」「Must」について深く考え、整理しておいた方がいいでしょう。念のため簡単に説明すると、
- Can:自分ができること(スキル、能力、経験、実績)
- Will:自分がしたいこと(意思、意欲、ビジョン)
- Must:自分がしなければならないこと(会社から要求・期待されると認識していること)
の3点を整理し、それらが重なったところで「自分の志望動機」を整理するということです。
なお、ENEOSの採用サイトには、スキル・経験を含む「必須要件」、必須ではないがあると望ましい「歓迎するスキル・経験など」のほか、企業の価値観を示す「求める人物像」が明記されています。書かれている要件を、自分がいかにクリアしているかを説明する準備が必要です。
マネジャークラス以上の面接準備
マネジャー以上については「Can」「Will」「Must」は当然として、職務に応じた個別の質問が多くなっており、あらかじめ準備が必要です。詳しくは、グローバルウェイ・エージェントまでお問い合わせください。(※登録フォームの備考欄に「ENEOSの件」と明記願います。)
ENEOSグループへの転職を成功させるために
以上、ENEOSグループへの転職・就職を考える人が知っておきたい情報について、概要を説明しました。
ENEOSグループは日本を代表する大企業であり、求められるスキルのハードルが高いのが特徴的です。しかし、仮に書類が通過したしたとしても、次の面接でつまづく方が少なくありません。
面接の質問は、様々な内容が投げかけられます。あらかじめ面接対策をしないと、選考を通過する確率はかなり落ちます。限りあるチャンスを活かすためにも、ぜひ十分な準備を行ってから臨んでください。
ENEOSの採用面接に臨む前に
転職成功の確率をアップさせたい方は、ぜひグローバルウェイ・エージェントにご相談ください。私たちはCxOや役員から直接情報を共有してもらうことで、必要な候補者像を把握しており、上記以外の「候補者公開不可情報」や「過去の面接成功・失敗事例」を把握しています。
なお、スピーディな対応を行うために、登録フォームの備考欄に「ENEOSの件」と明記願います。費用は一切かかりません。ぜひご相談ください。
外資系IT企業、コンサルティングファーム、システムインテグレーターの各業界の現場の最前線で活躍してきたヘッドハンター集団。サーチ型エージェントとして活動しています。
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