アメリカのビッグテック企業のなかでも圧倒的な競争力と高い企業価値を持ち、革新的なサービスやプロダクトで世界の注目を集めるGAFAの一角、Amazon。EC(電子商取引)事業にとどまらず、クラウド(AWS)、コンテンツプラットフォーム、AI、法人向けサービスなど、多岐にわたる分野で業界をリードし続けています。
その日本法人であるアマゾンジャパン合同会社も、「地球上で最もお客様を大切にする企業、最高の雇用主、最も安全な職場」を目指すという企業理念のもと、急成長とイノベーションを実現し、国内の転職市場から大きな注目を集めています。
ここでは、アマゾンジャパンの年収や給与体系について、最新の情報をもとにまとめます。
「Amazon/AWSの平均年収」はあまり意味がない理由
ネット上では「アマゾンの平均年収はいくら」といった情報がよく見かけられますが、これは実情を正確に表しているとはいえません。その理由は主に以下の3点です。
1.部門や部署ごとに大きな差がある
- アマゾンには本社の企画・技術系から、フルフィルメントセンターやカスタマーサービスなどの現場部門までさまざまな部署があります。それぞれで採用方針や予算規模が異なり、年収レンジにも大きな幅が生じています。本社内でもリテール・デジタル・セラーといった事業ごとに予算や処遇は異なります。
2.ジョブレベル(役職)ごとに大きく変わる
- アマゾンでは「L4~L8」などのジョブレベルが設けられており、同じ職種・部門であってもレベルごとに報酬水準は大きく異なります。例えばL4のスタッフとL7のマネージャーでは年収に数倍の差がつくことも珍しくありません。
3.RSU(譲渡制限付き株式)の影響が非常に大きい
- 特に中堅以上の社員は、年収に占めるRSU(株式報酬)の比率が高く、株価や付与タイミングによって実質的な年収が毎年大きく変動します。入社時や昇進ごとのRSU付与、追加付与などもあり、一律の「平均値」では個々の状況を正確に反映できません。
RSU(譲渡制限付き株式)とは?
RSU(Restricted Stock Unit/譲渡制限付き株式)とは、一定期間の在籍や目標達成を条件に、株式が付与される報酬制度のことです。アマゾンをはじめとしたグローバル企業では「現金給与」と並ぶ重要な報酬の柱となっています。詳細の制度については後述します。
Amazon/AWSの給与は「ジョブレベル」が軸
Amazonでは、給与や待遇が「ジョブレベル(Job Level)」という世界共通の等級制度に基づいて決定されます。アマゾンジャパンもこの基準を適用しており、役割や職種に応じて明確にレベル分けされています。
■ジョブレベル制度のポイント
等級はL1からL12まで12段階に分かれます。
日本法人(アマゾンジャパン)の正社員採用のメインはL4〜L6で、ジョブレベルは「L4」「L5」などと表記されます。
各ジョブレベルごとに年収レンジ(報酬幅)が設定されており、入社時のオファーや昇進時にはこの枠内で金額が決まります。
■ジョブレベルと年収レンジ
ジョブレベル | 年収レンジ | ポジション |
---|---|---|
L1〜L3 | 300〜500万円 | 契約社員・アルバイト(オペレーション系) |
L4 | 400〜700万円 | 正社員・新卒(一般職) |
L5 | 700〜1100万円 | マネージャー(中間管理職) |
L6 | 1100〜1600万円 | シニアマネージャー(管理職) |
L7 | 1,700〜2,600万円 | 部長クラス(上級管理職) |
L8 | 2,100〜4,000万円 | 本部長クラス |
L9 | - | 欠番(該当なし) |
L10 | 4,000〜1億8,000万円 | 統括責任者クラス |
L11 | 2億2,000万円以上 | SVP/取締役クラス |
L12 | - | ジェフ・ベゾス氏(創業者・特別枠) |
L1~L3は、主にオペレーションセンターやカスタマーサービス部門など非正規(準社員/契約社員/パート)職が中心です。
L4~L6には、多様な年齢層が在籍しており、「年齢=等級」ではありません。年次や年齢による平均年収も実態を反映しません。
L6以上では、英語力が事実上必須となり、レベルが上がるほどマネジメント比率や経営判断の責任が増します。
L7以上は、部長~執行役員クラスで、日本での採用はごく限られ、ほとんどは米国本社主体のポジションになります。
L9は、グローバルでも特別ポスト扱いで「欠番」となっています。
アマゾンジャパン社員の給与明細(キャリコネ)
30代でも職種・役割によって年収額に大きな違いが
30代・男性・営業(正社員・非管理職)の 給与明細
30代・女性・広告宣伝(正社員・非管理職)の 給与明細
30代・男性・物流(正社員・非管理職)の 給与明細
30代・男性・広告宣伝(正社員・非管理職)の 給与明細
■募集要項との注意点
なお、採用ページや求人表記上のポジション名(例:マネージャー、プロジェクトリーダー等)とジョブレベルが完全一致するとは限りません。
基本的に中途採用ではL5から始まることが多いですが、職種や経験・選考内容により上下する場合もあります。
同じL4やL5でも職種や部門によって年収レンジや付帯条件が異なること、またジョブレベルの昇進には独自の評価・推薦資料が必要である点もAmazonの特徴です。
1. ジョブレベル内での職種・部門による違い
- Amazonでは、同じジョブレベル(例:L4やL5)であっても、担当する職種や配属部門によって、実際の年収レンジや福利厚生、RSU(株式報酬)の付与量、働き方の柔軟性、勤務地の条件などが細かく異なります。
- たとえばL5でも、エンジニアやソリューションアーキテクトなどの技術職は、営業職やコーポレート職よりオファー年収が高く設定される傾向があります。
- 同じL5でも、AWS部門とリテール部門・オペレーション部門では給与テーブルやRSUの基準値、昇給頻度等が異なります。
- 地域によっては、東京勤務(本社)と地方拠点ではレンジに差が出る場合や、リモート可否にも違いが生じます。
- このため、単一の「L4/L5年収」という話だけでなく、「どの職種」「どの事業領域」「勤務地」かが年収・条件に大きく影響するのが現実です。
2. 昇進の評価・推薦資料について
- Amazonの昇進(レベルアップ)は、自動的には行われず、独自の評価・推薦資料をともなう厳格なプロセスとなっています。
- SMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)方式での明確な目標設定と成果の記録が求められます。
- 各期ごとに360度評価(同僚や上長、部下など複数方向からの評価)および自己評価を提出します。
- 特定レベル以上(例:L5→L6やL6→L7など)は、直属上司だけでなく、プロジェクト関係者やピア(同僚)、場合によっては関連部門のマネージャーやより上位の幹部からの「推薦文(endorsement document)」が必要となります。
- 昇進審査では、成果を示すドキュメント、顧客や業績への具体的インパクト、行動指針(Leadership Principles)への体現度なども詳細にレビューされます。
Amazon/AWSの給与体系のしくみ
Amazonの給与は、入社後2年間とそれ以降で構成が大きく変わるのが特徴です。
■入社1〜2年目:基本給+サイニングボーナス+RSU
- 基本給:月給制で、年間総額を12分割して毎月支給。
- サイニングボーナス:入社時のオファー交渉で決定する一時金。最初の2年で分割して受け取ります。ボーナス額は株価など最新状況を考慮し決まります。
- RSU(譲渡制限付き株式):入社時にまとめて付与され、1年目5%、2年目15%ずつが権利確定となります。
Amazonは年俸制のため、「基本給+サイニング+RSU」すべて合算した金額が毎月分配されるイメージです。また、基本給には月70時間分の固定残業代相当額が含まれている点も注意が必要です。
■3年目・4年目:基本給+RSU(サイニングなし)
- 入社から3年目以降はサイニングボーナスはなくなり、「基本給+RSU」の2本柱となります。
- RSUは各年40%ずつ執行され、評価によっては予定通り全額が付与されないこともあります。4年在籍しパフォーマンス基準を満たすことで、はじめてオファー文書通り100%消化となります。
- サイニングが消えることで、月給や年収が一時的に下がる点も留意しましょう。
■L5・L6各レベルの給与モデル(入社1〜4年目)
年次 | 基本給(月額) | サイニングボーナス | RSUベスティング | モデル年収 |
---|---|---|---|---|
L5 1年目 | 58〜92万円 | 120〜180万円 | 5% | 700〜1,100万円 |
L5 2年目 | 61〜94万円 | 120〜180万円 | 15% | 730〜1,130万円 |
L5 3年目 | 53〜82万円 | なし | 40% | 640〜980万円 |
L5 4年目 | 56〜84万円 | なし | 40% | 670〜1,010万円 |
L6 1年目 | 92〜135万円 | 120〜180万円 | 5% | 1,100〜1,620万円 |
L6 2年目 | 94〜138万円 | 120〜180万円 | 15% | 1,130〜1,650万円 |
L6 3年目 | 82〜123万円 | なし | 40% | 980〜1,480万円 |
L6 4年目 | 84〜126万円 | なし | 40% | 1,010〜1,510万円 |
注釈が入ります。スマホで確認すると、こちらはデバイス幅いっぱいに収まります。
■RSUの特徴と注意点
- RSU最大の魅力は、株価上昇によるインセンティブ効果です。長期保有することで含み益が生まれ、企業業績と報酬が強く結びつきます。
- ただし、株価は変動するため、理論値どおりの年収や資産となる保証はありません。
- サインボーナス終了後は月給ベースが下がるため、「入社3年め≒収入の谷」が発生しやすいです。
- 評価や会社都合でRSU付与計画が変更されるリスクもあり、4年間勤務して初めて契約通りフル付与となる点には要注意です。
- 実際にはカルチャーフィットや仕事のミスマッチで短期離職する人も多く、RSUを最大限まで得る人が意外と少ないというのが現場の声です。
このように、Amazon/AWSの給与体系は「入社直後の手厚さ」と「長期のインセンティブ型」が組み合わさっており、RSUのベスティングやボーナススキームの推移を正しく理解したうえでキャリア設計することが重要です。
Amazon/AWSの評価制度
■SMART目標設定と360度評価
Amazonでは、社員の評価において目標の明確化(SMART)と多面的なフィードバック(360度評価)を両立した仕組みを採用しています。
SMART方式による目標設定
- 各社員は直属の上司と一緒に、「具体的(Specific)・測定可能(Measurable)・達成可能(Achievable)・経営目標と関連(Relevant)・期限内(Time-bound)」というSMART基準で目標を設定します。これにより、抽象的・主観的な評価を避け、誰が見ても分かる数値や成果で目標達成度を測れるようにしています。
Our Leadership Principles・360度評価
- Amazon独自の「リーダーシップ・プリンシプル(全14項目)」をどれだけ体現・実践していたか、という定性的な面も重要な評価軸です。指導者だけでなく、同僚や他部門の関係者など複数人からフィードバックを集める「360度評価」をあわせて実施し、行動面やチーム貢献も総合的に判断します。
部門長による評価チェック(キャリブレーション)
- 個々の評価が恣意的にならないよう、部門長以上が集まり第三者視点で調整・検証を行う「キャリブレーション会議」も設けられています。これにより、公平性と一貫性を担保しています。
昇級時の年収アップ幅
- 評価によって昇級が認められた場合、通常は年収ベースで30〜40万円程度のアップが見込まれます。
■独自の昇進(プロモーション)プロセス
Amazonの昇進は、本人による成果アピールと複数の推薦状を組み合わせた、かなり構造化された仕組みが特徴です。
- 昇進希望者は、直近の実績や貢献内容を「小論文(セルフプロモーション)」としてまとめます。
- 直属の上司だけでなく、さらに上位レベルの上司、および業務で密接に関わった他社員からも推薦文(エンドースメント)を集める必要があります。
- この一連の資料が昇進審査委員会で評価・承認されると、昇進となります。
- たとえばL5(マネージャー)からL6(シニアマネージャー)へ昇進すると、年収は100〜500万円程度増加するのが目安です。
このようにAmazon/AWSでは、「成果の見える化」と「多面的・客観的な評価」を組み合わせ、かつ昇進時のエビデンス重視や推薦文化を徹底することで、透明性の高い評価・キャリアアップ制度を実現しています。
アマゾンジャパン、アマゾンウェブサービスジャパンのL6〜L8のポジション(シニア〜本部長クラス)への転職を成功させたい方は
グローバルウェイ・エージェントがお手伝いします。費用は一切かかりません。ぜひご相談ください。
取材協力:やまざき@元アマゾンジャパン社員さん 他