2021年06月21日
図書館の民間運営において、2018年時点で約65%のシェアを誇る、図書館流通センターへの転職。公立図書館だけではなく、学校図書館や博物館の運営も担っています。中途採用では、志望動機・強み・適性といった基本に加え、これまでの経験や仕事への考え方、人物像なども踏まえ総合的な評価で採否が決まります。しっかりと対策しましょう。
図書館運営を民間に委託する「指定管理制度」の法改正がおこなわれたのは2003年。民間運営の図書館は年々増加しており、2009年の調査では582館が指定管理制度を導入しています。その中で圧倒的シェアを誇る図書館流通センター(TRC)。もともとは図書館の書籍流通の中心的な会社で、全国図書館の書誌データベースなども提供しています。
働く人は「やればやるほど本に対する知識が身につく」「購入する本の選定や子どもへの読み聞かせに関われる」などやはり「本が好き」を活かして働くことにやりがいを感じている様子。子どもやお年寄りと関わることで癒されることもあるのだそうです。また、「残業がほとんどない」ことから、「ワークライフバランスを重視して働ける」との声も。
一方で、報酬については不満の声が目立ちます。「一人暮らしや一家の稼ぎ頭の方が続けていくのは厳しい」という声からは、その切迫度が伝わってきます。「昇給するには職位を上げるしかなく、狭き門」とのことで、経済的に余裕があり図書館の仕事に生きがいを求めている人と、選ばれて昇格した人だけが続けていけるというのが実態のようです。
「本が好き」を活かして、金銭的報酬よりも生きがいを求めて働く。このような社風の中で働ける経済的状況であることが第一条件と言えそうです。
TRCの求人情報は、人材エージェント経由もしくは公式HPから入手できます。司書の資格は歓迎されますが、必須ではなく、それよりも接客ができることが第一条件。中途採用の場合、はじめは契約・嘱託社員として入社し、働きながら5段階の研修をこなします。その後、人事制度に基づき正社員登用となる人もいるとのこと。詳しくは公式の採用サイトに掲載されているので、ぜひ目を通し、自分の目標を定めておいてください。
採用プロセスは、口コミによると書類選考後筆記テストがあり、面接は1回。筆記テストの内容は時事問題や一般常識、小論文などで、「基礎的な学力を高めていった方がよい」との声も。時事問題の対策サイトや、新卒向けの教本などをチェックしておくのもよさそうです。入社時は正社員採用ではないため選考期間は1週間から2週間と短めです。
会社情報の「図書館とは何だろうか」のページには、「図書館の担う知的教育活動とは、自由で自立した民主的な地域社会づくりがおこわれるもの」とあります。自身が担うことになる社会的役割を意識して書類づくりを進めてみてください。「履歴書の文字が綺麗かどうかが重視されている」との口コミもあることから、普段以上に丁寧に書くよう心がけましょう。
接客がメインとなるため、クレーム処理に関する質問が多いようです。「苦情を言うお客さんもいるが大丈夫か」と確認されることもあれば、「クレームに対してどのように対応すべきか」など実際の業務を想定した質問を投げかけられることも。クレーム処理の経験や考え方をまとめて話せるようにしておきましょう。
また、「当社が運営を受託している図書館に行ったことがあるか」もよく聞かれる質問のひとつです。受託図書館の一覧はWikipediaの「TRC受託図書館」などから調べることができます。リストにある図書館に、面接前にぜひ足を運んでおいてください。
「図書館業務に活かせそうな趣味」や「よく読む本の分野」などの得意分野も聞かれます。趣味、特技、読書経験などを洗い出し、整理しておくとよいでしょう。
「接客業のため人当たりの良さが重視されている」「笑顔や明るさを評価される」「体力があると重宝される」といったコメントが多数寄せられているので、念頭に置いて準備を進めてください。
TRCの面接を受けるには、行動目標を知っておくことが重要です。同社が考える「専門職としての誇りを持った人材」とはどのようなスタッフなのか、理解しておきましょう。
出典:図書館流通センターのサイトより
TRCの「行動目標」を知ることで、どのような人材がTRCで働くにふさわしいとされているのかを理解することができます。しっかりと頭に入れて、自己分析の際は自分の今までの仕事内容からこの「行動目標」に合致する部分に焦点を当て、自己PRとしてまとめておくとよいでしょう。
TRCの行動目標は、「明るく元気でいよう」「高いホスピタリティを発揮しよう」「幅広い知識を高度な専門性を身につけよう」の3つ。それを実現するために必要なスキルの4本柱は「基礎的能力(マナーなど)」「実務能力」「専門的知識とスキルの習得」「組織マネジメント」とされています。
「ルールを学び業務に反映」「より高度な技術を自主的に習得」といった文言から、学習意欲やそれを実践に活かす能力を重視していることがわかります。そして「地域のニーズを見出す」「特性に応じた図書館サービスを提供」といった言葉からは提案能力を求められていることもうかがえます。今までの職務から学習意欲、実践能力、提案能力の3つを同時にアピールできるようなエピソードを用意しておくと自己PRに大変役立つでしょう。
また、正社員登用を目指すのであれば「組織マネジメント」の能力が必須。同社のHPにも「後輩の指導育成に貢献された方を登用」とあることから、責任者やマネジャー、指導者の立場に立った経験があればエピソードとしてまとめておき、自身の目標と共にアピールするとよいでしょう。
TRCの面接では、志望動機を明確にしておくことが重要です。同業他社の名前を引き合いに出して「なぜ他社ではなくTRCなのか」と具体的に尋ねられることも。志望動機というと多くの応募者は「本が好きだから」「今までの経験を活かせそうだから」などをあげがちですが、それだけでは「同業他社ではなくTRCを選んだ理由」の説明にはなっていません。
同じ業界や司書という職種の中でもなぜTRCを選んだのか。説得力のある志望動機を語るにはこれを明確にする必要があります。そのためには、同業他社について調べ、TRCとの違いを把握しておくことが重要です。具体的には次のような企業について調べて、TRCと比較してみましょう。
●カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)
●株式会社有隣堂
●株式会社紀伊國屋書店
このように、TRCの面接準備においては、他社研究を基に志望動機を明確にすることと、行動目標に沿った自己PRの整理が重要です。面接当日は、「『本が好き』を活かして、金銭的報酬よりも生きがいを求めて働く」ことが可能であると印象付けられるよう言動を工夫し、「学習意欲、実践能力、提案能力」の3つを兼ね備えていることをアピールできるよう、エピソードをいくつか準備していくとよいでしょう。
服装については「スーツは必要ないがジャケットにブラウス」とのコメントがあり、オフィスカジュアルを意識するとよさそうです。「控えめで優しい方が多いのでその雰囲気に合わせるようにした」「面接官は3人いて3人からそれぞれ質問される」といったコメントも当日の雰囲気の参考になるでしょう。
ここからは、面接を実際に受けた方が面接官に何を聞かれたか、具体例をいくつかご紹介します。当日の雰囲気をイメージしながら、自分ならどのように回答するか考えてみてください。
TRCの面接に向けて、対策しておきたいポイントをまとめてご紹介してきました。特に次の4点について、準備を万端にして挑んでください。
●「『本が好き』を活かして、金銭的報酬よりも生きがいを求めて働く」ことが可能であることをアピールする。
●TRCの行動目標に沿って自己分析をおこない、アピールすべきポイントを整理する。
●TRCの受託図書館に足を運び、感想をまとめておく。
●競合他社と比較し「なぜ競合他社ではなくTRCなのか」を明確にし、志望動機を語れるようにする。
準備が完了したら、笑顔や人当たりのよさを重視したふるまいを心がけ、自分の言葉で伝えるようにしましょう。
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