【年収研究シリーズ】日本取引所グループの年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
経済のニュースを見ていると、毎日のように「東証」や「マザーズ」といった言葉が飛び交っています。これらは株式が売買される市場のことであり、これらの日本の代表的な株式市場を先頭に立って引っ張ってきたのが東京証券取引所(日本取引所グループ:JPX)です。
東京証券取引所の前身である東京株式取引所は、明治維新から間もない1878年に、明治政府による新産業育成政策に応じるかたちで、渋沢栄一らが創設しました。ここで企業は資金調達をおこなうことができ、健全な市場を振興させる仕組みが作られていったのです。第二次世界大戦終戦後には、日本経済の自立と復興のための地盤が作られました。さらに高度経済成長期には、株式市場の発展が支えられ、その後は株式市場のグローバル化が進められています。そして2013年1月に、東京証券取引所は大阪証券取引所と経営統合し、社名を株式会社日本取引所グループ(JPX)と改め、世界に対抗しうる規模の証券取引所を誕生させたのです。
また東京証券取引所(日本取引所グループ)は年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
日本取引所グループの平均年収は1034.7万円
まずはじめに日本取引所グループの平均年収を見ていきましょう。日本取引所の平均年収は1034.7万円です(日本取引所有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考に日本取引所の年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で420〜470万円、30歳代で730〜780万円、40歳代で960〜1010万円という結果がでました。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ2.09倍の額です。
■日本取引所グループの平均年収推移
日本取引所グループ・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
日本取引所グループの平均年収は前年を上回り1034.7万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
日本取引所グループの年代別平均年収と中央値
■日本取引所グループの年収中央値は30代で751.5万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
日本取引所グループと競合他社の平均年収を比較
日本取引所グループの競合や同業界である大和証券グループ本社、岡三証券グループ、極東証券の4社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、日本取引所が1034.7万円、大和証券グループ本社が1219.9万円、岡三証券グループが1177.4万円、極東証券が886.7万円です。
この4社の中で最高額は大和証券グループ本社の1219.9万円で、最低額が極東証券の886.7万円。その差はおよそ334万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では日本取引所は3番目に位置します。
取引所業界の給与明細(キャリコネ)
日本の平均年収を大きく上回る収入が
東京証券取引所(東証・日本取引所グループ)20代・法人営業(非管理職)の
給与明細
野村ホールディングス20代・法人営業(非管理職)の
給与明細
大和証券グループ本社20代・法人営業(非管理職)の
給与明細
日本取引所グループの初任給
■初任給は安いが
採用情報を見てみると、スタッフ職の2つのコースで給与体系が異なることがわかります。
[スタッフ職 GSコース]
国内拠点と海外拠点にて、高い専門性を備えてJPXの経営に関わる業務(経営企画やマーケット運営制度企画、商品・システム開発など)を行うコースです。
給与は大学卒で22.2万円、修士卒で23.7万円とわかれます。
[スタッフ職 SSコース]
国内拠点にて、専門性を身に付けてJPXの安定的な業務運営を支える業務(秘書や管理部門、マーケット運営部門など)を主に行い、本人の能力や意欲に応じて多岐にわたり活躍できるコースです。
給与は大学卒で21.8万円、修士卒で23.3万円とわかれます。
その後は職能給で年功序列の傾向があるようですが、入社後は毎年定額の定期昇給があり、調査役までの8年目位までは全員が昇進をします。賞与は業績に応じて数か月分が支払われるようです。
東京証券取引所(東証・日本取引所グループ)社員の給与明細(キャリコネ)
20代と30代で比べてみると…
20代・管理業務(非管理職)の
給与明細
30代・管理業務(非管理職)の
給与明細
賞与は必ず出される?
20代・管理業務・賞与あり(非管理職)の
給与明細
20代・管理業務・賞与あり(非管理職)の
給与明細
日本取引所グループのデメリットは
■責任の大きさとグローバルレベルの競争力を求められる
1つ目のデメリットは、少数精鋭主義であるため、1人当たりの責任が非常に大きいことです。2019年3月時点の社員数は、1110人です。想像していた人数より少ないと感じるかもしれませんが、この社員数で日本の取引市場を支えているため、若いうちから重要な戦力の1人として、責任のある仕事を任せられることが多いでしょう。
2つ目に、対世界に対する競争力の低さです。売上高で世界の取引所と比較すると、規模は半分以下と劣ります。独占企業であることに甘んじていては、競争力が下がる恐れがあるでしょう。しかし好調な業績により、財務レベルでは世界の取引所と戦う準備はできているといえます。先に述べたスタッフ職GSコースに就く場合は、国際標準レベルでの経営を行うことが求められるので、前もって理解しておく必要があります。
日本取引所グループの年収以外のメリット
■残業時間少な目で有休消化率は高い
ここまで東京証券取引所(日本取引所グループ)の年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
少数精鋭ですが、社員のプライベートや健康を削る企業ではありません。
平均残業時間は24.15時間で、平均有給取得率は67%で高い水準です。また男性社員の2017年の育児休暇取得者は30人であり、女性社員の育休・産休後の復帰率はなんと100%を誇ります。これらの数字がそれを証明しているといえるでしょう。
また経営計画においては、アジア市場におけるプレゼンス強化を掲げています。その1つとしてミャンマー初の証券取引所「ヤンゴン証券取引所」設立支援をおこない、ミャンマーの資本主義発展にも貢献しています。対世界を見すえて、まずは「アジアNo.1」を目指す姿勢は評価されるべきであり、今後の動向に注目したい1社です。日本経済の心臓部とも言われる国内唯一無二の場所で、好待遇のなか、自らの力を高めたい人にはぜひお勧めしたい企業といえます。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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