2021年06月21日
「システム物流」と呼ばれる「3PL」を主力に、国内外への運輸事業をおこなう日立物流への転職。採用面接は新卒の場合と違い、これまでの仕事への取り組み方や成果を具体的に問われるほか、書類では見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策をすすめましょう。
1950年に設立された日立物流は、日立グループおよび佐川急便グループに属する大手物流企業です。業務内容は運送・配送に限らず、顧客企業より委託された物的流通(生産、在庫管理、販売など)の一括管理体制を請け負う、いわゆる「3PL(サードパーティロジスティクス)」を主力とし、その先駆けとしても名を知られています。このほかにも、産業機械・鉄道車両などの重量品や、精密機器の輸送・移設など、さまざまな業務をおこなっています。
国内外それぞれで多種多様な顧客を抱えているためか、勤務する人の口コミからは「仕事を通じて学ぶことが非常に多い」という声が聞かれます。社員同士の横のつながりも強く、課題に対して部署を問わずにコミュニケーションをはかり業務にあたるといった面や、「積極的に提案すれば、責任ある仕事を任せてもらえる」など、風通しの良い現場環境であることもうかがえます。福利厚生面でも、同業他社と比べると高評価に値するとの意見も見られました。
一方では、「残業が多く管理も不十分」「人員不足によりワークバランスが崩壊」との声も。近年では以前と比較すると残業や休日出勤は減少しているようですが、それでも新規案件時などの多忙さには、嫌気がさしている人も見受けられます。さらに大手グループ企業特有の「体育会系の古い体質」や「出世は年功序列で決まる」など、悪い風習が根強く残ってもいるようです。そして部署によって異なりますが、「決して自由な雰囲気にはない」という声も聞かれました。
同社は2019年、新たに「LOGISTEED」というコンセプトを掲げました。これは「LOGISTICS、Exceed、Proceed、Succeed、Speed」を合わせた造語で、既存事業を中核に、未来へ向けた革新を実現するとの意味です。以上から同社は「次世代の物流を創り出せる」人材を求めているといえるでしょう。採用面接では「社会や価値観の変化に柔軟に対応し、未来社会に貢献できる」かを見極められます。
日立物流グループは 広く未来をみつめ 人と自然を大切にし 良質なサービスを通じて 豊かな社会づくりに 貢献します
次に、同社の選考フローを見ていきます。履歴書、職務経歴書、個人情報取扱同意書(経験者採用サイトからダウンロード)を採用担当宛に郵送し、書類選考通過後に面接となります。
口コミを見ると、面接回数は2〜3回で、面接官は役員、部長、管理部門、現場社員が担当します。1次では1対1の対談形式、2次からは複数を相手にするという声が多く見られました。筆記試験はありませんが、SPI試験を受けたという話も。選考期間はおおむね1週間〜1ヶ月ほどですが、3ヶ月以上かかったとの口コミも見られ、これらは応募時期や職種によっても変更があるようです。
現在の募集職種は「新規開発営業(3PL事業)」「重量機工営業(重量物海外輸送、機工・環境ビジネス、セールスエンジニア)」「ロジスティクスエンジニア」「物流技術開発」「経理(システム展開、連結決算)」となり、応募資格や経験などの詳細はコーポレートサイトの採用情報にて確認をしておきましょう。あわせて、会社紹介や事業内容、先輩社員インタビューなどにも目を通し、雰囲気を把握することも大切です。
特に変わった質問をされることはなく、一般的な面接傾向にあるようです。しかし、志望動機や過去の職歴、退職理由などは簡潔に説明できるようにしておき、さらに入社後のビジョンについても、しっかりと自分の言葉で伝えられるよう対策をとることが必要です。前項に「多人数相手の面接」とありますが、圧迫面接の雰囲気はないので、落ち着いて臨むことも重要となります。
口コミで散見されるのが「英語での質問をされた」という声。海外向けの事業展開をしていることもあり、海外経験や語学力に関しては深く聞かれるようです。この問いかけで英会話のスキルを判断されてはいますが、「今この場での対応よりも、聞き取ろうとする姿勢・意欲を優先的に見ている」との意見があるので、焦ることなく聞き取れる範囲で回答を伝えていきましょう。
「個性よりも協調性を求める風土」なので、人柄重視の傾向にもあるようです。スキルや職歴に不安がある場合でも、仕事への熱意や、自分が同社に貢献できることを答えられるよう準備をして面接に臨みましょう。
同社の面接を受ける際には、中期経営計画である「LOGISTEED 2021」を正しく理解することが重要です。この項では、その経営方針を読み解いていき、自己分析に落とし込む方法を探求していきます。
「社風への理解」で記述したように、同社の造語である「LOGISTEED」には、「速さを持って、超える・続ける・成功する」との意味が含まれます。具体的には下図のように「金流・商流・物流・情流」の4つの流れを、自動化推進や管理システムの高度化により、コスト低減や運営の効率化を図るという方針です。
株式会社日立物流 株主・投資家向け情報 経営計画サイトより
「3PL」においては国内で先駆者とされる同社でしたが、近年では数多くの競合が参入したことにより、これまでの計画をさらに発展させる必要に迫られているといえます。重点を置く施策の中心として、業務の中核であるロジスティクスの強固をあげており、代表的な例でいえば、
●海外市場への積極投資と事業拡大
●オープンデジタルプラットフォームを駆使した業務の円滑化
●新技術開発と現場への実装推進
などを打ち出しています。
さらに、進化し続ける業界を「新しい成長機会」と捉え、顧客の要望に合わせたイノベーションを提案、課題の解決へとつなげていくとしています。
この他にも、デジタルトランスフォーメーションの推進やIT基盤の構築、新事業開発、M&Aなど、それぞれに向けての戦略投資を増額し、時代の変革に応じて「物流の新領域を目指す」との方針です。
株式会社日立物流 株主・投資家向け情報 経営計画サイトより
物流という事業は、この先どれほど技術が進んだとしても、なくなることのない業務といえます。それだけ安定性の高い業界ではありますが、逆にいえばノウハウさえ取得してしまえば新規参入が容易ともいえ、今後は競合といかに差別化を図っていくかが生き残りを賭けた戦略のひとつとなるでしょう。そのような状況において、上記方針のように新たな成長を目指す同社の計画は、次世代を見据えた変革へのスタートを切ったといえます。
以上を理解した上で「この計画を実行するには自分に何が必要か」を分析し、面接では「古い価値観にとらわれることなく、物流の新しい価値を創造し、社会貢献できる」との熱意を持った人物であるとアピールしていきましょう。
日立物流の面接では「なぜ当社を志望したのか」との質問をされます。ありふれた問いではありますが、そこには「この人は入社してから何をしたいのか」「現在までの職歴が当社の戦力となるのか」という意味が含まれるとともに、「当社を本当に理解しているか」を見極められる重要な項目といえます。
業界・職種のみの研究にとどまらず、日立物流という企業の経営理念、中期経営計画である「LOGISTEED 2021」をしっかりと把握した上で、競合として頻繁にあげられる他社の分析もしていきましょう。一例として以下の企業をピックアップしますので、参考にしてみてください。
●日本通運株式会社
●株式会社近鉄エクスプレス
●郵船ロジスティクス株式会社
企業研究を通じて、日立物流の経営方針や求めている人物像が分かってきたと思われます。面接の場では、「広く未来を見つめる」という企業理念を意識し、同社が求める「新しい物流の創造」「周囲との調和を大切に仕事ができる」人材だと印象づけられるエピソードを用意しておくとよいでしょう。
以下は、実際の面接で聞かれた質問です。これらに目を通し「こういった質問を受けた場合はどう回答するのが最善か?」「仕事への意欲を伝えるためにはどうすれば良いか?」など、シミュレーションを繰り返してみましょう。
日立物流の採用面接を受けるに際し、押さえておきたいポイントをご紹介してきました。面接時の対策として用意しておきたいのは、以下の3つです。
●「未来へ向けた物流の創造を通じ社会へ貢献」という社風を意識して、これに合った人材ということをアピールする。
●日立物流の「LOGISTEED 2021」を理解し、これに沿った自己分析をして自己PRにつなげる。
●競合他社についても研究し、「なぜ日立物流か」に対する答えを明確にしておく。
これらについてしっかり準備し、面接当日は自分の言葉でアピールするよう心がけましょう。
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