※本記事は、積水ハウス株式会社の有価証券報告書(第75期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 積水ハウスってどんな会社?
戸建住宅をはじめとする多様な建築や不動産開発、国際事業をグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
1960年にプレハブ住宅の事業化を目的として積水ハウス産業を発足しました。1963年に現在の社名に変更し、1970年に東証および大証に上場しました。その後、賃貸住宅管理やリフォームなどに事業領域を拡大し、2008年以降はオーストラリアや米国などで国際事業も本格化してグローバル展開を推進しています。
従業員数は連結で32,186名、単体で14,178名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同業の日本カストディ銀行です。第3位には従業員持株会である積水ハウス育資会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.72% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.54% |
| 積水ハウス育資会 | 3.42% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性4名の計15名で構成され、女性役員比率は26.7%です。代表取締役兼CEO 社長執行役員は仲井嘉浩氏が務めています。社外取締役の比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 仲井嘉浩 | 代表取締役兼CEO社長執行役員 | 1988年同社入社。経営企画部長、執行役員、常務執行役員等を経て、2018年代表取締役社長に就任。2021年より社長執行役員兼CEOを務め、2025年より現職。 |
| 田中聡 | 代表取締役副社長執行役員 | 1981年三井物産入社。同社執行役員、常務執行役員等を経て、2017年代表取締役副社長執行役員に就任。2021年同社代表取締役副社長執行役員に就任し、2025年より現職。 |
| 石井徹 | 取締役専務執行役員 | 1990年同社入社。開発事業部長、執行役員、常務執行役員等を経て、2020年専務執行役員および取締役に就任。2024年より国際事業本部長を委嘱され、現職。 |
| 篠崎浩士 | 取締役専務執行役員 | 1987年同社入社。東日本建築事業本部長、執行役員等を経て、2023年専務執行役員および取締役に就任。積水ハウス不動産ホールディングス代表取締役社長も務める。 |
| 大村泰志 | 取締役専務執行役員 | 1991年同社入社。支店長や営業本部長等を経て、2023年常務執行役員に就任。積水ハウス建設ホールディングス代表取締役社長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、吉丸由紀子(元日産自動車ダイバーシティディベロップメントオフィス室長)、北沢利文(元東京海上日動火災保険社長)、中島好美(元アメリカン・エキスプレス・ジャパン社長)、阿部伸一(元エムネス社長)、黒田由貴子(元ピープルフォーカス・コンサルティング社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「戸建住宅事業」「賃貸・事業用建物事業」「建築・土木事業」「賃貸住宅管理事業」「リフォーム事業」「開発事業」「国際事業」および「その他」事業を展開しています。
■戸建住宅事業
戸建住宅の設計、施工の請負、および販売を行っています。主に個人のお客様に向けて、安全性やデザイン性を備えた高品質な住宅を提供し、多様なライフスタイルに対応する住まいづくりを支援しています。
個人顧客から住宅の建築請負代金や住宅の販売代金を受け取ることで収益を上げています。運営は主に積水ハウスおよび積水ハウス建設グループの各社が行っています。
■賃貸・事業用建物事業
賃貸住宅および事業用建物などの設計、施工の請負、販売を行っています。土地所有者や法人顧客に対して、高い入居率を見込める賃貸住宅や、環境に配慮したオフィスビルなどの事業用建物を提案・提供しています。
土地所有者や法人顧客から建物の建築請負代金や販売代金を受け取って収益を得ています。事業の運営は主に積水ハウスおよび積水ハウス建設グループが担っています。
■建築・土木事業
事業用建物などの建築工事や土木工事の設計、施工の請負を行っています。官公庁や民間企業を顧客として、大規模な建築物や社会インフラの整備に関わる土木工事を幅広く提供しています。
官公庁や民間企業から建築工事および土木工事の請負代金を受け取ることで収益を確保しています。この事業の運営は主に鴻池組グループが担当しています。
■賃貸住宅管理事業
賃貸住宅などの借り上げおよび管理業務を行っています。賃貸住宅のオーナーから物件を借り上げ、入居者募集や建物の維持管理、トラブル対応など、賃貸経営を総合的にサポートするサービスを提供しています。
入居者からの家賃収入や、オーナーからの管理委託手数料を主な収益源としています。事業の運営は主に積水ハウス不動産グループの各社が手がけています。
■リフォーム事業
戸建住宅および賃貸住宅などのリフォームを行っています。既存の住宅オーナーを対象に、ライフスタイルの変化に合わせた改修や、環境性能の向上、建物の長寿命化を目的としたリフォーム工事を提案・実施しています。
住宅オーナーからリフォーム工事の請負代金を受け取ることで収益を上げています。運営は積水ハウスリフォーム、積水ハウスサポートプラス、積水ハウス不動産グループなどが共同で行っています。
■開発事業
住宅用地や既存住宅などの不動産仲介・販売、分譲マンションの開発・販売・管理、オフィスビルやホテルなどの都市再開発を包括して行っています。個人や法人顧客向けに幅広い不動産ソリューションを提供しています。
顧客からの不動産売買代金、仲介手数料、マンション販売代金、施設の運営収益などを得ています。運営は積水ハウス、積水ハウス不動産グループ、積水ハウスGMパートナーズなどが担っています。
■国際事業
海外において戸建住宅の販売や宅地の造成開発・販売、分譲マンションや賃貸マンションなどの開発を行っています。米国やオーストラリアなどを中心に、現地の顧客や投資家に向けて良質な住環境を提供しています。
現地の個人顧客や投資家から、住宅やマンションの販売代金、不動産開発に伴う収益を受け取っています。運営はSEKISUI HOUSE US HOLDINGSやオーストラリアの現地法人が行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、不動産管理業や損害保険代理店業などを展開しています。グループの事業を補完し、顧客に対して住まいに関連する多様な周辺サービスを提供しています。
顧客からの不動産管理手数料や、損害保険の代理店手数料などを収益源としています。これらの事業は積水ハウスグループ内の関連会社を通じて運営されています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
過去5年間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、堅調な成長を続けています。特に直近2期間での売上高の大幅な拡大が目立ちます。経常利益も右肩上がりで推移しており、収益基盤の安定性がうかがえます。利益率は7〜8%台で推移しており、一定の収益性を維持しながら事業規模の拡大を達成しています。
| 項目 | 2022年1月期 | 2023年1月期 | 2024年1月期 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 25,896億円 | 29,288億円 | 31,072億円 | 40,586億円 | 41,979億円 |
| 経常利益 | 2,301億円 | 2,573億円 | 2,682億円 | 3,016億円 | 3,278億円 |
| 利益率(%) | 8.9% | 8.8% | 8.6% | 7.4% | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 963億円 | 1,152億円 | 1,313億円 | 1,773億円 | 1,733億円 |
売上高および売上総利益はともに前期を上回っており、事業活動の着実な拡大が確認できます。売上総利益率も約20%前後と安定した水準を保っています。営業利益についても増加しており、継続的な増収増益基調が示されています。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 40,586億円 | 41,979億円 |
| 売上総利益 | 7,860億円 | 8,398億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.4% | 20.0% |
| 営業利益 | 3,314億円 | 3,414億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 8.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当及び賞与が1,780億円(構成比35.7%)、販売促進費が529億円(同10.6%)、広告宣伝費が362億円(同7.3%)を占めています。
開発事業が物件売却の順調な進捗により大きく伸長し、業績を牽引しました。ストック型ビジネスである賃貸住宅管理事業やリフォーム事業も堅調に推移しています。一方、国際事業は米国におけるインセンティブ増加などの影響で減収となりましたが、全体としては各セグメントがバランスよく収益に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年1月期) | 売上(2026年1月期) |
|---|---|---|
| 戸建住宅事業 | 4,790億円 | 4,788億円 |
| 賃貸・事業用建物事業 | 5,370億円 | 5,581億円 |
| 建築・土木事業 | 3,225億円 | 2,983億円 |
| 賃貸住宅管理事業 | 6,807億円 | 7,074億円 |
| リフォーム事業 | 1,824億円 | 1,867億円 |
| 開発事業 | 5,671億円 | 6,702億円 |
| 国際事業 | 12,785億円 | 12,864億円 |
| その他 | 66億円 | 62億円 |
| 調整額 | 49億円 | 57億円 |
| 連結(合計) | 40,586億円 | 41,979億円 |
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金で投資を行い、さらに借入金の返済なども進める「健全型」の状態にあります。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 629億円 | 2,163億円 |
| 投資CF | -6,977億円 | -732億円 |
| 財務CF | 7,210億円 | -933億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、根本哲学である「人間愛」を基盤とし、「真実・信頼」を基本姿勢、「最高の品質と技術」を目標、「人間性豊かな住まいと環境の創造」を事業の意義とする企業理念を掲げています。相手の幸せを願い、奉仕の心を持って誠実に実践することを目指し、社会に貢献する住環境の創造を使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、従業員が誇りと責任を持って行動するための道標として「SEKISUI HOUSE_SHIP」を制定しています。イノベーションによる新しい価値の創出、コミュニケーションによるアイデアの育成、自律的かつ主体的な行動、感性と技術・美意識の探求を重視し、世界一幸せな場所づくりのためのプロを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、第7次中期経営計画(2026年度~2028年度)において、「新たな価値を創造する、ESG経営のリーディングカンパニー」を基本方針とし、最終年度である2029年1月期の目標数値を設定して持続的な企業価値の向上を目指しています。
・売上高:5兆260億円
・営業利益:4500億円
・経常利益:4340億円
・親会社株主に帰属する当期純利益:3000億円
・ROE(自己資本利益率):12%後半
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、国内では「グループ総合力による積水ハウス経済圏の深耕」、海外では「ゲームチェンジに向けた成長基盤の構築」を基本方針に掲げています。国内では住まい手に対するワンストップでのソリューション提供を強化し、海外では米国戸建住宅事業における技術移植やブランド構築を加速させて飛躍的な成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「人財価値向上=従業員の自律×ベクトルの一致」を基本方針とし、持続的な企業成長を目指しています。キャリア自律支援、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、多様な働き方の推進、幸せの基盤づくりを重点テーマに掲げ、従業員一人ひとりが主体的に考え行動し、能力を最大限に発揮できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月期 | 43.5歳 | 16.2年 | 9,071,924円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.6% |
| 男性育児休業取得率 | 111.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 59.0% |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | 40.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(26.4%)、年次有給休暇取得率(85.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 住宅および不動産市場環境の変化
個人消費、金利、地価、資材・エネルギー価格、住宅関連政策や税制、国内外の政治・経済情勢の変化が事業環境に影響を及ぼし、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。これに対し、市場動向を踏まえた機動的な施策の実施や、海外拠点との連携による情報収集・分析を通じて対応しています。
■(2) 企業買収・事業再編に関するリスク
国内外での企業や事業の買収、組織再編を進める中で、統合手続きや実行後に期待通りの成果が得られない場合や、想定外の事業環境の変化が生じた場合、無形固定資産の減損損失などにより業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。外部専門家を交えた適切な評価と統合プロセスの推進によりリスク低減を図っています。
■(3) 保有する資産に関するリスク
国内外で保有する販売用不動産、固定資産、投資有価証券などについて、時価の下落や為替相場の変動により減損損失や評価損が発生する可能性があります。特に開発期間の長い販売用不動産は、市況変化やコスト上昇の影響を受けやすいため、投資案件の慎重な評価や適切なヘッジ手続きなどを通じてリスクを管理しています。
■(4) 建設技能者の減少に関するリスク
建設業界における高齢化や若年就業者の減少、海外市場での労働力獲得競争の激化により、必要な建設技能者を安定的に確保できず、工期の遅れや労務費の高騰が生じる可能性があります。同社は、施工体制の整備や生産性の向上、若手技能工の採用・育成、海外での標準化やデジタル技術の活用などにより対応を進めています。



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