※本記事は、積水ハウス株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年2月1日 至 2025年1月31日、2025年4月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 積水ハウスってどんな会社?
戸建住宅や賃貸住宅の建築請負を核に、開発や国際事業も展開する大手住宅メーカーです。「わが家」を世界一幸せな場所にするというビジョンを掲げています。
■(1) 会社概要
1960年に積水ハウス産業として発足し、1963年に現社名へ変更。1970年に上場を果たしました。2008年の豪州進出を皮切りに国際事業を拡大し、2017年には米国Woodside Homes社を完全子会社化。2024年には米国のM.D.C. Holdings, Inc.を完全子会社化し、海外展開を加速させています。
連結従業員数は32,265名、単体では15,664名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に資産管理を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)です。第3位には従業員持株会である積水ハウス育資会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.79% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.64% |
| 積水ハウス育資会 | 3.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性4名の計15名で構成され、女性役員比率は26.7%です。代表者は代表取締役兼CEO社長執行役員の仲井 嘉浩氏です。取締役10名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 仲井 嘉浩 | 代表取締役兼CEO社長執行役員 | 1988年4月同社入社。経営企画部長、常務執行役員経営企画・経理財務担当、取締役等を経て、2018年2月代表取締役社長就任。2021年4月より社長執行役員兼CEOを務め、2025年4月より現職。 |
| 堀内 容介 | 代表取締役副会長執行役員 | 1980年4月同社入社。東京シャーメゾン事業本部長、常務執行役員、専務執行役員等を歴任。ESG経営推進や財務を担当し、2021年4月より現職。2023年2月より財務・ESG部門担当。 |
| 田中 聡 | 代表取締役副社長執行役員財務部門・人事部門・監査管掌、管理部門担当 | 1981年4月三井物産入社。同社代表取締役副社長執行役員を経て、2020年4月同社社外取締役就任。2021年4月代表取締役副社長執行役員就任。2025年4月より現職。 |
| 石井 徹 | 取締役専務執行役員開発型ビジネス部門担当、国際事業本部長 | 1990年4月同社入社。開発事業部長、常務執行役員等を歴任。2020年4月専務執行役員および取締役に就任。2021年2月開発型ビジネス部門担当、2024年5月より現職。 |
| 篠崎 浩士 | 取締役専務執行役員建築事業管掌、TKC事業担当 | 1987年4月同社入社。東日本建築事業本部長、常務執行役員等を歴任。2023年4月専務執行役員および取締役に就任。2024年5月より現職。 |
社外取締役は、吉丸由紀子(元株式会社ニフコ執行役員)、北沢 利文(元東京海上日動火災保険株式会社取締役社長)、中島 好美(元アメリカン・エキスプレス・ジャパン株式会社代表取締役社長)、武川 恵子(元内閣府男女共同参画局長)、阿部 伸一(元グーグル・クラウド・ジャパン合同会社代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「戸建住宅事業」、「賃貸・事業用建物事業」、「建築・土木事業」、「賃貸住宅管理事業」、「リフォーム事業」、「開発事業」、「国際事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 戸建住宅事業
戸建住宅の設計、施工の請負、および販売を行っています。顧客は主に個人です。
収益は、顧客からの工事請負代金や住宅販売代金によって得ています。運営は主に積水ハウス、積水ハウス建設グループ、積水ハウス ノイエが担っています。
■(2) 賃貸・事業用建物事業
賃貸住宅や医療・介護施設、商業施設などの設計、施工の請負、販売を行っています。土地オーナーや事業主が主な顧客です。
収益は、建築工事の請負代金や建物の販売代金から得ています。運営は主に積水ハウスおよび積水ハウス建設グループが行っています。
■(3) 建築・土木事業
オフィスビルやマンションなどの建築工事、およびトンネルや橋梁などの土木工事の設計、施工を請け負っています。官公庁や民間企業が顧客です。
収益は、工事請負代金から得ています。運営は主に鴻池組グループが担っています。
■(4) 賃貸住宅管理事業
賃貸住宅の一括借上げや管理運営業務を行っています。物件オーナーや入居者が顧客です。
収益は、オーナーからの管理委託手数料や入居者からの家賃収入等から得ています。運営は主に積水ハウス不動産グループが行っています。
■(5) リフォーム事業
戸建住宅や賃貸住宅などの増改築、改装工事を行っています。住宅所有者が顧客です。
収益は、リフォーム工事の請負代金から得ています。運営は主に積水ハウスリフォーム、積水ハウス不動産グループ、積水ハウス建設グループが行っています。
■(6) 開発事業
住宅用地や既存住宅の仲介・販売、分譲マンションの開発・販売、オフィスビルやホテルの開発・運営を行っています。個人や法人が顧客です。
収益は、不動産売買代金、仲介手数料、賃貸料やホテル宿泊料などから得ています。運営は積水ハウス、積水ハウス不動産グループ、SHホテルマネジメントなどが担っています。
■(7) 国際事業
米国、豪州など海外における戸建住宅の販売、宅地開発、マンション開発などを行っています。現地の個人や投資家が顧客です。
収益は、住宅や不動産の販売代金等から得ています。運営はSEKISUI HOUSE US HOLDINGS, LLCなどの現地法人が行っています。
■(8) その他
不動産管理業や損害保険代理店業などを行っています。
収益は、管理手数料や保険手数料などから得ています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近では大幅な増収となっています。経常利益も増加基調を維持しており、事業規模の拡大とともに利益額も伸長しています。利益率も安定した水準を保っています。
| 項目 | 2021年1月期 | 2022年1月期 | 2023年1月期 | 2024年1月期 | 2025年1月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 24,469億円 | 25,896億円 | 29,288億円 | 31,072億円 | 40,586億円 |
| 経常利益 | 1,847億円 | 2,301億円 | 2,573億円 | 2,682億円 | 3,016億円 |
| 利益率(%) | 7.5% | 8.9% | 8.8% | 8.6% | 7.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 700億円 | 963億円 | 1,152億円 | 1,313億円 | 1,773億円 |
■(2) 損益計算書
売上高、売上総利益ともに増加しており、事業規模が拡大しています。売上原価率の上昇が見られますが、売上総利益率は一定水準を維持しています。販管費も増加していますが、営業利益は増益を確保しています。
| 項目 | 2024年1月期 | 2025年1月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 31,072億円 | 40,586億円 |
| 売上総利益 | 6,237億円 | 7,860億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.1% | 19.4% |
| 営業利益 | 2,710億円 | 3,314億円 |
| 営業利益率(%) | 8.7% | 8.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当及び賞与が1,619億円(構成比35.6%)、販売促進費が566億円(同12.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで増収となりました。特に国際事業は、MDC社の買収効果や米国事業の好調により売上・利益ともに大幅に増加し、業績を牽引しました。戸建住宅事業や賃貸・事業用建物事業などの国内主力事業も堅調に推移し、増益に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年1月期) | 売上(2025年1月期) | 利益(2024年1月期) | 利益(2025年1月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 戸建住宅事業 | 4,708億円 | 4,790億円 | 411億円 | 461億円 | 9.6% |
| 賃貸・事業用建物事業 | 5,190億円 | 5,370億円 | 780億円 | 818億円 | 15.2% |
| 建築・土木事業 | 2,695億円 | 3,225億円 | 129億円 | 152億円 | 4.7% |
| 賃貸住宅管理事業 | 6,407億円 | 6,807億円 | 502億円 | 568億円 | 8.3% |
| リフォーム事業 | 1,732億円 | 1,824億円 | 235億円 | 266億円 | 14.6% |
| 開発事業 | 5,132億円 | 5,671億円 | 658億円 | 703億円 | 12.4% |
| 国際事業 | 5,111億円 | 12,785億円 | 489億円 | 789億円 | 6.2% |
| その他 | 56億円 | 66億円 | 16億円 | 25億円 | 37.5% |
| 調整額 | 43億円 | 49億円 | -511億円 | -468億円 | - |
| 連結(合計) | 31,072億円 | 40,586億円 | 2,710億円 | 3,314億円 | 8.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金に加え、借入や社債発行による資金調達を行い、M&Aなどの成長投資に積極的に充てている「積極型」です。
| 項目 | 2024年1月期 | 2025年1月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 157億円 | 629億円 |
| 投資CF | -691億円 | -6,977億円 |
| 財務CF | 65億円 | 7,210億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、根本哲学として「人間愛」を掲げています。これは、相手の幸せを願い、その喜びを自分の喜びとする奉仕の心を持って誠実に実践することを意味します。「真実・信頼」を基本姿勢とし、「最高の品質と技術」をもって「人間性豊かな住まいと環境の創造」を使命としています。
■(2) 企業文化
従業員が誇りと責任を持って行動するための道標として、「SEKISUI HOUSE_SHIP」を制定しています。「イノベーションで、新しい価値を生みだす」「コミュニケーションで、アイデアを育てる」「自律して、主体的に考え、動く」など5つの要素を掲げ、世界中の従業員とともに価値創造に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
「国内の“安定成長”と海外の“積極的成長”」を基本方針とする第6次中期経営計画を推進しています。2026年1月期(最終年度)の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:4兆5,000億円
* 営業利益:3,620億円
* 経常利益:3,390億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:2,320億円
* ROE:11.9%
■(4) 成長戦略と重点施策
独自のバリューチェーンを活かした既存事業の深化と、海外展開および新規事業による拡張を推進します。国内では3ブランド戦略の深化やエリアマーケティングに基づく高付加価値化を図ります。海外ではM&Aや積水ハウステクノロジーの移植により事業エリアを拡大します。また、「プラットフォームハウス構想」の推進やDX活用により新規事業領域を拡張します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人財価値向上=従業員の自律×ベクトルの一致」と定義し、キャリア自律支援、D&I推進、多様な働き方の推進、幸せの基盤づくりの4つのテーマに取り組んでいます。創発型企業文化の醸成や、従業員が主体的にキャリア形成できる環境整備を進めるとともに、企業理念と戦略を浸透させるリーダー育成や、グローバル化に対応した適正配置を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年1月期 | 43.9歳 | 16.4年 | 8,825,963円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.8% |
| 男性育児休業取得率 | 109.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 60.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 40.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(29.8%)、障がい者雇用率(3.08%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 住宅市場環境の変化
国内外で住宅事業を展開しているため、金利、地価、資材価格、労務費、住宅政策、賃料相場などの動向に業績が影響を受ける可能性があります。特に金利上昇や建設費高騰による需要減退が懸念されます。市場分析や機動的な施策実行により対応しています。
■(2) 企業買収・事業再編
事業規模拡大のためM&Aや組織再編を行っていますが、統合が円滑に進まない場合や想定したシナジーが得られない場合、のれんの減損損失等が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。専門部署によるデューディリジェンスやPMIの推進によりリスク低減を図っています。
■(3) 保有する資産の価格変動
販売用不動産や固定資産、投資有価証券などを保有しており、時価下落による減損損失や評価損、為替変動が業績に影響を与える可能性があります。特に販売用不動産は開発期間が長く、市況変化の影響を受けやすいため、投資判断の厳格化や早期の事業化に努めています。
■(4) 国内の建設技能者の減少
建設業界における高齢化や若年入職者の減少、時間外労働の上限規制適用により、必要な建設技能者を確保できなくなる可能性があります。施工体制の維持が困難になれば、工期遅延や労務費高騰を招く恐れがあります。協力会社との連携強化やDXによる生産性向上に取り組んでいます。



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