TOTO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TOTO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム、名証プレミア、福証に上場。衛生陶器や温水洗浄便座などの住宅設備機器を製造・販売するグローバル住設事業およびセラミック事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、海外住設事業やセラミック事業が伸長し増収となりましたが、経常利益は減益となりました。


※本記事は、TOTO株式会社 の有価証券報告書(第159期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. TOTOってどんな会社?


衛生陶器や温水洗浄便座「ウォシュレット」などの住宅設備機器を主力とし、世界的に展開する企業です。

(1) 会社概要


1917年5月に東洋陶器として設立され、衛生陶器の製造販売を開始しました。1949年5月に株式を上場。1980年にはアフターサービスを行うTOTOメンテナンスを設立しました。2007年5月に現在のTOTOへ社名を変更し、2017年5月には創立100周年を迎えました。

同グループの連結従業員数は32,968人、単体では7,836人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には生命保険会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 18.55%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 9.76%
明治安田生命保険相互会社 6.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役会長は清田徳明氏、代表取締役社長執行役員は田村信也氏が務めています。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
田村 信也 代表取締役社長執行役員 1991年入社。グローバル事業推進本部長、米州住設事業部長などを歴任し、2025年4月より現職。デザイン、デジタルイノベーション推進、経営企画等を担当。
清田 徳明 代表取締役会長 1984年入社。レストルーム事業部長、システム商品グループ担当などを経て、2020年代表取締役社長執行役員に就任。2025年4月より現職。
林 良祐 取締役専務執行役員 1987年入社。ウォシュレット生産本部長、レストルーム事業部長などを歴任。現在は最高技術責任者として、もの創り技術グループ等を担当。
田口 智之 取締役専務執行役員 1990年入社。財務・経理本部長などを経て、2025年4月より現職。最高財務責任者として法務、人財、財務・経理、情報企画等を担当。
武富 洋次郎 取締役常務執行役員 1988年入社。機器水栓事業部長などを経て、2024年4月より現職。浴室事業、キッチン・洗面事業、サプライチェーン、工務等を担当。
北崎 武彦 取締役常務執行役員 1988年入社。販売統括本部長などを経て、2025年4月より現職。お客様、文化推進、販売推進グループ等を担当。
竹内 直幹 取締役常務執行役員 1991年入社。米州・欧州住設事業統括部長、海外事業統括本部長などを歴任。2025年6月より現職。グローバル事業推進、海外住設事業を担当。
白川 敬 取締役 1985年入社。経営企画本部長、販売推進グループ担当などを経て、2020年代表取締役副社長執行役員に就任。2025年4月より現職。
吉岡 雅之 取締役常勤監査等委員 1988年入社。東陶(中国)有限公司董事、経営企画部長、財務・経理本部長などを歴任。2024年6月より現職。


社外取締役は、津田純嗣(元安川電機代表取締役会長)、山内重德(元UACJ代表取締役会長)、丸森康史(元三菱UFJ銀行常務執行役員)、家永由佳里(弁護士)、長沼知穂(元メリルリンチ日本証券)です。

2. 事業内容


同社グループは、「グローバル住設事業」、「新領域事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) グローバル住設事業


日本および海外において、衛生陶器、温水洗浄便座、ユニットバスルーム、システムキッチン、洗面化粧台などの住宅設備機器を製造・販売しています。日本市場ではリモデル(リフォーム)需要への対応や高付加価値商品の提案を強化し、海外では米州、アジア・オセアニア、中国大陸、欧州の各地域で事業を展開しています。

主な収益源は、一般顧客や事業者への製品販売による代金です。日本ではTOTOが製造・販売するほか、TOTOサニテクノやTOTOウォシュレットテクノなどの子会社が製造し、TOTOメンテナンスがアフターサービスを提供しています。海外では各地域の統括会社や製造・販売子会社が事業運営を行っています。

(2) 新領域事業(セラミック事業)


半導体製造装置用部材などのセラミック商品を製造・販売しています。特に、半導体製造プロセスの高度化に対応した静電チャックなどの高精度セラミック製品を提供し、デジタルトランスフォーメーション(DX)による社会変革を技術面から支えています。

主な収益源は、半導体関連メーカー等への製品販売による代金です。運営は主にTOTOが行っており、製造の一部を国内連結子会社のTOTOファインセラミックスが担っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、事務所などの不動産賃貸事業を行っています。

主な収益源は、保有不動産の賃貸料などです。運営は主に連結子会社のTOTOビジネッツが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は増加傾向にあります。2025年3月期の売上高は7,245億円となり、過去5年間で拡大しました。一方、利益面では経常利益が504億円となり、2022年3月期をピークに減少傾向が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,778億円 6,453億円 7,012億円 7,023億円 7,245億円
経常利益 410億円 569億円 548億円 515億円 504億円
利益率(%) 7.1% 8.8% 7.8% 7.3% 7.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 233億円 360億円 231億円 282億円 305億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は3.2%増加し、売上総利益も増加しました。営業利益は13.4%増の485億円となり、営業利益率は6.1%から6.7%へ改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 7,023億円 7,245億円
売上総利益 2,390億円 2,541億円
売上総利益率(%) 34.0% 35.1%
営業利益 428億円 485億円
営業利益率(%) 6.1% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料・賞与及び手当金が682億円(構成比33.2%)、発送費及び配達費が285億円(同13.8%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本住設事業は新商品や価格改定効果により増収となりました。海外住設事業では、米州事業が大幅な増収増益となった一方、中国大陸事業は市況低迷により減収かつ営業損失となりました。新領域事業(セラミック)は半導体市況の回復により大幅な増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本住設事業 4,731億円 4,813億円 223億円 219億円 4.6%
米州事業 589億円 705億円 28億円 52億円 7.3%
アジア・オセアニア事業 450億円 502億円 61億円 82億円 16.4%
中国大陸事業 841億円 669億円 44億円 -36億円 -5.3%
欧州事業 45億円 49億円 -13億円 -8億円 -16.6%
セラミック事業 365億円 503億円 110億円 204億円 40.6%
その他 3億円 3億円 1億円 0.5億円 18.1%
調整額 - - -25億円 -29億円 -
連結(合計) 7,023億円 7,245億円 428億円 485億円 6.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 763億円 714億円
投資CF -538億円 -384億円
財務CF -190億円 -190億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社是「愛業至誠」と、企業理念「社会の発展に貢献し、世界の人々から信頼される企業を目指します。」を掲げています。社会や地球環境にとって有益な存在であり続けることを目指し、2050年の持続可能な社会・カーボンニュートラルの実現と、すべての人に快適で健康な暮らしを提供することを目標としています。

(2) 企業文化


「きれいと快適・健康」「環境」「人とのつながり」をマテリアリティ(重要課題)として設定し、サステナビリティ経営を推進しています。「コーポレート・ガバナンス」と「デジタルイノベーション」を基盤とし、全社横断的な革新活動を通じて、地球環境に負荷をかけずに豊かで快適な社会の実現を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


2030年のありたい姿の実現に向けた中・長期経営計画「共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」を推進しています。経済的成長と社会的・環境的価値の創出を同時に目指し、持続可能な社会の実現に貢献することを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


「グローバル住設事業」と「新領域事業」を軸に成長を目指します。住設事業では、「きれいと快適・健康」と「環境」を両立するサステナブルプロダクツを世界に普及させます。日本市場ではリモデル需要を喚起し、海外では地域特性に応じた高付加価値商品を展開します。新領域事業では、セラミック技術を進化させ半導体市場の成長に対応します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人財が安心して挑戦できる会社を目指し、「マネジメントリソース革新」を推進しています。DX人財の育成強化や、ダイバーシティの更なる進化により、国籍やジェンダーを問わず活躍できる職場づくりを進めています。また、健康経営やワークライフバランスの充実を通じて、社員が誇りを持って働き続けられる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.1歳 18.8年 7,552,749円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.1%
男性育児休業取得率 54.5%
男女賃金差異(全労働者) 61.1%
男女賃金差異(正規雇用) 62.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 76.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際情勢の変化


グローバルに事業を展開しているため、各国の政治・経済情勢、法規制の変更、貿易摩擦、紛争などの地政学リスクの影響を受ける可能性があります。特にサプライチェーンの分断や物流の混乱が発生した場合、生産・販売活動に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 経済状況の変化


主要市場である日本、中国、米国等の景気後退や個人消費の低迷は、住宅着工件数やリフォーム需要の減少につながり、売上高の減少要因となります。また、原材料価格やエネルギーコストの高騰が続いた場合、製品価格への転嫁が十分にできなければ、収益性が低下するリスクがあります。

(3) 為替レートの変動


海外売上高比率が高いため、為替レートの変動は円換算後の売上高や利益に影響を与えます。また、海外拠点における現地通貨建ての資産・負債の円換算額も変動します。為替予約等のヘッジを行っていますが、急激な変動は業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。