TOTO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TOTO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TOTOは東京証券取引所プライム市場などに上場し、レストルーム、バス、キッチンなどの住宅設備機器の製造販売を中心に、半導体向けセラミック製品などの新領域事業もグローバルに展開しています。直近の業績は、売上高が前期を上回り、営業利益および当期純利益も増加する増収増益のトレンドで推移しています。


※本記事は、TOTO株式会社の有価証券報告書(第160期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. TOTOってどんな会社?


同社は住宅設備機器の製造販売を主力とし、半導体向けセラミック製品なども手掛けるグローバル企業です。

(1) 会社概要


1917年に東洋陶器として設立され衛生陶器の製造販売を開始しました。1949年に株式上場を果たし、1970年には東陶機器へ社名を変更しています。その後も水栓金具やウォシュレットなどの製造へと事業を拡大し、グローバル展開を推進する中、2007年に現在のTOTOへと社名を変更しました。

同社の従業員数は連結で30,324名、単体で7,758名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行となっています。第3位には生命保険事業を展開する明治安田生命保険が名を連ねており、機関投資家や金融機関を中心とした安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.13%
日本カストディ銀行(信託口) 8.86%
明治安田生命保険相互会社 6.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表取締役社長執行役員は田村信也氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
清田 徳明 代表取締役会長兼 取締役会議長 1984年同社入社。レストルーム事業部長などを経て、2016年代表取締役副社長執行役員に就任。2020年代表取締役社長執行役員を務め、2025年より現職。
田村 信也 代表取締役社長執行役員住設事業管掌、経営企画、内部監査室、秘書室担当 1991年同社入社。グローバル事業推進本部長や海外住設事業担当などを歴任し、2025年に代表取締役社長執行役員に就任。2026年より現職。
林 良祐 取締役専務執行役員最高技術責任者、事業部門管掌、お客様品質、デザイン、レストルーム事業、環境建材事業、セラミック事業担当兼 WILL2030 新領域事業担当 1987年同社入社。レストルーム事業部長や新領域事業グループ担当などを経て、2024年に取締役専務執行役員最高技術責任者に就任。2026年より現職。
田口 智之 取締役専務執行役員最高財務責任者、コーポレート部門管掌、法務、人財、財務・経理、情報企画、総務、リスク管理統括担当兼 WILL2030 マネジメントリソース革新担当 1990年同社入社。財務・経理本部長や法務、総務担当などを歴任し、2025年に取締役専務執行役員最高財務責任者に就任。2026年より現職。
武富 洋次郎 取締役常務執行役員浴室事業、キッチン・洗面事業、機器水栓事業、サプライチェーン、工務担当兼 WILL2030 デマンドチェーン革新(サプライチェーン)担当 1988年同社入社。機器水栓事業部長やもの創り技術グループ担当などを経て、2021年取締役常務執行役員に就任。2024年より現職。
北崎 武彦 取締役常務執行役員お客様サービス、文化推進、販売推進グループ、デジタルイノベーション推進担当兼 WILL2030 日本住設事業担当兼 WILL2030 マーケティング革新担当 1988年同社入社。東関東支社長や販売統括本部長を経て、2024年に取締役常務執行役員に就任。2026年より現職。
竹内 直幹 取締役常務執行役員グローバル事業推進、海外住設事業担当兼 WILL2030 海外住設事業担当 1991年同社入社。米州・欧州住設事業統括部長や海外事業統括本部長などを歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、津田純嗣(元安川電機代表取締役会長)、山内重德(元UACJ代表取締役会長CEO)、丸森康史(元三菱UFJリサーチ&コンサルティング代表取締役副社長)、家永由佳里(德永・松﨑・斉藤法律事務所パートナー弁護士)、長沼知穂(美点凝視パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「グローバル住設事業」「新領域事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) グローバル住設事業


主力であるグローバル住設事業では、レストルーム、バス、キッチン、洗面商品などの住宅設備機器の開発と製造販売を行っています。日本国内に加え、米州、アジア・オセアニア、欧州、中国大陸へとグローバルに展開し、地域特性に応じた商品を通じて、一般消費者や建築業者などに向けてきれいで快適な水回り空間を提供しています。

同事業の主な収益源は、一般消費者や建築業者への住宅設備機器の販売代金や、施工・アフターサービスに対する対価です。運営は同社のほか、衛生陶器を製造するTOTOサニテクノ、温水洗浄便座を製造するTOTOウォシュレットテクノ、アフターサービスを担うTOTOメンテナンスなど多数の子会社で行っています。

(2) 新領域事業


新領域事業では、長年培ってきたファインセラミックス技術を活用し、主に半導体製造装置向けの精密セラミック製品などの開発・製造販売を行っています。高度化する半導体製造装置メーカーに対して、静電チャックなどのオンリーワン商品の価値提案を行い、伸長する半導体市場に向けた事業拡大を推進しています。

同事業は、半導体デバイスメーカーや半導体製造装置メーカーなどへのセラミック製品の販売代金を主な収益源としています。事業の運営および製品の製造・販売は、同社に加え、精密セラミック製品の製造を専門とする子会社のTOTOファインセラミックスなどが主体となって担っています。

(3) その他


その他事業は、報告セグメントに含まれていない事業セグメントで構成されています。具体的には、事務所などの不動産の賃貸事業を展開しています。同社グループの保有する資産を有効活用し、安定的な事業運営を支える役割を担っています。

同事業は、入居する企業やテナントから受け取る不動産の賃貸収入などを主な収益源としています。運営については、同社の子会社であるTOTOビジネッツが主体となり、保有する不動産資産の管理および賃貸事業などの関連業務を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は安定して右肩上がりで推移しており、着実な事業成長が見られます。経常利益についても一時的な変動はあるものの、直近では大きく増加しており、稼ぐ力の向上と強固な収益基盤の構築が進んでいることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,453億円 7,012億円 7,023億円 7,245億円 7,374億円
経常利益 569億円 548億円 515億円 504億円 607億円
利益率(%) 8.8% 7.8% 7.3% 7.0% 8.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 360億円 231億円 282億円 305億円 450億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る実績を記録しています。売上総利益率および営業利益率も改善傾向にあり、高付加価値商品の販売拡大や徹底したコスト管理が収益性の向上に寄与していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 7,245億円 7,374億円
売上総利益 2,541億円 2,626億円
売上総利益率(%) 35.1% 35.6%
営業利益 485億円 538億円
営業利益率(%) 6.7% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与及び手当金が707億円(構成比33.8%)、発送費及び配達費が281億円(同13.5%)、研究開発費が263億円(同12.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


売上の大半を占める日本住設事業が安定した基盤を構成する一方で、アジア・オセアニア事業とセラミック事業が大幅な増収増益となり、全体の業績を牽引しました。特にセラミック事業は利益率が高く、中国大陸事業の落ち込みをカバーする役割を果たしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本住設事業 4,813億円 4,797億円 219億円 203億円 4.2%
米州事業 705億円 756億円 52億円 48億円 6.3%
アジア・オセアニア事業 502億円 549億円 82億円 102億円 18.6%
欧州事業 49億円 57億円 -8億円 -4億円 -7.5%
中国大陸事業 669億円 539億円 -36億円 -69億円 -12.8%
セラミック事業 503億円 674億円 204億円 289億円 42.9%
その他 3億円 3億円 0.5億円 0.7億円 24.6%
調整額 - - -29億円 -32億円 -
連結(合計) 7,245億円 7,374億円 485億円 538億円 7.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金をもとに投資を行い、さらに借入返済や株主還元なども手元資金で賄う「健全型」の優良な状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 714億円 712億円
投資CF -384億円 -218億円
財務CF -190億円 -386億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は社是「愛業至誠:良品と均質 奉仕と信用 協力と発展」と、TOTOグループ企業理念「私たちTOTOグループは、社会の発展に貢献し、世界の人々から信頼される企業を目指します。」を掲げています。広く社会や地球環境にとって有益な存在であり続けることを目指し、日々の企業活動を推進しています。

(2) 企業文化


創業以来受け継がれてきた「どうしても親切が第一」という先人の志を原点として、多様な人財が尊重し合い、安心してイキイキとチャレンジできる風土を重視しています。「適所適財」のジョブマッチングや柔軟な働き方を推進し、社員一人ひとりが誇りを持ち、自分らしく最高のパフォーマンスを発揮できる組織づくりを実践しています。

(3) 経営計画・目標


10ヵ年の中・長期経営計画「共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」のもと、2050年のカーボンニュートラル実現を見据えた目標を掲げています。地球環境に配慮したサステナブルプロダクツの普及を推進し、経済的成長と社会的価値の創出の両立を目指すサステナビリティ経営を実行しています。
・2030年度:資本コスト越えの利益率の実現
・事業所からのCO2排出量:2030年度までに47.5%削減(2021年度比)
・商品使用時のCO2排出量:2030年度までに25%削減(2021年度比)

(4) 成長戦略と重点施策


「グローバル住設事業」と「新領域事業」を2つの事業軸とし、デジタルイノベーションをベースとした全社横断の革新活動を推進しています。日本国内ではストック型社会への移行を見据え、デジタルやAIを活用したリモデル需要の喚起に注力します。また、半導体市場の伸長に対応するため、スマートファクトリーを進化させ、高効率な生産体制の構築による競争力強化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様な人財が集まり、安心してイキイキとチャレンジし、社員が誇りに思い働き続けたいと思える会社」を目指し、人的資本投資を推進しています。成果に繋がるDX人財の育成に向けた対話型研修や、ライフイベントとキャリアの両立を支援する勤務地限定制度の導入など、個々の自律的成長を支え、最高のパフォーマンスを発揮できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.2歳 18.9年 7,812,740円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.4%
男性育児休業取得率 127.3%
男女賃金差異(全労働者) 61.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 63.6%
男女賃金差異(パート・有期雇用労働者) 76.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の欠陥によるリスク


製造物責任に関するリスクです。同社の製品に重大な欠陥が生じた場合、製造物賠償責任保険でカバーしきれない賠償や対策費用が発生する可能性があります。また、事象が報道されることでブランドイメージが低下し、顧客の流出を招く恐れがあるため、厳格な品質基準に基づき製品の安全確保に注力しています。

(2) 地政学リスク等による原材料等の調達障害


グローバルなサプライチェーンに関するリスクです。地政学的な問題やサプライヤーの倒産などにより、原材料や部品の安定的な供給が中断した場合、製造計画に重大な支障をきたす恐れがあります。これに対し、調達の複線化やBCP対応在庫の確保など、サプライヤーと協働で安定供給体制の構築に取り組んでいます。

(3) 住宅・半導体市場の環境変動


主力とする住宅関連分野およびファインセラミックス分野の市場変動リスクです。日本の人口構造変化や世界経済の減速、半導体市況の急激な変動などにより需要が大幅に減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。高付加価値商品の開発や新たな用途開拓を通じて、市場環境の変化に柔軟に対応する経営基盤の構築を進めています。

(4) 競合他社との競争激化と技術革新


国内外における競争激化のリスクです。他社が先行して画期的な新製品やビジネスモデルを創出した場合、競争優位性が相対的に低下し、製品価格の下落や収益性の悪化を招く恐れがあります。このため、コア技術とデジタル技術の融合による魅力的な商品の創出や、生産性向上のための技術革新に積極的に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。