ディー・エヌ・エー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ディー・エヌ・エー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するディー・エヌ・エーは、モバイル向けゲーム配信を主力事業とし、ライブストリーミング事業やスポーツ・スマートシティ事業など多角的に事業を展開しています。直近の業績は、ゲームアプリの配信反動や先行投資等の影響により、前連結会計年度比で減収減益となりました。


※本記事は、株式会社ディー・エヌ・エーの有価証券報告書(第28期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ディー・エヌ・エーってどんな会社?


モバイル向けゲーム配信を中核に、スポーツやヘルスケアなど多角的に事業を展開するIT企業です。

(1) 会社概要


同社は1999年にインターネットオークションサイトの企画・運営を目的に設立され、同年「ビッダーズ」を開始しました。2005年にマザーズへ上場し、2006年には「モバゲータウン」のサービスを開始して急成長を遂げました。2011年にプロ野球球団の運営に参入し、2015年には任天堂と業務・資本提携を締結しています。

同社グループは連結で2,483名、単体で1,400名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の南場智子氏で、第2位は業務資本提携を結んでいる事業会社の任天堂、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
南場智子 18.47%
任天堂 14.04%
日本マスタートラスト信託銀行 10.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長兼CEOは岡村信悟氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
岡村信悟 代表取締役社長執行役員最高経営責任者(CEO) 1995年郵政省入省。2016年同社入社、スポーツ推進室長等を経て、2021年4月より現職。
南場智子 代表取締役会長 1986年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。1999年同社設立。2021年4月より現職。
渡辺圭吾 取締役執行役員経営企画本部 本部長 2001年全薬工業入社。2002年同社入社。2024年6月より現職。


社外取締役は、宮城治男氏(元特定非営利活動法人エティック代表理事)、久保田雅也氏(元WiLパートナー)、木谷哲夫氏(元京都大学成長戦略本部特任教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ゲーム事業」「ライブストリーミング事業」「スポーツ・スマートシティ事業」「ヘルスケア・メディカル事業」および「新規事業・その他」事業を展開しています。

ゲーム事業


日本国内及び海外向けにモバイル向けゲーム関連サービスを展開し、スマートフォンやPC向けのゲームアプリ等を配信しています。顧客は一般のゲームユーザー並びにゲーム開発に関わるパートナー企業などです。

ユーザーからはゲーム内で使用する有料アイテム等の購入代金を受け取ります。また、協業企業からはプラットフォーム利用料や開発・運営の対価を受け取ります。運営は主にディー・エヌ・エーやディー・エヌ・エー Games Tokyoなどが行っています。

ライブストリーミング事業


日本国内及び海外向けに「Pococha(ポコチャ)」や「IRIAM(イリアム)」などのライブストリーミング関連サービスを展開しています。顧客は配信者(ライバー)や視聴者(リスナー)などの一般ユーザーです。

視聴者であるユーザーがアプリ内で使用するアイテムを有料で購入した際の代金が主な収益源となります。事業の運営は、主にディー・エヌ・エーや子会社のIRIAMが行っています。

スポーツ・スマートシティ事業


プロ野球球団「横浜DeNAベイスターズ」やプロバスケットボールクラブなどのスポーツ関連サービス、及び「BASEGATE横浜関内」などの複合施設の不動産賃貸・運営を展開しています。

顧客である入場者からのチケット販売収入、スポンサー企業からの広告収入、グッズ購入者からのグッズ販売収入、不動産賃貸収入などが収益源です。運営は横浜DeNAベイスターズや横浜スタジアムなどが行っています。

ヘルスケア・メディカル事業


ICTを活用したデータヘルス関連サービス、ヘルスビッグデータ利活用サービス、及び「Join(ジョイン)」をはじめとする医療DX関連サービスを提供しています。顧客は保険者や医療機関などです。

保険者向け情報サービスの提供完了や、顧客へのデータ提供の納品完了による対価、医療関係者間コミュニケーションアプリの利用期間に応じた対価などを受け取ります。運営はDeSCヘルスケアやアルム等が行っています。

新規事業・その他


インターネットやAI技術を活用した様々な新サービスや新規事業の創出に、中長期での成長と事業ポートフォリオ強化を目指して取り組んでいます。

投資やファンドへの出資、AI活用に関するソリューションの提供など多様な領域で事業化を目指しています。主にディー・エヌ・エーやデライト・ベンチャーズ等の投資事業組合を通じて事業を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は1,300億円台から一時1,640億円まで拡大しましたが、直近は1,477億円となりました。税引前利益は一時赤字を計上したものの、その後は黒字へと回復し、直近では258億円、利益率17.4%を確保するなど、ボラティリティを伴いながらも一定の収益水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 1,309億円 1,349億円 1,367億円 1,640億円 1,477億円
税引前利益 294億円 136億円 -281億円 318億円 258億円
利益率(%) 22.5% 10.1% -20.6% 19.4% 17.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 305億円 89億円 -287億円 242億円 190億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で約163億円減少しました。それに伴い売上総利益も減少しており、売上総利益率は約1ポイント低下しています。営業利益についても前連結会計年度から減益となり、営業利益率も12.7%へと低下しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 1,640億円 1,477億円
売上総利益 693億円 603億円
売上総利益率(%) 42.2% 40.8%
営業利益 290億円 187億円
営業利益率(%) 17.7% 12.7%


販売費及び一般管理費(合計517億円)のうち、従業員給付費用が160億円(構成比31.0%)、販売促進費が107億円(同20.7%)、支払手数料が103億円(同19.9%)を占めています。また、売上原価(合計683億円)においては、支払手数料が241億円(同35.3%)、業務委託費が162億円(同23.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


スポーツ・スマートシティ事業は主催試合の観客動員数増などにより増収となりましたが、主力であるゲーム事業は新規タイトルの配信反動により減収となりました。ライブストリーミング事業やヘルスケア・メディカル事業なども前期比で減収となり、全体として減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ゲーム事業 781億円 644億円
ライブストリーミング事業 406億円 398億円
スポーツ・スマートシティ事業 313億円 328億円
ヘルスケア・メディカル事業 108億円 87億円
新規事業・その他 36億円 25億円
調整額 -4億円 -4億円
連結(合計) 1,640億円 1,477億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFもプラスとなっており、資産売却等を伴いながら得た資金で借入返済等を進める改善型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 390億円 334億円
投資CF -123億円 348億円
財務CF -54億円 -581億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「一人ひとりに 想像を超えるDelightを」をミッション(企業使命)として掲げています。これは、一人ひとりの顧客に想像を超える驚きや喜びを感じてもらい、誰もが自分らしく輝ける世界の実現に向けて、Delight(喜び)の提供に真っすぐに向かうという意味が込められています。

(2) 企業文化


同社は、社会の一員として約束する「DeNA Promise」と、Delightにまっすぐ向かうチームであるための「DeNA Quality」をバリュー(共有価値観)としています。既存の事業戦略に人材を当てはめるのではなく、起業家精神に富む人材の情熱を起点とする「人材の周りに事業ができる」という考え方を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、企業価値を継続的に高めていくことを経営上の最重要課題と認識しています。経営指標としては、ROE(自己資本利益率)を重視しつつ、売上収益、営業利益、EPS(1株当たり当期利益)などを主要な目標として掲げ、構造的・継続的に成長する事業群の形成を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、既存の収益基盤強化と中長期的な成長を実現する事業ポートフォリオへの変革を推進しています。ゲーム事業ではボラティリティ軽減に向けた新しい開発アプローチに挑戦し、スポーツ・スマートシティ事業では直営施設運営などの取り組みを進め、スポーツ興行を超えた事業の拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「人材の周りに事業ができる」という基本コンセプトのもと、挑戦者や高度な専門人材の獲得に注力しています。また、「人は仕事で育つ」という哲学から、成功確率が五分五分の高い目標や未経験領域の業務を任せる「ストレッチアサイン」を取り入れ、大胆な権限委譲による人材育成と多様性の確保を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.6歳 7.1年 11,179,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.3%
男性育児休業取得率 69.4%
男女賃金差異(全労働者) 70.6%
男女賃金差異(正規雇用) 76.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 118.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員のAIスキル評価(76.0%)、採用クオリティ度(中途)(92.0%)、全体ストレッチ度(78.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット及びAI技術の変化への対応

同社はモバイル向けインターネットサービスに強みを持ち、AI技術の活用を進めていますが、新規参入や新技術の登場による市場の構造変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、AI技術の利用による倫理的問題や知的財産権の侵害が生じた場合、信用の低下等を招くリスクがあります。

(2) OS提供事業者による仕様変更リスク

同社のサービスはAndroidやiOS等のOSを搭載したモバイル端末向けに展開されています。そのため、OS提供事業者によって新たな条件やルールが設定された場合や、その対応に多大な費用を要する場合、あるいはアプリの配信停止措置等を受けた場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。

(3) ゲームコンテンツのユーザー嗜好の変化

モバイルゲーム事業においてはユーザーの嗜好の移り変わりが激しく、ニーズを的確に把握できない場合や新規コンテンツの開発が計画通りに進まない場合、収益性が低下する恐れがあります。さらに開発費が高騰する中で予定通りにタイトルをリリースできず、業績に重大な影響を与えるリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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