ディー・エヌ・エー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ディー・エヌ・エー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する同社は、ゲーム、ライブストリーミング、スポーツ、ヘルスケア・メディカル等の事業を展開しています。当連結会計年度の業績は、売上収益が1640億円(前期比19.9%増)と増収、営業利益は290億円の黒字(前期は283億円の赤字)となり、大幅な増収増益で黒字転換を果たしました。


※本記事は、株式会社ディー・エヌ・エー の有価証券報告書(第27期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ディー・エヌ・エーってどんな会社?


モバイルゲームやライブストリーミング、スポーツ興行、ヘルスケアなど、インターネットとAIを活用して多様なエンターテインメントと社会課題解決事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1999年に有限会社として設立され、同年オークションサイト「ビッダーズ」を開始しました。2005年にマザーズへ上場し、2006年には「モバゲータウン」を開始してモバイルゲーム事業を拡大しました。2011年に横浜ベイスターズの株式を取得してスポーツ事業に参入し、2015年には任天堂と業務・資本提携を締結しました。直近では2024年にポケモンカードゲームのアプリを提供開始しています。

連結従業員数は2,572名、単体では1,448名です。筆頭株主は創業者の南場智子氏で、第2位はゲーム事業等で業務・資本提携関係にある任天堂株式会社です。第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社となっています。

氏名 持株比率
南場 智子 17.79%
任天堂 13.54%
日本マスタートラスト信託銀行 11.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長執行役員最高経営責任者(CEO)は岡村信悟氏が務めています。社外取締役比率は約27%です。

氏名 役職 主な経歴
岡村 信悟 代表取締役社長執行役員最高経営責任者(CEO) 1995年郵政省入省。総務省企画官を経て2016年同社入社。スポーツ事業本部長、横浜DeNAベイスターズ社長、COO等を歴任し、2021年4月より現職。
南場 智子 代表取締役会長 1986年マッキンゼー入社。1999年同社設立し代表取締役。2015年取締役会長、2017年代表取締役会長。デライト・ベンチャーズ代表取締役も兼任。
渡辺 圭吾 取締役執行役員経営企画本部 本部長 2002年同社入社。ソーシャルメディア事業本部部長、渉外統括本部長、CBO、ゲーム事業本部長等を歴任。2024年6月より現職。


社外取締役は、宮城治男(NPO法人エティック創設者)、久保田雅也(WiLパートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ゲーム事業」、「ライブストリーミング事業」、「スポーツ事業」、「ヘルスケア・メディカル事業」および「新規事業・その他」事業を展開しています。

(1) ゲーム事業

モバイル向けゲームアプリの配信や「Mobage(モバゲー)」等のプラットフォーム運営を行っています。顧客は主に一般ユーザーであり、基本プレイ無料のアイテム課金型ゲームを提供しています。

収益はユーザーからのアイテム購入代金等が主な源泉です。運営は同社のほか、株式会社DeNA Games Tokyo、株式会社集英社DeNAプロジェクツ、海外拠点のWAPTX LTD.などが担っています。

(2) ライブストリーミング事業

ライブコミュニケーションアプリ「Pococha(ポコチャ)」やキャラライブアプリ「IRIAM(イリアム)」等の運営を行っています。日本国内および海外のユーザーに向けてサービスを提供しています。

収益は、アプリ内で使用するアイテム等の販売によるユーザー課金が中心です。運営は同社および株式会社IRIAMが行っています。

(3) スポーツ事業

プロ野球球団「横浜DeNAベイスターズ」やプロバスケットボールクラブ「川崎ブレイブサンダース」等の運営を行っています。主な顧客はスポーツファンや観戦者です。

収益源はチケット販売、スポンサー広告収入、グッズ販売、飲食収入等です。運営は同社のほか、株式会社横浜DeNAベイスターズ、株式会社横浜スタジアム、株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース等が行っています。

(4) ヘルスケア・メディカル事業

ヘルスビッグデータ関連サービスや、医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join(ジョイン)」等の医療DXサービスを提供しています。一般消費者、健康保険組合、医療機関等が顧客です。

収益はデータヘルス関連のサービス料やシステム利用料等です。運営は同社、DeSCヘルスケア株式会社、日本テクトシステムズ株式会社、株式会社データホライゾン、株式会社アルム等が行っています。

(5) 新規事業・その他

EC事業やその他の新規事業を展開しています。中長期での事業ポートフォリオ強化を目指した取り組みを含みます。

収益源はサービスごとの利用料や手数料等です。運営は同社およびグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年3月期は減損損失等の計上で赤字となりましたが、2025年3月期は新作ゲームのヒットやスポーツ事業の好調により、売上収益が伸長し、各利益段階で大幅な黒字転換を達成しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,370億円 1,309億円 1,349億円 1,367億円 1,640億円
税引前利益 313億円 294億円 136億円 -281億円 318億円
利益率(%) 22.8% 22.5% 10.1% -20.6% 19.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 256億円 305億円 89億円 -287億円 242億円

(2) 損益計算書


前期は赤字でしたが、当期は売上収益が増加し、コストコントロールも進んだことで営業黒字化しました。売上原価率は低下し、収益性が改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,367億円 1,640億円
売上総利益 610億円 926億円
売上総利益率(%) 44.6% 56.5%
営業利益 -283億円 290億円
営業利益率(%) -20.7% 17.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が207億円(構成比34%)、販売促進費が133億円(同22%)を占めています。売上原価においては、支払手数料が269億円(構成比38%)、業務委託費が170億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益


ゲーム事業は新作タイトルの貢献により大幅な増収増益となりました。スポーツ事業も観客動員増や優勝効果で好調です。一方、ヘルスケア・メディカル事業等は損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ゲーム事業 540億円 781億円 35億円 386億円 49.4%
ライブストリーミング事業 426億円 406億円 3億円 -2億円 -0.5%
スポーツ事業 273億円 313億円 21億円 28億円 9.1%
ヘルスケア・メディカル事業 100億円 108億円 -36億円 -36億円 -33.6%
新規事業・その他 31億円 36億円 -13億円 -11億円 -31.1%
調整額 -1億円 -4億円 -6億円 -40億円 -
連結(合計) 1,367億円 1,640億円 -283億円 290億円 17.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は現在「健全型」です。本業の営業活動で得た資金で借入金の返済や配当支払いを行い、投資も手元資金の範囲内で行っている状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -108億円 390億円
投資CF -126億円 -123億円
財務CF -41億円 -54億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「一人ひとりに 想像を超えるDelightを」をミッション(企業使命)として掲げています。顧客一人ひとりに想像を超える驚きや喜びを感じてもらい、自分らしく輝ける世界の実現に向けて、「Delight」の提供に真っすぐに向かうことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社会の一員として約束する「DeNA Promise」と、Delightに向かうチームであるための「DeNA Quality」をバリュー(共有価値観)として掲げています。これらを実践し、顧客、取引先、従業員、株主、地域社会等のステークホルダーと対話し協働することでミッションの実現を図っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年3月期からの3か年において、構造的・継続的に成長する事業群を形成し、各事業とも有意な利益貢献をする構造を目指して各種施策に取り組んでいます。ROEも重視しつつ、企業価値の継続的な向上が最重要課題であると認識しており、売上収益、営業利益、EPS等の経営指標を重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


エンターテインメント領域と社会課題領域の特徴を活かした収益基盤と事業シナジーの形成を目指しています。AI技術に関しては、「生産性向上」「既存事業の競争力強化」「新規事業の創出・グロース」の3つの視点で強化を進めています。

* ゲーム事業:ボラティリティリスク軽減のため費用構造を筋肉質化しつつ、グローバル展開や外部パートナーとの協業を推進。
* スポーツ事業・まちづくり:既存の興行に加え、スマートシティ展開等による事業の広がりを目指す。
* ヘルスケア・メディカル事業:ヘルスビッグデータおよび医療DX領域で質の高いサービス構築と収益力向上を図る。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「DeNA Promise」において多様な社員が活躍し成長する環境作りを掲げています。変化を起こせる挑戦心豊かな人材の採用、高い目標と権限委譲による育成、成果に対する報酬と機会の提供を重視しています。多様性は組織に多角的な視点をもたらし挑戦の可能性を最大化するものと捉え、属性にかかわらず個性が発揮される環境を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.9歳 6.3年 8,829,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.6%
男性育児休業取得率 64.5%
男女賃金差異(全労働者) 68.3%
男女賃金差異(正規雇用) 75.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 93.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新と市場変化への対応


インターネットやAI技術の進化、新規参入による競争激化が急速に進む業界です。新技術への対応遅れや、AI利用に関する倫理的問題等によりサービスの競争力が低下した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はAIポリシー等を定め対応を図っていますが、変化の予測は困難です。

(2) プラットフォーム依存のリスク


モバイルゲーム等はAppleやGoogle等のOS提供事業者のプラットフォーム上で展開されています。OSの仕様変更、手数料等の規約改定、または同社サービスの配信停止措置等がなされた場合、事業継続や収益性に重大な影響を与える可能性があります。

(3) ヒット作への依存とユーザー嗜好の変化


ゲーム事業等のコンテンツビジネスはユーザー嗜好の移り変わりが激しく、ヒット作の有無が業績を左右します。ユーザーニーズの乖離や新規タイトルの開発遅延、または特定タイトルの収益力低下が生じた場合、予期せぬ業績変動をもたらす可能性があります。

(4) サービスの健全性とコンプライアンス


不特定多数のユーザー間コミュニケーションを伴うサービスにおいて、法令違反やトラブルが発生するリスクがあります。監視体制を強化していますが、完全な防止は困難であり、トラブル発生時には損害賠償やブランドイメージの低下により業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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