【年収研究シリーズ】楽天グループの年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
楽天グループは2018年10月25日、西友と共同運営する「楽天西友ネットスーパー」をグランドオープンさせました。これは両社のノウハウや強みを活用しながら運営するネットスーパー事業で、商品の注文から配送までの包括的な物流サービスを一貫して行う「ワンデリバリー構想」の実現に向け本格始動させたことがわかります。さらに最近では、2019年10月から全国で携帯電話サービスを開始し、東京オリンピックが開催される2020年には次世代通信サービス「5G」を展開する予定であると発表し、世間の話題を集めています。
上記のみならず、楽天グループは現在70以上のサービスを展開しているのです。たとえば野球好きな方には、東北楽天ゴールデンイーグルスなども「楽天」のイメージとして大きいかもしれません。Eコマースから球団経営まで、コングロマリットとしての拡大著しい同社ですが、楽天グループの共通IDたった1つで多種多様なサービスを利用可能にすることにより、一大経済圏を築き上げ、企業価値を高めてきました。
また楽天グループは年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
楽天グループの平均年収は774.1万円
楽天グループの有価証券報告書によると、平均年収は774.1万円と記載されています。キャリコネに投稿された給与明細を参考に楽天の年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で550〜600万円、30歳代で850〜900万円、40歳代で1090〜1140万円となりました。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約1.57倍の額です。
■楽天グループの平均年収推移
楽天グループ・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
楽天グループの平均年収は前年を上回り774.1万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
楽天グループの年代別平均年収と中央値
■楽天グループの年収中央値は30代で866.4万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
楽天グループと競合他社の平均年収を比較
楽天グループの競合や同業界であるメルカリ、アスクル、エニグモ、BEENOS、MonotaRO、ベガコーポレーションの7社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、楽天が774.1万円、メルカリが920.1万円、アスクルが785.2万円、エニグモが648.8万円、BEENOSが722.1万円、MonotaROが556.4万円、ベガコーポレーションが531.4万円です。
この7社の中で最高額はメルカリの920.1万円で、最低額がベガコーポレーションの531.4万円。その差はおよそ389万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では楽天グループは3番目に位置します。
EC業界の給与明細(キャリコネ)
日本の平均年収を大きく上回る収入が
楽天30代・広告宣伝(非管理職)の
給与明細
ヤフー30代・広告宣伝(非管理職)の
給与明細
大塚商会20代・営業(非管理職)の
給与明細
アスクル20代・営業(非管理職)の
給与明細
楽天グループの年収が高い理由
■FinTechが順調に成長
楽天の業績が好調であることが、平均年収が高い理由の一つです。2017年通期の売上高は9445億円で前年比20.8%増を記録し、営業利益は39.6%も増加しています。とくに注目すべき点は、2017年通期の段階で、インターネットサービスとFinTech(ファイナンス・テクノロジー)のいずれの事業においても増収増益を果たしていることです。
こうした成功の要因であり背景となっているのが、楽天グループの一大経済圏の存在です。グループ内では、9520万人という膨大な数の会員が共通のIDを用いて、多様なサービスを回遊的に利用しています。この経済圏内に蓄積された膨大なデータを解析することで、会員のライフタイムバリュー、すなわち会員となった顧客が楽天と取引をする期間中にもたらす利益を最大化させ、顧客獲得コストを下げることが可能になります。結果として、楽天グループ内での流通総額が増加し、企業価値はますます高まっていくでしょう。
楽天グループで年収を上げるには
■ランク分けで給与が決まる
楽天は給与を決定する指標に「コンピテンシーモデル」を採用しており、職能制度に近い評価体系となっています。半年ごとに仕事の過程で発揮した能力を評価し、SからCまでランク分けされます。そしてランクごとに設定された給与テーブルによって基本給が決まる仕組みです。また業績賞与は、成果も評価対象となるパフォーマンス評価によって支給額が決まるようです。
ランクが高ければ管理職よりも高い給与になることもあるため、一概に役職などで給与をはかることは難しいといえるでしょう。しかし勤続年数にかかわらず、実力と成果さえ伴えば評価が上がり、給与や賞与も上がるため、やる気のある社員にとっては魅力的な環境といえるでしょう。ちなみに、営業職のインセンティブはチーム単位となるため、どのチームに配属されるかで差が生じる可能性があることは留意する必要がありそうです。
楽天社員の給与明細(キャリコネ)
20代と30代の年収の差がこんなに!
20代・プロジェクトマネージャー(非管理職) の
給与明細
30代・プロジェクトマネージャー(非管理職)の
給与明細
同年代・同職種でも基本給に差が!
30代・Web・オープン系プログラマ(非管理職) の
給与明細
30代・Web・オープン系プログラマ(非管理職) の
給与明細
楽天グループの課題・懸念点は
■ライバル会社の追い上げをかわせるか
2018年1月~6月期の連結決算(IFRS)において、国内インターネット通販の営業利益が前年同期比14%減の312億円を記録し、好調なインターネット事業にも少し陰りが見え始めてきました。この営業利益が減少した原因は楽天ポイントの費用や物流費がかさんだためですが、今後は注力を予定している自社の配送網構築によって、今まで以上に多額の費用がかかるのではないかという懸念もあります。
さらに海外では米アマゾン・ドット・コム、国内ではヤフーやLINEなどが、楽天の強みとなるインターネット通販や決済に投資をしている点も見逃せません。他社からの追い上げにより差が縮められつつある現況を打破するためには、大規模な改革が必要になりそうです。
楽天グループには年収以外にメリットはある?
ここまで楽天の年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
現在問題となっている物流コストの増加については、楽天独自の物流サービス拡大で対応しようとしています。2018年10月には自社配送サービス「Rakuten-EXPRESS」の配送地域を従来区域からさらに広げ、国内人口の10%をカバーできるまでに拡大しました。
また対外的な脅威についても、組織再編という大きな改革をもって対抗しようとしています。楽天は祖業であるインターネット通販を本体から分離させ、新規参入する携帯電話事業や金融事業と同列に置く構えです。他社とのし烈な競争が懸念される携帯電話事業とインターネット通販に投資を振り向け、それらを金融が下支えするという構造を実現できるのは、コングロマリットの楽天ならではのメリットといえるでしょう。
そして2018年1月~6月期のFinTech事業の営業利益が前年同期比で26%増加するなど、金融分野は安定的に成長しており、挑戦の土台としては申し分ないでしょう。挑戦も安定も果たしたい人にとっては、理想的な環境といえるのではないでしょうか。
ただ何かしらの理由で離職率が高いので、そこは気をつけなければなりません。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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