ミスミグループ本社(以下「ミスミ」)は、顧客メーカーが効率的に生産材を調達できる仕組みを提供している企業です。独自のビジネスモデルで成功を収めています。
自社EC(電子商取引)サイトでは3000社を超えるメーカーの部品・製造副資材などを取り扱い、品揃えは2070万点。ミスミ自身もメーカーとしてFA(工場自動化)装置用部品や金型用部品を提供しており、
2021年06月21日
口コミと公開データを元に転職者目線で企業研究。業績と待遇の2つの面で志望企業を掘り下げます。今回取り上げるのは、メーカーであり商社でもあるミスミグループ本社です。
ミスミグループ本社(以下「ミスミ」)は、顧客メーカーが効率的に生産材を調達できる仕組みを提供している企業です。独自のビジネスモデルで成功を収めています。
自社EC(電子商取引)サイトでは3000社を超えるメーカーの部品・製造副資材などを取り扱い、品揃えは2070万点。ミスミ自身もメーカーとしてFA(工場自動化)装置用部品や金型用部品を提供しており、
ミクロン単位の寸法指定で800垓(1兆の800億倍)のバリエーション
があります。
アジア・欧米を中心に海外でも事業を展開しており、海外売上比率47%以上のグローバル企業でもあります。
では、ビジネスモデルについて詳しくみていきましょう。同社は「ミスミQCTモデル」を掲げており、Qは「高品質」、Cは「低コスト」、Tは「確実短納期」をあらわしています。
メーカーでは、ものづくりをするにあたって部品の図面を描き、見積もりをとり、スケジュールを考えながら納期等を調整するという大変な作業が発生します。ミスミは、複雑な部品も含めて紙のカタログやECサイトを使ってすぐに見積もり・発注できる仕組みを構築することで、こうした負担を解消。顧客メーカーが効率的に幅広く生産材を調達できるようにしているのです。
株式会社ミスミグループ本社 『ECサイト「MISUMI-VONA」』(株式会社ミスミグループ本社 公式サイト「ミスミの事業」より)
事業セグメントとしては、「FA事業」「金型部品事業」「VONA事業」の3つに分けられます。FA事業では生産システムの合理化等に使用される自動機の標準部品などを、金型事業では自動車や電子機器などに使用される精密金型部品を開発・提供。どちらも「メーカー」としての役割を担っています。
ミスミは、当初は「商社」としてのビジネスが主でしたが、2005年に金型部品メーカーの駿河電機(現 株式会社駿河生産プラットフォーム)を経営統合するなどして、メーカー事業を強化してきました。「半製品」(半完成品)を大規模な工場で大量生産し、消費地で最終仕上げをすることで、質の高い部品を低コスト・短期間で納品しています。公式サイトによると、
ミクロン単位で寸法指定した精密機械部品を、日本では標準2日目で出荷することができます。さらに、納期遵守率は99%以上
とあり、納期遵守率の高さも強みです。
一方、「流通」を担っているのがVONA事業(Variation & One-stop by New Alliance)です。ミスミは自社のFA装置用部品や金型部品だけでなく、他社ブランドの機械部品や工具・消耗品を含めて幅広く取り扱っています。「MISUMI‐VONA」という大規模なECプラットフォームを構築しており、利便性の高さが評価されています。確かなIT基盤もミスミの強みのひとつです。
次に業績についてみていきましょう。以下の表が示す通り、2019年3月の売上高(連結)は3319億円。前年比+6.1%で、8期連続で過去最高売上高を更新しました。
株式会社ミスミグループ本社 「2019年3月期 連結業績」(「ミスミグループ本社 2019年3月期 連結業績」より)
米中貿易摩擦などの逆風がありましたが、各国のニーズに合わせたECサイトの構築や3D CAD連携サービスの拡大など、地道に基盤を強化していったことが好業績につながっています。
売上高の比率が最も高いのはVONA事業で、約44%。また、全体の売上高の約47%を海外が占めていますが、海外売上高の1558億円のうち、1000億円以上が中国・アジアです。
株式会社ミスミグループ本社 「地域ごとの状況」(「ミスミグループ通信 Vol.51」より)
営業利益(本業の儲け)に関しては、今後の成長に向けて「現地生産・現地調達」の推進、物流拠点拡張などを行ったことが影響し、318億円で着地。前年比-8.5%となりました。
つづいて、2019年3月期のセグメント別の業績をもう少しみていきましょう。
売上高で最も高い割合を占めたのは、前述のとおりVONA事業。FA事業は約33%、金型部品事業は23%です。
株式会社ミスミグループ本社 「セグメント概況」(「ミスミグループ通信 Vol.51」より)
VONA事業は、品揃えを積極的に拡大したことや海外展開を加速させたことが影響し、前年比+11.4%の増収となりました。一方で、先行投資を行ったため営業利益は前年比-23.1%の69億円で着地しています。
FA事業は、中国や韓国で需要減退があったものの、東南アジア・欧州のニーズを確実に捉え、前年比+3.8%の増収。金型部品事業においては、自動車関連の需要が振るわなかったものの、東南アジアでの売上に助けられて前年比-0.1%。ほば横ばいの結果となりました。
では、ミスミの今後の戦略をみていきましょう。米中貿易摩擦の長期化などへの懸念がありますが、長期的に「デジタルものづくり」に移行していくトレンドは変わらないと同社は見込んでいます。2020年3月期も売上高の過去最高を更新し、生産拠点の拡張や調達コスト削減などを行うことで、増益を目指す計画です。
2019年4月には、市場が拡大しているインドネシアで倉庫を移転し、敷地面積を4倍にして営業拠点を統合したことで話題になりました。2019年度末までに5万点の商品を在庫化していく予定です。また、早ければ当日に出荷するなど顧客ニーズに対応しています。
ITシステムの完全クラウド化や、地域に合わせたECサイトの最適化なども引き続き行われます。2016年から始動した「mevity」(3D CADデータから自動で見積もり・発注ができるサービス)も、提供範囲を広げるなどサービス向上に取り組み続けています。2019年8月からは、板金部品の出荷納期を3日から最短1日に短縮するサービスも開始されました。
世界中の顧客メーカーのニーズを捉えてインフラを強化しながら、今後も一貫して「ものづくりの非効率の削減」に取り組んでいく戦略です。
キャリコネに寄せられた給与明細から算出した年代別年収レンジは、20歳代で480〜580万円、30歳代で640〜740万円、40歳代で810〜910万円となっています。
給与体系は、16分割の年俸制です。毎月16分の1が支給され、残りの16分の4は年3回に分けて支給されます。月30時間分の固定残業代が含まれており、それを超えた分は別途支給(管理職を除く)。また、年俸に加えて、業績賞与制度があります。
同社のキャリア採用ページの全体の募集要項では、
年俸制450万円~1200万円
と書かれており、かなり幅があります。
職種別にみていくと、例えばVONAインサイドセールスマネージャーは年俸600~800万円。電気エンジニアやEC事業開発は、メンバークラスなら400~700万円、リーダークラスなら700~1000万円、ディレクタークラスなら800~1200万円、といった具合に変わります。希望職種の募集要項をよく確認しましょう。なお、口コミでは「前職での給与や交渉によって給与に差が出る」という意見もみられるので、その点も留意しておく必要があります。
年収口コミ
評価が最高で翌年度は月給の5%~6%の昇給。年収は月収の16ヶ月と …(続きを見る)
具体的な年収額をお知りになりたい場合は、キャリコネの給与明細投稿をご覧ください。
ミスミグループ本社社員の給与明細(キャリコネ)
営業の30代管理職は900万円超え?
30代技術職(非管理職)の 給与明細
30代営業職(管理職)の 給与明細
20代と30代で100万円程度の差
20代広告宣伝職(非管理職)の 給与明細
30代広告宣伝職(非管理職)の 給与明細
ミスミグループ本社の年収について詳しく解説した記事も合わせてお読みください
ミスミグループ本社の口コミには働く環境について様々な意見が届いています。その中でも特徴的な点を3つ挙げます。
ミスミでは、
・保養所(ラフォーレ倶楽部)
・ディズニーチケット補助制度
・日本レンタカー特別割引制度
といった福利厚生があり、社員とその家族がリフレッシュしやすい環境が整っています。
保養所は会員料金で利用できるうえ、補助金の支給もあります。休日に宿泊施設で社員に会うケースもあるという口コミもあり、実際に利用者は多いようです。総合的にみると福利厚生が少ないと感じる人もいるようですが、比較的高めの年収やインセンティブによってカバーされている、という声もみられました。
ミスミには、仕事の合間に
月に1回、500円で40分のマッサージ+10分の問診
が受けられる企業内マッサージルームがあり、平日もリフレッシュしやすい環境です。
また、2018年4月には本社1階にカフェテリアもオープンしました。
株式会社ミスミグループ本社 「カフェテリア」(株式会社ミスミグループ本社 キャリア採用 「福利厚生」より)
メニューは栄養バランスに考慮しているため社員の健康維持に役立っているほか、交流の場にもなっています。なお、口コミを見ると近隣にも飲食店は多く、食事に関して困らない環境のようです。
制度として特筆すべきは、「がらがらポン」です。
2年に1度、社員は自分の行きたい組織を選びその上司と直接面談をします。その上でお互いが納得すれば、その組織へ異動することができる
という制度です。
ミスミでは、社員たちが自らキャリアを選択していくことを大事にしています。昇格する際も手を挙げた人にチャンスが与えられますが、異動に関しても同様です。メーカーであり商社でもあるからこそ、多岐に渡る仕事にチャレンジするチャンスがあるでしょう。
口コミでは、「異動が多いため組織が成長しづらい」という声も一部みられましたが、実際に「挑戦しやすい」「失敗しても次につなげれば許される」など、チャレンジングな風土を評価する声が複数みられました。
社風口コミ
全てに論理性と成果を求められる環境であることは間違いない。理論と実践が高度に融合した環境に身を置くことで、他社でも重宝されるキャリア…(続きを見る)
ミスミでは、通年でキャリア採用を行っています。具体的にキャリア採用の募集職種(2019年8月時点)についてみていきましょう。
組織拡充を行っているため、「事業開発」「営業」「機電系エンジニア」「ITエンジニア」「コールセンター」「物流」など、多岐に渡る職種を募集しています。基本的には飯田橋駅近くの東京本社勤務のケースが多いですが、例えば物流企画では、横浜や愛知、兵庫の流通センターでも募集中。コールセンターは熊本の拠点でも募集しています。
職種にもよりますが、グローバル企業なだけに語学力が求められるケースも。例えば「VONAインサイドセールスマネージャー(海外事業推進担当)」はTOEIC700点以上であることが応募条件。海外展開のオペレーション改善を担うポジションでは、メールや現地スタッフと会話ができる中級レベルの英語力が求められるほか、1回につき1~2週間程度の海外出張が可能であることが必須となっています。それぞれの職種の募集要件をしっかりと確認しておきましょう。
では、ミスミの選考プロセスについてもみていきましょう。
公式のキャリア採用サイトによると、
ミスミでは人物本位の採用を実施しております。
とのこと。面接は2~3回で、応募部署の社員を含めてさまざまなポジションの社員と会う機会があります。
口コミをみると、
・人事面接と現場の部長との面接を同日に行った
・役員面接を3回受けた
などさまざまな声がありましたが、1日で選考が完結する「キャリアセミナー&選考会」も開催されています。希望者は説明や座談会のあとに、そのまま個別選考を受けることができるというものです。
面接での質問内容に関しては、志望理由や貢献できるポイント、成功・失敗談といった一般的なものが多いようですが、
「朝、出社してから初めに何をしますか?」
「最近1番忙しいときの就業時間はどのような感じでしたか。」
といった質問をされた人もいました。
ミスミではキャリアを自ら切り拓いていくことを求められるため、将来どうなりたいか、入社して何がしたいのかをしっかり面接で伝えられるように準備しておくことも大事でしょう。
ここまでさまざまな角度からミスミについてみてきましたが、転職先としておすすめしたい理由は以下の3点です。
・世界のものづくりを支えるビジネスモデルを持っている
・海外顧客数が6割を占めるグローバル企業である
・社員たちの挑戦を促す社風がある
短期間・低コストで効率的に生産材を調達できる仕組みをつくり、ニーズに合わせて進化を遂げてきた同社。海外売上比率も5割近くで、世界のメーカーから喜ばれるやりがいある仕事です。社員にとっても、グローバルな経験が積める恵まれた環境といえるでしょう。一人ひとりの裁量で進められる業務の幅が広く、社員の意向を尊重する社風もあります。製造業・流通業や海外と接点の多い仕事に興味がある人なら、ぜひ転職先として検討したい企業です。
この記事の執筆者
株式会社ミスミグループ本社 「30年~40年前の金型部品調達・ミスミの部品調達」(株式会社ミスミグループ本社 公式サイト「ミスミの事業」より)