2021年06月21日

日本M&Aセンターに転職したい人の企業研究【中途採用多い&高い給与】

口コミと公開データを元に転職者目線で企業研究。業績と待遇の2つの面で志望企業を掘り下げます。今回取り上げるのは日本M&Aセンターです。


M&Aといえば、大手企業が事業効率化や事業規模拡大を図るために行われているイメージが強いですが、昨今では後継者のいない中小企業の事業承継を目的に行われることが増えてきました。その需要を背景に設立された中小企業向けM&A仲介専門会社が、日本M&Aセンターです。

同社は1991年に分林保弘氏が音頭を取り、公認会計士や税理士の共同出資によって、独立系M&A仲介業として設立されました。東京本社を含む国内の北から南まで7拠点、アジア2カ所にオフィスがあり、資本金は単体で13億円、グループ連結では25億円です。社員数は451名で、コンサルタント340名とスタッフ職111名で構成(2019年3月末時点)。2006年10月にマザーズに上場、2007年12月には市場変更して同業種で初めて東証一部に上場しています。

これまでのM&A仲介数は、国内No.1の5000件超で、着実に業績を伸ばし企業価値が認められている企業です。

日本M&Aセンターの事業概要~どんな事業をしているのか

仲介型を主に「Batonz(バトンズ)」サイト運営や海外M&A支援も

M&A仲介業には大きく分けて、仲介型とアドバイザリー型があります。仲介型は売り手側企業と買い手側企業の間に立ち、中立的な立場でM&Aを成立させるように進めていきます。日本M&Aセンターはこの仲介型のサービスをメインに提供しています。

仲介型の通常の業務範囲は、①候補企業のリストアップ、②企業同士のマッチング、③資産・リスク調査(デューデリジェンス)、④最終手続き(クロージング)です。しかし同社の特徴は、成約後の経営統合、業務統合、意識統合といった統合プロセス(PMI)までをグループ会社で受け持つ体制を整えていることです。

仲介型サービスは、売り手企業と買い手企業が同社にアプローチするところから始まります。同社が保持している情報を元に企業をマッチングさせ、企業評価や経営者へのヒアリングを行い、条件交渉を経てM&A締結へと至らせます。M&A仲介型の報酬は、売り手と買い手の双方から得ることが特徴です。相談料や中間金を聴取する企業もありますが、日本M&Aセンターは着手金と成功報酬のみです。

この他にも同社は、海外企業とのM&A(クロスボーダーM&A)や上場企業同士のM&AにはFA型と呼ばれる専任アドバイザーによる助言サービスを提供しています。家族経営の小規模な企業には、費用を安く抑えることができるサイトマッチング型のサービス「Batonz(バトンズ)」も用意されています。

同社の強みは、全国の地方銀行9割、信用金庫の8割、900を超える会計事務所などと構築している国内最大級のネットワーク、そしてほぼ全業種でのM&Aを支援してきた経験にあります。

日本M&Aセンターの業績・財務状況~業績はどうか

重要指標

・総資産経常利益率(ROA):35.2%でかなり良好
・売上高経常利益率:44.0%と高い
・総資産回転率: 0.80は業界トップ
・自己資本比率は:76.2%と理想水準
・キャッシュフロー:プラス

業績

日本M&Aセンターの売上のほとんどはM&A事業です。同社の2019年3月期における総売上高はグループ連結で284億6310万円。前年の246億2547万円から15.6%の増加です。営業利益は125億3300万円で、前年に対して8.0%増でした。

これは、M&Aの成約件数が同社過去最高の770件に達したこと、M&Aに着手した案件数も過去最高の1100件に達したことにより、業務開始時に受けとる着手金とM&Aが成約した際の成功報酬が増加したことがうかがえます。経常利益は第1四半期は前年を下回ったものの、続く第2〜第4四半期はいずれも前年を上回り、予想の125億円を超えました。

同社の過去5年間の売上高、経常利益、純利益は、グラフの通り堅調な伸びを示しています。それだけでなく、2010年3月期から9年連続で、過去の最高益を更新しました。

財務状況

増収増益で成長中の同社は、総合的な強さがあります。2019年3月期の会社の収益性と効率性を表す総資産経常利益率(ROA)は、35.2%。2015年3月期からの過去5年間で上下しつつも、国内上場企業平均の3%程度を大幅に上回る35%超で推移しています。

業界全体で収益性は高く、その中でも高収益の同社の売上高経常利益率は、44.0%です。しかし5年前の51.6%からは、下降傾向にあります。次に効率性を総資産回転率で確認してみると、5年前の0.73から毎年徐々に上昇し、業界でもトップの回転率0.80です。ただし受託からM&A成約までの期間は469日で、5年前の464日から439日へ短縮後は、延長しています。利益率の向上、M&A成約期間の短縮などにより、総合力の更なるアップを目指すことも可能です。

気になる同社の安定性はどうでしょうか。自己資本比率と現金残高で確認してみます。比率の高さが安定の高さを示す自己資本比率は、理想水準70%超の76.2%。過去5年間の同社最高比率は83.1%で、最低は64.4%でした。また、安定した企業活動に必須の現金や普通預金・当座預金などの資金の期末残高は、89億9510万円。成長企業の場合はマイナスがよいとされる投資活動のキャッシュフローはプラスで、同社は投資を差し控えているように見えます。しかし実際は、投資有価証券を取得するなど、運用に回せるほど資金は潤沢です。加えて財務活動において、株主へ36億9897万円の配当金を支払うなどによりマイナスのキャッシュフローであることも、安定経営をうかがわせます。

日本M&Aセンターの事業戦略~今後の展開は

全体の事業戦略と事業計画

日本M&Aセンターは、世界No.1の総合企業を目指しています。昨今の企業M&Aが加速している外的要因として同社は次の3点を挙げて、中期計画を推進中です。
・事業継承問題の深刻化
・業界再編の活性化
・成長戦略の浸透

特に地方などでは後継者不在による廃業が増えると予測されており、事業が継承されないという社会的な問題として取り上げられることも多くなっています。また国内需要だけでは先細りが見えている中、好調の続く海外の企業や国内の大企業の傘下に入ることにも注目が集まっています。それらをM&Aによる解決へと支援する同社の役割は、ますます高まっていくはずです。さらに同社は、企業の長期成長を促し、競争力を向上させ、ひいては雇用確保と地方創生へと貢献する姿も描いています。

同社が考える主要なサービス提供先は、全国に約60万社あるとされる中堅・中小企業です。景気感度が高く、存続への危機感も有している企業が多いため、同社独自の情報ネットワークや提携先の会計事務所・金融機関から入手する売り手企業と買い手企業の多くの情報が集まっています。この蓄積情報をもとに効率的な企業マッチングを目指し、2019年4月に営業本部内に「提携推進室」と「金融企画」が誕生。高い成功報酬を狙える中堅企業の案件を開拓するための「ミッドキャップ戦略室」も新設されています。またITの活用でデジタルマーケティングを有効に活用し、事業別の戦略に加えて地域別の戦略を立てることにも力を入れています。

財務目標の経常利益100億円を2019年3月期に突破した同社の次の地点は、150億円です。1000件を超える案件受託数を効率的にM&A締結させるこれらの施策により、目標の2022年3月期より早く到達すると予想されます。

日本M&Aセンターの年収~報酬はどれぐらいか

営業職は上限のないインセンティブで高年収を目指せる

日本M&Aセンターの平均年収ですが、有価証券報告書によると平均年間給与額は1413.7万円です。また同社の採用情報によると、営業職であるM&Aコンサルタントとして中途採用される場合の年収は、400万~2000万円です。給与は、前職の給与水準や職務経験などを考慮して決定されます。月給と年2回の賞与の他に、営業職にはインセンティブが加わります。このインセンティブについては、キャリコネの口コミに以下のような興味深いコメントがありました。

実績に応じた青天井のインセンティブ制度なので、目標達成後にどこまでやるかは個人次第

目安となる年収はどうでしょうか。口コミの情報では、営業職として中途採用される場合、年収700万~800万円が多いようです。年収の14等分が月給で、残りは夏と冬のボーナスで支給。「転職後に固定給が下がった場合でも、実績を上げればインセンティブで稼げるため、最終的な給与は前職と変わらない」という口コミもありました。採用情報に書かれている幅広い年収レンジを裏付けるように、「2年目で2000万円近くを稼ぐ営業マン」や「1億円近くに届くトッププレイヤー」の存在は、口コミでも見つかりました。

年収のアップダウンを気にせずに中長期的目標の達成を目指す

中途入社後の年収の伸び、それから昇格についても確認してみましょう。

営業職の場合は、経験と実力が上がっても、比例して年収が伸びる仕組みではありません。口コミによると、年収は自分が担当した売り手や買い手から受け取った手数料の10%になります。インセンティブの額を決定づける個人の業績は、配属された部署の業績や上司のマネージメント判断にも大きく影響されるため、高い経験と実力をもった人でも年収が下がる年もあるわけです。

そのような環境で出世を目指すには、社内で与えられた目標達成に加えて、新しいことへ挑戦する姿勢と同社の事業の方向性や社風にあう人材であることが重要です。階層は0~4の5段階あります。真ん中の「次世代層」は、入社4年目から副部長の中より立候補と指名された社員で構成され、合宿での新任管理職研修が実施されます。部長以上の「管理職層」では、360°評価、経営者面談そして幹部合宿があります。

法人営業の年収実態(20代男性営業)

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具体的な年収額を知りたい場合は、キャリコネの給与明細投稿をご覧ください。

社員の給与明細(キャリコネ)

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日本M&Aセンターの働く環境~働きやすさはどうか

日本M&Aセンターで働いていく上で大切なことのひとつに「働く環境はどうなのか」があります。キャリコネに寄せられた口コミを元に、制度や環境の中から特徴的なものを3つ紹介します。

経営者との双方向の対話で新プロジェクトが立ち上がる風通しのよさ

日本M&Aセンターの社風はどうでしょうか。口コミには、「創業者や社長との距離が近く、意思決定スピードはとても速く、経営側が積極的に現場との双方向のコミュニケーションをとる社風」と書かれています。

同社の公式ページによると、社員の満足度を高めるための社長への「シークレットレター」制度があります。また社長へ直接話を持ち込んで、「海外支援室プロジェクト」「TOB(株式公開買付)プロジェクト」などが新しく立ち上がっています。上司からの解決策を待つのではなく、経営陣にサポートを要求する前向きな姿勢をもつ人にとって快適な社風のようです。

営業職とスタッフ職では仕事時間や残業時間が大きく違う

仕事の時間は、業務によって非常に異なります。

営業職の場合は、「年間の残業時間が2000時間を超えていた」「夜10時や11時からの会議がある」という口コミもありました。

反対に、営業企画・管理本部(経理・人事)などのスタッフ職として女性も多数在籍。口コミによると、産休や育休を取って復職できる環境が整っているようです。同社の採用ページには、女性として出産を経験しながらも仕事を続けている社員の紹介もあります。期待するワークライフバランスを念頭に、職種を選択する必要がありそうです。

中途入社の社員が安心して仕事に就ける研修制度

同社は中途入社採用を意欲的に進めていて、中途入社時にも研修プログラムを受けることができます。入社後1ヵ月間は、M&A未経験者が基本的な知識を身に付けるための研修を、東京本社で受けます。社内M&A業務、公認会計士や税理士による専門的知識、営業同行による実務などがスケジュールされています。

配属後の研修も多種あります。必要な資格試験の受験準備のための教育費補助、階層別の社内研修ではM&A業務に必要な基礎実務研修やロールプレイング、社外研修では大学院短期プログラム派遣など、多数用意されています。職場での必要性や個人の目標によって受ける内容が異なるため、上司に積極的に希望を伝えるなど積極的に働きかけるとよいでしょう。

日本M&Aセンターの福利厚生について社員続きを見る(キャリコネ)

日本M&Aセンターの職種~どんな職種があるのか

営業職を中心に多数の職種で積極的に中途採用あり

日本M&Aセンターグループ全体では、「M&Aコンサルタント(営業職)」を中心にした営業関連の職種、「コーポレートアドバイザー(税理士・会計士)」など、多数のポジションで中途採用をしています。2020年2月現在、同社採用ページには24件の求人があります。

増加続けるM&Aの需要に対応し同社が今後も成長するために、特に積極的に採用している営業職では、未経験者からの応募が可能です。「大卒以上で、M&A業務に熱意をもって取り組める人」を求めていますが、専門知識や経験の有無は問われません。ただし、「M&A業務や税務関連業務の経験者」など、専門的な経験を求める職種もあります。

また、エンジニア関連の職種でも採用があります。ビジネス拡大で誕生したグループ会社バトンズなどで募集をしています。

日本M&Aセンターの採用試験~面接に合格する方法は

営業職向けの中途採用セミナーに参加して情報収集

気になる中途採用プロセスはどうでしょうか。

営業であるM&Aコンサルタントの場合は、採用セミナーが東京とWEB上で定期的に実施されています。一般的な採用プロセスは、WEBサイトでのエントリー、書類選考を通過し、1次・2次・最終面接へと進みます。さらに、適性検査が2次面接時、課題作成が2次と最終面接であります。営業をフォローする「M&Aコンシェルジュ」では、エントリーと書類選考の後に、面接2~3回、適性検査と課題作成もあります。

同社の営業職に求められているのは、「高度な専門性とビジネスパーソンとしての総合能力」です。ただし面接では、スキルの有無は重要視されず、「自律的な行動力や強い意志」があるかどうかを見極められています。セミナーに参加して、同社全体や営業職の仕事内容を十分に把握するとよいでしょう。また、これまでの社会人経験から自分がやり遂げた営業活動の詳細、自分が同社でできることや成し遂げたいことも説明できるように準備が必要です。同社のお客である経営者の視点をもっていることや、問題解決に向けた新しい方法や企画を考えて実現する力をもっていることもアピールしましょう。

30男性法人営業【結果:結果待ち】

質問

どのように成果を出すか

回答

入社当初は、とにかく行動量を増やして経験を積みたいと…口コミの続きとアドバイスを見る(キャリコネ)

これまで様々な側面から日本M&Aセンターを見てきました。転職先としての同社の魅力は次の3点といえます。

・M&A仲介企業として、社内に豊富な経験や知識の蓄積がある
・仲介役としての業務経験にプラスして、M&A関連の専門知識とスキルを得られる
・M&A業務未経験者が活躍できる職種&高年収を狙えるシステムがある

これまでのM&A仲介業にとらわれず、サービスラインアップを拡充させ、事業の対象者を広げることで、同社の成長はさらに加速することでしょう。企業の経営知識とM&Aの専門性を短期間で集中的に身に付けたいバイタリティのある人に、転職先としてお薦めしたい企業です。

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