2021年06月21日
土壌診断や技術経営コンサルの技術を活かしながら、肥料や農薬、培養土の製造販売を行っている住商アグリビジネスへの転職。中途採用面接ではこれまで築いてきた仕事の成果や獲得したスキルのほかに、仕事への姿勢や考え方などが社風に合うかといった点も踏まえ、総合的に評価されます。しっかりと対策した上で面接を受けましょう。
「常に変化を先取りして新たな価値を創造する」を経営理念に、農業関連資材・薬品の製造販売を行っている住商アグリビジネス。卸販売ではなく顧客へのカウンセリングを行ったうえでの直販を得意としています。
働く人からは「提案した商品で収穫量が上がると嬉しい」「天候に左右されるので毎年違った結果になり、飽きることがない」といったことがあげられています。「定期的に座学や研修がある」「農業に関する総合的なコンサルがおこなえるようになる」のも魅力で「農業に対する意識の高い人は成長できる」と考えられます。
社風については「古い体質」と答える人と「風通しはよい」と答える人が半々で、部署によっても異なるものの変革に力を注いでいる様子がうかがえます。
しかし「他業界への転職が厳しい」「営業の中では価値の低い個人営業なのが不安」など、転職の難しさを不安要素にあげる人も。ずっとこの業界で働く覚悟は必要かもしれません。
また営業に対して「普通のコミュニケーションができれば特に難しいことはない」と感じる人がいる一方、「営業の離職率が高く毎月離職者が出る」との声も。向き不向きによって仕事の難易度の感じかたに大きな差が生まれているようなので、自分の適性をしっかりと見極めることも重要です。
「変化を先取りして新たな価値を創造する」ために、長期的に業界に関わり、農業に対する意識を高く持ち続ける。このような社風になじめそうかどうかが、合否判断のポイントのひとつとなりそうです。
同社の中途採用情報は主に転職エージェントを通して入手できます。中途採用ページもありますが、採用情報は非公開で、メールで問い合わせて具体的な情報を入手する方式です。まずは転職エージェント経由の情報をチェックし、自分にあてはまるものがなければメールにて問い合わせるのがよいでしょう。
主に北海道や九州で採用活動が行われており、選考フローは書類選考と面接数回とのこと。実際に受験した人によると、書類選考後SPIのような試験があり、さらに作文が出題されることが多いそうです。「作文に備え、企業に関係ありそうな話題を考えておいた」といったコメントも寄せられています。
HPの募集情報によると応募資格は普通自動車免許のみで、「農業・土・人が好きな人」とのこと。入社時の研修、数年ごとの人材育成プログラム、資格取得支援などを通して人材を育成していく方針です。農業経験「歓迎」・理工学部卒「歓迎」など職種によっては記載がありますが、基本的には幅広く応募者を募ったうえで絞る方針のようです。
採用メッセージには「知識以上に大切なことは、目の前にいる誰かに真摯に向き合うこと」とあります。書類選考の段階からこれを意識して自己PRを考えてみましょう。
「TPPについてどう思うか」「地球温暖化についてどう思うか」など、農業、貿易、環境についての時事ネタについて、考えを聞かれることが多いようです。特にTPPについては、日本の農家に打撃を与えるのではと懸念されていることから、よく出題されるようです。TPPのメリット・デメリットをそれぞれ知ったうえで、自分なりの意見を語れるようにしておくとよいでしょう。
そして「会社の事業内容について聞かれた」との口コミも。事業内容を端的に言うと「肥料などの製造販売」と「農薬や土壌改良資材などの輸入販売」です。具体的に社内の人がどんな仕事をしているのかについては、採用ページに掲載されている社員インタビューを確認しておきましょう。新卒だけでなく中途入社の方のインタビューも掲載されています。
面接の雰囲気については「ものすごく人を観察している」との口コミがあります。いい回答をしようとするだけでなく、礼儀作法やマナーにも人一倍注意をはらうようにするとよいでしょう。
同社の面接を受ける前に、親会社である住友商事の経営戦略もチェックし、会社が応募者に求めていることは何かを分析しておきましょう。全体像のうち農業に関わる戦略は以下の通りです。
出典:住友商事の中期経営計画2020より
住友商事の経営戦略を読むことで、子会社に対しどのような成果を求めているのかが浮かび上がってきます。採用する人材に何を期待しているのかの予測にも役立ちますので、しっかりと内容を理解しておきましょう。
住友商事は今後の事業の成長戦略として、「既存事業のバリューアップ」に取り組むとしています。農業も含めた資源・化学事業については安定した需要が見込めることから、安定供給に力を注ぎつつ、利益率・付加価値の高い商品を仕入れて事業の骨太化を図るとのこと。また、デジタル変革を促進するため、全社のデジタル活用促進を図っていくとのことです。利益率の向上やデジタル活用促進の経験があれば、エピソードとしてまとめておくとよさそうです。
グループ全体としてのキャッチフレーズとして「新たな価値創造への飽くなき挑戦、夢なき者に成功なし、実践躬行」が掲げられています。夢に向かって行動し、実現させた経験を自己PRとしてまとめておきましょう。
同社の面接では「なぜ当社を希望するのか」について掘り下げて質問されることがよくあります。「即戦力として貢献できるから」「やりたい仕事ができるから」といったことも重要ではありますが、それだけでは志望動機としては不十分です。
面接官にとっては「どれだけ当社について調べたか」「他の会社ではできないことが動機に含まれているか」が一番重要であると言えるでしょう。
同じ業界や職種の企業はたくさんある中で、同社を選んだ理由を明確にする。そのためには、競合他社と比較して同社ならではの魅力を探っておくことが不可欠です。例えば以下のような企業について調べ、同社の企業理念、経営戦略と比較してみましょう。同社に特に共感できる部分、貢献したいと思える部分が明確になるはずです。
肥料については、原料仕入れ、製造から販売までを一社で担う会社は少なく、ほとんどが研究開発、製造、流通いずれかの機能に特化して事業が行われています。このような特徴についても注意して見てみるとよいでしょう。
●三井物産アグロビジネス株式会社
●住友化学株式会社
●ジェイカムアグリ株式会社
このように同社の面接を受ける前には、他社研究を行ったうえで志望動機に説得力を持たせること、経営戦略から会社の求める人材を予測したうえで自己PR内容をまとめることが重要です。
面接当日は「『変化を先取りして新たな価値を創造する』ために、長期的に業界に関わり農業に対する意識を高く持ち続ける」ことができるという印象を与えられるような言動を心がけるようにしましょう。そして「事業のバリューアップ」に対しどのように貢献できるのか、具体的な体験を交えながら面接官に伝えられるとよいでしょう。
面接を実際に受けた人が、当日どのような質問をされたのか、例をあげてご紹介します。経験者の回答も参考にしながら自分ならどう答えるか、実際の面接をイメージしながら読んでみてください。
同社の面接対策について、重要なポイントをまとめてご紹介してきました。特に以下の4点について、重点的な対策を行ったうえで当日を迎えましょう。
●「『変化を先取りして新たな価値を創造する』ために、長期的に業界に関わり農業に対する意識を高く持ち続ける」ことができることをアピールする。
●親会社住友商事の経営戦略を参考に、会社の求める人材を予測し、自己PR内容をまとめる。
●TPPを中心に、農業・貿易・環境問題の時事ネタについて学び、自分の考えをまとめておく。
●競合他社と比較して「同社にしかない仕事の魅力」を説明できるよう、志望動機を整理する。
しっかりと準備を整えたら、当日は目の前にいる面接官に真摯に向き合い、自分の言葉で伝えるよう心がけましょう。
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