2022年07月27日

【平均年収988.6万円】任天堂の給与・ボーナスが高いのはなぜなのか

【年収研究シリーズ】任天堂の年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。


クリスマスにお正月と賑わった年末商戦では、ゲーム業界の各社は目玉となるコンテンツを続々と世の中へ出していました。もちろん、任天堂も決して例外ではなく波に乗り切りました。

2018年11月には、Nintendo SwitchソフトのRPG「ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ・イーブイ」(以下、ポケモン ピカ・ブイ)が発売し、これまでにも話題と人気をさらってきたポケモンシリーズの最新作で、新たな操作やスマホゲーム「ポケモンGO」と連動する要素があることも大きな特徴となっています。このソフト発売の勢いは非常に強く、ポケモン調べによると、初週にして世界累計販売本数は一気に推計300万本にも達し、2位以下となるソフトの売上本数を大きく引き離して頂点に立ちました。結果的に、ポケモン ピカ・ブイはSwitchソフトとしての世界記録更新という快挙を成し遂げたのです。

また任天堂は年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。

任天堂の平均年収は988.6万円

任天堂の平均年収は988.6万円です(任天堂有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考に任天堂の年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で570〜620万円、30歳代で880〜930万円、40歳代で1130〜1180万円という結果になりました。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ2倍の額です。

任天堂の平均年収の推移

グラフが表示されない場合はこちら
任天堂・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
決算月平均年収平均年齢平均勤続年数従業員数
2022年3月期988.6万円39.8歳14.2年2634人
2021年3月期971万円39.6歳14.2年2498人
2020年3月期935.1万円39.2歳13.9年2395人
2019年3月期912.7万円39.3歳13.5年2286人
2018年3月期903.3万円38.6歳13.5年2191人

出典:任天堂・有価証券報告書

過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
任天堂の平均年収は前年を上回り988.6万円でした。
過去5年間では最高額になりました。

任天堂の年代別平均年収と中央値

任天堂の年収中央値は30代で895.9万円

続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。

任天堂の年収実態
年代平均年収平均月収平均ボーナス年収中央値
20代594.4万円38.9万円102.6万円534.96万円
30代895.9万円58万円154.9万円806.31万円
40代1151.1万円74.1万円199万円1035.99万円
50代1252.9万円80.6万円216.7万円1127.61万円

※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出

任天堂と競合他社の平均年収を比較

任天堂の競合や同業界であるソニーグループ、カプコン、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、ディー・エヌ・エーの5社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、任天堂が988.6万円、ソニーグループが1084.5万円、カプコンが712.7万円、ガンホー・オンライン・エンターテイメントが656.3万円、ディー・エヌ・エーが850.1万円です。
この5社の中で最高額はソニーグループの1084.5万円で、最低額がガンホー・オンライン・エンターテイメントの656.3万円。その差はおよそ429万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では任天堂は2番目に位置します。

社名平均年収平均年齢平均勤続年数従業員数(単体)売上高
ソニーグループ1084.5万円42.6歳16.7年2839人4062.47億円
任天堂988.6万円39.8歳14.2年2634人14378.31億円
ディー・エヌ・エー850.1万円36.8歳5.5年1264人930.05億円
カプコン712.7万円37.3歳10.7年2904人1016.28億円
ガンホー・オンライン・エンターテイメント656.3万円40.7歳8.6年413人666.42億円

任天堂の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください

任天堂の年収がこれほど年収が高いということはどういう理由があるのでしょうか?

任天堂の年収が高い理由は?

任天堂の売上の9割強はゲーム専用機に関連するものが占めています。家庭用ゲーム媒体がスマートフォン・PC媒体の売上を大きく上回る点は、任天堂の最大の特徴といえます。それに対し、ゲームソフトのみのメーカーとして売上高トップのバンダイナムコホールディングスは、スマートフォン・PC媒体の売上が6割で、家庭用ゲーム媒体の売上の3割よりも大きく、任天堂とは逆の様相を呈しているのです。

なぜ、任天堂は他社とは違った特徴が見られるのでしょうか。その背景としては、任天堂が理念とする「ハード・ソフト一体型の娯楽商品を世界に向けて作り続ける」ことにあるでしょう。こうして目指してきたものが功を奏し、ハードウェア・ソフトウェアは伴って好調な推移をたどりつつあります。たとえば、ハードウェアであるNintendo Switchは当初の目標である1000万台をはるかに超えた大ヒットを飛ばしました。またソフトウェアでは「スーパーマリオ オデッセイ」などを筆頭に、ミリオンセラーをたたき出したタイトル数は他メーカー製品も含めて12本となりました。

ここには、ゲーム業界ならではの利益構造が隠れています。ゲームの開発費用の計上は開発時のみのため、販売数が増えた分だけ営業利益率は上昇していきます。したがって、ゲームのハード・ソフトとともにヒットを飛ばすことが、任天堂が高年収である背景かつ特徴なのです。

任天堂社内で年収が高い職種・役職は?

任天堂では入社後3年目までは昇給に差はなく、4年目以降に能力評価がなされて給与へと反映されます。とはいえ、昇給のみでは大きな差が出にくいのが実情でしょう。違いが生じるとすれば、所属する部署や担当する職務内容によって支給される残業手当によるものです。

時間外勤務をした分がすべて手当として支給されるため、部署によっては20代から30代前半までに年収1000万円に到達することもあります。残業手当はマネージャー職以上になるとつかなくなり、役職手当のみが加算されるようになります。そのため時間外勤務の多い若手社員の年収が、マネージャー職の年収を上回ってしまうという逆転現象が生じることもあるといえるでしょう。

キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由が確認できます。

任天堂社員の給与明細(キャリコネ)

30代では驚愕の報酬へと上昇!

20代・パートナーセールス(非管理職)の 給与明細

30代・パートナーセールス(非管理職)の 給与明細

賞与があると、大きく差がつく!

20代・生産製造技術・賞与なし(非管理職)の 給与明細

20代・生産製造技術・賞与あり(非管理職)の 給与明細

年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。

任天堂の見落としがちな留意点、課題は?

懸念点としては、新卒入社後の2~3年間の勤務地が主として京都となることが挙げられます。他の地域出身者にとっては、あまりなじみのない場所へ居住して勤務する状況になるでしょう。また場合によっては、東京勤務となることもあります。入社後の配属に関しても適性や専攻、会社の状況などからの総合的な判断により決定されるため、必ずしも本人の希望どおりになるわけでないと理解しておくとよいでしょう。

またその後の人事異動についても、組織の必要性が加味されて行われ、若手社員が海外へ赴任する機会もあります。このように入社後はその都度、決定されたさまざまな場所での勤務となる可能性が高いことを留意しておく必要がありそうです。

任天堂には年収以外にメリットはある?

ここまで任天堂の年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?

任天堂には、強靭な財務体制があります。その特徴はキャッシュリッチかつ無借金という点に表れています。任天堂が保有する資産のうち、8割弱を現預金や有価証券などの流動資産が占めており、そのうち自己資本比率が8割を上回っている状況です。一般的に健全と言われるレベルは、自己資本比率が4割以上の企業であることから見ても、任天堂ははるかに高い割合にあります。もう1つの注目点は土地、建物、機械設備などの有形固定資産の比率が非常に小さく、全資産の1割にも満たないことです。この結果、たとえ業績変動があろうとも柔軟に対応できる体制が保持できるのです。

こうして確保されている財源は、一体何に対して積み上げられているのでしょうか。それは任天堂の研究開発費が2013年度からの過去5年間において、500億円から700億円を超えるほどの間で推移していることから紐解くことができます。商品の研究や開発に対して惜しみなく投資を続けていることが、ヒットを連打する秘訣といえるでしょう。以上のように、頑強な財務体制による安定と未来へ向けての研究に対する十分な投資という挑戦の両立が、任天堂ならではの魅力なのです。

出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」

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