※本記事は、株式会社ファーストリテイリング の有価証券報告書(第64期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ファーストリテイリングってどんな会社?
「ユニクロ」「ジーユー」などを展開する世界有数のアパレル企業です。企画・生産・販売を一貫して行うSPAモデルを確立しています。
■(1) 会社概要
1963年に小郡商事として設立され、1984年に「ユニクロ」第1号店を出店しました。1994年に広島証券取引所へ上場し、1999年に東証一部へ指定替えとなりました。2005年には持株会社体制へ移行し、翌2006年に「ジーユー」を設立するなど、事業を拡大。近年では、グローバルブランドのM&Aや海外展開を加速させています。
2025年8月31日現在、連結従業員数は59,522人、単体では1,572人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は創業者の柳井正氏、第3位も資産管理業務を行う株式会社日本カストディ銀行となっており、創業家や機関投資家が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 19.83% |
| 柳井 正 | 17.40% |
| 日本カストディ銀行 | 9.35% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.7%です。代表取締役会長兼社長CEOは柳井正氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柳井 正 | 代表取締役会長兼社長CEO | 1972年入社。1984年社長就任。2002年会長、2005年より会長兼社長。ユニクロ会長やジーユー会長なども兼任し、グループ全体を統括。 |
| 岡﨑 健 | 取締役CFO | 日本長期信用銀行、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2011年入社。グループ上席執行役員CFO等を歴任し、2018年より取締役。プラステ代表取締役も兼任。 |
| 柳井 一海 | 取締役 | ゴールドマン・サックス証券を経て、リンク・セオリー・ホールディングス(米国)入社。2009年同社入社。2020年グループ上席執行役員。リンク・セオリー・ジャパン会長兼社長兼CEO。 |
| 柳井 康治 | 取締役 | 三菱商事を経て、2012年入社。ユニクロのスポーツマーケティングやグローバルマーケティングを担当。2018年より取締役、2020年よりグループ上席執行役員。 |
| 塚越 大介 | 取締役 | 2002年入社。米国ユニクロCEO、北米CEO等を歴任し、2023年ユニクロ代表取締役社長に就任。2024年同社COO、2025年より取締役。 |
社外取締役は、新宅正明(元日本オラクル社長)、大野直竹(元大和ハウス工業社長)、コールキャシーミツコ(元ゴールドマン・サックス証券副会長)、車戸城二(元竹中工務店常務執行役員)、京谷裕(三菱食品社長)、國部毅(元三井住友フィナンシャルグループ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内ユニクロ事業」「海外ユニクロ事業」「ジーユー事業」「グローバルブランド事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 国内ユニクロ事業
日本国内において「ユニクロ」ブランドのカジュアル衣料品販売事業を展開しています。商品企画から生産、販売までを一貫して行うSPA(製造小売業)モデルにより、高品質な服をリーズナブルな価格で提供し、幅広い層の顧客に支持されています。
収益は、主に一般消費者への衣料品販売による代金から得ています。運営は、連結子会社であるユニクロが行っています。
■(2) 海外ユニクロ事業
海外において「ユニクロ」ブランドのカジュアル衣料品販売事業を展開しています。グレーターチャイナ(中国大陸・香港・台湾)、韓国、東南アジア・インド・豪州、北米、欧州など、グローバルに店舗網を拡大しています。
収益は、各国の一般消費者への衣料品販売による代金から得ています。運営は、各国の事業会社(迅銷(中国)商貿有限公司、UNIQLO USA LLCなど)が行っています。
■(3) ジーユー事業
「ジーユー」ブランドのカジュアル衣料品販売事業を国内外で展開しています。トレンドを捉えたファッション性の高い商品を低価格で提供し、若年層を中心に支持されています。
収益は、一般消費者への衣料品販売による代金から得ています。運営は、主にジーユーが行っています。
■(4) グローバルブランド事業
「Theory(セオリー)」「PLST(プラステ)」「COMPTOIR DES COTONNIERS(コントワー・デ・コトニエ)」「PRINCESSE TAM.TAM(プリンセス タム・タム)」ブランドの衣料品販売事業を国内外で展開しています。
収益は、一般消費者への衣料品販売による代金から得ています。運営は、リンク・セオリー・ジャパン、プラステ、FAST RETAILING FRANCE S.A.S.などの各事業会社が行っています。
■(5) その他
上記の報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸業などを行っています。
収益は、不動産の賃貸料などから得ています。運営は、主にファーストリテイリングが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は右肩上がりに拡大しており、2兆円台前半から3兆4000億円規模へと大きく成長しています。利益面でも、税引前利益率は12%台から19%台へと向上し、当期利益も増加傾向にあります。増収増益基調が続いており、収益性の高い成長を実現しています。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 21,330億円 | 23,011億円 | 27,666億円 | 31,038億円 | 34,005億円 |
| 税引前利益 | 2,659億円 | 4,136億円 | 4,379億円 | 5,572億円 | 6,506億円 |
| 利益率(%) | 12.5% | 18.0% | 15.8% | 18.0% | 19.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1,698億円 | 2,733億円 | 2,962億円 | 3,720億円 | 4,330億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上収益の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は53%台後半を維持しています。営業利益も順調に増加しており、営業利益率は16%台で安定的に推移しています。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 31,038億円 | 34,005億円 |
| 売上総利益 | 16,731億円 | 18,289億円 |
| 売上総利益率(%) | 53.9% | 53.8% |
| 営業利益 | 5,009億円 | 5,643億円 |
| 営業利益率(%) | 16.1% | 16.6% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が4,699億円(構成比37%)、地代家賃が1,265億円(同10%)、物流費が1,442億円(同11%)、広告宣伝費が1,085億円(同8%)を占めています。売上原価は1兆5,717億円で、商品原価等が主な内訳です。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで前期比増収となりましたが、特に海外ユニクロ事業の増収幅が大きく、グループ全体の成長を牽引しています。利益面では、国内・海外ユニクロ事業が増益となった一方、ジーユー事業とグローバルブランド事業は減益(または損失拡大)となりました。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) | 利益(2024年8月期) | 利益(2025年8月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内ユニクロ事業 | 9,322億円 | 10,261億円 | 1,558億円 | 1,845億円 | 18.0% |
| 海外ユニクロ事業 | 17,118億円 | 19,103億円 | 2,834億円 | 3,093億円 | 16.2% |
| ジーユー事業 | 3,192億円 | 3,307億円 | 337億円 | 305億円 | 9.2% |
| グローバルブランド事業 | 1,388億円 | 1,315億円 | 7億円 | -10億円 | -0.7% |
| その他 | 18億円 | 19億円 | 4億円 | 3億円 | 13.2% |
| 調整額 | - | - | 270億円 | 407億円 | - |
| 連結(合計) | 31,038億円 | 34,005億円 | 5,009億円 | 5,643億円 | 16.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で稼いだ資金で借入金の返済や配当支払いを行いながら、将来のための投資も自己資金の範囲内で実施している「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6,515億円 | 5,806億円 |
| 投資CF | -822億円 | -5,789億円 |
| 財務CF | -2,690億円 | -3,391億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は58.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」という企業理念を掲げ、世界中の人々に良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供することをめざしています。服づくりのコンセプトである「LifeWear(究極の普段着)」は、あらゆる人の生活をより豊かにする、シンプルで上質な服と定義されています。
■(2) 企業文化
お客様の要望や世の中の情報を商品化し、最適な形でお届けする「情報製造小売業」への変革を推進しています。また、「グローバルワン 全員経営」の方針の下、国や地域、部署を超えて連携し、課題解決や意思決定を行うことを重視しています。「真・善・美」や「お客様志向」を共通の価値観としています。
■(3) 経営計画・目標
世界中の顧客から信頼され、生活に必要不可欠なブランドになることを目標に、事業規模だけでなく質の面でもグローバルNo.1をめざしています。2023年8月期を「第4創業」の始まりと位置づけ、売上収益10兆円をめざしています。中間目標として、2028年8月期を目途に売上収益5兆円の達成を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「LifeWear」の価値観をグローバルに浸透させ、市場シェア拡大を図ります。特に海外ユニクロ事業の成長加速を掲げ、北米・欧州での出店継続や、東南アジア・インド等での事業基盤確立に注力します。また、経営人材の育成、サステナビリティと事業の一体推進、DXによるサプライチェーン改革(有明プロジェクト)も重点施策です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「グローバルワン 全員経営」の方針の下、属性に関わらず成長機会を与え、公正な評価と高い報酬で報いる方針です。特に「店舗販売員」「グローバル経営人材」「高度専門人材」の育成に注力し、完全実力主義による評価・登用を徹底しています。また、ダイバーシティ推進や従業員の健康・安全確保にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 38.4歳 | 5.8年 | 12,506,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 21.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 75.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 60.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 65.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 51.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外各事業会社を含むグループ全体の管理職(45.5%)、うち執行役員(Global)(9.3%)、海外各事業会社を含むグループ全体の管理職(53.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経営人材に関わるリスク
代表取締役会長兼社長柳井正氏をはじめとする経営陣が業務執行できなくなった場合や、重要な役割を担う人材を確保できなかった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、チーム経営体制の構築や、後継者育成、グローバルでの経営人材採用・教育機関の設置などを進めています。
■(2) カントリーリスク、国際情勢に関わるリスク
生産国や事業展開国における政治・経済情勢の変動、テロ・紛争、法制度変更、自然災害等が、商品の生産・供給・販売体制に影響を与える可能性があります。生産拠点の分散や現地情報の把握体制強化、専門家配置によるリスク管理を行い、国際情勢の変化に機動的に対応できるサプライチェーンの確立を目指しています。
■(3) 環境に関わるリスク
気候変動対応、生物多様性、水資源管理等が不十分な場合、社会的信用の低下を招く可能性があります。また、異常気象により商品供給体制等に影響が出る恐れがあります。これに対し、温室効果ガス削減等の環境目標を設定し、原材料調達や生産プロセスの見直し、BCP観点での拠点選定などの対策を講じています。



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