※本記事は、任天堂株式会社の有価証券報告書(第86期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 任天堂ってどんな会社?
同社はゲーム専用機の開発・販売と、キャラクターなどのIPを活用した事業をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1947年にかるた・トランプ類の製造販売会社として発足しました。1980年には米国に現地法人を設立してグローバル展開を本格化させ、1983年に東京証券取引所市場第一部に株式を上場しました。その後も家庭用ゲーム機分野を牽引し続け、世界的なエンターテインメント企業へと成長しています。
現在、同社グループの従業員数は連結で8,666名、単体で3,084名です。株主構成については、筆頭株主ならびに第2位、第3位ともに、資産管理業務等を行う国内外の信託銀行や金融機関が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.05% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.02% |
| ジェーピー モルガン チェース バンク 380752 (常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 3.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は古川俊太郎氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 古川 俊太郎 | 代表取締役社長 | 1994年同社入社。経営企画室長、取締役および常務執行役員等を経て、2018年より現職。 |
| 宮本 茂 | 代表取締役フェロー | 1977年同社入社。情報開発本部長、専務取締役、代表取締役を経て、2015年より現職。 |
| 高橋 伸也 | 取締役専務執行役員企画制作本部 統括本部長 | 1989年同社入社。企画開発本部長、専務執行役員等を経て、2023年より現職。 |
| 柴田 聡 | 取締役常務執行役員営業本部 統括本部長業務本部長 | 1985年同社入社。欧州現地法人社長、取締役営業本部長等を経て、2025年より米国子会社CEO兼務。 |
| 塩田 興 | 取締役上席執行役員技術開発本部長 | 1992年同社入社。技術開発本部長、取締役および上席執行役員を経て、2023年より現職。 |
| 別府 裕介 | 取締役上席執行役員経営企画室長 | 2001年同社入社。執行役員、経営企画室長、上席執行役員を経て、2024年より現職。 |
| 吉村 卓哉 | 取締役(常勤監査等委員) | 2000年同社入社。総務部長、法務部長、東京支店長等を経て、2022年より現職。 |
社外取締役は、Chris Meledandri(Illumination Entertainment CEO)、Miyoko Demay(元Tiffany & Co. Japan Inc.社長)、八谷和彦(東京藝術大学教授)、梅山克啓(梅山公認会計士事務所代表)、新川麻(西村あさひ法律事務所パートナー)、大澤栄子(大澤公認会計士事務所代表)、明石敬子(元税務署長)です。
2. 事業内容
同社グループは、単一の事業セグメントのもと、主にゲーム専用機およびIP関連の事業を展開しています。
■(1) ゲーム専用機事業
ホームコンソールゲームのハードウェアおよびソフトウェア、アクセサリなどの製品開発・製造・販売と、各種有料会員サービスの提供を行っています。常に新しい楽しさを持った製品づくりに注力し、幅広い世代のお客様に受け入れられる娯楽の創出を目指しています。
顧客に対する製品販売代金やサブスクリプション利用料などが主な収益源です。開発と製造は主に任天堂が行い、販売は米国や欧州の現地法人など国内外の子会社が担っています。ダウンロードソフトの一部については、同社が受け取る販売手数料を収益としています。
■(2) IP関連事業およびスマートデバイス事業
映像コンテンツの制作やキャラクターグッズなどの展開に加え、スマートデバイス向けのゲームアプリの配信などを行っています。ゲーム専用機ビジネスの枠を超えて、任天堂のキャラクターや世界観に触れる機会を広げる取り組みを推進しています。
顧客によるIPの使用に応じたロイヤリティ収入や、映像コンテンツ収入、モバイルアプリ内での課金収入などが主な収益源です。こちらの事業運営についても、同社および関係各社が緊密に連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績は、一時的な減益の年もありましたが、総じて高い利益水準を維持しています。直近の期においては新製品の発売などが大きく寄与し、大幅な増収増益を達成しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 16,953億円 | 16,017億円 | 16,719億円 | 11,649億円 | 23,131億円 |
| 経常利益 | 6,708億円 | 6,011億円 | 6,805億円 | 3,723億円 | 5,422億円 |
| 利益率(%) | 39.6% | 37.5% | 40.7% | 32.0% | 23.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4,625億円 | 4,846億円 | 3,520億円 | 2,258億円 | 2,717億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益も大きく拡大しています。引き続き安定して高い収益性を維持していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 11,649億円 | 23,131億円 |
| 売上総利益 | 7,102億円 | 9,090億円 |
| 売上総利益率(%) | 61.0% | 39.3% |
| 営業利益 | 2,826億円 | 3,601億円 |
| 営業利益率(%) | 24.3% | 15.6% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が1,779億円(構成比32%)、広告宣伝費が1,447億円(同26%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、製品・サービスごとの売上高を見ると、主力となるゲーム専用機関連の売上が大きく伸びて業績を牽引していることがわかります。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ゲーム専用機 | 10,835億円 | 22,395億円 |
| IP関連収入等 | 814億円 | 735億円 |
| 連結(合計) | 11,649億円 | 23,131億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなる「健全型」です。営業利益で手元資金を生み出し、借入返済や投資を十分に賄っている優良企業の状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 121億円 | 2,898億円 |
| 投資CF | 7,531億円 | -2,101億円 |
| 財務CF | -1,951億円 | -2,497億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も77.6%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「娯楽を通じて人々を笑顔にする会社」として、健全な企業経営を維持しつつ新しい娯楽の創造を目指しています。世界中のお客様へ、かつて経験したことのない楽しさ、面白さを持った娯楽を提供することを最も重視して経営を行っています。
■(2) 企業文化
同社には「任天堂DNA」として、他と違うユニークな価値を追求する「独創」、変化に素早く対応する「柔軟」、真面目に向き合う「誠実」という3つの価値観が根付いています。異なるアイデアや価値観を持った社員が、互いの専門性を尊重しながらチームでの協働を重んじる文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
取扱商品・コンテンツが娯楽品であり、事業運営上に不確定要素が多いという特性から、柔軟な経営判断を行えるように特定の経営指標を目標として定めていません。常に新しい楽しさを追求し、継続性のある健全な成長と利益の増加による企業価値の向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「任天堂IPのファン拡大」と「長期間にわたるお客様との関係づくり」の2つの指針に基づき、ゲーム専用機ビジネス以外の分野にも展開を広げます。また、新機種の開発においては、複雑化・長期化に対応した開発体制の強化、人材育成、および開発効率の向上に優先的に取り組む方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「任天堂DNA」を基盤とし、仕事を通じて社員一人ひとりの成長を最大限に促せるよう、さまざまな人事施策を取り入れています。また、社員が働き方やライフステージに応じて仕事と個人の生活とのバランスを取ることができるよう、各種支援制度を拡充し、安心して働き続けられる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.5歳 | 14.6年 | 9,824,708円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.8% |
| 男性育児休業取得率 | 82.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 73.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 84.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済環境に関するリスク
同社は全世界で製品を販売し、海外での売上割合が7割を超えています。取引のほとんどを現地通貨で行っているため、為替レートが大幅に変動した場合、グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 事業活動に関するリスク
他の娯楽への顧客志向の変化による市場縮小や、技術進歩に伴う新たな競争相手の出現などが挙げられます。また、新製品の開発には長期間と多額の費用が必要であり、技術の変化により予定通りの開発や販売ができないリスクが存在します。
■(3) 法的規制・訴訟に関するリスク
世界各地域で事業を展開しているため、万一製品の欠陥等が見つかった場合は大規模な返品要求や製造物責任賠償につながる可能性があります。また、知的財産保護の限界や、予期しない法律・規則の変更などが業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。



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