日本航空 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本航空 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する日本航空は、国際線・国内線のフルサービスキャリア事業を中核に、LCC事業やマイル・金融事業を展開する航空運送グループです。当期はインバウンド需要の回復等を背景に旅客需要が伸長し、大幅な増収増益を達成。LCC事業も収益化が進み、事業構造改革の成果が現れています。


※本記事は、株式会社日本航空 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 日本航空ってどんな会社?


日本航空は、国内・国際線のフルサービスキャリア事業を主軸に、LCC事業やマイル・生活インフラ事業などの非航空領域も強化する航空運送グループです。

(1) 会社概要


1951年8月に設立され、翌年10月より国内線の定期航空輸送事業を開始しました。1953年には日本航空株式会社法に基づき特殊法人として再発足し、日本の国際線定期航空運送事業を牽引。2002年の日本エアシステムとの経営統合を経て、2010年の会社更生手続申立により一時上場廃止となりましたが、再生を果たし2012年9月に東京証券取引所市場第一部へ再上場しました。

連結従業員数は38,433名、単体従業員数は14,431名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様の信託銀行です。第3位株主の京セラは、同社の再建を主導した稲盛和夫氏が創業した事業会社であり、長期的かつ安定的な株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 18.11%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.85%
京セラ株式会社 1.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表者は代表取締役社長執行役員の鳥取三津子氏です。社外取締役比率は約42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
赤坂 祐二 取締役会長 1987年入社。整備本部長、JALエンジニアリング社長を経て、2018年社長執行役員に就任。2023年グループCEOを務め、2024年より代表取締役会長。2025年4月より現職。
鳥取 三津子 代表取締役社長執行役員 1985年入社。客室本部長、カスタマー・エクスペリエンス本部長、グループCCOなどを歴任。2024年4月よりグループCEOを務め、現職。
斎藤 祐二 代表取締役副社長執行役員 1988年入社。国際路線事業部長、経営管理本部長、経営企画本部長などを経て、2023年グループCFOに就任。2024年4月よりコーポレート部門を管掌し、現職。
青木 紀将 取締役副社長執行役員 1989年入社。日本トランスオーシャン航空社長、総務本部長などを歴任。2024年4月より顧客部門管掌、グループCCO、カスタマー・エクスペリエンス本部長として現職。
柏 頼之 取締役専務執行役員 1986年入社。国際旅客販売本部長、総合政策センター担当などを歴任。2024年7月より秘書部・総合政策部担当、JAL航空みらいラボ社長として現職。
田村 亮 取締役 1988年入社。調達本部長を経て、2021年より整備本部長およびJALエンジニアリング社長を務める。2025年4月より現職。


社外取締役は、小林栄三(元伊藤忠商事会長)、柳弘之(ヤマハ発動機会長)、三屋裕子(日本バスケットボール協会代表理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「フルサービスキャリア事業」、「LCC事業」、「マイル/金融・コマース事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) フルサービスキャリア事業


世界と日本、都市と地域をつなぐ航空運送事業や、自社旅客機貨物スペースおよび貨物専用機を組み合わせた貨物郵便事業を行っています。国際線および国内線における旅客・荷主への輸送サービスが中核です。

収益は主に旅客からの航空運賃や荷主からの貨物輸送料金です。運営は日本航空、ジェイエア、日本エアコミューター、北海道エアシステム、日本トランスオーシャン航空、琉球エアーコミューター等が行っています。

(2) LCC事業


北米・アジアや日本国内・中国などを結ぶ航空運送事業を行っています。低価格かつ多様なニーズに対応した輸送サービスを提供し、新たな観光・渡航需要を創出しています。

収益は主に旅客からの航空運賃や付帯サービス収入です。運営は主にZIPAIR Tokyo、スプリング・ジャパン等が行っています。

(3) マイル/金融・コマース事業


マイレージプログラムの運営、クレジットカード事業、卸売業等を行っています。航空利用に限らない日常の生活シーンにおけるサービス提供を通じて、顧客基盤の拡大を図っています。

収益は提携先からのマイル販売収益、カード会員からの年会費・手数料、商品販売代金等です。運営は主にJALマイレージバンク、ジャルカード、JALUX等が行っています。

(4) その他


航空運送を利用した旅行の企画販売やシステム開発・運用等を行っています。航空事業とのシナジーを生む関連事業を展開しています。

収益は旅行代金やシステム開発受託費等です。運営は主にジャルパック、JALインフォテック(現JALデジタル)等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益はコロナ禍の影響を受けた時期から着実に回復し、拡大傾向にあります。利益面でも、赤字の時期を経て黒字転換を果たし、直近では利益率も改善しています。親会社の所有者に帰属する当期利益もしっかりと確保されており、業績の回復と成長が数字に表れています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 4,812億円 6,827億円 13,756億円 16,519億円 18,441億円
税引前利益 -3,983億円 -2,395億円 646億円 1,452億円 1,725億円
利益率(%) -82.8% -35.1% 4.7% 8.8% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -2,867億円 -1,776億円 344億円 955億円 1,070億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上収益は約11.6%増加し、事業規模が拡大しています。これに伴い営業利益も増益となり、営業利益率は8.5%から9.1%へと改善しました。コストコントロールを行いつつ、増収効果によって収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 16,519億円 18,441億円
営業利益 1,409億円 1,686億円
営業利益率(%) 8.5% 9.1%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が406億円(構成比25%)、社外役務費が371億円(同23%)、販売手数料が289億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに増収となっています。主力のフルサービスキャリア事業が堅調に推移し、グループ全体の収益を牽引していますが、特筆すべきはLCC事業の大幅な増収増益です。利益率も大きく改善しており、新たな収益の柱として成長しています。マイル/金融・コマース事業も安定して高い利益率を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
フルサービスキャリア事業 13,225億円 14,518億円 1,062億円 1,111億円 7.7%
LCC事業 748億円 1,041億円 27億円 116億円 11.1%
マイル/金融・コマース事業 1,900億円 2,004億円 346億円 381億円 19.0%
その他 2,236億円 2,523億円 25億円 124億円 4.9%
調整額 -1,591億円 -1,645億円 -8億円 -8億円 -
連結(合計) 16,519億円 18,441億円 1,452億円 1,725億円 9.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3,639億円 3,815億円
投資CF -1,951億円 -2,811億円
財務CF -1,050億円 -649億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「全社員の物心両面の幸福を追求し、お客さまに最高のサービスを提供します。企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。」という企業理念を掲げています。社員の幸福を基盤として、顧客への最高サービスの提供と社会貢献を実現することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「JALフィロソフィ」を全社員の行動指針として重視しています。また、「安全・安心」をグループ存続の大前提と位置づけ、全社員が日々航空安全の実現に向けて不断の努力を継続する文化を持っています。これらを基盤として、企業価値の向上と社会への貢献に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」において、以下の経営目標を掲げています。
* 安全:航空事故・重大インシデント0件
* 安心:NPS +4.0pt(世界トップレベルの顧客体験)
* EBITマージン:2025年度に10%以上
* ROIC:2025年度に9%
* EPS:2025年度に290円レベル
* CO2排出量削減(総排出量 921万トン未満)
* グループ内女性管理職比率 30%

(4) 成長戦略と重点施策


「ローリングプラン2025」に基づき、短期的には2025年度の利益目標と経営目標の達成を目指します。中長期的には、既存領域での事業構造改革の深化、社会課題起点で取り組む新領域、事業横断の取り組みを推進します。

* 航空領域:海外需要を中心とした国際線の成長と国内線の収益性向上。
* LCC事業:国際線の成長とグループ全体でのシナジー創出。
* マイル・ライフ・インフラ領域:顧客基盤やヒューマンスキルを活かした成長。
* GX(グリーントランスフォーメーション)の取り組み加速。
* DX戦略によるマーケティングの高度化と生産性向上。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の成長を企業価値の源泉と捉え、自律的なキャリア形成の支援やDX人材育成を進めています。多様な知見を持つ人材の活躍推進(DEI)や、エンゲージメント向上を重視し、適正な還元を行う好循環を目指しています。社員一人ひとりが変革の担い手となるよう、スキルとマインドの両面から成長を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.7歳 15.2年 9,494,000円


※平均年間給与は、各種手当等の基準外賃金および各種手当を含んでおります。また海外雇用社員の給与は含んでおり、他社への出向者の給与は除いて算出しております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 33.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 50.3%
男女賃金差異(正規雇用) 48.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 50.2%


※男女の賃金差異は、職種別の単価の差や勤続年数の差、男女構成比の偏りの影響を受けています。地上社員、運航乗務員、客室乗務員といった職種ごとの構成が全体数値に影響を与えています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントの高い社員割合(3.7pt(2019年度対比))、成長領域への人財配置(3,250名(2019年度対比))などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 航空安全に関わるリスク


航空機の運航の安全確保は最重要課題ですが、万が一死亡事故や安全問題が発生した場合、顧客の信頼や社会的評価が失墜し、死傷者への補償対応も含め、業績に極めて深刻な影響を与える可能性があります。

(2) 世界的な疫病の蔓延拡大に関わるリスク


新たな感染症の世界的な拡大が発生した場合、移動制限や需要減退により、固定費比率の高い航空運送事業の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、社会や行動様式の変化により、中長期的な事業環境が変化するリスクもあります。

(3) 気候変動・地球温暖化・環境規制に関わるリスク


航空業界は化石燃料を消費するため、CO2排出量削減が重要な責務です。環境規制の強化や炭素税の導入、消費者の行動変容などが進んだ場合、コスト増加や需要減少により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 国際情勢や経済動向等の外部経営環境に関わるリスク


世界の経済動向、テロ、地域紛争、戦争などにより航空需要が減少する可能性があります。また、競争環境の激化や、原油価格・為替レートの変動といった市況変動も、業績に影響を与える重要な要因です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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