【年収研究シリーズ】エーザイの年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
製薬会社大手のエーザイは、2018年3月8日に米国製薬メーカー大手であるメルク社と提携し、自社の技術で創製した抗がん剤「レンビマ」を共同で開発・販売することを発表しました。
両社が決めた条件を満たせば、エーザイは最大で6100億円もの資金が得られることもあって、市場はこれに反応し、発表の翌日には株価が2割を超える上昇となりました。
エーザイは武田薬品工業、アステラス製薬、大塚ホールディング、第一三共に次いで売上高で国内5位を誇る製薬会社です。医療用医薬品から一般用医薬品まで扱っており、「チョコラBB」や「セルベール」などが有名で、製薬大手5社のうちの一角を占めている強さがあります。
製薬会社は年収が高いと聞きます。それでは、エーザイの社員はいったいどれくらいもらっているのか、様々な情報から探っていきましょう。
エーザイの平均年収は920.1万円
まずはじめにエーザイの平均年収を見ていきましょう。エーザイの平均年収は920.1万円です(エーザイ有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考にエーザイの年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で540〜590万円、30歳代で760〜810万円、40歳代で950〜1000万円という結果がでました。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ1.86倍の額です。
■エーザイの平均年収推移
エーザイ・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
エーザイの平均年収は前年を下回り920.1万円でした。
過去5年間では最低の額になりました。
エーザイの年代別平均年収と中央値
■エーザイの年収中央値は30代で780.1万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
エーザイと競合他社の平均年収を比較
エーザイの競合や同業界である第一三共、武田薬品工業、アステラス製薬、中外製薬の5社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、エーザイが920.1万円、第一三共が1094.9万円、武田薬品工業が1105.1万円、アステラス製薬が1064.4万円、中外製薬が1155.8万円です。
この5社の中で最高額は中外製薬の1155.8万円で、最低額がエーザイの920.1万円。その差はおよそ236万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではエーザイは5番目に位置します。
エーザイの競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
エーザイの年収が高い理由
■アルツハイマー薬と胃潰瘍薬が売上の6割
エーザイの2018年度の業績を見てみると、営業利益率が高水準であることがわかります。
売上高 6428億3400万円
営業利益 861億5400万円(利益率13.4%)
扱っている医薬品のうち、自社開発のものが9割であるという高い割合を占めていることが特徴です。
かつては、主力製品としてアルツハイマー型認知症薬「アリセプト」と胃潰瘍薬「パリエット」が売上高の6割を占めるほど世界中で売れ、かなりの利益を生み出していました。
上記2種類の薬品に企画段階から承認に至るまで関わってきた社員に対して、「特別インセンティブ制度」で累計販売額の一部である、合計約1億円が支払われたという実績があります。
こうした経緯は、会社の利益が社員に還元される道筋が考えられていると言っても過言ではありません。
また製薬会社の職種の一つであるMR(営業)の給料は、業界を通じて高く設定されており、年功序列型の賃金の名残が一部にあることも、年収を押し上げている理由です。
キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由が確認できます。
エーザイ社員の給与明細(キャリコネ)
高水準で、20代から30代へとさらに上昇!
20代・MR(非管理職)の
給与明細
30代・MR(非管理職)の
給与明細
やっぱり大きい、賞与の存在
20代・MR・賞与あり(非管理職)の
給与明細
20代・MR・賞与なし(非管理職)の
給与明細
年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。
エーザイで働く上での懸念点・課題
■"特許切れ"薬品のライバル"ジェネリック"
2010年から2011年にかけて、エーザイの主力製品である「アリセプト」と「パリエット」が特許切れとなり、その直後から業績が振るわなくなりました。
業績の大部分を有力製品によって支えられていたため、このことが大きく影響し、エーザイの給与体系が従来の年功序列型から業績連動型へと変わった経緯があります。
ここで、MRにスポットを当ててみましょう。
営業であり医薬情報担当であるMRは、営業だけではなく、権威ある先生には講演会の依頼や薬の有効性の実証、普及を手伝ってもらわなければなりません。
職務の性質上、仕事のスケジュールは顧客である医師に合わせざるを得ないため、早朝深夜や休日に仕事をすることもあり、勤務体系は決して規則正しいとは言い切れません。
数ある競合他社を抑えて、自社の製品を病院に採用してもらわなければならず、自分の説明や営業トークなどの能力にかかっているというプレッシャーがあります。
結局エーザイは就職・転職先として選んでもいいのか
ここまでエーザイを見てきました。結局「就職・転職先として選んでもいいのか」なんですが、
結論から言うと「選ぶべき」です。
冒頭に出てきた抗がん剤「レンビマ」は、2018年3月23日に国内で追加承認が下りました。すでに甲状腺がん治療薬として承認を得て販売されていますが、肝細胞がんまで摘要が拡大されたことで、新薬が出ていない市場において、エーザイが独占できる可能性が高い状況にあります。
こうしたことから、2020年代の早期に世界で年間1千億円超の売上高を目指すとしており、米国製薬会社大手のメルク社との提携は今後もエーザイにとって明るい話題を振りまくと考えられ、就職先としてはピッタリと言えます。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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