※本記事は、株式会社キーエンス の有価証券報告書(第56期、自 2024年3月21日 至 2025年3月20日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. キーエンスってどんな会社?
FA用センサ等の検出・計測制御機器で高いシェアを持つリーディングカンパニーです。工場を持たないファブレス体制をとり、企画・開発と営業に特化することで高付加価値商品を生み出しています。
■(1) 会社概要
1972年にリード電機として創業し、1974年に設立されました。1986年に現在のキーエンスへ社名を変更。1987年に大証二部へ上場後、1989年に東証二部、1990年には東証・大証一部へ上場しました。1985年の米国現地法人設立を皮切りに、欧州、アジアなどへ海外展開を積極的に進めています。
現在の連結従業員数は12,261名(単体3,205名)です。筆頭株主は株式会社ティ・ティで、第2・3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社ティ・ティ | 15.07% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.36% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長は中田 有氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中田 有 | 代表取締役社長 | 1997年同社入社。センサ事業部長、事業推進部長などを経て、2019年12月より現職。 |
| 滝崎 武光 | 取締役名誉会長 | 1972年リード電機創業。1974年代表取締役社長、2000年代表取締役会長を経て、2015年3月より現職。 |
| 山口 昭司 | 取締役開発推進部長 | 1994年同社入社。2016年開発推進部長就任。2017年6月より現職。 |
| 山本 寛明 | 取締役経営情報室長兼事業支援部長 | 1997年同社入社。2021年経営情報室長兼事業支援部長就任。2021年6月より現職。 |
| 中野 鉄也 | 取締役海外事業強化部長 | 2004年同社入社。制御システム事業部長などを経て、2023年12月より現職。 |
| 寺田 一彦 | 取締役ICT推進部長 | 1999年同社入社。2016年ICT推進部長就任。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、谷口誓一(みのり監査法人パートナー)、末永久美子(弁護士法人大江橋法律事務所カウンセル)、吉岡理文(大阪公立大学大学院情報学研究科教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電子応用機器の製造及び販売」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) 電子応用機器の製造及び販売
FA(ファクトリー・オートメーション)向けのセンサ、測定器、画像システム機器、レーザマーカや、研究開発向けのマイクロスコープ、物流・小売向けのコードリーダなどを開発・販売しています。自動車、半導体、電子機器、食品など、世界中の幅広い製造業の現場が顧客です。
同社が商品の企画・開発および販売を行い、製造は子会社のキーエンスエンジニアリング等の協力工場が行うファブレス体制をとっています。収益は顧客への商品販売から得ています。海外では、北米、欧州、アジアなどに展開する現地法人が販売を担当し、グローバルに事業を展開しています。
■(2) その他の事業
製造業や建設業向けの技術データベースサイトの運営などを行う広告・マーケティング事業を展開しています。製品情報の掲載や販促支援サービスを提供し、企業のマーケティング活動を支援しています。
広告掲載料やマーケティング支援サービスの利用料などが主な収益源です。運営は主に子会社のイプロスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間において、売上高は一貫して増加傾向にあります。特に直近では売上高が1兆円を突破しました。利益面でも、経常利益率は常に50%を超える極めて高い水準を維持しており、増収に伴い利益額も着実に伸長しています。圧倒的な高収益体質を継続しながら成長を続けています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,381億円 | 7,552億円 | 9,224億円 | 9,673億円 | 10,591億円 |
| 経常利益 | 2,866億円 | 4,312億円 | 5,128億円 | 5,193億円 | 5,610億円 |
| 利益率(%) | 53.3% | 57.1% | 55.6% | 53.7% | 53.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1,776億円 | 2,820億円 | 3,258億円 | 3,232億円 | 3,627億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は80%を超える高水準を維持しており、営業利益率も50%以上と非常に高い収益性を確保しています。コストコントロールと高付加価値商品の販売が奏功していることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9,673億円 | 10,591億円 |
| 売上総利益 | 8,025億円 | 8,877億円 |
| 売上総利益率(%) | 83.0% | 83.8% |
| 営業利益 | 4,950億円 | 5,498億円 |
| 営業利益率(%) | 51.2% | 51.9% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給料手当賞与が1530億円(構成比45%)、研究開発費が289億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは電子応用機器の製造・販売を中心に事業活動を展開する単一セグメントであるため、セグメント別の詳細な記載はありません。地域別の売上高では、国内、海外ともに増加しており、特に海外事業の拡大が全体の成長に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 連結(合計) | 9,673億円 | 10,591億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3,879億円 | 4,095億円 |
| 投資CF | -2,428億円 | -2,806億円 |
| 財務CF | -763億円 | -834億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は94.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「会社を永続させる」、「最小の資本と人で最大の付加価値を上げる」という考えを基本方針としています。社会における役割を的確に把握し、世の中の役に立つ付加価値の高い商品を生み出すことで社会に貢献し、持続的な成長と高い収益性の実現を常に目指しています。
■(2) 企業文化
人間性を尊重し、働きがいのある職場づくりを目指しています。役職名を使わず、年齢やキャリアに関係なく誰もが主体性を持って発言できるオープンな風土を構築しています。また、公平・公正であることを重視し、法令遵守はもちろん、差別や中傷の禁止、取引上の接待・贈答の禁止などのルールを徹底しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、業績が各国の経済動向や企業の設備投資の影響を受けるため、合理的な業績予想や目標を算出することは困難であるとしています。その代わり、世の中への貢献を測る客観的な経営指標として「売上高」、「売上総利益」、「営業利益」を注視し、これらの最大化を常に目指して事業活動に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な成長のため、「企画開発力の強化」と「海外事業の拡大」を重点施策としています。開発・営業部門が連携し、潜在ニーズを捉えた「世界初」「業界初」の商品開発を推進します。また、海外市場では大きな成長余地があるとの認識のもと、現地組織の強化や人材育成により、国内同様の直販体制を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
高い付加価値を生み出すのは人材であるとし、人間性を尊重する職場づくりに注力しています。育成面では、積極的に仕事を任せることやOJTを基本としつつ、次期リーダーを養成する「MDP」や、他部署の業務を経験する「CDP」などの制度を通じて、社員の成長と組織の活性化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 34.8歳 | 11.1年 | 20,391,138円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | -% |
| 男性育児休業取得率 | 72.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 41.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 42.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 111.3% |
※女性管理職比率については、有価証券報告書に記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向
日本、北米・中南米、欧州、アジアなどグローバルに事業を展開しているため、各地域の経済動向の影響を受けます。リスク分散に努めていますが、急激な経済変化が起きた場合、顧客企業の設備投資や研究開発投資の動向を通じて、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替変動
外貨建で取引される商品・サービスのコストや価格は為替相場の影響を受けます。取引拠点や通貨の分散によりリスク軽減を図っていますが、連結財務諸表作成時の円換算や、顧客である製造業の投資動向への波及効果などを通じて、為替変動が業績や財務状況に影響を与える可能性があります。
■(3) 海外事業の展開
海外での事業展開においては、各地域の政治・経済・社会情勢、法規制、地政学リスクなどの影響を受けます。採算性や各種リスクを慎重に検討して展開していますが、これらの要素に急激な変化が生じた場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。



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