※本記事は、株式会社キーエンス の有価証券報告書(2026年3月期、2025年3月21日 ~ 2026年3月20日、2026年6月15日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
キーエンスは電子応用機器の製造及び販売を主な事業としています。同社グループは、商品の開発から製造、販売までを一貫して手掛けており、国内外のグループ会社とともにグローバルに事業を展開しています。また、広告・マーケティング業も営んでいます。
単体従業員数は3,306名、連結従業員数は12,784名です。セグメントは電子応用機器の製造・販売の1つです。
主な国内グループ会社は、キーエンスエンジニアリング(電子応用機器の製造)、アピステ(電子応用機器の製造販売)、イプロス(広告マーケティング業)、キーエンスソフトウェア(ソフトウェア開発)などです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
同社グループは、製造業向け自動化機器の開発・製造・販売を手がける企業です。高い専門性と技術力を活かし、グローバルに事業を展開しています。このような事業特性が、給与水準や働き方にも影響を与えていると考えられます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、比較的若い年齢層の従業員が長く勤続する傾向が見られます。これは、若手からキャリアを築き、長期的に活躍できる環境が整っていることを示唆しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 21,783,259円 |
| 平均勤続年数 | 11.3年 |
| 平均年齢 | 35.0歳 |
| 単体従業員数 | 3,306人 |
| 連結従業員数 | 12,784人 |
| 単体のグループ内比率 | 25.9% |
同社グループは、退職給付制度として確定拠出型年金制度を採用しています。確定拠出型は、会社が拠出した資金を従業員が運用し、その運用実績によって将来の給付額が決まる制度です。
この制度は、同社および主要な国内子会社で前払退職金制度と併用されており、一部の在外子会社でも確定拠出型の制度が設けられています。
なお、退職一時金の有無や支給条件、従業員ごとの会社拠出額などは、有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、高い付加価値を生み出す源泉を人材と捉え、人間性を尊重する職場づくりに注力しています。主体性を持って仕事に取り組める環境を整えることを方針としています。
具体的には、人種・性別・国籍などによる差別や中傷をしない、高い倫理観を持つ企業活動を推進しています。また、役職名を使わないオープンな議論ができる職場環境を構築し、公平・公正な企業活動を重視しています。
人材育成においては、「積極的に仕事を任せる」ことを基本とし、OJTを育成の基礎としています。総合的な能力開発を促す研修も実施しており、次期リーダーを養成するMDP(Management Development Program)や、専門外の業務を経験するCDP(Career Development Program)といった制度を通じて、社員の成長と組織の活性化を図っています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。男性労働者の育児休業取得率は育児介護休業法に基づき、男女賃金差異は女性活躍推進法に基づき算出されています。女性管理職比率は開示されていません。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性労働者の育児休業取得率 | 84.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 43.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 43.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 92.0% |
人材育成・エンゲージメント
エンゲージメントサーベイの肯定的回答率は、当社単体の目標となります。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| エンゲージメントサーベイ肯定的回答率 | 70.0% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
キーエンスは、電子応用機器の製造と販売を主軸とする事業を展開している企業グループです。同社グループは、商品の開発から製造、そして国内外での販売までを一貫して手掛けています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、電子応用機器の製造・販売を中心に事業活動を展開する単一セグメントです。キーエンスソフトウェアがソフトウェア開発を、キーエンスエンジニアリングが製造を担っています。販売は、北米・中南米、欧州、アジアの各地域に展開する多数の子会社を通じてグローバルに行われています。
同社グループは、製造現場向け3Dプリンタやライン型シリンダセンサなどの新商品開発に注力し、企画開発力の強化を図っています。また、海外における人材育成を通じて営業体制の強化にも取り組んでいます。
収益は、主にこれらの電子応用機器の販売から得られています。地域別に見ると、海外での売上が国内を上回る傾向にあり、グローバル市場での事業展開が収益に大きく貢献しています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの業績は、過去5期にわたり売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも増加傾向で推移しています。直近の当連結会計年度においても、売上高と各利益項目は前連結会計年度に比べて増加となりました。この間、経常利益率は高い水準を維持しており、安定した収益力を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,552億円 | 9,224億円 | 9,673億円 | 1兆591億円 | 1兆1,693億円 |
| 経常利益 | 4,312億円 | 5,128億円 | 5,193億円 | 5,610億円 | 6,358億円 |
| 経常利益率 | 57.1% | 55.6% | 53.7% | 53.0% | 54.4% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 3,034億円 | 3,630億円 | 3,696億円 | 3,987億円 | 4,452億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 1,250.83 | 1,496.60 | 1,524.14 | 1,643.77 | 1,835.63 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は前期に比べて増加しており、同様に1人あたりの営業利益も増加しています。これは、同社グループ全体の生産性が向上している傾向を示しています。組織の効率化が進み、従業員一人ひとりの稼ぐ力が高まっている状況がうかがえます。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 86.4百万円 | 91.5百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 44.8百万円 | 46.6百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
財務の安定性から、同社グループの現在地を示します。本業で安定した資金を稼ぎ出し、投資活動も行いながら、手元に資金を残している状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの自己資本比率は94.6%と非常に高く、プライム市場の製造業平均(46.8%)を大きく上回っています。ROE(自己資本利益率)も13.5%と、プライム市場平均(9.4%)を上回る水準です。潤沢な手元資金も確保されており、事業環境の変化に対する耐性が強く、安定した事業運営の基盤が構築されていることがうかがえます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 3兆1,086億円 | 3兆4,715億円 |
| 自己資本比率 | 94.5% | 94.6% |
| ROE(自己資本利益率) | 13.5% | 13.5% |
| 現金及び預金 | 5,791億円 | 5,970億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの営業活動によるキャッシュフローは増加しており、本業で安定的に資金を生み出している状況です。投資活動によるキャッシュフローは減少していますが、これは有価証券の増加などによるものです。財務活動によるキャッシュフローも減少しており、配当金の支払いなどが行われています。
本業で安定的に資金を生み出し、将来への投資も継続しながら、手元に余剰資金を確保している状況は、事業の持続的な成長と雇用・給与の安定性につながる基盤を示しています。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 4,095億円 | 4,307億円 |
| 投資CF | △2,806億円 | △3,124億円 |
| 財務CF | △834億円 | △1,137億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 1,289億円 | 1,183億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは日本国内及び北米・中南米、欧州、アジアにもわたって事業展開しているため、国内経済及び海外経済の動向等の変動の影響を受ける傾向があります。また、外貨建で取引されている商品・サービス等のコスト及び価格は為替相場の影響を受ける傾向にあります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、事業の持続的成長のためには優秀な人材の確保と育成が不可欠であると認識しています。国内外における労働市場の変化や人材獲得競争の激化、人件費の上昇により、必要な人材を計画通りに確保・維持できない場合や、人材育成が事業の成長スピードに追いつかない場合には、同社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
キーエンスは、「会社を永続させる」という経営理念のもと、付加価値の創造と事業効率を追求する企業です。人間性を尊重し、誰もが主体的に議論できる公平・公正な職場環境を大切にしています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、経営方針として「会社を永続させる」、「最小の資本と人で最大の付加価値を上げる」という考え方を掲げています。全社員が一丸となり「付加価値の創造」と「事業効率」を追求することが基本方針です。社会における役割を的確に把握し、世の中の役に立つ付加価値の高い商品を生み出すことで社会に貢献し、持続的な成長と高い収益性の実現を常に目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、人間性を尊重する職場づくりに力を入れ、主体性を持って仕事に取り組める環境を整えることを方針としています。働きがいのある職場づくりを目指し、法令遵守はもちろん、人種・性別・国籍・信条・年齢・障がいの有無などによる差別や中傷をしない、高い倫理観を持って企業活動に取り組んでいます。
社内では役職名を使わず、役職・年齢・キャリア・性別に関係なく誰もが主体性を持って発言できる風土を構築しています。オフィス空間に間仕切りを設置しないなど、所属部署に捉われずオープンに議論できる環境を整え、自分が正しいと思うことを気兼ねなく主張できる風土を維持しています。
公平・公正であることを重視し、役員・社員の3親等以内の方の入社をお断りしているほか、取引上の接待や贈物を受けたり行ったりすることを禁止しています。役割や立場の違いによるメリットの享受も禁止しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、持続的な成長を続けるために「人材の育成」が不可欠であると認識しています。また、「企画開発力の強化」と「海外事業の拡大」も優先的に対処すべき課題としています。
企画開発力の強化では、グローバル直販体制を活かし、開発・営業部門が連携した企画開発力をさらに強化し、「世界初」「業界初」となる商品の持続的な創造を目指しています。既存事業の拡大に加え、新たな付加価値を創出していくことが課題の一つであり、M&Aを含めたあらゆる可能性を追求していく方針です。
海外事業の拡大では、国内と同様に直販体制の推進を図ることが重要であり、現地組織体制および人材の育成による販売力の強化、強固なグローバル連携体制の構築に取り組んでいます。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
キーエンスは監査役会設置会社であり、取締役会と監査役会で構成される企業統治体制を採用しています。取締役会には社外取締役が複数名含まれ、経営の意思決定と監督を行っています。また、指名報酬委員会を設置し、コーポレート・ガバナンスの充実を図っています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
キーエンスの株主構成を見ると、筆頭株主はティ・ティであり、その後に日本マスタートラスト信託銀行や日本カストディ銀行といった信託銀行が続きます。また、公益財団法人キーエンス財団や個人株主も上位に名を連ねています。多様な株主によって支えられている資本構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| ティ・ティ | 15.07% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.80% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.33% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は12名(男性10名・女性2名)で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は中野鉄也氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中野 鉄也 | 代表取締役社長 | 2004年4月同社入社、2020年3月制御システム事業部長、2025年12月代表取締役社長より現職。 |
| 山口 昭司 | 取締役 開発推進部長 | 1994年4月同社入社、2016年8月開発推進部長、2017年6月取締役開発推進部長より現職。 |
| 山本 寛明 | 取締役 経営情報室長 兼事業支援部長 | 1997年4月同社入社、2021年3月経営情報室長兼事業支援部長、2021年6月取締役経営情報室長兼事業支援部長より現職。 |
| 寺田 一彦 | 取締役 ICT推進部長 | 1999年4月同社入社、2016年6月ICT推進部長、2025年6月取締役ICT推進部長より現職。 |
| 中田 有 | 取締役 特別顧問 | 1997年4月同社入社、2018年6月センサ事業部長、2019年12月代表取締役社長、2025年12月取締役特別顧問より現職。 |
社外取締役は、谷口誓一氏(みのり監査法人パートナー)、末永久美子氏(弁護士法人大江橋法律事務所カウンセル)、吉岡理文氏(大阪公立大学大学院情報学研究科教授)、里見良子氏(里見公認会計士事務所代表)です。
同社は監査役会設置会社であり、取締役会と監査役会が企業統治を担っています。社外取締役が独立した客観的な視点から経営の監視・監督機能を果たしています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
キーエンスの役員報酬は、企業価値向上と経営責任の明確化、業績向上へのインセンティブを基本的な考え方としています。取締役(社外取締役を除く)の報酬は、前事業年度の従業員の年収を基準に係数を乗じて算出され、業績連動部分が報酬の大部分を占める仕組みです。一方、社外取締役の報酬は独立性を確保するため固定報酬のみであり、監査役の報酬も監査の中立性を重視し業績に連動しない形で決定されています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 7名 | 3.0億円 | 42.1百万円 |
| 社外役員 | 7名 | 39百万円 | 5.6百万円 |
なお、取締役の報酬等の総額には使用人兼務取締役の使用人分給与(賞与含む)は含まれていません。
個人別報酬が開示されている役員は、中田有氏(1.82億円)です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。
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