※本記事は、株式会社キーエンスの有価証券報告書(第57期、自 2025年3月21日 至 2026年3月20日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. キーエンスってどんな会社?
キーエンスは、付加価値の高いファクトリー・オートメーション向け電子応用機器を提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1972年にリード電機として創立され、1974年に会社設立されました。1986年に現在のキーエンスへ社名変更しています。1987年の大阪証券取引所市場第二部への上場を経て、1990年には東証および大証の一部(現在はプライム市場)へ上場しました。世界各地に多数の現地法人を設立しています。
現在の従業員数はグループ全体で12,784名、単体で3,306名です。筆頭株主はティ・ティで、第2位と第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ティ・ティ | 15.07% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.80% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.33% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は中野鉄也氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中野鉄也 | 代表取締役社長 | 2004年同社入社。制御システム事業部長、取締役海外事業強化部長等を経て、2025年より現職。 |
| 中田有 | 取締役特別顧問 | 1997年同社入社。センサ事業部長、代表取締役社長等を経て、2025年より現職。 |
| 山口昭司 | 取締役開発推進部長 | 1994年同社入社。開発推進部長を経て、2017年より現職。 |
| 山本寛明 | 取締役経営情報室長兼事業支援部長 | 1997年同社入社。経営情報室長兼事業支援部長を経て、2021年より現職。 |
| 寺田一彦 | 取締役ICT推進部長 | 1999年同社入社。ICT推進部長を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、谷口誓一(みのり監査法人パートナー)、末永久美子(弁護士法人大江橋法律事務所カウンセル)、吉岡理文(大阪公立大学大学院情報学研究科教授)、里見良子(里見公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電子応用機器の製造及び販売」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) 電子応用機器の製造及び販売
ファクトリー・オートメーション向けのセンサ、測定器、画像システム機器、レーザマーカに加え、研究開発向けのマイクロスコープなどを開発、製造、販売しています。多様な業種の製造現場に向けて、生産性向上や品質改善に貢献する製品を提供しています。
製品の販売代金などを収益源としています。キーエンスが商品の企画・開発および直販による営業活動を担い、キーエンスソフトウェアが商品のソフトウェア開発、キーエンスエンジニアリングが商品の製造を行っています。海外市場では各地域の現地法人が販売を担当しています。
■(2) その他の事業
BtoB領域における広告・マーケティング業を営んでおり、ものづくり企業などに向けたビジネスマッチングや情報提供プラットフォームを運営しています。
企業からの広告掲載料などを収益源としています。この事業の運営は主にイプロスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が右肩上がりで持続的に成長しており、利益率も常に50%を超える極めて高い水準を維持しています。当期も増収増益を達成しており、非常に優れた収益力を背景に安定した事業拡大を続けています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,552億円 | 9,224億円 | 9,673億円 | 10,591億円 | 11,693億円 |
| 経常利益 | 4,312億円 | 5,128億円 | 5,193億円 | 5,610億円 | 6,358億円 |
| 利益率(%) | 57.1% | 55.6% | 53.7% | 53.0% | 54.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2,820億円 | 3,258億円 | 3,232億円 | 3,627億円 | 4,018億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の継続的な増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。売上総利益率は80%以上、営業利益率は50%以上という驚異的な高水準を維持しており、付加価値の高さが収益力に直結しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10,591億円 | 11,693億円 |
| 売上総利益 | 8,877億円 | 9,707億円 |
| 売上総利益率(%) | 83.8% | 83.0% |
| 営業利益 | 5,498億円 | 5,958億円 |
| 営業利益率(%) | 51.9% | 51.0% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給料手当賞与が1,688億円(構成比45%)と最大であり、次いで研究開発費が328億円(同9%)を占めています。売上原価は1,986億円で、売上高に対する構成比は約17%にとどまっています。
■(3) セグメント収益
国内外ともに継続する設備投資需要を背景に、全地域で増収を記録しています。国内事業は堅調な推移を見せ、海外事業では北米およびアジア地域を中心に順調な成長を実現し、グループ全体の業績拡大を大きく牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 国内 | 3,728億円 | 3,901億円 |
| 海外 | 6,864億円 | 7,792億円 |
| 連結(合計) | 10,591億円 | 11,693億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で得た資金を活用し、手元資金で借入返済や投資を行う優良な健全型のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4,095億円 | 4,307億円 |
| 投資CF | -2,806億円 | -3,124億円 |
| 財務CF | -834億円 | -1,137億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.5%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も94.6%と市場平均を大幅に上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「会社を永続させる」「最小の資本と人で最大の付加価値を上げる」という考えのもと、全社員が一丸となり「付加価値の創造」と「事業効率」を追求しています。世の中の役に立つ付加価値の高い商品を生み出すことで社会に貢献し、持続的な成長と高い収益性の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「人間性を尊重する職場づくり」を方針とし、主体的に仕事へ取り組める環境を整えています。役職名を使わず年齢や性別に関係なくオープンに議論できる風土のほか、取引上での接待・贈答の禁止や、親族の入社を断るなど、企業活動を適正に行うための「公平・公正」なルールを徹底しています。
■(3) 経営計画・目標
同社はグローバルかつ幅広い業種を対象としており、経済動向や設備投資などの変動要素から合理的な予想が困難であるため、具体的な数値目標は設定していません。その代わり、世の中への貢献を測る客観的な経営指標として「売上高」「売上総利益」「営業利益」を注視し、常にこれらの最大化を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的成長の実現に向け、「企画開発力の強化」と「海外事業の拡大」を重点施策に掲げています。グローバル直販体制を活かして開発と営業が連携し、市場の潜在ニーズを捉えた「世界初」「業界初」となる商品を創造します。また、成長余地の大きい海外市場において、人材育成や現地組織体制の強化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人間性を尊重し働きがいのある職場作りを目指しながら、企業の永続的な付加価値向上に貢献する社員の育成に取り組んでいます。育成方針として、積極的に「仕事を任せる」ことやOJTを基礎としつつ、次期リーダーを養成する研修制度や専門外の業務を経験する制度を通じて総合的な能力開発を促進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 35.0歳 | 11.3年 | 21,783,259円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 84.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 43.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 43.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 92.0% |
※女性管理職比率については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向および為替変動リスク
同社グループは世界各国で事業を展開しており、国内および海外の経済動向の変化が顧客企業の設備投資や研究開発投資に影響を与え、また為替相場の変動が円換算時の収益等に波及して業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 情報セキュリティリスク
事業に関連する機密情報や個人情報を保有しており、サイバー攻撃等による情報の破壊、改ざん、流出、または社内システムの停止が引き起こされた場合、適切な対応を行うための多額の費用負担が生じる可能性があります。
■(3) 海外事業の展開に伴うリスク
北米・中南米、欧州、アジアなど幅広い地域で事業活動を行っているため、対象地域における政治・経済・社会情勢の変化や、輸出入・環境関連の諸規制、地政学リスクの急激な変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。



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