三菱商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三菱商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合商社。地球環境エネルギー、マテリアルソリューション、金属資源、社会インフラ、モビリティ、食品産業、S.L.C.、電力ソリューションの8グループ体制で事業を展開。当期の連結業績は、商品市況の下落や取引数量の減少等により、前期比で減収減益となりました。



※本記事は、三菱商事株式会社 の有価証券報告書(第2024期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 三菱商事ってどんな会社?

幅広い産業分野で貿易や事業投資を行う総合商社。世界約90の国・地域に拠点を持ち、連結事業会社約1,200社と共に事業を展開しています。

(1) 会社概要

1950年に光和実業として設立され、1952年に商号を変更。1954年に不二商事、東京貿易、東西交易を吸収合併し、現在の体制で新発足すると同時に東証へ上場しました。1968年に商品本部制へ移行し、ブルネイLNG事業への投資や豪州での資源開発会社設立など海外展開を加速。2024年には監査等委員会設置会社へ移行しました。

連結従業員数は62,062名、単体では4,477名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で、第2位は海外機関投資家等の資産管理を行うBNYM AS AGT/CLTS 10 PERCENT、第3位は資産管理業務を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 15.50%
BNYM AS AGT/CLTS 10 PERCENT 10.29%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.32%

(2) 経営陣

同社の役員は男性11名、女性4名の計15名で構成され、女性役員比率は26.7%です。代表者は中西 勝也(社長)、社外取締役比率は46.7%です。

氏名 役職 主な経歴
中西 勝也 代表取締役社長 1985年入社。新エネルギー・電力事業本部長、電力ソリューショングループCEOなどを歴任し、2022年4月より現職。
垣内 威彦 取締役会長 1979年入社。農水産本部長、生活産業グループCEO、社長などを歴任し、2022年4月より現職。
塚本 光太郎 代表取締役副社長執行役員社長補佐、チーフ・コンプライアンス・オフィサー 1985年入社。金属資源本部長、総合素材グループCEOなどを歴任し、2024年4月より現職。
柏木 豊 代表取締役常務執行役員コーポレート担当役員(人事、地域、IT) 1986年入社。環境事業本部長、コーポレート担当役員(国内開発)、関西支社長などを歴任し、2024年4月より現職。
野内 雄三 代表取締役常務執行役員コーポレート担当役員(CFO) 1987年入社。主計部長などを経て、2022年4月より現職。
野島 嘉之 代表取締役常務執行役員コーポレート担当役員(総務、法務)緊急危機対策本部長 1988年入社。法務部長、総務部長などを経て、2024年4月より現職。
鴨脚 光眞 取締役常勤監査等委員 1982年入社。リスクマネジメント部長、関西支社長、複合都市開発グループCEO、常勤監査役などを経て、2024年6月より現職。
村越 晃 取締役常勤監査等委員 1982年入社。資材本部長、コーポレート担当役員(広報、人事)、常勤監査役などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、宮永 俊一(三菱重工業取締役会長)、秋山 咲恵(サキコーポレーションファウンダー)、鷺谷 万里(元セールスフォース・ジャパン常務執行役員)、小木曾 麻里(SDG インパクトジャパン代表取締役社長)、立岡 恒良(元経済産業事務次官)、佐藤 りえ子(石井法律事務所パートナー)、中尾 健(パートナーズ・ホールディングス代表取締役社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「地球環境エネルギー」「マテリアルソリューション」「金属資源」「社会インフラ」「モビリティ」「食品産業」「S.L.C.」「電力ソリューション」および「その他」事業を展開しています。

地球環境エネルギー

天然ガス・LNG(液化天然ガス)の開発・生産・販売や、原油・石油製品・LPG等のトレーディング、次世代エネルギー事業を行っています。主な顧客は電力・ガス会社や産業需要家です。

販売収益や配当金等が主な収益源です。運営は同社および三菱商事エネルギー株式会社、アストモスエネルギー株式会社などの関係会社が行っています。海外ではBrunei LNGやCameron LNG Holdingsなどが事業を展開しています。

マテリアルソリューション

自動車・モビリティ、建設・インフラ、エレクトロニクス等の産業向けに、炭素、鉄鋼製品、機能素材、石油化学製品等の素材を供給しています。

製品の販売収益や事業投資利益が収益源です。運営は同社および株式会社メタルワン、三菱商事プラスチック株式会社、三菱商事ケミカル株式会社、三菱商事建材株式会社などが行っています。

金属資源

原料炭、銅、鉄鉱石、アルミニウム等の金属資源への投資・開発・トレーディングを行っています。鉄鋼メーカーや電力会社、自動車メーカー等が主な顧客です。

資源権益からの持分利益やトレーディング収益が主な収益源です。運営は同社および豪州のMitsubishi Development Pty Ltd、三菱商事RtMジャパン株式会社などが行っています。

社会インフラ

都市開発、不動産、インフラ、産業プラント、船舶・宇宙航空機等の分野で、サービスの提供や事業開発を行っています。

不動産販売・賃貸収入、プラント建設請負等の収益を得ています。運営は同社および三菱商事都市開発株式会社、千代田化工建設株式会社、三菱商事マシナリ株式会社などが行っています。

モビリティ

アセアンを中心とした自動車の製造・販売、販売金融、アフターセールス等のバリューチェーン事業を展開しています。

車両販売、金融収益、サービス料などが収益源です。運営は同社および三菱自動車工業株式会社、いすゞ自動車販売株式会社、Tri Petch Isuzu Sales Company Limitedなどが行っています。

食品産業

食料原料の生産・調達から製品製造に至るまで、食に関わる幅広い領域で事業を展開しています。穀物、油脂、水産物、畜産物などを取り扱っています。

商品の販売収益や事業投資利益が収益源です。運営は同社および三菱食品株式会社、日本農産工業株式会社、Cermaq Group AS、Olam Group Limitedなどが行っています。

S.L.C. (Smart-Life Creation)

食品流通、物流、ヘルスケア、消費財などの分野で、消費者向けビジネスやデジタル・物流等の機能提供を行っています。

商品の販売収益、物流・サービス手数料などが収益源です。運営は同社および三菱食品株式会社、ローソン(持分法適用会社)、三菱HCキャピタル株式会社などが行っています。

電力ソリューション

発電事業(再生可能エネルギー含む)、電力トレーディング、電力小売、送電事業、水素エネルギー開発などを行っています。

売電収入、トレーディング収益、サービス料などが収益源です。運営は同社およびオランダのN.V. Eneco、三菱商事エナジーソリューションズ株式会社、Diamond Generating Corporationなどが行っています。

その他

コーポレートスタッフ部門によるサービス提供や、各セグメントに帰属しない金融・投資事業などを行っています。

グループ会社へのサービス提供対価や金融収益などが収益源です。運営は同社および三菱商事フィナンシャルサービス株式会社、Mitsubishi Corporation Finance PLCなどが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

2023年3月期に過去最高益を記録した後、資源価格の落ち着きなどにより収益・利益ともに減少傾向にありますが、依然として高水準の利益を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 128,845億円 172,648億円 215,720億円 195,676億円 186,176億円
税引前利益 2,535億円 12,933億円 17,040億円 13,626億円 13,934億円
利益率(%) 1.3% 5.4% 5.5% 4.9% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,726億円 9,375億円 11,807億円 9,640億円 9,507億円

(2) 損益計算書

収益は前期比で減少しましたが、有価証券損益の増加やその他の損益の改善により、税引前利益は微増となりました。売上総利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 195,676億円 186,176億円
売上総利益 23,597億円 18,364億円
売上総利益率(%) 12.1% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が5,847億円(構成比40%)、設備費が2,408億円(同16%)を占めています。売上原価は商品・製品の調達コスト等が大半を占めています。

(3) セグメント収益

金属資源や電力ソリューションなどの利益が減少した一方、食品産業やS.L.C.セグメントが増益となり、全体を支えました。特にローソンの持分法適用会社化に伴う再評価益がS.L.C.の利益を押し上げました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
地球環境エネルギー 30,506億円 28,910億円 2,388億円 1,986億円 6.9%
マテリアルソリューション 40,090億円 42,318億円 739億円 683億円 1.6%
金属資源 32,231億円 32,463億円 2,955億円 2,278億円 7.0%
社会インフラ 8,978億円 9,325億円 509億円 398億円 4.3%
モビリティ 7,512億円 9,231億円 1,414億円 1,124億円 12.2%
食品産業 22,435億円 23,846億円 -253億円 924億円 3.9%
S.L.C. 30,686億円 35,337億円 1,027億円 1,850億円 5.2%
電力ソリューション 1,367億円 1,419億円 979億円 -156億円 -11.0%
その他 63億円 52億円 -22億円 512億円 987.8%
調整・消去 -億円 -億円 -96億円 -92億円 -%
連結(合計) 186,113億円 195,624億円 9,640億円 9,507億円 4.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

本業で得たキャッシュを投資と借入返済・株主還元に充てており、健全な財務状態を維持しています(健全型)。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 13,474億円 16,583億円
投資CF -2,058億円 -2,739億円
財務CF -10,862億円 -15,307億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

「所期奉公」「処事光明」「立業貿易」からなる「三綱領」を企業理念として掲げています。これに基づき、公明正大を旨とする企業活動を通じて継続的に企業価値の向上を図り、物心共に豊かな社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化

「三綱領」を全役職員の行動指針として重視しています。事業を通じた社会への貢献、フェアプレイ精神の遵守、グローバルな視点での事業展開を企業のDNAとして共有し、法令遵守にとどまらず高い倫理観を持って行動することを求めています。

(3) 経営計画・目標

2025年4月に策定した「経営戦略2027」において、多様性に裏打ちされた「総合力」をエンジンとして未来を創ることを掲げています。定量目標として、成長性と効率性の同時実現を目指しています。
* 営業収益CF:平均成長率10%以上
* ROE:2027年度に12%以上

(4) 成長戦略と重点施策

循環型成長モデルを「Enhance(磨く)」「Reshape(変革する)」「Create(創る)」に再定義し、総合力とこれら施策の掛け合わせにより中長期的な成長を目指します。EX(エネルギートランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、産業構造の変化に対応した新たな価値創出に取り組みます。また、2027年度までの3年間で約3兆円以上の拡張・新規投資を計画しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「MC HR Vision "DEAR"」(Diversity, Energize, Accelerate, Reward)を掲げ、多彩・多才な人材が活き活きと活躍し、成長できる環境づくりを進めています。採用手法の多様化、DE&Iの推進、AI・デジタルスキルの強化、挑戦を促す評価・報酬制度の導入などを通じ、人的資本の価値最大化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.4歳 17.8年 20,333,662円


※平均年間給与は超過勤務手当及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.3%
男性育児休業取得率 163.9%
男女賃金差異(全労働者) 62.9%
男女賃金差異(正規雇用) 64.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 60.1%


※男性育児休業取得率は、育児休業等および育児目的休暇の取得者の合計を配偶者出産者数で除した割合であり、年度をまたぐ取得等により100%を超える場合があります。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用女性率(23.4%)、新卒採用女性率(36.0%)、有給休暇取得率(68.4%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 世界マクロ経済環境の変化によるリスク

グローバルに事業を展開しているため、世界経済や各国の景気動向の影響を強く受けます。地政学リスクの高まりや米国の関税政策、中国経済の減速などが、商品価格や取扱量に変動をもたらし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 商品市況リスク

エネルギー資源や金属資源などの商品価格変動リスクを負っています。特に原油、天然ガス、原料炭、銅などの価格変動は業績に大きな影響を与えます。長期的な価格低迷は、保有資産の減損損失につながる可能性があります。

(3) 為替リスク

輸出入や外国間取引、海外事業投資において、為替レートの変動リスクにさらされています。円高の進行は、外貨建て収益の円換算額の減少や、在外営業活動体の換算差額を通じた自己資本の減少をもたらす可能性があります。

(4) 事業投資リスク

事業投資先の経営状況悪化や期待した収益が得られないリスクがあります。事業環境の変化により投資回収が困難となった場合、減損損失の計上や撤退による追加損失が発生し、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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