第一三共は、2005年に第一製薬と三共が経営統合して発足され、現在では医療用医薬品事業を行う製薬会社です。
同社は今、がん治療薬の領域で優位に立とうとしています。
2018年4月5日に、創薬支援ベンチャー企業であるダーウィンヘルス(所在地:米国ニューヨーク)とともに、がん治療薬の標的となる物質を探し出す共同研究を始めると発表しました。
ダーウィンヘルスは、膨大ながん細胞情報の解析結果を活用し、遺伝子やたんぱく質などのバイオ情報をコンピューターで効率的に解析する技術を持っています。第一三共はこうした技術を駆使し、発見した標的に合う医薬品を開発することで効果的ながん治療につながるとしています。
また第一三共は翌年3月27日にも、名古屋市立大学や中部大学、三菱UFJキャピタルと共同でがん温熱療法に関する研究を始めると発表しており、このような新たな取り組みも活発です。
第一三共の平均年収は1094.9万円
第一三共の有価証券報告書によると、平均年収は1094.9万円と記載されています。キャリコネに投稿された給与明細を参考に第一三共の年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で650〜700万円、30歳代で910〜960万円、40歳代で1130〜1180万円となりました。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ2.21倍の額です。
■第一三共の平均年収推移
決算月 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数 |
---|---|---|---|---|
2022年3月期 | 1094.9万円 | 44.8歳 | 20年 | 5725人 |
2021年3月期 | 1116.8万円 | 44.4歳 | 19.6年 | 573人 |
2020年3月期 | 1126.7万円 | 42.9歳 | 18.6年 | 5600人 |
2019年3月期 | 1098万円 | 43歳 | 18.9年 | 5515人 |
2018年3月期 | 1103.9万円 | 42.5歳 | 18.5年 | 5357人 |
出典:第一三共・有価証券報告書
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
第一三共の平均年収は前年を下回り1094.9万円でした。
過去5年間では最低の額になりました。
第一三共の年代別平均年収と中央値
■第一三共の年収中央値は30代で928.1万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
年代 | 平均年収 | 平均月収 | 平均ボーナス | 年収中央値 |
---|---|---|---|---|
20代 | 671.4万円 | 43.8万円 | 116万円 | 604.26万円 |
30代 | 928.1万円 | 60万円 | 160.4万円 | 835.29万円 |
40代 | 1153.4万円 | 74.3万円 | 199.4万円 | 1038.06万円 |
50代 | 1363.8万円 | 87.6万円 | 235.9万円 | 1227.42万円 |
※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出
第一三共と競合他社の平均年収を比較
第一三共の競合や同業界である武田薬品工業、アステラス製薬、エーザイ、中外製薬の5社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、第一三共が1094.9万円、武田薬品工業が1105.1万円、アステラス製薬が1064.4万円、エーザイが920.1万円、中外製薬が1155.8万円です。
この5社の中で最高額は中外製薬の1155.8万円で、最低額がエーザイの920.1万円。その差はおよそ236万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では第一三共は3番目に位置します。
社名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 売上高 |
---|---|---|---|---|---|
中外製薬 | 1155.8万円 | 43.3歳 | 16.8年 | 5044人 | 9933.5億円 |
武田薬品工業 | 1105.1万円 | 42.4歳 | 14.2年 | 5149人 | 7643.01億円 |
第一三共 | 1094.9万円 | 44.8歳 | 20年 | 5725人 | 7540.07億円 |
アステラス製薬 | 1064.4万円 | 42.3歳 | 16.2年 | 3943人 | 5425.68億円 |
エーザイ | 920.1万円 | 43歳 | 17.4年 | 3034人 | 4171.34億円 |
第一三共の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
第一三共の年収が高い理由
■製薬会社に共通するグローバル収益性の高さ
平均年収を見てわかるように、製薬業界は全体的に年収が高いことで知られています。
優秀な人材を確保するためには、待遇面で同業他社に劣るわけにはいかないという内情もあります。もちろん、社員の年収を高くするには、会社として相応の収益がなければなりません。
業界の傾向として、製薬会社はグローバル規模で活動しているために、売上高が大きいと言えます。また新薬を独自開発すると、特許による独占的収益を確保できることになります。新薬の研究・開発には膨大な資金が必要ですが、薬の製造自体は原材料費が安価なため、販売管理費や流通経費を繰り入れても高い利益率を出すことが可能なのです。
第一三共の2018年度売上高は9297億1700万円、営業利益は837億500万円(利益率9%)で、日本国内で見ると武田薬品工業、アステラス製薬、大塚ホールディングに次いで第4位に位置づけています。
このうち、医療用医薬品に限ってみると、武田薬品工業を抑えて国内第1位で、売上高は5066億円です。プロトンポンプ阻害薬「ネキシウム」や抗凝固薬「リクシアナ」などの新製品が好調であることが影響しています。
またMR(営業)職の給料が高いことは、業界を通じて同じ状況です。
キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由が確認できます。
第一三共社員の給与明細(キャリコネ)
30代では大きな伸び!
20代・研究開発(非管理職)の 給与明細
30代・研究開発(非管理職)の 給与明細
賞与の有無で、差が出る!
20代・MR・賞与あり(非管理職)の 給与明細
20代・MR・賞与なし(非管理職)の 給与明細
年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。
第一三共で働く上での懸念点・課題
■夜討ち朝駆けのMR プレッシャーも重くのしかかる
業界を通じて言えることは、MR(医療情報担当者)という職業は規則的な勤務体系ではないことです。
顧客である病院の医師に合わせて仕事をする必要があるため、時には早朝や深夜に対応しなければならない場合があり、また講演会を休日に組むこともあるので、たとえ世間が休みであっても休日出勤が避けられないことも多々あります。
また競合他社を抑えて自社の製品を病院に採用してもらえるかどうかは、医師への自分の説明や営業トークで決まるため、仕事の成果がはっきりと現れてしまいます。
MRは高い報酬を得る分、常に大きなプレッシャーがあるようです。
さらに近い将来、国内の医療用医薬品については、薬価算定基準が費用対効果によって決められてしまうかもしれません。原価に上乗せする販管費や営業利益などの水準が一般企業より高く、製薬メーカーを優遇する価格設定になっていることを厚労省が問題視しているためです。
このことによって、今後は製薬メーカーの営業利益率が下がる恐れも出て来ています。
結局第一三共は就職・転職先として選んでもいいのか
ここまで第一三共を見てきました。結局「就職・転職先として選んでもいいのか」なんですが、
結論から言うと「選ぶべき」です。
冒頭で示したニュースのとおり、第一三共は、がん治療の領域で存在感を増していくことは確実です。
製薬企業各社の研究開発費を見てみると、第一三共はアステラス製薬やエーザイなどを抑えて第1位で、資金が十分に投入されていることもあり、研究者にとってはよい環境で仕事ができるはずです。
このような恵まれた職場環境によって新薬の開発に加速がつき、後の展望として、第一三共は同業他社に先んじて新しい医薬品をリリースすることで、市場を席捲できる可能性が高いと言えます。
就職・転職先として非常に魅力的だと言っていいでしょう。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」