【年収研究シリーズ】オリンパスの年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
オリンパスというと、多くの方は何を思い浮かべるでしょうか。
一般消費者にはカメラのイメージが強くあるかもしれませんが、実はオリンパスは1950年に世界で初めて胃カメラの試作機を開発した企業でもあるのです。
オリンパスの前身である高千穂製作所は、輸入品に対抗できる顕微鏡を国産するために、1919年に東京で山下長(たけし)氏によって発足されました。戦後は生産工場再建と本社の建設、さらには増資を経て、世界のオリンパスへと発展を遂げています。またオリンパスが開発する消化器内視鏡製品は、消化器内視鏡の世界シェアにおいて7割という圧倒的な強さも維持しているのです。
さらに近年では、内視鏡製品の技術を活用して工業用にも進出しています。産業分野の非破壊検査機器を用いれば、構造物を破壊することなく、有害な傷を発見し建物の安全を守ることができるのです。これまで培った強みを活かして、新しい分野への躍進は続いています。
またオリンパスは年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
オリンパスの平均年収は922.4万円
オリンパスの有価証券報告書によると、平均年収は922.4万円と記載されています。キャリコネに投稿された給与明細を参考にオリンパスの年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で550〜600万円、30歳代で760〜810万円、40歳代で950〜1000万円となりました。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ1.87倍の額です。
■オリンパスの平均年収推移
オリンパス・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
オリンパスの平均年収は前年を上回り922.4万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
オリンパスの年代別平均年収と中央値
■オリンパスの年収中央値は30代で782.1万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
オリンパスと競合他社の平均年収を比較
オリンパスの競合や同業界であるリコー、キヤノン、ニコン、コニカミノルタの5社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、オリンパスが922.4万円、リコーが804万円、キヤノンが759.7万円、ニコンが811.8万円、コニカミノルタが747.7万円です。
この5社の中で最高額はオリンパスの922.4万円で、最低額がコニカミノルタの747.7万円。その差はおよそ175万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではオリンパスは1番目に位置します。
オリンパスの競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
オリンパスの年収が高い理由
■主力の医療事業の利益率は20%
オリンパスの年収が高い理由の1つとして、高利益の主力事業が好調なことが挙げられます。2018年3月期の連結決算では、純利益が前期比33%増の570億円を計上しています。さらに、売上高の約8割も占める内視鏡を中心にした医療事業の利益率は、約20%で高水準です。この高い利益率が年収によい影響を与えているといえそうです。
また症例ごとに消費・購入される「ディスポーザブル・デバイス」のビジネスモデルによって、収入が安定していることも影響しています。オリンパスでは、内視鏡の使用1回に対して課金する「症例単価払い」の形態を採用しています。症例数にあわせて使用料金を払ってもらうため、従来のリース形態のデメリットであった収益が発生しない期間がなくなり、安定した収入を期待できるのです。
今後ますます加速する高齢化と、それに比例して増加する症例数を見越した事業戦略により、今後もオリンパスのビジネスは順調であるといえます。
オリンパスの給与のしくみ
■賞与の大きさが年収額を押し上げている
オリンパスでは、職務で分かれるステージにより給与が異なります。ステージは、スタッフ・プロフェッショナル・エグゼクティブの3つに分かれており、30代あたりで昇格試験を合格するとプロフェッショナルになります。3段階中、2段階目のプロフェッショナルになれば、年収も600万円を超えてくるようです。
また職種による違いもあります。クリエイティブな要素が高い技術開発部門などの職種は、基本裁量労働制が採用されていることから、残業代がつかない分は賞与として加えられます。全社的に年収に対する賞与が占める割合が高い傾向にあるようです。成果を賞与に反映させる仕組みではありますが、全社全体の業績が賞与に及ぼす影響は、部門毎の目標達成度以上に大きいといえるでしょう。
オリンパス社員の給与明細(キャリコネ)
20代と30代で違いは?
20代・電気/電子回路設計(非管理職)の
給与明細
30代・電気/電子回路設計(非管理職)の
給与明細
みなし残業制度の有無で大きな違いが?
30代・研究開発・みなし残業制度あり(非管理職)の
給与明細
30代・研究開発・みなし残業制度なし(非管理職)の
給与明細
年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。
オリンパスで働く上での課題・懸念点
■新製品開発を急ぐ
デジタルカメラの市場が縮小傾向にあることは懸念点の一つといえます。国内のデジタルカメラ出荷台数は、最盛期の1/5に縮小しており、とくにコンパクトデジタルカメラは最盛期の1/10まで減少しています。コンパクトカメラ業界では、2018年5月に「EXLIM」シリーズのカシオ計算機がこの市場からの撤退を決断しました。そのような中、オリンパスが国内シェア25%をもつミラーレスカメラの推移も横ばいにあり、今後に一抹の懸念があります。
また、先進国でのビジネス拡大余地が小さいことも気にかかります。北米や日本などの先進国では、すでにオリンパスの製品が普及しているため、これらの国々では新製品を発売するまで大幅な増収が見込めみにくい構造になっていることから、今後のビジネスの方向性が大きく影響するといえるでしょう。
オリンパスには年収以外にメリットはある?
ここまでオリンパスの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
デジタルカメラの技術は、カメラだけに活用されるわけではなく医療にも応用されています。デジタル映像技術により、内視鏡はファイバースコープからビデオスコープへと進化しているのです。また中国や東南アジアの新興国では、医療インフラの整備が急ピッチで進んでおり、計画通りにいけば事業全体の新興国売上比率が2019年3月期には20%台に達する見通しです。
またオリンパスは、社員のための制度も次々と打ち出しています。有給休暇を5日連続で自由に取得可能としたほか、2021年までに全社禁煙を目指すなどしています。さらには国内製造拠点では初となる従業員向け託児所を開設しました。
変化の激しい現代でも医療分野は強く、決して欠かせない医療機器分野の国内1位のシェアを獲得しながらも躍進は続きます。素晴らしいのは、完全にゼロから始めた分野ではなく、カメラ事業の技術を随所に活かしている点で、メーカーとして理想の生き残り方の一例を見ることができます。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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