【年収研究シリーズ】NTTドコモの年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
政府による携帯電話業界への言及の数々が日々のニュースで話題を集めています。最近では、菅官房長官による「携帯サービス市場における3社寡占」に対する言及が有名ではないでしょうか。今や国民のライフラインの一つとなった携帯電話において、NTTドコモとKDDI、ソフトバンクの3社で9割のシェアという寡占状態をつくり、競争がないことへの苦言がその内容でした。そんな寡占市場の中でもトップシェアを守ってきたのが、今回取り上げるNTTドコモです。
NTTドコモは、2018年3月の携帯電話契約数において実に全体の45.3%を占め、2位以下を大きく引き離し、国内マーケットシェア1位を獲得しました。この強固な顧客基盤と世界トップクラスの技術力、圧倒的な収益性を上げている財務基盤、そして全国2350店舗を誇るドコモショップでの顧客接点という独自の強みを存分に発揮しながら、今なお成長を続けています。
またNTTドコモは年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
NTTドコモの年収はどれくらい高いのか?
それでは、はじめにNTTドコモの平均年収について見ていきます。NTTドコモの平均年収は、2020年3月期の有価証券報告書によると、870.4万円です。キャリコネに寄せられた給与明細から算出したNTTドコモ年代別年収レンジは、20歳代で500〜550万円、30歳代で770〜820万円、40歳代で990〜1040万円となっています。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は503.5万円(国税庁・国税庁・平成30年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ1.73倍の額です。
NTTドコモの平均年収の推移
続いて、過去5年間における年収の推移を見てみましょう。
下は平均年収と平均年齢の推移を表したものです。
NTTドコモ5年間の平均年収・平均年齢の推移
NTTドコモの平均年収は毎年上がり続けています。平均年齢がほぼ一定なので社員の構成が大きく変わっていることもなさそうなので、業績に連動して順調に給与上がっていると考えられます。
NTTドコモの年代別平均年収と中央値
■NTTドコモの年収中央値は30代で601.1万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
NTTドコモの年収実態
NTTドコモと競合他社の平均年収を比較
■移動体通信の王者の盤石な経営状態
NTTドコモの競合や同業界であるKDDI、ソフトバンクの3社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、KDDIが930万円、ソフトバンクが782万円です。
この3社の中で最高額はKDDIの930万円で、最低額がソフトバンクの782万円。その差はおよそ148万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではNTTドコモは2番目に位置します。
NTTドコモの平均年収が高い理由は、14.2%というROE(自己資本利益率)から見える優良企業たる経営スタイルが影響しているといえます。一般的にROEが10%を超えると優良企業とされる中で、NTTドコモがいかに優良な経営状態であるかがわかるでしょう。
2018年3月期におけるNTTドコモの営業収益・営業利益ともに8割は通信事業(携帯電話サービス、光ブロードバンドサービスなど)が占め、さらに全体収益の6割はモバイル通信サービス収入が占めています。国内マーケットシェアNo.1を誇る携帯電話契約数や、契約後の解約率の低さもトップであることが、安定した収入の確保につながっているのです。
さらに全体の15%を占める端末機器販売や、全体の18%を占めるdポイントの会員基盤を活用したコンテンツや決算事業も収益を支えています。なお、このdポイントの会員数は現在6560万人を有し、Tポイントの会員数6700万人にも比肩し、ポンタや楽天とあわせて「4強」とまで言われる優良な顧客基盤でもあります。
情報・通信業業界の給与明細(キャリコネ)
日本の平均年収を大きく上回る収入が
NTTドコモ20代・法人営業(非管理職)の
給与明細
KDDI20代・法人営業(非管理職)の
給与明細
ソフトバンク20代・法人営業(非管理職)の
給与明細
NTTドコモ社内で年収が高い職種・役職は?
■課長で1000万円越え
NTTドコモの役職別に平均年収を見てみると、残業代を除くと係長級で800万円、課長級で1000万円程度となっているようです。一般社員は、A~Dまでの加点評価による閾値に到達することで昇格の可能性が発生する仕組みになっています。さらに一般社員から課長になるためには所属する部門と人事部門の選考をパスしなければなりません。
ちなみに、本社課長で年収1200万円規模の社員もいるようですが、NTTドコモの課長職には「管理職の課長」と「非管理職の課長」の2種類が存在し、この役職名だけではわからない差が年収差につながっていることにも注意が必要です。
NTTドコモ社員の給与明細(キャリコネ)
20代と30代で年収に違いが!
20代・法人営業(非管理職)の
給与明細
30代・法人営業(非管理職)の
給与明細
同年代・同職種でも給与明細は全く別物!
30代・プロジェクトリーダー(非管理職) の
給与明細
30代・プロジェクトリーダー(非管理職) の
給与明細
年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。
NTTで働く上での課題・懸念点
■新規参入により勢力図は変わるか
懸念点はやはり、政府による言及の果てに生じた携帯電話料金の値下げでしょう。この政府からの要請、および従来に比べて設備投資負担が軽減してきたことを背景に、NTTドコモは2~4割の値下げを発表しました。これにより利用者全体にとって年間4000億円分の還元、いいかえればNTTドコモにとっては4000億円規模の減収が見込まれます。
また、2019年10月より楽天が「第4のキャリア」として業界に参入することで、3社寡占状態が本格的に崩れることも現在の通信事業主力のNTTドコモにとっては懸念材料といえるでしょう。楽天は大手3社よりも低料金を提示して利用者獲得を目指すことが考えられます。さらに、楽天が格安スマホ業者に低料金での通信ネットワークへのアクセスを提供することも考えられるため、顧客流出などの影響にも留意しなければなりません。
NTTドコモには年収以外にメリットはある?
ここまでNTTドコモの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
主な収益源であった携帯電話料金のあり方が変化する中で、NTTドコモは収益構造の改革に取り組む構えです。たとえば対企業を意識した事業転換では、クレジットカード「dカード」の利用履歴から個人の信用能力を評価するフィンテック(ITを駆使した金融サービス)事業への参入や、NTTドコモ自慢の安定した通信ネットワークを活用したビジネスプラットフォームの提供事業などが話題を集めているのです。
また対個人については、これまでのような回線契約をベースとした顧客基盤から「会員ベース」の基盤へとシフトしようとしています。つまり、他社回線の契約者も今後はNTTドコモのOne to Oneマーケティングのターゲットとなりうることで、より幅広い顧客層を事業の対象とすることが可能になると考えられます。
出典・参考
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2019年企業活動基本調査速報-2018年度実績-」
国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2020年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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