2026年03月25日
日本航空(JAL)の平均年収は949.4万円(最新有価証券報告書より)で、直近では大きく上昇しています。コロナ禍からの業績回復がボーナス・給与水準に反映された形です。単体従業員14,431名・連結38,433名を擁する大手航空会社の年収実態を、公式データと口コミから解説します。
有価証券報告書によると、日本航空(JAL)の平均年間給与は、2021年度の678.4万円から、2025年度には949.4万円へと5年間で約40%上昇しています。
これは、コロナ禍の業績悪化により大幅に圧縮された賞与が、業績回復とともに正常化・増額されたことが主因と考えられます。同期間、平均年齢・勤続年数はほぼ横ばいで推移しており、人員構成の変化ではなく給与水準そのものの改善です。
一方、キャリコネに投稿された正社員107人のデータによると、年代別平均年収は20代391万円、30代491万円、40代828万円です。有価証券報告書の平均年収949.4万円との差は、投稿者層が現場職・若年層に偏っていることが一因と考えられます。
有価証券報告書と国税庁の年代別給与分布をもとに、20代から50代の年収レンジを試算しました。
これは、有価証券報告書記載の平均年齢(39.7歳、2025年3月期)・平均年間給与(949.4万円)と、国税庁「民間給与実態統計調査(令和4年)」の年代別給与分布を組み合わせたシミュレーションによる参考値です。
※有価証券報告書記載の平均年齢(39.7歳、2025年3月期)・平均年間給与(949.4万円)と、国税庁「民間給与実態統計調査(令和4年)」の年代別給与分布を組み合わせたシミュレーションによる参考値
日本航空(JAL)社員の給与明細(キャリコネ)
企画業務職は諸手当類がほぼない
20代営業(非管理職)の 給与明細
20代物流(非管理職)の 給与明細
20代から30代で基本給約10万円アップ
30代(非管理職)の 給与明細
30代(非管理職)の 給与明細
JALの職種は、大きく3つ、「業務企画職」「自社養成パイロット」「客室乗務職」に分類されます。
さらに業務企画職については、「コーポレートコース」「オペレーションコース」「ビジネス・マーケティングコース」「データサイエンス・デジタルテクノロジーコース」「エアラインエンジニアコース」の5つのコースに分かれます。
初任給は職種・コースおよび学歴によって以下の通り設定されています。
<初任給(新卒)>
業務企画職(コーポレートコース/オペレーションコース/ビジネス・マーケティングコース/データサイエンス・デジタルテクノロジーコース/エアラインエンジニアコース):261,000円(高等専門学校専攻科卒・大学卒)/287,753円(大学院修士課程卒)/322,129円(大学院博士課程卒)自社養成パイロット:基本給251,000円客室乗務職:基本給221,000円+乗務手当 約50,000円(乗務時間70時間/月の場合)※乗務手当は乗務時間により変動なお、転職者向けのキャリア採用においては、給与は就業経験等を踏まえて個別に決定されます。公式サイトに掲載されている想定年収の目安は以下の通りです。
<キャリア採用 想定年収>
業務企画職(コーポレートコース/オペレーションコース/ビジネス・マーケティングコース/データサイエンス・デジタルテクノロジーコース):想定年収420万円〜900万円(一般職の場合)業務企画職(エアラインエンジニアコース):想定年収450万円〜950万円(一般職の場合)自社養成パイロット:基本給251,000円客室乗務職:基本給221,000円+乗務手当 約50,000円(乗務時間70時間/月の場合)※乗務手当は乗務時間により変動日本航空(JAL)の給与は、基本給と諸手当からなる月給に、年3回(夏季・年末・年度末)の賞与を加えた構成です。最大の特徴は、職種によって手当の内容と比重が根本的に異なる点です。
業務企画職は基本給中心のシンプルな体系で、募集要項にも家族手当・住宅手当の記載がありません。口コミでも「基本給のみのシンプルな体系」という声が多く、公式情報と一致しています。資格手当は支給されますが、対象は「業務上法的に必要なもののみ」と限定的です。
客室乗務職は基本給221,000円に、乗務時間に応じた「乗務手当」と「宿泊手当(ステイ代)」が加算されます。公式の目安では乗務時間70時間/月で乗務手当は約50,000円。担当路線や機種によって乗務時間は変動するため、月収も変動します。口コミには「月給の約4割が手当分」という声もあり、路線が多い月は収入が大きく上がる一方、フライトが減ると収入に直結するリスクもあります。
自社養成パイロットも同様に、訓練生期間の基本給は251,000円からスタートし、副操縦士昇格後に「乗務手当」が加算される仕組みです。
なお、通勤費・寮社宅制度・各種社会保険の3つは職種共通で整備されています。
職種間の年収格差は、外部統計からも裏付けられます。厚生労働省「賃金構造基本統計調査(2025年)」によるパイロットと客室乗務員の職種別データは以下の通りです。なお、パイロットの平均年収1,686万円は、有価証券報告書の全社平均を大きく引き上げる要因でもあります。
出典:2025年(令和7年)賃金構造基本統計調査
航空会社ならではの福利厚生として、社員向けの割引航空券があります。対象は社員本人とその両親・配偶者に限られますが、国内線は9割引〜無料、国際線は9割引と大きな恩恵を受けられます。ただし利用は空席状況に依存するため、繁忙期や人気路線では希望通りに使えないケースもあります。
日本航空(JAL)社員の給与明細(キャリコネ)
職種により大きな年収差が
20代物流(非管理職)の 給与明細
20代その他(非管理職)の 給与明細
実力次第で30代で年収1000万円に届くケースも
30代管理部門(非管理職)の 給与明細
30代技術(非管理職)の 給与明細
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
ANAホールディングス(プライム市場)の年間平均給与等は以下の通りです。なお、同社は持株会社のため、従業員は全員、特定のセグメントに属さない全社管理部門の従業員であることに注意が必要です。
※従業員数には、他社からの出向社員を含みます。平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
日本航空(JAL)の年収水準を支えているのは基本給ではなく、賞与と職種別の諸手当です。口コミでも「基本給は低い」という声は多く、募集要項を見ても業務企画職の基本給は一般的な大手企業と比べて特別高いわけではありません。
全職種に共通する押し上げ要因は、賞与です。
JALの賞与は業績連動制で、年3回(夏季・年末・年度末)支給されます。2023年度実績は年間合計3.5ヶ月分(夏1.5ヶ月・冬1.7ヶ月・期末0.3ヶ月)で、2024年冬は3ヶ月分への増額が報じられており、回復基調が続いています。賃上げの流れも続いており、2025年春闘ではベースアップ月額10,000円(定期昇給含む賃上げ率5.1%)、2026年春闘では労組要求通りの月額12,000円で満額回答と、2年連続で大幅な賃上げが実現しています。これに加えて、客室乗務職とパイロットには乗務手当・宿泊手当(ステイ代)が加算されます。担当路線や乗務時間に応じて手当が積み上がるため、フライトが多い月は収入が大きく上がります。一方で運航状況に左右されるリスクも伴い、コロナ禍では収入が大幅に落ち込んだ経緯もあります。
業務企画職の昇格・評価制度は、従来の年功序列から実力主義へのシフトが進んでいます。入社後数年間は横並びで進みますが、5年目前後から個人差が生じ始め、毎年設定する目標の達成度に応じた5段階評価で昇給・賞与額が決まる仕組みです。
一般職から管理職(課長職以上)に昇格すると年収は1,000万円を超える水準とされています。ただし口コミには「評価されなければ定年まで同じグレードのまま」「上司の主観が影響し公平性に欠ける」という声もあり、実力主義の運用には個人差・部署差があるようです。やりたいことや目標を明確にしてアピールする姿勢が、キャリアアップの鍵になると言えます。
客室乗務職は年に数回、マネージャーとのフライトを通じて評価が行われ、昇給・賞与額に反映される仕組みです。ただし口コミでは「基本的に年功序列」「上司へのアピールが上手な人は若くして昇進する一方、仕事ができない先輩の方が給与は上というケースもある」という声が多く見られます。
年収を上げる実質的なルートは昇進による基本給アップです。昇進後は基本給が大幅に上がるため、乗務手当依存の構造から脱却できます。また国内線から国際線、ファーストクラス担当へとキャリアを積むことで乗務手当も増加します。キャリアパスの制度は定期的に見直されるため、常に最新の基準を把握しておくことが重要です。
JAL(日本航空)社員の口コミ(キャリコネ)
20代で出世コースかどうかを判断できる
「出世コースは、経営企画と人事・労務、次に各本部の企画部門 このコースに入れているかは、入社7年目くらいで自他ともにわかる……」
評価・昇格制度は実力が重んじられる
「出世は明確なSTEPがあり、社内的にも知らされている チャンスは誰にでもつかむ事ができると感じるが……」
JALの年収水準は業績連動制の賞与が大きな比重を占めるため、外部環境の変化が収入に直結しやすいという構造的なリスクがあります。
航空需要はパンデミック・地政学リスク・大規模自然災害といった予期せぬ事態に対して脆弱です。コロナ禍では賞与が大幅に削減され、客室乗務職やパイロットはフライト減少により乗務手当も同時に落ち込むという二重の打撃を受けました。口コミにも「外部の影響で仕事が減ると収入に直結する」「コロナ禍では収入が大幅に減少した」という声が残っています。
また直近では円安による燃料費・機材整備費のコスト増が業績の重荷となっており、2025年春闘のベアが前年の12,000円から10,000円へ減少した背景にもこの影響があります。国際線収入はインバウンド需要で好調を維持しているものの、為替や燃料市況の変動次第で収益環境が変わりうる点は、長期的なキャリア形成を考える上で意識しておく必要があります。
加えて、客室乗務職・パイロットは航空業界特有の専門性が高い反面、他業界への転職時に活かせるスキルが限られるという指摘も口コミに複数見られます。長期勤続を前提としたキャリア設計が求められる職種であることも、入社前に理解しておきたい点です。
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