外資系企業では、日系企業よりはるかに高い年収を得ることができるイメージがある。そんな中、転職支援会社アンテロープキャリアコンサルティングが、40代になると年収が逆転して「日系企業の方が高年収になる」という調査レポートを発表している。
この調査は、同社のサービスに登録した金融業界で働く転職希望者の年収をまとめたもの。勤務先は銀行や証券、不動産ファンド、資産運用会社、保険会社などで、いずれも高給を期待できそうなところばかりだ。
2021年06月21日
日本の金融機関で働いていれば、若いうちは外資より給料が安いけれども、中年になれば報われる―ー。興味深い調査だが、ヘッドハンターはこの結果に疑問を呈する。少子化の進行で年功序列にも限界があるし、我慢していれば中高年で報いられる時代は、もう続かないというのだ。
外資系企業では、日系企業よりはるかに高い年収を得ることができるイメージがある。そんな中、転職支援会社アンテロープキャリアコンサルティングが、40代になると年収が逆転して「日系企業の方が高年収になる」という調査レポートを発表している。
この調査は、同社のサービスに登録した金融業界で働く転職希望者の年収をまとめたもの。勤務先は銀行や証券、不動産ファンド、資産運用会社、保険会社などで、いずれも高給を期待できそうなところばかりだ。
調査結果では、若い世代では外資系金融の高待遇が際立っている。20代だと日系金融の平均年収が607万円なのに対し、外資系金融は804万円。その差は200万円にものぼる。
30代になると差は小さくなり、外資系1001万円で、日系981万円。依然として外資の方が高年収だ。これが40代になると状況が変わる。どちらも順調に年収アップしているものの、外資系1497万円に対して、日系は1591万円と逆転しているのだ。
しかし、外資系金融業界に詳しいヘッドハンターのA氏は、この調査結果に首を傾げる。アンケートによる把握に限界はあるものの、「外資系の金融マンは40代でも、日系より2~3割は高くなるはずですよ」と指摘する。
外資系と日系金融で大きく違うのが、社員への報い方だ。ゴールドマン・サックスやバークレイズ、UBSといった大手の外資系証券では、リーマン・ショック以降に数は減ったものの「依然として1億円プレーヤーの40代は存在する」という。
「外資では、結果を出してMD(マネジング・ディレクター)などの肩書がつけば1億円プレーヤーになることもある。35歳で年収3億円になった人もいます」
これに対して日系企業では、仮に1人で100億円の利益を出したとしても、「みんなで稼いだ金」になるので、個人にはなかなか還元されない。大手証券会社の40代の平均年収は1100万~1300万円程度で、トップクラスでも3000万円台に落ち着く。
アンテロープの調査対象では、40代の回答者の最高年収が日系では3220万円で、外資では3300万円。調査対象には、外資のトッププレイヤーが含まれていないのかもしれない。
さらにA氏によれば、外資系金融は顧客と交渉して売上を出す「フロント」だけでなく、それをサポートする「バックオフィス」も高収入になるという。フロントのように億単位といかなくても、40代のバックオフィスの最低年収ラインは1000万円。部長クラスになると、2000万円から3000万円程度になるという。
とはいえ外資系金融には、日系と大きな違いがある。それは「少数精鋭」という特徴だ。高い成績を出せなければ年収はカットされ、すぐにクビを宣告されることも珍しくはない。出向後も年収を補てんする日本の銀行とは全く違う。
また、外資系金融には退職金がない。とすると、若い頃に我慢してれば、何かと入用になる中高年に多額の収入が得られ、老後も安心という日系金融の選択肢もアリと言えるのだろうか。しかしA氏は、この考え方にクギを指す。
「金融のグローバル化は、今後ますます進んでいきます。しかし日本のメガバンクはグローバル化に対応できておらず、先行きが不透明です。少子化の進行で年功序列にも限界があるし、我慢していれば中高年で報いられる時代は、もう続かないと思いますよ」
一方で、能力のある人が覚悟を持ってシンガポールや香港などの海外で働くことで「一攫千金」ができる可能性もあり、日系との差はますます大きくなっていくという。
企業口コミサイト「キャリコネ」には、ゴールドマン・サックス証券に勤務する26歳女性社員の給与明細が投稿されています。
年収は1400万円。基本給は月100万円で、賞与が200万円。残業や休日出勤もあるが「特に問題を感じていない」といいます。
「その分、給料がすごくいい。日系企業ではありえない額だと思う。福利厚生は普通にいい。英語の補助などが出る。建物の中に社員専用のスターバックスがある」
この記事の執筆者
アンテロープの調査結果より